脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮、及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制
5.1 くも膜下出血の重症度、血腫量、脳梗塞の範囲等の患者の状態を考慮して、本剤投与の要否を判断すること。次の患者における有効性及び安全性は確立していない。[
17.1.1、
17.1.2参照]
・World Federation of Neurosurgical Surgeons分類Vの患者
・脳梗塞が広範囲に及ぶ患者
・Fisher分類3以外の患者
通常成人には、クラゾセンタンとして300mg(12mL)を生理食塩液500mLに加え、容量型の持続注入ポンプを用いて、17mL/時の速度で静脈内に持続投与する(クラゾセンタンとして10mg/時)。くも膜下出血術後早期に本剤の投与を開始し、くも膜下出血発症15日目まで投与する。なお、肝機能、併用薬に応じて適宜減量する。
7.1 本剤はくも膜下出血発症から48時間以内を目安に投与を開始すること。
7.2 中等度の肝機能障害を有する患者(Child-Pugh分類クラスB)に対する投与の可否は慎重に判断し、投与する場合には、通常の用量の半量(クラゾセンタンとして5mg/時)に減量すること。クラゾセンタンとして150mg(6mL)を生理食塩液500mLに加え、容量型の持続注入ポンプを用いて、17mL/時の速度で静脈内にくも膜下出血発症15日目まで投与する。[
9.3.2、
16.6.2参照]
7.3 治療上やむを得ない場合を除きリファンピシンとの併用を避け、併用する場合は、通常の用量の4分の1(クラゾセンタンとして2.5mg/時)に減量し、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。クラゾセンタンとして150mg(6mL)を生理食塩液500mLに加え、容量型の持続注入ポンプを用いて、8.5mL/時の速度で静脈内にくも膜下出血発症15日目まで投与する。[
10.2、
16.7.2参照]
8.1 本剤の投与は、緊急時に十分な対応をとれる医療機関において、頭蓋内出血の診断及び治療に精通している医師のもとで行うこと。
8.2 本剤投与により肺水腫、胸水、脳浮腫等の体液貯留が発現することがあるため、本剤投与中は体液量の調節に留意し、体液貯留の初期症状を十分に観察すること。特に、Triple H療法又はHyperdynamic療法が併用される場合は、体液貯留リスクが増強するおそれがあるため、慎重に体液量を管理すること。[
9.1.2、
9.1.3、
11.1.1参照]
8.3 本剤は血管拡張作用を有するため、血圧低下が起こることがある。本剤投与に際しては、血圧が適切にコントロールされている状況下で投与を開始し、投与中は血圧を十分にモニタリングすること。
8.4 ヘモグロビン低下があらわれることがあるので、本剤の投与開始前、及び必要に応じて本剤の投与中にヘモグロビン値を測定すること。
8.5 QT間隔の延長があらわれるおそれがあるので、本剤の投与開始前及び投与中に心電図を測定することが望ましい。異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。[
9.1.1、
10.2、
17.3.1参照]
8.6 本剤の投与に際しては、臨床症状及びコンピューター断層撮影による観察を十分に行い、頭蓋内出血が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
2.4、
11.1.2参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 QT間隔延長のある患者、QT間隔延長のおそれ、又はその既往歴のある患者
本剤の投与開始前及び投与中に心電図を測定すること。QT間隔延長が起こるおそれ、又は悪化するおそれがある。[
8.5、
10.2、
17.3.1参照]
9.1.2 脳浮腫又は頭蓋内圧上昇のある患者
本剤投与による有益性と危険性を考慮した上で、投与の可否を慎重に検討すること。脳浮腫が発現又は悪化するおそれがある。[
8.2、
11.1.1参照]
9.1.3 肺水腫又は胸水のある患者
本剤投与による有益性と危険性を考慮した上で、投与の可否を慎重に検討すること。肺水腫又は胸水が悪化する可能性がある。[
8.2、
11.1.1参照]
9.1.4 出血している患者(硝子体出血、消化管出血等)
患者の状態を十分に観察し、慎重に投与すること。出血を助長する可能性がある。[
2.4、
11.1.2参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝機能障害を有する患者(Child-Pugh分類クラスC)
9.3.2 肝機能障害を有する患者(重度の肝機能障害を有する患者(Child-Pugh分類クラスC)を除く)
肝機能検査を行い、臨床的に顕著に肝酵素(AST、ALT)が上昇した場合、総ビリルビン値が基準値上限の2倍を超える場合、又は黄疸などの肝障害の徴候を伴う場合は、本剤の投与を中止すること。血漿中濃度が上昇するおそれがある。[
7.2、
16.6.2参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠可能な患者では、妊娠していないことを確認した後、本剤の投与を開始するとともに、本剤の投与終了後一定期間は避妊するよう指導すること。[
9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある患者に対しては投与しないこと。動物実験(ラット及びウサギ)において、エンドセリン受容体拮抗作用に基づく胚毒性及び催奇形性が認められた。[
2.2、
9.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤はBCRPの基質であるため、乳汁移行の可能性がある。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。くも膜下出血術後患者を対象とした国内臨床試験において、肺水腫の発現割合が高かった。[
11.1.1参照]
相互作用序文
クラゾセンタンはOATP1B1及びOATP1B3の基質である。
薬物代謝酵素用語
OATP1B1
薬物代謝酵素用語
OATP1B3
10.2 併用注意
| ファスジル塩酸塩水和物 | 血圧低下が増強される可能性がある。また、出血傾向の増強をきたすおそれがある。 併用する場合には、血圧及び出血の徴候を観察するなど注意すること。 | ともに血管拡張作用を有することから、血圧及び出血傾向に影響を及ぼす可能性がある。 |
血管拡張薬 ニカルジピン塩酸塩等 | 血圧低下が増強される可能性があるので、血圧を観察するなど注意すること。 | 本剤及びこれらの薬剤は血管拡張作用を有することから、血圧に影響を及ぼす可能性がある。 |
| オザグレルナトリウム | 出血傾向の増強をきたすおそれがある。 併用する場合には、出血の徴候を観察するなど注意すること。 | 本剤は血管拡張作用を有することから、出血を助長する可能性がある。 |
リファンピシン [7.3、16.7.2参照] | OATP1B1/1B3の阻害作用のない薬剤への代替を考慮すること。 | OATP1B1/1B3の阻害作用により、本剤の血漿中濃度が上昇する可能性がある。 |
OATP1B1/1B3を阻害する薬剤 シクロスポリンA、ロピナビル、リトナビル等 | OATP1B1/1B3の阻害作用のない薬剤への代替を考慮すること。 やむを得ず併用する際には、減量を考慮し、患者の状態を慎重に観察し、副作用発現に十分注意すること。 | これらの薬剤のOATP1B1/1B3の阻害作用により、本剤の血漿中濃度が上昇する可能性がある。 |
QT延長を起こすことが知られている薬剤 アミオダロン、モキシフロキサシン、キニジン等 [8.5、9.1.1、17.3.1参照] | QT間隔延長、心室性不整脈(TdPを含む)等の重篤な副作用を起こすおそれがある。 | 本剤及びこれらの薬剤は、いずれもQT間隔を延長させる可能性があるため、併用により作用が増強するおそれがある。 |
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 体液貯留
11.1.2 頭蓋内出血(0.5%)
、硬膜外血腫(頻度不明)[
8.6、
9.1.4参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 3%以上 | 1〜3%未満 | 頻度不明 |
| 感染症 | | | 肺炎 |
| 血液 | | 貧血 | 出血(硝子体出血、網膜出血等) |
| 代謝 | | 低ナトリウム血症 | |
| 循環器 | | 低血圧 | 心不全 |
| 呼吸器 | 鼻閉 | 肺うっ血 | |
| 肝臓 | | 肝機能異常 | |
| 全身障害 | | 顔面浮腫、浮腫 | |
| 胃腸 | | 腹水 | |
14.1 薬剤調製時の注意
本剤は保存剤を含まないため、希釈後速やかに使用すること。また、バイアル中の残液は廃棄すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 本剤を投与する場合は、0.2μmフィルターを通して投与すること。
14.2.2 本剤は、pHが7より低い場合や他の輸液剤と直接接触した場合に沈殿する可能性がある。本剤は、中心ラインの専用ルーメン、又は専用の注入ラインを用いて単独で投与すること。
14.2.3 24時間毎に薬剤を交換すること。残液は廃棄すること。
15.2 非臨床試験に基づく情報
ラット、イヌ及びミニブタを用いた4週間までの反復毒性試験では、エンドセリン受容体拮抗薬の薬理作用に起因する精細管拡張が認められた。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相試験(コイリング術後患者)
脳動脈瘤破裂に伴うくも膜下出血のコイリング術後患者を対象に、くも膜下出血発症後48時間以内にクラゾセンタンの投与を開始し、本剤10mg/時又はプラセボを最大15日間静脈内持続投与した。対象は術前のWFNS分類I〜IV及びFisher分類3の患者とした。また、術後に血管領域の1/3以上を侵す広範囲な脳梗塞を認めた患者は除外した。最初の主要評価項目は、脳血管攣縮に関連した新規脳梗塞、脳血管攣縮に関連した遅発性虚血性神経脱落症状及び原因を問わない死亡を一つ以上発現した割合とした。この発現割合は、プラセボ群が28.8%(32/111例)及び本剤10mg/時群が13.6%(14/103例)であり、本剤10mg/時群において統計的に有意な低下を認めた(プラセボ群vs.本剤10mg/時群:p=0.0055)。最初の主要評価項目を達成したことから、あらゆる理由による新規脳梗塞、遅発性虚血性神経脱落症状及び死亡(二つ目の主要評価項目)を一つ以上発現した割合を評価した。この発現割合は、プラセボ群が41.4%(46/111例)及び本剤10mg/時群が33.0%(34/103例)であった(プラセボ群vs.本剤10mg/時群:p=0.1871)。中等度以上の脳血管攣縮の発現割合は、プラセボ群が49.5%(55/111例)及び本剤10mg/時群が28.4%(31/109例)であった。
副作用の発現頻度は、プラセボ群が18.0%(20/111例)及び本剤10mg/時群が36.7%(40/109例)であった。本剤10mg/時群で10%以上発現した副作用は、胸水13.8%(15/109例)及び肺水腫11.9%(13/109例)であった
10)。[
5.1、
5.2参照]
17.1.2 国内第III相試験(クリッピング術後患者)
脳動脈瘤破裂に伴うくも膜下出血のクリッピング術後患者を対象に、くも膜下出血発症後48時間以内にクラゾセンタンの投与を開始し、本剤10mg/時又はプラセボを最大15日間静脈内持続投与した。対象は術前のWFNS分類I〜IV及びFisher分類3の患者とした。また、術後に血管領域の1/3以上を侵す広範囲な脳梗塞を認めた患者は除外した。最初の主要評価項目は、脳血管攣縮に関連した新規脳梗塞、脳血管攣縮に関連した遅発性虚血性神経脱落症状及び原因を問わない死亡を一つ以上発現した割合とした。この発現割合は、プラセボ群が39.6%(42/106例)及び本剤10mg/時群が16.2%(17/105例)であり、本剤10mg/時群において統計的に有意な低下を認めた(プラセボ群vs.本剤10mg/時群:p=0.0001)。最初の主要評価項目を達成したことから、あらゆる理由による新規脳梗塞、遅発性虚血性神経脱落症状及び死亡(二つ目の主要評価項目)を一つ以上発現した割合を評価した。この発現割合は、プラセボ群が57.5%(61/106例)及び本剤10mg/時群が45.7%(48/105例)であった(プラセボ群vs.本剤10mg/時群:p=0.0880)。中等度以上の脳血管攣縮の発現割合は、プラセボ群が55.0%(61/111例)及び本剤10mg/時群が24.8%(27/109例)であった。
副作用の発現頻度は、プラセボ群が12.6%(14/111例)及び本剤10mg/時群は33.9%(37/109例)であった。本剤10mg/時群で10%以上発現した副作用は、胸水12.8%(14/109例)及び肺水腫10.1%(11/109例)であった
11)。[
5.1、
5.2参照]
17.3 その他
17.3.1 QT間隔に対する影響
健康成人35例にクラゾセンタンを20mg/時
注)で3時間静脈内持続投与した後、続いてクラゾセンタンを60mg/時
注)で3時間静脈内持続投与し、QT間隔に及ぼす影響を検討した。結果、QTcFのベースラインからの変化量に対するプラセボ投与時との差の90%信頼区間の上限値は、20mg/時及び60mg/時でそれぞれ最大7.6msec(投与2.5時間後)及び14.8msec(投与10時間後)であった
12)(外国人データ)。[
8.5、
9.1.1、
10.2参照]
注)本剤の承認用量は10mg/時である。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。