医療用医薬品 : サークリサ

List   Top

医薬品情報


総称名 サークリサ
一般名 イサツキシマブ(遺伝子組換え)
欧文一般名 Isatuximab(Genetical Recombination)
製剤名 イサツキシマブ(遺伝子組換え)製剤
薬効分類名 抗CD38モノクローナル抗体
薬効分類番号 4291
ATCコード L01FC02
KEGG DRUG
D11050 イサツキシマブ
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2025年2月 改訂(効能変更、用法変更)(第4版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
サークリサ点滴静注100mg SARCLISA I.V.Infusion サノフィ 4291454A1021 60364円/瓶 生物由来製品, 劇薬, 処方箋医薬品
サークリサ点滴静注500mg SARCLISA I.V.Infusion サノフィ 4291454A2028 266786円/瓶 生物由来製品, 劇薬, 処方箋医薬品

1. 警告

本剤の投与は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例のみに行うこと。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

多発性骨髄腫

5. 効能または効果に関連する注意

臨床試験に組み入れられた患者の状態等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。また、再発又は難治性の多発性骨髄腫の場合、デキサメタゾンとの併用による投与及び本剤単独投与については、他の治療の実施についても慎重に検討すること。[17.1.1-17.1.5参照]

6. 用法及び用量

他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはイサツキシマブ(遺伝子組換え)として1回10mg/kgを、併用する抗悪性腫瘍剤の投与サイクルを考慮して、以下のA法又はB法の投与間隔で点滴静注する。デキサメタゾンのみとの併用投与又は単独投与の場合(再発又は難治性の場合に限る)、通常、成人にはイサツキシマブ(遺伝子組換え)として1回20mg/kgを、以下のA法の投与間隔で点滴静注する。
A法:1週間間隔、2週間間隔の順で投与する。
B法:1週間間隔、2週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 本剤の投与間隔、投与間隔の変更時期、本剤と併用する抗悪性腫瘍剤等の投与に際しては、「17.臨床成績」の項の内容を熟知した上で選択すること。[17.1.1-17.1.3、17.1.5参照]
7.2 本剤投与によるInfusion reactionを軽減させるために、本剤投与開始15〜60分前に、本剤と併用するデキサメタゾン(本剤単独投与の場合はデキサメタゾン以外の副腎皮質ホルモン剤)、抗ヒスタミン剤、H2受容体拮抗剤及び解熱鎮痛剤を投与すること。[11.1.1参照]
7.3 本剤の必要量を10mg/kg投与時は250mL、20mg/kg投与時は二つの250mLの生理食塩液又は5%ブドウ糖液を用いて輸液バッグに希釈後、以下の投与速度に従って点滴静注する。Infusion reactionが認められなかった場合には、患者の状態を観察しながら、投与速度を以下のように段階的に上げることができる。ただし、投与速度は200mL/時を超えないこと。[14.1.3参照]
本剤の投与速度
投与時期投与速度(mL/時)
初回投与*12回目投与*23回目投与以降
希釈液量250mL250mL×2250mL250mL×2250mL250mL×2
投与開始
0〜30分
2550200
投与開始
30〜60分
100
投与開始
60〜90分
50200
投与開始
90〜120分
75200
投与開始
120〜150分
100200
投与開始
150〜180分
125
投与開始
180分以降
150
7.4 Infusion reactionが発現した場合、以下のように、本剤の休薬、中止、投与速度の変更等、適切な処置を行うこと。[11.1.1参照]
・Grade 2注)
Grade 1注)以下に回復するまで休薬すること。回復後、投与開始速度の半分の投与速度(初回投与では12.5mL/時、2回目投与では25mL/時、3回目投与以降は100mL/時)で患者の状態を観察しながら、投与を再開することができる。投与再開30分後までにInfusion reactionの再発が認められなかった場合には、以下の表に従って投与速度を上げることができる。
本剤の投与再開時の投与速度
投与時期投与速度(mL/時)
初回投与*12回目投与*23回目投与以降*3
投与再開
0〜30分
12.525100
投与再開
30〜60分
2550150
投与再開
60分以降
50〜150100〜200200
・Grade 3注)以上
本剤の投与を中止し、本剤を再投与しないこと。
7.5 Grade 3又は4注)の好中球減少が発現した場合、好中球数が1000/mm3以上に回復するまで休薬すること。[11.1.2参照]
注)GradeはNCI-CTCAE v4.03に準じる。

8. 重要な基本的注意

8.1 骨髄抑制があらわれることがあるので、本剤の投与前及び投与中は定期的に血液検査等を行い、患者の状態を十分に観察すること。[11.1.2参照]
8.2 本剤は、赤血球上に発現しているCD38と結合し、間接クームス試験の結果が偽陽性となる可能性がある。このため、本剤投与前に不規則抗体のスクリーニングを含めた一般的な輸血前検査を実施すること。輸血が予定されている場合は、本剤を介した間接クームス試験への干渉について関係者に周知すること。なお、当該干渉は本剤最終投与から約6ヵ月持続する可能性がある。[12.1参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後5ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。[9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
本剤を用いた生殖発生毒性試験は実施されていないが、IgG1モノクローナル抗体に胎盤通過性があることが知られている。また、CD38遺伝子欠損マウスで免疫系及び骨に対する影響が報告されており、本剤の妊娠中の曝露により胎児に有害な影響を及ぼす可能性がある1)2)。[9.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤のヒト乳汁中への移行は検討されていないが、ヒトIgGは乳汁中に移行するので、本剤も移行する可能性がある。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 Infusion reaction
アナフィラキシー、呼吸困難、咳嗽、悪寒、気管支痙攣、鼻閉、高血圧、嘔吐、悪心等のInfusion reaction(35.4%)があらわれることがあり、多くの場合は、初回投与時に発現が認められたが、2回目以降の投与時にも認められている。異常が認められた場合は、本剤の投与を中断又は中止し適切な処置を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。[7.27.4参照]
11.1.2 骨髄抑制
好中球減少症(21.3%)、血小板減少症(8.0%)、発熱性好中球減少症(2.9%)、貧血(3.0%)、リンパ球減少症(0.4%)等の骨髄抑制があらわれることがある。[7.58.1参照]
11.1.3 感染症(35.4%)
肺炎(12.4%)、敗血症(1.4%)等の重篤な感染症があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 10%以上10%未満5%以上5%未満
精神障害不眠症  
神経系障害末梢性感覚ニューロパチー  
血管障害 高血圧 
呼吸器、胸郭及び縦隔障害 呼吸困難咳嗽
胃腸障害下痢
便秘
悪心嘔吐
筋骨格系および結合組織障害  背部痛
一般・全身障害および投与部位の状態疲労末梢性浮腫
無力症
 
眼障害白内障  
感染症および寄生虫症 気管支炎
上気道感染
COVID-19感染

12. 臨床検査結果に及ぼす影響

12.1 本剤は赤血球上のCD38と結合し、抗体スクリーニングや交差試験等の適合性試験に干渉する。本剤による間接クームス試験への干渉を回避するためにジチオスレイトール(DTT)処理(本剤と赤血球上のCD38との結合を阻害する)を考慮すること。なお、Kell血液型抗原はDTT処理で変性するので、不規則抗体スクリーニングにおいてKell血液型抗原に対する抗体の評価が不能となることに注意すること。[8.2参照]
12.2 本剤はIgGκ型モノクローナル抗体であり、血清中Mタンパクの血清蛋白電気泳動法及び血清免疫固定法の結果に干渉する可能性がある。IgGκ型多発性骨髄腫細胞を有する患者における完全奏効(CR)の評価及びCRからの再発の評価に影響を及ぼす可能性があるため注意すること。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は無菌的に希釈調製を行うこと。
14.1.2 調製前にバイアル内を目視検査し、溶液(通常は無色〜微黄色)に変色あるいは異物が認められた場合は使用しないこと。
14.1.3 250mLの日局生理食塩液又は5%ブドウ糖液の点滴バッグから本剤の必要量(mL)と同量を抜き取り、本剤を加えて総量250mLの希釈液(20mg/kg投与時は総量250mLの希釈液を二つ)を調製する。[7.3参照]
14.1.4 点滴バッグはポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)製、DEHP〔di-(2-ethylhexyl)phthalate:フタル酸ジ-(2-エチルヘキシル)〕を含むポリ塩化ビニル製あるいはエチレン−酢酸ビニル製を使用すること。
14.1.5 点滴バッグを反転させて希釈液を穏やかに混和する。振盪しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 本剤の希釈液を投与する際は、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン又はナイロン製のインラインフィルター(孔径:0.2又は0.22μm)を用いて投与すること。また、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル(DEHPの有無は問わない)又はポリエチレン製の投与セットを用いること。
14.2.2 本剤の希釈液は、ただちに使用しない場合は2〜8℃で保管し、48時間以内に使用すること。その後、室温では8時間以内(本剤の点滴時間を含む)に使用すること。
14.2.3 他の薬剤と同じ静注ラインにて同時注入は行わないこと。
14.2.4 本剤の未使用残液は適切に廃棄すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 未治療の多発性骨髄腫患者を対象とした国際共同第3相試験(EFC12522試験、国際共同試験パート及び中国拡大コホート)において、25/275例(9.1%)に抗イサツキシマブ抗体が認められ、15/275例(5.5%)に抗イサツキシマブ中和抗体が認められた。抗イサツキシマブ抗体及び中和抗体陽性例では陰性例と比較して本剤の血漿中濃度が低下する傾向が認められた。
15.1.2 臨床試験において、皮膚有棘細胞癌、乳房血管肉腫、骨髄異形成症候群等の二次性悪性腫瘍が発現したとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
再発又は難治性の多発性骨髄腫患者に、本剤10mg/kg又は20mg/kgを単剤で週1回4週間反復静脈内投与した後、2週に1回反復静脈内投与したときの初回投与後の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった3)
本剤10mg/kg又は20mg/kgを単剤で反復静脈内投与したときの初回投与後の血漿中濃度推移(平均±標準偏差)
本剤10mg/kg又は20mg/kgを単剤で反復静脈内投与したときの初回投与後の薬物動態パラメータ(平均±標準偏差)
投与量10mg/kg20mg/kg
例数34
Cmax(μg/mL)124±22.9280±64.4
AUC1W(μg・h/mL)9300±301021300±5520
16.1.2 反復投与
再発又は難治性の多発性骨髄腫患者に、28日間を1サイクルとして本剤5〜20mg/kg注1)をポマリドミド及びデキサメタゾンとの併用で週1回4週間反復静脈内投与した後、2週に1回反復静脈内投与したときの薬物動態パラメータは以下のとおりであった4)。また、未治療の多発性骨髄腫患者に、42日間を1サイクルとして本剤10mg/kgをボルテゾミブ、レナリドミド及びデキサメタゾンとの併用で最初のサイクルは5回(1、8、15、22、29日目)、2〜4サイクルは2週間間隔(1、15、29日目)で反復静脈内投与したときの薬物動態パラメータは以下のとおりであった。
本剤5〜20mg/kg注1)をポマリドミド及びデキサメタゾンとの併用で週1回4週間反復静脈内投与した後、2週に1回反復静脈内投与したときの初回投与後及び7回目投与後での薬物動態パラメータ(平均±標準偏差)
初回投与後(サイクル1、1日目)
投与量5mg/kg10mg/kg20mg/kg
例数5186
Cmax(μg/mL)91.3±19.8141±18.8297±16.7
AUC注2)(μg・h/mL)6100±284012800±2430注3)27000±5620
Ctrough注2)(μg/mL)17.2±14.643.1±15.3注3)110±41.1
7回目投与後(サイクル3、1日目)
投与量5mg/kg10mg/kg20mg/kg
例数6246
Cmax(μg/mL)167±34.5403±163648±246
AUC注2)(μg・h/mL)30900±1090071000±34600注4)156000±91000注6)
Ctrough注2)(μg/mL)60.1±39.8154±94.6注5)308±240注6)
42日間を1サイクルとして本剤10mg/kgをボルテゾミブ、レナリドミド及びデキサメタゾンとの併用で最初のサイクルは5回(1、8、15、22、29日目)、2〜4サイクルは2週間間隔(1、15、29日目)で反復静脈内投与したときの初回投与後及び9回目投与後での薬物動態パラメータ(平均±標準偏差)
 例数Cmax(μg/mL)AUC注2)(μg・h/mL)
初回投与後(サイクル1、1日目)32179±61.614300±4460注7)
9回目投与後(サイクル3、1日目)28401±11586100±32600注8)
母集団薬物動態解析に基づき、本薬10mg/kgをポマリドミド及びデキサメタゾンとの併用で週1回4週間反復静脈内投与した後、2週に1回反復静脈内投与したときの、最高血漿中濃度及び血漿中トラフ濃度に基づく蓄積係数は、それぞれ1.8及び3.1と推定された5)。また、母集団薬物動態解析に基づき、定常状態における半減期は28日と推定された5)
注1)承認用量は10mg/kg(ポマリドミド及びデキサメタゾン併用投与又はカルフィルゾミブ及びデキサメタゾン併用投与)又は20mg/kg(デキサメタゾン併用投与又は単独投与)である。
注2)AUC及びCtroughは投与間隔における血漿中濃度−時間曲線下面積及び血漿中トラフ濃度を示す(初回投与後:1週間、7回目又は9回目投与後:2週間での値)。
注3)n=16
注4)n=19
注5)n=20
注6)n=5
注7)n=30
注8)n=24

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第3相試験(EFC14335)
レナリドミド及びプロテアソーム阻害剤を含む2レジメン以上の前治療歴を有する再発又は難治性の多発性骨髄腫患者注1)307例(日本人患者13例を含む)を対象に、ポマリドミド注2)及びデキサメタゾン注3)の併用療法(Pd療法)とPd療法に本剤注4)を上乗せしたIsaPd療法を比較するランダム化非盲検国際共同第3相試験を実施した。
主要評価項目である無増悪生存期間の中央値は、IsaPd群では11.5ヵ月(95%信頼区間:8.9〜13.9)、Pd群では6.5ヵ月(95%信頼区間:4.5〜8.3)であり、IsaPd群で統計学的に有意な延長が示された(ハザード比:0.60、95%信頼区間:0.44〜0.81、p=0.001[層別log-rank検定]、2018年10月11日データカットオフ)6)
無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線
IsaPd群152例中138例(90.8%)に副作用が認められた。主な副作用は、好中球減少66例(43.4%)、Infusion reaction57例(37.5%)、上気道感染30例(19.7%)、肺炎23例(15.1%)、下痢17例(11.2%)、血小板減少17例(11.2%)、発熱性好中球減少16例(10.5%)、気管支炎13例(8.6%)、悪心10例(6.6%)、呼吸困難8例(5.3%)、嘔吐6例(3.9%)、貧血5例(3.3%)等であった。[5.、7.1参照]
注1)レナリドミド及びプロテアソーム阻害剤による治療が無効となった患者(治療中又は投与終了後60日以内に進行した患者、部分奏効以上の効果が認められた場合は治療中止後6ヵ月に進行した患者、許容できない毒性が発現した患者)を選択した。なお、抗CD38モノクローナル抗体に対して難治性の患者は除外した。
注2)ポマリドミドの用法及び用量:28日間を1サイクルとし、1日1回4mgを21日間連日経口投与した後、7日間休薬した。
注3)デキサメタゾンの用法及び用量:28日間を1サイクルとし、1日1回40mg(75歳以上の患者では20mg)を1、8、15及び22日目に静脈内又は経口投与した。
注4)本剤の用法及び用量:28日間を1サイクルとし、1日1回10mg/kgを、最初のサイクルは1週間間隔で4回(1、8、15、22日目)、2サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15日目)静脈内投与した。
17.1.2 国際共同第3相試験(EFC15246)
1〜3レジメンの前治療歴を有する再発又は難治性の多発性骨髄腫患者注5)302例(日本人患者19例を含む)を対象に、カルフィルゾミブ注6)及びデキサメタゾン注7)の併用療法(Cd療法)とCd療法に本剤注8)を上乗せしたIsaCd療法を比較するランダム化非盲検国際共同第3相試験を実施した。
主要評価項目である無増悪生存期間の中央値は、IsaCd群では到達せず、Cd群では19.2ヵ月(95%信頼区間:15.8〜推定不能)であり、IsaCd群で統計学的に有意な延長が示された(ハザード比:0.53、99%信頼区間:0.32〜0.89、p=0.0013[層別log-rank検定]、2020年2月7日データカットオフ)7)
無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線
IsaCd群177例中153例(86.4%)に副作用が認められた。主な副作用は、Infusion reaction79例(44.6%)、高血圧42例(23.7%)、疲労38例(21.5%)、不眠症36例(20.3%)、呼吸困難33例(18.6%)、下痢24例(13.6%)、肺炎21例(11.9%)、上気道感染20例(11.3%)、気管支炎15例(8.5%)、嘔吐10例(5.6%)、好中球減少9例(5.1%)、咳嗽5例(2.8%)、血小板減少5例(2.8%)、貧血4例(2.3%)、背部痛2例(1.1%)等であった。[5.、7.1参照]
注5)抗CD38モノクローナル抗体による前治療歴を有する場合には、当該治療中又は最終投与後60日以内に疾患進行がない患者、少なくとも最小奏効を達成した患者を選択した。
注6)カルフィルゾミブの用法及び用量:28日間を1サイクルとし、最初のサイクルは1日1回20mg/m2を1、2日目に投与、56mg/m2を8、9、15、16日目に静脈内投与した。2サイクル以降は1日1回56mg/m2を1、2、8、9、15、16日目に静脈内投与した。
注7)デキサメタゾンの用法及び用量:28日間を1サイクルとし、1日1回20mgを1、2、8、9、15、16、22、23日目に静脈内投与又は経口投与した。
注8)本剤の用法及び用量:28日間を1サイクルとし、1日1回10mg/kgを、最初のサイクルは1週間間隔で4回(1、8、15、22日目)、2サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15日目)静脈内投与した。
17.1.3 海外第1/2相試験(TED10893)
第2相パートのステージ2において、再発又は難治性の多発性骨髄腫患者注9)164例を対象に、本剤注10)及びデキサメタゾン注11)併用療法、並びに本剤単独療法注10)の有効性及び安全性を検討する非盲検非対照試験を実施した。
主要評価項目である奏効率注12)は、本剤及びデキサメタゾン併用群では43.6%(95%信頼区間:30.3〜57.7%)(24/55例)、本剤単独群では23.9%(95%信頼区間:16.2〜33.0%)(26/109例)であった(2019年1月21日データカットオフ)8)
本剤及びデキサメタゾン併用群55例中41例(74.5%)に副作用が認められた。主な副作用は、Infusion reaction22例(40.0%)、不眠症12例(21.8%)、呼吸困難6例(10.9%)、咳嗽6例(10.9%)、悪心6例(10.9%)、消化不良4例(7.3%)、肺炎3例(5.5%)、高血糖3例(5.5%)、頭痛3例(5.5%)、咽喉刺激感3例(5.5%)、嘔吐3例(5.5%)等であった。
本剤単独群109例中67例(61.5%)に副作用が認められた。主な副作用は、Infusion reaction44例(40.4%)、呼吸困難14例(12.8%)、咳嗽12例(11.0%)、悪心11例(10.1%)、疲労8例(7.3%)、頭痛8例(7.3%)、嘔吐7例(6.4%)等であった。[5.、7.1参照]
注9)プロテアソーム阻害剤及び免疫調節薬を含む3レジメン以上の前治療歴を有する、又はプロテアソーム阻害剤及び免疫調節薬のいずれに対しても難治性である患者を選択した。なお、抗CD38モノクローナル抗体による前治療歴を有する患者は除外した。
注10)本剤の用法及び用量:28日間を1サイクルとし、1日1回20mg/kgを、最初のサイクルは1週間間隔で4回(1、8、15、22日目)、2サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15日目)静脈内投与した。
注11)デキサメタゾンの用法及び用量:28日間を1サイクルとし、1日1回40mg(75歳以上の患者では20mg)を1、8、15及び22日目に静脈内又は経口投与した。
注12)奏効率は、独立効果判定委員会によって評価された最良総合効果が部分奏効以上である患者の割合とした。
17.1.4 国内第1/2相試験(TED14095)
日本人の再発又は難治性の多発性骨髄腫患者注13)36例を対象に、本剤単独療法注14)の有効性及び安全性を検討する非盲検非対照試験を実施した。
本剤20mg/kgが投与された33例において、主要評価項目である奏効率注15)は、36.4%(95%信頼区間:20.4〜54.9%)であった(2019年12月10日データカットオフ)9)
本剤20mg/kgが投与された33例中19例(57.6%)に副作用が認められた。主な副作用は、Infusion reaction13例(39.4%)、肺炎2例(6.1%)、背部痛2例(6.1%)、血小板減少2例(6.1%)、白血球減少2例(6.1%)等であった。[5.参照]
注13)プロテアソーム阻害剤及び免疫調節薬を含む3レジメン以上の前治療歴を有する、又はプロテアソーム阻害剤及び免疫調節薬のいずれに対しても難治性である患者を選定した。なお、抗CD38モノクローナル抗体による前治療歴を有する患者は除外した。
注14)28日間を1サイクルとし、第1相パートでは1日1回10又は20mg/kgを、第2相パートでは1日1回20mg/kgを、それぞれ最初のサイクルは1週間間隔で4回(1、8、15、及び22日目)、2サイクル以降は2週間間隔で2回(1、15日目)静脈内投与した。なお、本剤の承認用量は20mg/kg(単独療法)である。
注15)奏効率は、独立効果判定委員会によって評価された最良総合効果が部分奏効以上である患者の割合とした。
17.1.5 国際共同第3相試験(EFC12522)
自家造血幹細胞移植が適応とならない注16)未治療の多発性骨髄腫患者446例(日本人患者25例を含む)を対象に、ボルテゾミブ注17)、レナリドミド注18)、及びデキサメタゾン注19)の併用療法(BLd療法)とBLd療法に本剤注20)を上乗したIsaBLd療法を、それぞれ2:3の割合で割付け、比較するランダム化非盲検国際共同第3相試験を実施した。
主要評価項目である無増悪生存期間の中央値はIsaBLd群では到達せず、BLd群では54.34ヵ月(95%信頼区間:45.207〜推定不能)であり、IsaBLd群で統計学的に有意な延長が示された(ハザード比:0.596、98.5154%信頼区間:0.406〜0.876、p=0.0005[層別log-rank検定]、2023年9月26日データカットオフ)10)
無増悪生存期間のKaplan-Meier曲線
IsaBLd群263例中257例(97.7%)に副作用が認められた。主な副作用は、末梢性感覚ニューロパチー142例(54.0%)、下痢96例(36.5%)、好中球減少症80例(30.4%)、疲労65例(24.7%)、便秘62例(23.6%)、Infusion reaction61例(23.2%)、白内障55例(20.9%)、不眠症44例(16.7%)、無力症38例(14.4%)、肺炎37例(14.1%)、血小板減少症36例(13.7%)、末梢性浮腫36例(13.7%)、上気道感染33例(12.5%)、気管支炎21例(8.0%)、貧血12例(4.6%)、背部痛4例(1.5%)、COVID-19感染1例(0.4%)等であった。[5.、7.1参照]
注16)65歳以上の大量化学療法不適応の患者、又は65歳未満であるが造血幹細胞移植併用大量化学療法の忍容性に悪影響を及ぼす可能性の高い重大な併存疾患を有する患者を選択した。
注17)ボルテゾミブの用法及び用量:寛解導入期間(1〜4サイクル)では42日間を1サイクルとし、1日1回1.3mg/m2を、各サイクルの1、4、8、11、22、25、29、32日目に皮下投与した。
注18)レナリドミドの用法及び用量:寛解導入期間(1〜4サイクル)では42日間を1サイクルとし、1日1回25mg(クレアチニンクリアランスが30mL/min以上60mL/min未満の患者は10mg)を、1〜14日目及び22〜35日目に経口投与した。継続投与期間(5サイクル以降)では28日間を1サイクルとし、1日1回25mg(クレアチニンクリアランスが30mL/min以上60mL/min未満の患者は10mg)を1〜21日目に経口投与した。
注19)デキサメタゾンの用法及び用量:寛解導入期間(1〜4サイクル)では42日間を1サイクルとし、1日1回20mgを、1、2、4、5、8、9、11、12、15、22、23、25、26、29、30、32、33日目(75歳以上の患者は第1、4、8、11、15、22、25、29、32日目)に静脈内投与又は経口投与した。継続投与期間(5サイクル以降)では28日間を1サイクルとし、1日1回20mgを1、8、15、22日目に静脈内投与又は経口投与した。
注20)本剤の用法及び用量:寛解導入期間(1〜4サイクル)では42日間を1サイクルとし、1日1回10mg/kgを、最初のサイクルは5回(1、8、15、22、29日目)、2〜4サイクルは2週間間隔(1、15、29日目)静脈内投与した。継続投与期間(5サイクル以降)では28日間を1サイクルとし、5〜17サイクルは1日1回10mg/kgを2週間間隔(1、15日目)、18サイクル以降は1日1回10mg/kgを4週間間隔(1日目)で静脈内投与した。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
イサツキシマブは、ヒトCD38に結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)及び補体依存性細胞傷害(CDC)活性並びにアポトーシスを誘導すること等により、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている11)12)
18.2 抗腫瘍効果
イサツキシマブは、ヒト多発性骨髄腫由来MOLP-8細胞株を皮下移植した重症複合型免疫不全マウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した11)12)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. イサツキシマブ(遺伝子組換え)

一般的名称 イサツキシマブ(遺伝子組換え)
一般的名称(欧名) Isatuximab(Genetical Recombination)
分子量 約148,000
理化学知見その他 遺伝子組換えキメラモノクローナル抗体であり、マウス抗ヒトCD38抗体の可変部及びヒトIgG1定常部からなる。チャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される。450個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ1鎖)2本及び214個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2本で構成される糖タンパク質である。
KEGG DRUG D11050

20. 取扱い上の注意

外箱開封後は遮光して保存すること。

21. 承認条件

21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
21.2 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。

22. 包装

<サークリサ点滴静注100mg>
5mL×1バイアル
<サークリサ点滴静注500mg>
25mL×1バイアル

23. 主要文献

  1. Cockayne D A,et al., Blood., 92 (4), 1324-33, (1998) »PubMed
  2. Sun L,et al., FASEB J., 17 (3), 369-75, (2003) »PubMed
  3. 社内資料:国内第1/2相試験(TED14095)(2020年6月29日承認、CTD2.7.2.2)
  4. 社内資料:海外第1b相試験(TCD14079パートA)(2020年6月29日承認、CTD2.7.2.2)
  5. 社内資料:母集団薬物動態解析(POH0503)(2020年6月29日承認、CTD2.7.2.2)
  6. 社内資料:国際共同第3相試験(EFC14335/ICARIA-MM)(2020年6月29日承認、CTD2.7.6.2)
  7. 社内資料:国際共同第3相試験(EFC15246/IKEMA)(2021年11月25日承認、CTD2.7.6.2)
  8. 社内資料:海外第1/2相試験(TED10893)(2021年11月25日承認、CTD2.7.6.2)
  9. 社内資料:国内第1/2相試験(TED14095)(2021年11月25日承認、CTD2.7.6.2)
  10. 社内資料:国際共同第3相試験(EFC12522/IMROZ)(2025年2月20日承認、CTD2.7.6.2)
  11. 社内資料:非臨床薬効薬理試験(2020年6月29日承認、CTD2.6.2)
  12. Deckert J,et al., Clin Cancer Res., 20, 4574-83, (2014) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
サノフィ株式会社 くすり相談室
〒163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号
電話:フリーダイヤル 0120-109-905
製品情報問い合わせ先
サノフィ株式会社 くすり相談室
〒163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号
電話:フリーダイヤル 0120-109-905

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
サノフィ株式会社
〒163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/09/17 版