通常、成人には、ウパシカルセトナトリウムとして1回25μgを開始用量とし、週3回、透析終了時の返血時に透析回路静脈側に注入する。血清カルシウム濃度に応じて開始用量を1回50μgとすることができる。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1回25〜300μgの範囲内で適宜用量を調整する。
7.1 本剤は血中カルシウムの低下作用を有するので、血清カルシウム濃度が低値でないこと(目安として8.4mg/dL以上)を確認して投与を開始すること。
7.2 血清カルシウム濃度が9.0mg/dL以上の場合は、開始用量として1回50μgを考慮すること。
7.3 血清カルシウム濃度は、本剤の投与開始時及び用量調整時は週1回測定し、維持期には2週に1回以上測定すること。血清カルシウム濃度が8.4mg/dL未満に低下した場合は、下表のように対応すること。なお、血清カルシウム濃度の検査は、本剤の薬効及び安全性を適正に判断するために投与前に実施すること。[
8.1、
9.1.1、
11.1.1、
11.1.2参照]
血清カルシウム濃度 | 対応 |
処置 | 検査 | 増量・再開 |
8.4mg/dL未満 | 原則として本剤の増量を行わず、カルシウム剤やビタミンD製剤の投与、本剤の減量等の処置を考慮すること。 | 血清カルシウム濃度を週1回以上測定し、心電図検査を実施することが望ましい。 | 増量する場合には、目安として8.4mg/dL以上に回復したことを確認後、増量すること。 |
| 7.5mg/dL未満 | 直ちに本剤の休薬を行うこと。 | 再開する場合には、目安として8.4mg/dL以上に回復したことを確認後、休薬前の用量か、それ以下の用量から再開すること。 |
低アルブミン血症(血清アルブミン濃度が4.0g/dL未満)がある場合には、補正カルシウム濃度注)を指標に用いること。
注)補正カルシウム濃度(mg/dL)=血清カルシウム濃度(mg/dL)−血清アルブミン濃度(g/dL)+4.0
7.4 増量する場合には増量幅を50μg(ただし25μgから増量する場合は50μgへ増量)とし、2週間以上の間隔をあけて行うこと。
7.5 PTHが管理目標値の範囲に維持されるように、定期的にPTHを測定すること。PTHの測定は本剤の投与開始時及び用量調整時(目安として投与開始から3カ月程度)は月2回とし、PTHがほぼ安定したことを確認した後は月1回とすることが望ましい。PTHが管理目標値を下回った場合、減量又は休薬を考慮すること。なお、PTHの測定は、本剤の薬効及び安全性を適正に判断するために投与前に実施すること。
8.1 本剤投与中は定期的に血清カルシウム濃度を測定し、低カルシウム血症が発現しないよう十分注意すること。低カルシウム血症の発現あるいは発現のおそれがある場合には、カルシウム剤やビタミンD製剤の投与、本剤の減量等の処置を考慮すること。また、本剤投与中にカルシウム剤やビタミンD製剤の投与を中止した際には、低カルシウム血症の発現に注意すること。[
7.3、
9.1.1、
11.1.1、
11.1.2参照]
8.2 投与開始時及び用量調整時は頻回に患者の症状を観察し、副作用の発現などに注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないこと。
動物実験(ラット)で最低用量100mg/kg/日(臨床最大用量300μg、週3回投与でのAUC
0-168hの517倍に相当する)を静脈内投与した結果、出生児で生後初期の生存性低下、水晶体混濁、体重の低値等が認められている。
また、動物実験(ラット)で胎児への移行が認められている。[
2.2参照]
9.6 授乳婦
本剤投与中及び本剤最終投与後に透析を実施した日の翌日までは授乳を避けさせること。
動物実験(ラット)で乳汁中への移行が認められている。また、授乳期に最低用量100mg/kg/日(臨床最大用量300μg、週3回投与でのAUC0-168hの517倍に相当する)を母動物に静脈内投与した結果、出生児で生後初期の生存性低下、水晶体混濁、体重の低値等が認められている。
9.7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
高齢者では慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 低カルシウム血症(5.7%)
低カルシウム血症に基づくと考えられる症状(QT延長、しびれ、筋痙攣、気分不良、不整脈、血圧低下及び痙攣等)があらわれた場合には、血清カルシウム濃度を確認し、カルシウム剤やビタミンD製剤の投与を考慮すること。[
7.3、
8.1、
9.1.1、
11.1.2、
13.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.5〜1%未満 | 0.5%未満 |
胃腸障害 | | 嘔吐、便秘、悪心 |
代謝および栄養障害 | | 食欲減退 |
肝胆道系障害 | | 肝機能異常 |
筋骨格系および結合組織障害 | | 筋痙縮 |
神経系障害 | | 浮動性めまい、パーキンソン病 |
皮膚および皮下組織障害 | | 多汗症 |
血管障害 | | 高血圧 |
傷害、中毒および処置合併症 | | シャント血栓症 |
眼障害 | 水晶体混濁 | |
一般・全身障害および投与部位の状態 | | 顔面浮腫、口渇 |
14.1 薬剤調製時の注意
14.2 薬剤投与時の注意
本剤は透析回路静脈側に注入し、皮下、筋肉内には投与しないこと。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 海外において、他のカルシウム受容体作動薬による過度のPTHの低下により、無形成骨症が生じたとの報告がある。
15.1.2 海外において、他のカルシウム受容体作動薬投与後の急激なPTHの低下により、低カルシウム血症及び低リン酸血症を伴う飢餓骨症候群(hungry bone syndrome)を発現したとの報告がある
1)。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者に本剤25、50、100、200、400、600及び800μg
注)を単回静脈内投与して血漿中の薬物濃度を測定した。単回投与において、血漿中薬物濃度のCmax及びAUC
0-∞は投与量の増加に伴い上昇した。投与66時間後に血液透析を実施した結果、透析直後の血漿中薬物濃度は透析直前の値より78.40〜100%低下した
2)。
注)本剤の承認された用法及び用量は、通常、ウパシカルセトナトリウムとして1回25〜300μgである。
血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者における単回静脈内投与後の血漿中薬物濃度推移(平均値+標準偏差)
単回静脈内投与時の薬物動態パラメータ
用量(μg) | 例数 | Cmax(ng/mL) | AUC0-∞(ng・h/mL) |
25 | 4 | 3.20±0.862 | 270±161 |
50 | 4 | 6.93±1.62 | 456±63.3 |
100 | 4 | 10.5±3.79 | 506±235 |
200 | 4 | 21.9±2.61 | 1480±257 |
400 | 4 | 56.5±8.32 | 3150±1080 |
600 | 4 | 74.2±25.1 | 5000±1350 |
800 | 5 | 113±42.0 | 6130±3530 |
16.1.2 反復投与
血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者に本剤50、100及び200μgを週3回、22日間、合計9回反復静脈内投与した。3週間の反復投与において、血漿中には主に未変化体として存在し、反復投与によって透析前の血漿中トラフ濃度は上昇しないことが示された
2)。
血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者における反復静脈内投与後の血漿中薬物濃度推移(平均値+標準偏差)
16.3 分布
ヒト血漿タンパク結合率は、0.01〜10μg/mLの本剤濃度範囲において概ね一定で、44.2〜45.6%であった
3)。ヒト血液を用いた赤血球移行率は、同濃度範囲において5.5〜9.0%であった。雌雄ラットに本剤放射ラベル体を1mg/kgで単回静脈内投与し、投薬後5分、1、3、6、24、48及び72時間の各組織中の放射能濃度を測定した。雄性ラットに単回静脈内投与後5分間で殆どの組織においてCmaxを示し、腎臓、腎皮質及び腎髄質に高濃度分布し、次いで膀胱、肝臓及び前立腺に分布した。各組織に移行した放射能は経時的に消失し、投与後72時間で殆どの組織から放射能は消失した。雌性ラットにおいても同様の組織分布を示し、雌雄の生殖器への特異的な分布はなく、性差は認められなかった
4)。
16.4 代謝
血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者に本剤25、50、100、200、400、600及び800μg
注)を単回静脈内投与したとき、血漿中には総曝露量の90%以上が未変化体として存在した。本剤の主な代謝物は、アセチル抱合体(M1)、グルタミン酸抱合体(M2)、酸化的脱アミノ化体(M3)と推定された。M1は、いずれの用量においても血漿中に認められなかった。M2の血漿中濃度は総曝露量の0.8%以下であった。M3は総曝露量の5.8%以下であった
2)。
注)本剤の承認された用法及び用量は、通常、ウパシカルセトナトリウムとして1回25〜300μgである。
16.5 排泄
雄性ラットに放射ラベル化した本剤を10mg/kgで単回静脈内投与したとき、投与後168時間までの尿及び糞中にそれぞれ投与量の89.6及び6.4%が排泄された。主排泄経路は腎臓であった
5)。本剤は健康成人では約80%以上が未変化体として尿中に排泄され、血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者においては、未変化体が主に血液透析により生体内から除去される。また代謝物M2及びM3についても、未変化体と同様、主に血液透析により生体内から除去される
2)。
16.7 薬物相互作用
本剤は主要なCYP分子種(CYP1A2、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A)、UGT分子種(UGT1A1、UGT2B7)を阻害しなかった。また本剤はCYP1A2、CYP2B6及びCYP3A4を誘導しなかった。本剤はMDR1及びBCRPの基質ではなく、各種トランスポーター(MDR1、BCRP、OATP1B1、OATP1B3、OAT1、OAT3、OCT2、MATE1及びMATE2-K)を阻害しなかった
6)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相試験(血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした二重盲検並行群間比較試験)
血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者153例を対象に、本剤及びプラセボを個体内用量調整により週3回24週間透析終了後に投与した。その結果、治療期22、23及び24週時における平均血清iPTH濃度平均値が60pg/mL以上240pg/mL以下を達成した被験者割合は、プラセボ群と比較して有意に高かった(p<0.001,Fisherの直接確率検定)。
投与群 | 目標達成患者の割合 | p値 |
本剤群 | 67.0%(69/103例) | <0.001 |
プラセボ群 | 8.0%(4/50例) |
副作用発現頻度は、本剤群で11.7%(12/103例)であった。発現した副作用は、補正カルシウム減少8.7%(9/103例)、悪心1.0%(1/103例)、シャント血栓症1.0%(1/103例)、食欲減退1.0%(1/103例)、筋痙縮1.0%(1/103例)であった
7)。
17.1.2 国内第III相試験(血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象とした長期投与試験)
血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者157例を対象に、本剤を個体内用量調整により週3回52週間透析終了後に投与した。その結果、投与52週後における平均血清iPTH濃度が60pg/mL以上240pg/mL以下を達成した被験者割合は、94.2%(131/139例)であった。
副作用発現頻度は、6.4%(10/157例)であった。発現した副作用は、心電図QT延長1.3%(2/157例)、水晶体混濁1.3%(2/157例)、多汗症0.6%(1/157例)、補正カルシウム減少0.6%(1/157例)、顔面浮腫0.6%(1/157例)、口渇0.6%(1/157例)、急性心筋梗塞0.6%(1/157例)、高血圧0.6%(1/157例)、肝機能異常0.6%(1/157例)、便秘0.6%(1/157例)であった
8)。
20.1 プランジャーロッドの無理な操作はしないこと。
20.2 できるだけ使用直前までブリスター包装からシリンジを取り出さないこと。外箱開封後は遮光して保存すること。
20.3 シリンジ先端部のチップキャップが外れている、又はシリンジの破損等の異常が認められるときは使用しないこと。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。