医療用医薬品 : デスモプレシン

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医薬品情報


総称名 デスモプレシン
一般名 デスモプレシン酢酸塩水和物
欧文一般名 Desmopressin Acetate Hydrate
製剤名 デスモプレシン酢酸塩水和物注射液
薬効分類名 第VIII因子放出型 血友病A・von Willebrand病用剤
薬効分類番号 2419
ATCコード H01BA02
KEGG DRUG
D02235 デスモプレシン酢酸塩水和物
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2025年4月 改訂(第5版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
デスモプレシン静注4μg「フェリング」 DESMOPRESSIN I.V.Injection 4μg[FERRING] フェリング・ファーマ 2419400A1032 1360円/管 劇薬, 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者[11.1.2参照]

4. 効能または効果

下記疾患の自然発生性出血、外傷性出血および抜歯時、手術時出血の止血管理
○軽症・中等症血友病A(第VIII因子凝固活性が2%以上の患者)
○Type I・Type IIAのvon Willebrand病

5. 効能または効果に関連する注意

本剤は、血液凝固因子を直接体内へ補充する血液製剤とは異なり、単回投与して体内に生産・貯蔵されている第VIII因子及びvon Willebrand因子を血中に放出させて止血をもたらすものである。
したがって、これらの因子を全く欠く患者及び本剤を投与してもこれら因子の明らかな活性増加が期待できない患者へは使用しないこと。

6. 用法及び用量

・通常、デスモプレシン酢酸塩水和物として血友病Aは0.2〜0.4μg/kgを、von Willebrand病は0.4μg/kgを生理食塩液約20mLに希釈し、10〜20分かけて緩徐に静脈内投与する。
・本剤を術前に投与する場合は、予定される外科的処置の30分前に上記と同様の方法で静脈内投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

本剤は短期の止血に用いられるものであり、原則として反復、継続して使用しないこと。やむを得ず24時間以内に反復投与する場合は、反応性が減弱することがあるので、患者の反応性を十分観察すること。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤の投与により軽度の血圧上昇及び心拍数の増加を認めることがあるので観察を十分に行うこと。
8.2 本剤の投与により、頭痛、冷感、嘔気等の水中毒症状を来すことがあるので、以下の点に注意すること。[11.1.1参照]
・血清ナトリウム値をモニターすることが望ましい。
・過度の飲水を避け、点滴・輸液による水分摂取にも注意すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 高血圧を伴う循環器疾患、高度動脈硬化症、冠動脈血栓症、狭心症の患者
血圧上昇により症状を悪化させるおそれがある。
9.1.2 下垂体前葉不全を伴う患者
水中毒等が発現しやすい。[11.1.1参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 慢性腎障害患者
症状が悪化するおそれがある。
9.5 妊婦
9.5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.5.2 妊娠中毒症患者
症状が悪化するおそれがある。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
低出生体重児、新生児及び乳児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
症状を観察しながら慎重に投与すること。生理機能が低下している。

10. 相互作用

10.2 併用注意
昇圧剤血圧が過度に上昇するおそれがある。本剤は弱い血圧上昇作用を有する。
三環系抗うつ剤
(イミプラミン塩酸塩等)
11.1.1参照]
低ナトリウム血症性の痙攣発作の報告があるので、血清ナトリウム、血漿浸透圧等をモニターすること。抗利尿ホルモンを分泌し、水分貯留のリスクを増すことがある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 脳浮腫、昏睡、痙攣等を伴う重篤な水中毒(頻度不明)
異常が認められた場合には投与を中止し、高張食塩水の注入、フロセミドの投与等の適切な処置を行うこと。[8.29.1.210.2参照]
11.1.2 アナフィラキシー(頻度不明)[2.参照]
注)発現頻度は、使用成績調査を含む。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 5%以上0.1〜5%未満頻度不明
代謝 口渇、低ナトリウム血症浮腫
精神神経系頭痛めまい強直性痙攣、眠気
過敏症  全身そう痒感、じん麻疹、発疹
消化器 嘔気腹痛、嘔吐
循環器顔面潮紅、熱感、のぼせ結膜充血、動悸、徐脈顔面蒼白
その他 乏尿、全身倦怠感投与部位の紅斑、腫脹又は灼熱感

13. 過量投与

13.1 症状
水分貯留並びに低ナトリウム血症のリスクが高まり、頭痛、冷感、嘔気、痙攣、意識喪失等があらわれることがある。
13.2 処置
投与を中止し、水分を制限する。症状がある場合は等張もしくは高張食塩水の注入、フロセミドの投与等適切な処置を行う。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
外国人中枢性尿崩症患者5例にデスモプレシン酢酸塩水和物(DDAVP)20μgを静脈内投与したときの血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりである。本剤の静脈内投与による血中動態は二相性を示した1)
本剤を静脈内投与したときの血漿中濃度推移
本剤を静脈内投与したときの薬物動態パラメータ
AUC0-∞(pg・h/mL)t1/2(min)CL(mL/min)Vd(L)
1335124±31.675.2±23.729.5±8.0
投与後1時間以内で作用が発現し、4〜6時間持続した(血液凝固因子活性の上昇度を指標)2)
16.3 分布
16.3.1 体組織への分布
ラットに3H-DDAVPを静脈内投与したときの放射能濃度は腎臓>小腸>肝臓>下垂体後葉>下垂体前葉の順であった3)
16.3.2 蛋白結合率
ヒト血清蛋白結合率は以下のとおりであった4)in vitro)。
添加濃度(pg/mL)250100
血清蛋白結合率(%)76.3±3.374.2±2.874.0±3.4

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内一般臨床試験
血友病A患者54例(中等症19例、軽症35例)及びvon Willebrand病患者20例(Type I 11例、Type IIA 9例)を対象として、0.2μg/kg注)又は0.4μg/kgを静脈内投与したときの概要は以下のとおりである2)
・重症度あるいは病型別止血効果
疾病重症度あるいは病型有効以上/評価例数有効率(%)
血友病A中等症7/977.8
軽症17/2085.0
von Willebrand病Type I7/7100.0
Type IIA6/785.7
・血友病A中等症例の投与前第VIII因子活性別にみた第VIII因子活性上昇率
投与前第VIII因子凝固活性症例数[1]投与1時間後の活性値/投与前活性値[2]/[1]%
2倍以上の症例数[2]2倍未満の症例数
1〜2%62433.3
2〜5%2017385.0
・投与量別止血効果と因子活性上昇率
疾病投与量(μg/kg)有効以上/評価例数有効率因子活性上昇率a)
血友病A0.27/887.5%3.7倍
0.417/2181.0%4.8倍
von Willebrand病0.22/366.7%1.7倍
0.411/11100.0%8.0倍
また、副作用発現頻度は40.0%(38/95例)であった。主な副作用は、のぼせ及び熱感 各20.0%(19/95例)、顔面潮紅8.4%(8/95例)、頭痛7.4%(7/95例)、結膜充血5.3%(5/95例)であった5)
注)本剤のvon Willebrand病に対する承認用量は0.4μg/kgである。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
本剤は「生体内」又は「血管内皮細胞」等にプールされている血液凝固第VIII因子及びvon Willebrand因子を遊離放出させると推定されている6)7)
18.2 血液凝固作用
健康成人による用量反応試験(0.1、0.2、0.4μg/kg)では、第VIII因子凝固活性及びvon Willebrand因子活性は用量依存的に増加し、投与30分〜1時間後に最大ピークに達した8)
また、血友病A患者における第VIII因子凝固活性の増加及びvon Willebrand病患者におけるvon Willebrand因子活性の増加は、健康成人と同様、本剤投与後30分〜1時間後に最大ピークに達した9)。なお、血友病A及びvon Willebrand病患者に本剤を24時間ごと3回反復投与し反応性を検討した結果投与ごとに反応性が低下する例、第2回目以後反応性がなくなった例が確認されている10)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. デスモプレシン酢酸塩水和物

一般的名称 デスモプレシン酢酸塩水和物
一般的名称(欧名) Desmopressin Acetate Hydrate
略号 DDAVP
化学名 1-Deamino-8-D-arginine-vasopressin acetate trihydrate
分子式 C46H64N14O12S2・C2H4O2・3H2O
分子量 1183.31
物理化学的性状 白色の粉末である。
水、エタノール(99.5)、酢酸(100)にやや溶けやすく、酢酸エチル、アセトンにほとんど溶けない。
KEGG DRUG D02235

22. 包装

1mL[10管]

23. 主要文献

  1. Pullan PT,et al., Clinical Endocrinology., 9, 273-278, (1978) »PubMed
  2. 吉田邦男 他, 臨床と研究, 63, 1385-1402, (1986)
  3. Janaky T,et al., Horm Metab Res., 14, 385-386, (1982) »PubMed
  4. 社内資料:125I-KW-8008のin vitro蛋白結合
  5. 社内資料:副作用
  6. Mannucci PM,et al., Br J Haematol., 30, 81-93, (1975) »PubMed
  7. Hoyu T,et al., Tohoku J exp Med., 132, 133-140, (1980) »DOI
  8. 安部英 他, 臨床と研究, 63, 1368-1384, (1986)
  9. 高瀬俊夫 他, 奈良医学雑誌, 35, 540-549, (1984)
  10. Mannucci PM,et al., Br J Haematol., 47, 283-293, (1981) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
フェリング・ファーマ株式会社 くすり相談室
〒105-0001 東京都港区虎ノ門二丁目10番4号
電話:フリーダイヤル:0120-093-168
製品情報問い合わせ先
フェリング・ファーマ株式会社 くすり相談室
〒105-0001 東京都港区虎ノ門二丁目10番4号
電話:フリーダイヤル:0120-093-168

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元(輸入)
フェリング・ファーマ株式会社
東京都港区虎ノ門二丁目10番4号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/08/20 版