<効能共通>
2.1 アンドロゲン依存性悪性腫瘍(例えば前立腺癌)及びその疑いのある患者[アンドロゲン産生を促進するため、腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すことがある。]
2.2 性腺刺激ホルモン製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2.3 性早熟症の患者[アンドロゲン産生を促進するため、性的早熟を早め、骨端の早期閉鎖を来すことがある。]
<無排卵症(不妊症)、生殖補助医療における黄体補充、生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化、一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化>
○無排卵症(無月経、無排卵周期症、不妊症)
○機能性子宮出血
○黄体機能不全症又は生殖補助医療における黄体補充
○停留睾丸
○造精機能不全による男子不妊症
○思春期遅発症
○睾丸・卵巣の機能検査
○妊娠初期の切迫流産
○妊娠初期に繰り返される習慣性流産
○生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化
○一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化
<無排卵症(不妊症)、生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化、一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化>
本剤の投与にあたっては、患者及びパートナーの検査を十分に行い、本剤の投与の適否を判断すること。特に、甲状腺機能低下、副腎機能低下、高プロラクチン血症及び下垂体又は視床下部腫瘍等が認められた場合、当該疾患の治療を優先すること。
<無排卵症(無月経、無排卵周期症、不妊症)>
通常、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1日3,000〜5,000単位を筋肉内注射する。
<機能性子宮出血、黄体機能不全症又は生殖補助医療における黄体補充>
通常、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1日1,000〜3,000単位を筋肉内注射する。
<停留睾丸>
通常、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1回300〜1,000単位、1週1〜3回を4〜10週まで、又は1回3,000〜5,000単位を3日間連続筋肉内注射する。
<造精機能不全による男子不妊症、下垂体性男子性腺機能不全症(類宦官症)、思春期遅発症>
通常、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1日500〜5,000単位を週2〜3回筋肉内注射する。
<睾丸機能検査>
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、10,000単位1回又は3,000〜5,000単位を3〜5日間筋肉内注射し、1〜2時間後の血中テストステロン値を投与前値と比較する。
<卵巣機能検査>
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1,000〜5,000単位を単独又はFSH製剤と併用投与して卵巣の反応性をみる。
<黄体機能検査>
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、3,000〜5,000単位を高温期に3〜5回、隔日に投与し、尿中ステロイド排泄量の変化をみる。
<妊娠初期の切迫流産、妊娠初期に繰り返される習慣性流産>
通常、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1日1,000〜5,000単位を筋肉内注射する。
<低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症における精子形成の誘導>
1)二次性徴の発現及び血中テストステロン値を正常範囲内にするため、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1,000単位を1週3回皮下注射し、血中テストステロン値が正常範囲内に達しない又は正常範囲上限を超えた場合には、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1,000〜5,000単位を1週2〜3回の範囲内で調整する、2)更に、精子形成の誘導のため、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、1,000〜5,000単位を1週2〜3回皮下注射すると共に、遺伝子組換えFSH製剤を併用投与する。
本剤の用法・用量は症例、適応によって異なるので、使用に際しては厳密な経過観察が必要である。
<生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化、一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化>
通常、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンとして、5,000単位を単回筋肉内注射又は皮下注射するが、患者の状態に応じて投与量を10,000単位とすることができる。
<生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化、一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化>
7.1 超音波検査や必要に応じた血清エストラジオール濃度の測定により十分な卵胞の発育を確認した上で投与すること。
7.2 患者の状態等から、卵巣過剰刺激症候群の発現リスクが低く、5,000単位では十分な効果が得られないと判断される場合にのみ、10,000単位の投与を考慮すること。
<生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化>
7.3 生殖補助医療での使用にあたっては、採卵の34〜36時間前を目安に投与すること。
<無排卵症(不妊症)、生殖補助医療における黄体補充、生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化、一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化>
8.1 本剤は、不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。本剤投与により予想されるリスク及び注意すべき症状について、あらかじめ患者に説明を行うこと。
8.2 本剤を用いた不妊治療により、卵巣過剰刺激症候群があらわれることがあるので、以下のモニタリングを実施すること。
・一般不妊治療においては、排卵誘発に使用する薬剤投与中及び本剤投与前の超音波検査による卵巣反応
・生殖補助医療においては、調節卵巣刺激に使用する薬剤投与中及び本剤投与前の超音波検査及び血清エストラジオール濃度の測定による卵巣反応
・患者の自覚症状(下腹部痛、下腹部緊迫感、悪心、腰痛等)
・急激な体重増加
・超音波検査等による卵巣腫大
なお、卵巣過剰刺激症候群のリスク因子として、多嚢胞性卵巣症候群、若年、やせ、血清抗ミュラー管ホルモン高値、卵巣過剰刺激症候群の既往、血清エストラジオール高値、発育卵胞数の高値等が知られているので、卵巣過剰刺激症候群のリスク因子を有する患者への対応は慎重に行うこと。
卵巣過剰刺激症候群の徴候が認められた場合には、少なくとも4日間は性交を控えるように患者に指導すること。また、本剤の投与又は追加投与の延期や中止の要否を含め実施中の不妊治療の継続の可否を慎重に判断すること。卵巣過剰刺激症候群は、軽症又は中等症であっても急速に進行して重症化することがあるため、本剤投与後は少なくとも2週間の経過観察を行い、卵巣過剰刺激症候群の重症度に応じた適切な処置を行うこと。なお、卵巣過剰刺激症候群は、妊娠によって重症化し、長期化することがあることにも留意すること。[1.、
8.3、
9.1.10、
10.2、
11.1.2参照]
8.3 患者に対しては、あらかじめ以下の点を説明すること。[1.、
8.2、
9.1.10、
10.2、
11.1.2参照]
・卵巣過剰刺激症候群があらわれることがあるので、自覚症状(下腹部痛、下腹部緊迫感、悪心、腰痛等)や急激な体重増加が認められた場合には直ちに医師等に相談すること。
・一般不妊治療においては、卵巣過剰刺激の結果として多胎妊娠の可能性があること。
<無排卵症(不妊症)、一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化>
8.4 排卵誘発を受けた患者では、自然妊娠と比較して多胎妊娠・出産(大部分は双生児)の頻度が高くなることから、本剤投与前に、超音波検査の結果から多胎妊娠が予想される場合には、治療の中止を考慮すること。
<低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症における精子形成の誘導>
8.5 遺伝子組換えFSH製剤の添付文書に記載されている禁忌、重要な基本的注意、特定の背景を有する患者に関する注意等の使用上の注意を必ず確認すること。
8.6 本剤の投与によって精巣が発達した際に精索静脈瘤があらわれることがあるので、注意深く観察すること。
<生殖補助医療における卵胞成熟及び黄体化、一般不妊治療(体内での受精を目的とした不妊治療)における排卵誘発及び黄体化、低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症における精子形成の誘導>
8.7 在宅自己注射(皮下注射)を行う場合は、患者に投与法及び安全な廃棄方法の指導を行うこと。
8.7.1 自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。また、溶解時や投与する際の操作方法を指導すること。適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な場合には、直ちに自己投与を中止させるなど適切な処置を行うこと。
8.7.2 使用済みの注射針あるいは注射器を再使用しないように患者に注意を促すこと。
8.7.3 全ての器具の安全な廃棄方法について指導を徹底すること。同時に、使用済みの針及び注射器を廃棄する容器を提供することが望ましい。
8.7.4 在宅自己注射を行う前に、本剤の取扱説明書を必ず読むよう指導すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 前立腺肥大のある患者
アンドロゲン産生を促進するため、前立腺肥大が増悪するおそれがある。
9.1.2 エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば、乳癌、子宮内膜癌)及びその疑いのある患者
9.1.3 未治療の子宮内膜増殖症のある患者
9.1.4 子宮筋腫のある患者
9.1.5 子宮内膜症のある患者
9.1.6 乳癌の既往歴のある患者
9.1.7 乳癌家族素因が強い患者、乳房結節のある患者、乳腺症の患者又は乳房レントゲン像に異常がみられた患者
9.1.8 てんかん、片頭痛、喘息又は心疾患のある患者
アンドロゲン産生を促進するため、体液貯留、浮腫等があらわれ、これらの症状が増悪するおそれがある。
9.1.9 骨成長が終了していない可能性がある患者、思春期前の患者
9.1.10 本人及び家族の既往歴等の一般に血栓塞栓症発現リスクが高いと認められる患者
本剤を用いた不妊治療を女性に行う場合、本剤の投与の可否については、本剤が血栓塞栓症の発現リスクを増加させることを考慮して判断すること。なお、妊娠自体によっても血栓塞栓症のリスクは高くなることに留意すること。[1.、
2.4、
8.2、
8.3、
10.2、
11.1.2参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 腎疾患のある患者
アンドロゲン産生を促進するため、体液貯留、浮腫等があらわれ、これらの症状が増悪するおそれがある。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
9.8 高齢者
男性高齢者ではアンドロゲン依存性腫瘍が潜在している可能性があり、また一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(頻度不明)
顔面潮紅、胸内苦悶、呼吸困難等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.2 卵巣過剰刺激症候群(頻度不明)
本剤を用いた不妊治療により、卵巣腫大、下腹部痛、下腹部緊迫感、腹水、胸水、呼吸困難を伴う卵巣過剰刺激症候群があらわれることがあり、卵巣破裂、卵巣茎捻転、脳梗塞、肺塞栓を含む血栓塞栓症、肺水腫、腎不全等が認められることもある。本剤投与後に卵巣過剰刺激症候群が認められた場合には、重症度に応じて実施中の不妊治療の継続の可否を判断するとともに、本剤の追加投与はしないこと。また、卵巣過剰刺激症候群の重症度に応じた適切な処置を行うこと。重度の卵巣過剰刺激症候群が認められた場合には、入院させて適切な処置を行うこと。[1.、
2.4、
8.2、
8.3、
9.1.10、
10.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 頻度不明 |
| 過敏症 | 発疹等 |
| 精神神経系 | めまい、頭痛、興奮、不眠、抑うつ、疲労感等 |
| 内分泌 | 性早熟症注1) |
内分泌 女性注2) | 嗄声、多毛、陰核肥大、ざ瘡等の男性化症状 |
内分泌 男性注2) | 性欲亢進、陰茎持続勃起、ざ瘡、女性型乳房 |
| 投与部位 | 疼痛、硬結 |
本剤投与により、免疫学的妊娠反応が陽性を示すことがある。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症における精子形成の誘導>
17.1.1 国内第III相試験
国内で実施した低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症の患者(17〜46歳、中央値:32歳)を対象とし、精子形成誘導を目的とした臨床試験では、3〜6カ月間単独投与し、血清中テストステロン濃度を正常化させ、かつ無精子であることを確認した後、遺伝子組換えFSH製剤との併用療法による治療を6〜18カ月行った。
遺伝子組換えFSH製剤との併用療法を受けた18例(20〜42歳、中央値:32歳)中16例(88.9%)が精子濃度1.5×10
6/mL以上に到達し、17例(94.4%)において精子形成(検査した精液中に精子が1つ以上確認された場合に精子形成ありとした)が認められた。
単独投与において、副作用評価対象例22例中14例に31件の副作用が認められた。主な副作用は、血中アルカリホスファターゼ増加7件、体重増加4件、乳房痛3件等であった。また、遺伝子組換えFSH製剤との併用療法においては、副作用評価対象例18例中14例に28件の副作用が認められた。主な副作用は、ざ瘡(2例2件)、脱毛症(2例2件)、精索静脈瘤(2例2件)、体重増加(2例2件)、不眠症(1例2件)、注意力障害(1例2件)等であった。重篤な副作用として精索静脈瘤が1例に1件認められた
2)。
17.1.2 海外第III相試験
海外(欧州・豪州・米国)で実施した低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症を対象とし、精子形成誘導を目的とした臨床試験の成績は以下のとおりである。
遺伝子組換えFSH製剤との併用療法により46.2〜79.3%が精子濃度1.5×10
6/mL以上に到達し、69.2〜89.7%において精子形成の誘導(検査した精液中に精子が1つ以上確認された場合に精子形成ありとした)が認められた。
| 精子濃度 | 到達率(患者数) |
| 欧州 | 豪州 | 米国 |
| ≧1.5×106/mL | 46.2% (12/26例) | 62.5% (5/8例) | 79.3% (23/29例) |
単独投与において、副作用評価対象例78例中13例に29件の副作用が認められた。主な副作用は女性化乳房5件、ざ瘡4件、睾丸不快感4件等であった。また、遺伝子組換えFSH製剤との併用療法においては、副作用評価対象例63例中26例に85件の副作用が認められた。主な副作用はざ瘡36件、精索静脈瘤4件、乳房圧痛4件、疲労4件、女性化乳房3件、脂漏3件、注射部位疼痛3件、精巣痛2件、リビドー減退2件、注射部位挫傷2件、筋痙縮2件、消化不良2件等であった
3)4)5)。
10バイアル(0.6%塩化ナトリウム溶液2mL 10アンプル添付)