1.1 本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の使用が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
1.2 間質性肺疾患があらわれ、死亡に至った症例も報告されているので、初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。[
7.2、
8.1、
9.1.1、
11.1.1参照]
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の
非小細胞肺癌
5.1 十分な経験を有する病理医又は検査施設における検査により、
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異が確認された患者に投与すること。検査にあたっては、承認された体外診断用医薬品又は医療機器を用いること。なお、承認された体外診断用医薬品又は医療機器に関する情報については、以下のウェブサイトから入手可能である:
https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/cd/0001.html
5.2 本剤の術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない。
通常、成人にはカプマチニブとして1回400mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
7.1 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
7.2 副作用が発現した場合は、以下の基準を考慮して、本剤を休薬、減量又は中止すること。[
1.2、
8.1、
8.2、
9.1.1、
11.1.1-
11.1.4参照]
減量・中止する場合の投与量
減量レベル | 投与量 |
通常投与量 | 1回400mg(1日2回) |
1段階減量 | 1回300mg(1日2回) |
2段階減量 | 1回200mg(1日2回) |
中止 | 1回200mg(1日2回)で忍容不能な場合、投与を中止する。 |
副作用発現時の本剤の用量調節基準
副作用 | 基準注1) | 本剤の投与量調節 |
間質性肺疾患 | Grade1以上 | 投与を中止する。 |
AST又はALT増加かつ 総ビリルビン増加注2) | AST又はALT増加>3.0×ULN かつ 総ビリルビン増加>2.0×ULN | 投与を中止する。 |
AST又はALT増加 | Grade3 | Grade1以下又はベースラインに回復するまで休薬する。 7日以内に回復した場合は、同一用量で投与を再開する。 7日を過ぎてから回復した場合は、1段階減量して投与を再開する。 |
Grade4 | 投与を中止する。 |
総ビリルビン増加 | Grade2 | Grade1以下に回復するまで休薬する。 7日以内に回復した場合は、同一用量で投与を再開する。 7日を過ぎてから回復した場合は、1段階減量して投与を再開する。 |
Grade3 | Grade1以下に回復するまで休薬する。 7日以内に回復した場合は、1段階減量して投与を再開する。 7日以内に回復しない場合は、投与を中止する。 |
Grade4 | 投与を中止する。 |
上記以外の副作用 | Grade2 | 管理困難で忍容不能な場合は、Grade1以下に回復するまで休薬する。 休薬後に投与を再開する際には、1段階減量して投与を再開する。 |
Grade3 | Grade2以下に回復するまで休薬する。 休薬後に投与を再開する際には、1段階減量して投与を再開する。 |
Grade4 | 投与を中止する。 |
8.1 間質性肺疾患があらわれることがあるので、初期症状(息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び定期的な胸部画像検査の実施等、観察を十分に行うこと。また、患者に対して、初期症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう指導すること。[
1.2、
7.2、
9.1.1、
11.1.1参照]
8.2 肝機能障害があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。[
7.2、
11.1.3参照]
8.3 腎機能障害があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に腎機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること[
11.1.4参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 間質性肺疾患
間質性肺疾患(2.1%)、肺臓炎(4.1%)があらわれることがある。異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。[
1.2、
7.2、
8.1、
9.1.1参照]
11.1.2 体液貯留(54.6%)
末梢性浮腫(52.6%)、低アルブミン血症(7.2%)、胸水(頻度不明)、心嚢液貯留(1.0%)等の体液貯留があらわれることがある。急激な体重の増加、呼吸困難等の異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[
7.2参照]
11.1.3 肝機能障害(10.3%)
AST増加(7.2%)、ALT増加(10.3%)等の肝機能障害があらわれることがある。[
7.2、
8.2参照]
11.1.4 腎機能障害(25.8%)
血中クレアチニン増加(25.8%)、腎不全(頻度不明)、急性腎障害(頻度不明)等の腎機能障害があらわれることがある。[
7.2、
8.3参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 10%以上 | 10%未満 | 頻度不明 |
感染症および寄生虫症 | − | 蜂巣炎 | − |
代謝および栄養障害 | 食欲減退 | 低リン酸血症 | 低ナトリウム血症 |
呼吸器、胸郭および縦隔障害 | − | 呼吸困難、咳嗽 | − |
胃腸障害 | 悪心(37.1%)、嘔吐、下痢、リパーゼ増加 | 便秘、アミラーゼ増加 | 急性膵炎 |
肝胆道系障害 | − | 血中ビリルビン増加 | − |
皮膚および皮下組織障害 | − | そう痒症、蕁麻疹、発疹 | − |
一般・全身障害および投与部位の状態 | 疲労 | 発熱、体重減少 | 背部痛、非心臓性胸痛 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 ラットにおいて、臨床曝露量の1.2〜1.9倍に相当する用量で中枢神経系への影響(振戦、痙攣、脳(視床又は線条体)の空胞化等)が認められた。
16.1 血中濃度
日本人の進行固形癌患者にカプマチニブ200mg
注)又は400mgを空腹時に1日2回反復経口投与したときのカプマチニブのPKパラメータ及び血漿中濃度推移は以下のとおりであった。カプマチニブ400mgを空腹時に1日2回反復経口投与したときの投与15日目におけるカプマチニブの蓄積率は1.99であった
1)。
日本人患者にカプマチニブ200mg及び400mgを1日2回反復経口投与したときの薬物動態パラメータ
投与量(mg) | 投与 | Cmax(ng/mL) | Tmax※(h) | AUClast(ng・h/mL) | AUC0-12h(ng・h/mL) |
200 | 1日目(n=3) | 2190(118.0) | 0.950(0.917-0.967) | 8200(61.0) | 8170(61.3) |
15日目(n=3) | 2850(59.6) | 0.967(0.967-2.00) | 11000(56.2) | 11000(56.2) |
400 | 1日目(n=12) | 3230(80.8) | 1.00(0.467-3.95) | 12500(74.0) | 12500(73.8) |
15日目(n=9) | 6450(67.0) | 1.00(0.500-2.00) | 26400(70.4) | 26300(70.2) |
日本人患者にカプマチニブ200mg及び400mgを1日2回反復経口投与したときの1日目(上図)と15日目(下図)の血漿中濃度推移(平均値±標準偏差)
また、国際共同第II相試験で非小細胞肺癌患者に400mgを空腹時に1日2回反復経口投与してカプマチニブの薬物動態を評価した結果、累積率(1.39)から算出した有効半減期は6.54時間と推定され、反復投与後3日までに定常状態に達すると考えられる
2)。
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人(24例)に本剤600mg
注)を単回経口投与したとき、空腹時投与に対する低脂肪食投与におけるカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.11及び1.20であった。また、空腹時投与に対する高脂肪食投与におけるカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.15及び1.46であった
3)(外国人データ)。
16.3 分布
カプマチニブのヒト血漿タンパク結合率は96%であった。血液/血漿濃度比は、濃度範囲10〜1,000ng/mLで1.5、高濃度10,000ng/mLでは0.9であった
4)(
in vitro)。
16.4 代謝
カプマチニブは主にCYP3A4及びアルデヒドオキシダーゼによって代謝される(
in vitro)。健康成人(6例)に[
14C]カプマチニブ600mg
注)を単回経口投与したとき、投与12時間後までの血漿中に、主に未変化体及び薬理活性を示さない代謝物M16(酸化体)が検出された(血漿中総放射能のAUC
12hに対する割合は、それぞれ42.9及び21.5%)
5)(外国人データ)。[
10.参照]
16.5 排泄
健康成人(6例)に[
14C]カプマチニブ600mg
注)を単回経口投与したとき、投与168時間後までの尿及び糞中において、それぞれ投与放射能の21.8及び77.9%が排泄された。また、投与96時間までの尿中及び糞中において、それぞれ主にM16及び未変化体が検出された(投与放射能に対する割合は、それぞれ2.9及び42.1%)
5)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者
カプマチニブ200mg
注)を単回経口投与したとき、肝機能正常被験者(9例)に対する軽度(Child-Pugh分類A)の肝機能障害患者(6例)のカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.724及び0.767であった。また、肝機能正常被験者(9例)に対する中等度(Child-Pugh分類B)の肝機能障害患者(8例)のカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.828及び0.914であった。肝機能正常被験者(9例)に対する重度(Child-Pugh分類C)の肝機能障害患者(6例)のカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.02及び1.24であった
6)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 リファンピシン
健康成人(25例)にリファンピシン(強力なCYP3A誘導剤)600mgを1日1回9日間反復経口投与し、カプマチニブ400mgを単回経口投与したとき、カプマチニブ単独投与時に対するリファンピシン併用投与時のカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.441及び0.335であった
7)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.2 エファビレンツ
生理学的薬物動態モデルに基づいたシミュレーションにおいて、カプマチニブ(400mgを単回投与)単独投与時に対するエファビレンツ(中等度のCYP3A誘導剤)(600mgを1日1回投与)併用投与時のカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.683及び0.554であった
8)。[
10.2参照]
16.7.3 イトラコナゾール
健康成人(26例)にイトラコナゾール(強力なCYP3A阻害剤)200mgを1日1回10日間反復経口投与し、カプマチニブ200mg
注)を単回経口投与したとき、カプマチニブ単独投与時に対するイトラコナゾール併用投与時のカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.03及び1.42であった
7)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.4 カフェイン
MET遺伝子変異等を有する進行固形癌患者(30例)にカプマチニブ400mgを1日2回9日間反復経口投与し、カフェイン(CYP1A2の基質)100mgを単回経口投与したとき、カフェイン単独投与時に対するカプマチニブ併用投与時のカフェインのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.04及び2.34であった
9)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.5 ジゴキシン
MET遺伝子変異等を有する進行固形癌患者(25例)にカプマチニブ400mgを1日2回22日間反復経口投与し、ジゴキシン(P-gpの基質)0.25mgを単回経口投与したとき、ジゴキシン単独投与時に対するカプマチニブ併用投与時のジゴキシンのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.74及び1.47であった
10)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.6 ロスバスタチン
MET遺伝子変異等を有する進行固形癌患者(24例)にカプマチニブ400mgを1日2回22日間反復経口投与し、ロスバスタチン(BCRPの基質)10mgを単回経口投与したとき、ロスバスタチン単独投与時に対するカプマチニブ併用投与時のロスバスタチンのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ3.04及び2.08であった
10)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.7 ラベプラゾール
健康成人(20例)にラベプラゾール(プロトンポンプ阻害剤)20mgを1日1回4日間反復経口投与し、カプマチニブ600mg
注)を単回経口投与したとき、カプマチニブ単独投与時に対するラベプラゾール併用投与時のカプマチニブのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ0.625及び0.748であった
11)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.8 その他
(1)
MET遺伝子変異等を有する進行固形癌患者(31例)にカプマチニブ400mgを1日2回9日間反復経口投与し、ミダゾラム(CYP3Aの基質)2.5mgを単回経口投与したとき、ミダゾラム単独投与時に対するカプマチニブ併用投与時のミダゾラムのCmax及びAUCinfの幾何平均値の比は、それぞれ1.22及び1.09であった
9)(外国人データ)。
(2)カプマチニブはP-gpの基質であり、CYP2C8、MATE1及びMATE2-Kを阻害した(IC50値は、それぞれ1.7、0.28及び0.29μmol/L)。また、M16(酸化体)はMATE1及びMATE2-Kを阻害した(IC50値は、それぞれ0.38及び0.63μmol/L)
12)(
in vitro)。
注)本剤の承認用法・用量は「カプマチニブとして1回400mgを1日2回経口投与」である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第II相試験(A2201/GEOMETRY-mono 1試験)
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者を対象としたコホートにおいて、[1]化学療法歴のない患者28例(日本人患者2例を含む)及び[2]化学療法歴のある患者69例(日本人患者11例を含む)に本剤1回400mgを1日2回経口投与した。主要評価項目である独立画像判定機関の評価による奏効率(RECIST ver 1.1基準に基づく)は、それぞれ[1]67.9%(95%信頼区間:47.6-84.1)及び[2]40.6%(95%信頼区間:28.9-53.1)であった
2)。
副作用は、97例中87例(89.7%)に認められ、主な副作用は、末梢性浮腫52.6%(51/97例)、悪心37.1%(36/97例)、血中クレアチニン増加25.8%(25/97例)、嘔吐18.6%(18/97例)、疲労16.5%(16/97例)、食欲減退15.5%(15/97例)、下痢11.3%(11/97例)、リパーゼ増加11.3%(11/97例)及びALT増加10.3%(10/97例)であった。
18.1 作用機序
カプマチニブは、間葉上皮転換因子(MET)に対する阻害作用を有する低分子化合物であり、METのリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。
18.2 抗腫瘍効果
カプマチニブは、
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異を有する非小細胞肺癌患者由来腫瘍組織片を皮下移植した非肥満型糖尿病/重症複合型免疫不全マウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した
13)(
in vivo)。
21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
21.2 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。