2.1 本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者
ベンゾジアゼピン系薬剤等他の不眠症治療薬による前治療歴がある患者における本剤の有効性、並びに精神疾患(統合失調症、うつ病等)の既往又は合併のある患者における本剤の有効性及び安全性は確立していないので、これらの患者に本剤を投与する際には治療上の有益性と危険性を考慮し、必要性を十分に勘案した上で慎重に行うこと。[
17.1.1-
17.1.4参照]
通常、成人にはラメルテオンとして1回8mgを就寝前に経口投与する。
7.1 本剤は、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中において一時的に起床して仕事等をする可能性があるときには服用させないこと。
7.2 食後投与では、空腹時投与に比べ本剤の血中濃度が低下することがあるため、本剤は食事と同時又は食直後の服用は避けること。[
16.2.1参照]
8.1 本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
8.2 本剤の投与にあたっては、患者に対して生活習慣の改善を指導するとともに、投与開始2週間後を目処に入眠困難に対する有効性及び安全性を評価し、有用性が認められない場合には、投与中止を考慮し、漫然と投与しないこと。またその後も定期的に本剤の有効性及び安全性を評価した上で投与継続の要否を検討すること。[
17.1.1-
17.1.4参照]
8.3 本剤の投与により、プロラクチン上昇があらわれることがあるので、月経異常、乳汁漏出又は性欲減退等が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 高度の睡眠時無呼吸症候群患者
これらの患者に対する使用経験がなく、安全性は確立していない。[
17.3.1参照]
9.1.2 脳に器質的障害のある患者
これらの患者に対する使用経験がなく、安全性は確立していない。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 高度な肝機能障害患者
投与しないこと。本剤は主に肝臓で代謝されるため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。[
2.2、
16.6.2参照]
9.3.2 軽度から中等度の肝機能障害患者
本剤は主に肝臓で代謝されるため、本剤の血中濃度が上昇するおそれがある。[
16.6.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ラットによる生殖試験(150mg/kg/日以上)において、胎児の横隔膜ヘルニア、骨格変異等の催奇形性がみられている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ラットでは乳汁中への移行が報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。高齢者においては血中濃度が上昇するおそれがある。[
16.6.1参照]
相互作用序文
CYP1A2が本剤の代謝に関与する主な代謝酵素であり、CYP2Cサブファミリー及びCYP3A4もわずかに関与している。
薬物代謝酵素用語
CYP1A2
薬物代謝酵素用語
CYP2C
薬物代謝酵素用語
CYP3A4
10.1 併用禁忌
フルボキサミンマレイン酸塩 (ルボックス、デプロメール) [2.3、16.7.1参照] | 本剤の最高血中濃度、AUCが顕著に上昇するとの報告があり、併用により本剤の作用が強くあらわれるおそれがある。 | 本剤の主な肝薬物代謝酵素であるCYP1A2を強く阻害する。また、CYP2C9、CYP2C19及びCYP3A4に対する阻害作用の影響も考えられる。 |
10.2 併用注意
CYP1A2阻害剤 キノロン系抗菌薬等 | 本剤の作用が強くあらわれる可能性がある。 | フルボキサミンマレイン酸塩との併用で顕著な本剤の血中濃度上昇が報告されており、その他のCYP1A2阻害剤との併用においても、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
CYP2C9阻害剤 フルコナゾール(アゾール系抗真菌薬)等 [16.7.2参照] | 本剤の作用が強くあらわれる可能性がある。 フルコナゾールとの併用により本剤の最高血中濃度、AUCが上昇したとの報告がある。 | これらの薬剤の肝薬物代謝酵素阻害作用により、本剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性がある。 |
CYP3A4阻害剤 マクロライド系抗菌薬等 ケトコナゾール(アゾール系抗真菌薬)等 [16.7.3参照] | 本剤の作用が強くあらわれる可能性がある。 ケトコナゾール(経口:国内未発売)との併用により本剤の最高血中濃度、AUCが上昇したとの報告がある。 | これらの薬剤の肝薬物代謝酵素阻害作用により、本剤の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性がある。 |
CYP誘導剤 リファンピシン(結核治療薬)等 [16.7.4参照] | 本剤の作用が減弱する可能性がある。 リファンピシンとの併用により本剤の最高血中濃度、AUCが低下したとの報告がある。 | CYP3A4等の肝薬物代謝酵素を誘導することにより、本剤の代謝を促進し、血中濃度を減少させる可能性がある。 |
アルコール(飲酒) | 注意力・集中力・反射運動能力等の低下が増強することがある。 | アルコールが中枢神経抑制作用を示すため、本剤との相加作用が考えられる。 |
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 アナフィラキシー(じん麻疹、血管浮腫等)(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
精神神経系 | めまい、頭痛、眠気 | 悪夢 |
皮膚 | 発疹 | |
消化器 | 便秘、悪心 | |
内分泌 | | プロラクチン上昇注) |
その他 | 倦怠感 | 自殺企図 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
マウスに2年間強制経口投与した試験で、雄マウスの100mg/kg/日以上及び雌マウスの300mg/kg/日以上の群において肝腫瘍の発現増加がみられた。また、ラットに2年間強制経口投与した試験では、雄ラットにおいて250mg/kg/日以上の群で肝腫瘍及び良性の精巣間細胞腫の発現増加がみられ、雌ラットでは60mg/kg/日以上の群において肝腫瘍の発現増加がみられた。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
慢性不眠症患者65例(年齢:20〜64歳、中央値42歳)を対象(ただし、精神疾患(統合失調症、うつ病等)、薬物依存等の既往がある患者は除外)とし、1日1回プラセボ、4mg、8mg、16mg、32mg
注)を2日間投与した5剤5期クロスオーバー二重盲検比較試験の結果、「睡眠ポリグラフ検査による睡眠潜時」において、8mg群ではプラセボ群に比べ13.5分の短縮が認められている(p<0.05)。なお、8mg群において睡眠薬の前治療歴のある患者では18.0分の短縮、前治療歴のない患者では12.7分の短縮が認められている
26)。
副作用発現頻度は、8mg群で11.5%(7/61例)であった。主な副作用は、傾眠が4.9%(3/61例)及び頭痛NOSが3.3%(2/61例)であった
26)。[5.、
8.2参照]
17.1.2 国内第II/III相試験
慢性不眠症患者1,130例(年齢:20〜84歳、平均値48.8歳)を対象(ただし、過去12ヵ月に精神疾患(統合失調症、うつ病等)、薬物依存等の既往がある患者は除外)とし、1日1回プラセボ、4mg又は8mg
注)を14日間投与後、それぞれ4mg、8mg、16mg
注)に用量漸増しさらに14日間投与した二重盲検比較試験において、投与1週後の睡眠後調査票による自覚的睡眠潜時において、8mg群ではプラセボ群に比べ3.1分の短縮が認められたが、統計学的な有意差は認められなかった(p=0.0905)。なお、8mg群において睡眠薬の前治療歴のある患者では有効性は認められず、前治療歴のない患者では5.5分の短縮が認められた
27)。
副作用発現頻度は、8mgを14日間投与後、16mgを14日間投与した群で12.2%(46/378例)であった。主な副作用は、傾眠が3.7%(14/378例)、頭痛が1.6%(6/378例)及びγ-グルタミルトランスフェラーゼ増加が0.8%(3/378例)であった
27)。[5.、
8.2参照]
17.1.3 国内第III相試験
慢性不眠症患者971例(年齢:20〜80歳、平均値38.7歳)を対象(ただし、過去12ヵ月に精神疾患(統合失調症、うつ病等)、薬物依存等の既往がある患者は除外)とした二重盲検比較試験において、投与1週後の睡眠日誌による自覚的睡眠潜時はラメルテオン(8mg)群においてプラセボ群と比較して統計学的に有意に減少したが、投与2週後では有意差は認められなかった
28)。
| プラセボ群 | ラメルテオン群 | プラセボ群との差注) | p値注) |
観察期 | 評価例数 | 482 | 489 | − | − |
睡眠潜時(分) | 77.42±30.22 | 77.13±30.81 |
投与1週目 | 評価例数 | 481 | 489 | −4.54 [−7.23,−1.85] | 0.0010 |
睡眠潜時(分) | 65.77±30.36 | 61.07±30.65 |
投与2週目 | 評価例数 | 478 | 478 | −2.36 [−5.25,0.53] | 0.1093 |
睡眠潜時(分) | 59.62±29.13 | 56.95±31.37 |
副作用発現頻度は、8mg群で7.8%(38/489例)であった。主な副作用は、傾眠が3.1%(15/489例)、頭痛、浮動性めまい、倦怠感及び血中尿酸増加が各0.6%(3/489例)であった
28)。[5.、
8.2参照]
17.1.4 国内長期投与試験
慢性不眠症患者190例(年齢:21〜81歳、中央値47歳)を対象(ただし、過去12ヵ月に精神疾患(統合失調症、うつ病等)、薬物依存等の既往がある患者は除外)とした長期投与試験において、ラメルテオン8mgの投与により睡眠潜時の短縮は長期にわたり維持された
29)。
評価時期 | 観察期 | 第1週 | 第4週 | 第12週 | 第24週 |
評価例数 | 74 | 74 | 70 | 66 | 60 |
睡眠潜時(分) | 70.51±47.58 | 54.35±37.32 | 43.04±27.64 | 37.42±27.34 | 38.83±29.11 |
副作用発現頻度は、8mg群で10.8%(8/74例)であった。主な副作用は、γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加が2.7%(2/74例)であった
29)。[5.、
8.2参照]
17.3 その他
17.3.1 臨床薬理試験(呼吸抑制に及ぼす影響)
軽度又は中等度の閉塞性睡眠時無呼吸患者に対する16mg
注)単回投与において、睡眠中の無呼吸低呼吸指数への影響は認められていない
30)(外国人データ)。[
9.1.1参照]
注)承認用量は1回8mgである。