医療用医薬品 : バンコマイシン塩酸塩

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医薬品情報


総称名 バンコマイシン塩酸塩
一般名 バンコマイシン塩酸塩
欧文一般名 Vancomycin Hydrochloride
製剤名 バンコマイシン塩酸塩散
薬効分類名 グリコペプチド系抗生物質製剤
薬効分類番号 6113
ATCコード A07AA09 J01XA01 S01AA28
KEGG DRUG
D00926 バンコマイシン塩酸塩
KEGG DGROUP
DG01580 グリコペプチド系抗生物質
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2024年2月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
バンコマイシン塩酸塩散0.5g「NIG」 Vancomycin Hydrochloride Powder 日医工岐阜工場 6113001B1160 909.6円/瓶 処方箋医薬品注)

1. 警告

本剤の耐性菌の発現を防ぐため、「5.効能・効果に関連する注意」、「8.重要な基本的注意」の項を熟読の上、適正使用に努めること。

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分によるショックの既往歴のある患者

4. 効能または効果

○感染性腸炎
○骨髄移植時の消化管内殺菌

5. 効能または効果に関連する注意

<効能共通>
本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現を防ぐため、原則として他の抗菌薬及び本剤に対する感受性を確認すること。
<感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)>
「抗微生物薬適正使用の手引き」1)を参照し、抗菌薬投与の必要性を判断した上で、本剤の投与が適切と判断される場合に投与すること。

6. 用法及び用量

<感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)>
用時溶解し、通常、成人1回0.125〜0.5g(力価)を1日4回経口投与する。
なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
<骨髄移植時の消化管内殺菌>
用時溶解し、通常、成人1回0.5g(力価)を非吸収性の抗菌剤及び抗真菌剤と併用して1日4〜6回経口投与する。
なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

7. 用法及び用量に関連する注意

<感染性腸炎(偽膜性大腸炎を含む)>
7〜10日以内に下痢、腹痛、発熱等の症状改善の兆候が全くみられない場合は投与を中止すること。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現を防ぐため、次のことに注意すること。
8.1.1 感染症の治療に十分な知識と経験を持つ医師又はその指導の下で行うこと。
8.1.2 投与期間は、感染部位、重症度、患者の症状等を考慮し、適切な時期に、本剤の継続投与が必要か否か判定し、疾病の治療上必要な最低限の期間の投与にとどめること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 本剤の成分又はペプチド系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
9.1.2 ペプチド系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質による難聴又はその他の難聴のある患者
難聴が発現又は増悪するおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
投与量・投与間隔の調節を行い、慎重に投与すること。偽膜性大腸炎等の重度の腸管炎症のある高度の腎機能障害患者(血液透析中等)では、吸収され、排泄が遅延して蓄積するおそれがあり、バンコマイシン塩酸塩の静脈内投与で報告されているものと同様な副作用が発現する危険性がある。[9.811.1.1-11.1.816.6.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。静脈内投与により、ヒト母乳中への移行が認められている。
9.8 高齢者
腎機能等に注意して、慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。[9.2参照]

10. 相互作用

10.2 併用注意
コレスチラミン同時に投与すると本剤の臨床効果が減弱するおそれがあるので、数時間間隔をあけて投与すること。コレスチラミンは腸管内でバンコマイシンと結合する。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
血圧低下、不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴り、発汗等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[9.2参照]
11.1.2 急性腎障害、間質性腎炎(いずれも頻度不明)[9.2参照]
11.1.3 汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少(いずれも頻度不明)[9.2参照]
11.1.4 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、剥脱性皮膚炎(いずれも頻度不明)[9.2参照]
11.1.5 薬剤性過敏症症候群2)(頻度不明)[9.2参照]
11.1.6 第8脳神経障害(頻度不明)[9.2参照]
11.1.7 偽膜性大腸炎(頻度不明)[9.2参照]
11.1.8 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)[9.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 3%以上3%未満頻度不明
過敏症 発熱発疹、潮紅、悪寒、蕁麻疹、そう痒
血液血小板減少好酸球増多白血球減少、貧血
肝臓AST上昇ALT上昇Al-P上昇
消化器 下痢悪心、嘔吐、食欲不振
腎臓 BUN上昇、クレアチニン上昇 
その他 舌炎口内炎

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意
<骨髄移植時の消化管内殺菌>
14.1.1 本剤はバイアル入りの散剤(無菌)である。注射器を用い5〜10mLの溶解液(注射用水等)で溶解する。用時溶解液は無菌のものを用いること。
<効能共通>
14.1.2 薬剤溶液そのままで服用しにくい場合には、単シロップ等で矯味してもよい。
14.2 薬剤投与時の注意
<骨髄移植時の消化管内殺菌>
溶解後は直ちに服用すること。また、服用にあたっては口腔内殺菌のために薬剤溶液で十分含嗽した後飲用することが望ましい。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 健康成人
経口投与時の血中濃度を表1に示す3)
表1 経口投与時の血中濃度(健康成人)
1日投与量
投与期間
n血中濃度(μg/mL)
500mg(力価)×4/日
7日
1測定限界
(2.5)以下
16.1.2 偽膜性大腸炎の患者
経口投与時の血中濃度を表2に示す4)
表2 経口投与時の血中濃度(偽膜性大腸炎の患者)
1日投与量
投与期間
n血中濃度(μg/mL)
500mg(力価)×4/日
5〜7日
3測定限界
(1.25)以下
16.1.3 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染性腸炎の患者
経口投与時の血清中濃度を表3に示す5)
表3 経口投与時の血清中濃度〔メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染性腸炎の患者〕
1日投与量
投与期間
n血清中濃度(μg/mL)
500mg(力価)×4/日
2〜19日※1
26測定限界
(1.0)以下
16.2 吸収
通常、経口投与によってほとんど吸収されず、高い消化管内濃度が得られる。また、血中にはほとんど認められない3)。ただし、腸管に病変のある患者において、吸収され尿中に排泄されたとの報告がある4)。[16.5.2参照]
16.3 分布
16.3.1 蛋白結合率
健康成人に1.0g(力価)点滴静注注)時の血清を用い、遠心限外ろ過法にて測定された血清蛋白結合率は34.3%であった6)
16.4 代謝
バンコマイシン塩酸塩の代謝物は確認されていない7)
16.5 排泄
16.5.1 健康成人
経口投与時の糞便中濃度、尿中濃度を表4に示す3)。なお、バンコマイシン塩酸塩は点滴静注注)後、72時間までに90%以上が尿中に未変化体として排泄された6)
表4 経口投与時の糞便中濃度、尿中濃度(健康成人)
1日投与量
投与期間
糞便中濃度(μg/g)尿中濃度(μg/mL)
500mg(力価)×4/日
7日
2500〜4750(n=1)検出されず(n=1)
16.5.2 偽膜性大腸炎の患者
経口投与時の糞便中濃度、尿中濃度を表5に示す4)。[16.2参照]
表5 経口投与時の糞便中濃度、尿中濃度(偽膜性大腸炎の患者)
1日投与量
投与期間
糞便中濃度(μg/g)尿中濃度(μg/mL)
500mg(力価)×4/日
5〜19日
726〜8370(n=5)測定限界
(1.25)以下
(n=1)
2.44〜94.6
(尿中排泄率:0.15〜1.65%)
(n=3)
16.5.3 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染性腸炎の患者
経口投与時の糞便中濃度、尿中濃度を表6に示す5)
表6 経口投与時の糞便中濃度、尿中濃度〔メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染性腸炎の患者〕
1日投与量
投与期間
糞便中濃度(μg/g)尿中濃度(μg/mL)
500mg(力価)×4/日
2〜19日※1
500〜5500(n=9)
10.5〜92.5※2(n=1)
測定限界以下〜23.4(n=7)
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害を有する偽膜性大腸炎の患者
経口投与時の血清中濃度を表7に示す7)(外国人データ)。[9.2参照]
表7 経口投与時の血清中濃度
No.年齢、性基礎疾患1日投与量
投与期間
血清中濃度(μg/mL)
114歳、女8)無腎、血液透析中250mg(力価)×4/日×8日13.5〜34.0
262歳、男9)腎不全500mg(力価)×4/日×8日
1000mg(力価)/日×9日
500mg(力価)/日×3日
11.4〜20.3
332歳、男10)糖尿病、血液透析中250mg(力価)×4/日×11日約4.5〜7.0
445歳、男10)血液透析中250mg(力価)×4/日
投与期間不明
2.4〜2.6
545歳、男10)血液透析中500mg(力価)×4/日×3日11〜13
125mg(力価)×4/日
投与期間不明
2.4〜3.4
663歳、男10)糖尿病、血液透析中250mg(力価)×4/日
投与期間不明
0.0
728歳、男10)糖尿病性腎症500mg(力価)×4/日
投与期間不明
0.7〜9.8
注)本剤の承認された用法・用量とは異なる。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
<クロストリジウム・ディフィシルによる偽膜性大腸炎>
17.1.1 国内一般臨床試験
承認時における有効性評価対象例13例中12例(92.3%)が有効であった。平均下痢改善日数(4行/日以下)は約4日、平均解熱日数(37.5℃以下)は約6日であった4)。臨床検査値の異常変動を含む副作用は安全性評価対象例41例中3例(7.3%)に認められた。副作用は、「皮疹」、「嘔気」、「舌炎」、「発熱」が各1件(2.4%)であった11)
<メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染性腸炎>
17.1.2 国内一般臨床試験
承認時における有効性評価対象例34例すべて(100.0%)が有効であった。下痢、腹痛、腹部膨満等の腸炎症状及び発熱の正常化日数は3〜4日であった。安全性評価対象例53例に副作用は認められなかった。臨床検査値の異常変動は51例中8例(15.7%)に認められた。主な副作用は、「AST、ALT上昇」、「AST、ALT上昇、Al-P上昇」各3例(5.9%)であった12)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
バンコマイシンの作用は細菌の細胞壁合成阻害によるものであり、その抗菌作用は殺菌的である13)。更に細菌の細胞膜の透過性に変化を与える7)
18.2 抗菌作用
18.2.1 バンコマイシンは試験管内でブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、クロストリジウム属(クロストリジウム・ディフィシルを含む)、アクチノマイセス、ラクトバチルスに抗菌力を示す14)。グラム陰性菌には抗菌力を示さない15)
18.2.2 バンコマイシンは試験管内でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して抗菌力を有し、他の抗菌剤との間に交差耐性を示さない15)。また、MRSAを用いた継代培養試験において、バンコマイシンに対する耐性化は低い16)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. バンコマイシン塩酸塩

一般的名称 バンコマイシン塩酸塩
一般的名称(欧名) Vancomycin Hydrochloride
略号 VCM
化学名 (1S,2R,18R,19R,22S,25R,28R,40S)-50-[3-Amino-2,3,6-trideoxy-3-C-methyl-α-L-lyxo-hexopyranosyl-(1→2)-β-D-glucopyranosyloxy]-22-carbamoylmethyl-5,15-dichloro-2,18,32,35,37-pentahydroxy-19-[(2R)-4-methyl-2-(methylamino)pentanoylamino]-20,23,26,42,44-pentaoxo-7,13-dioxa-21,24,27,41,43-pentaazaoctacyclo[26.14.2.23,6.214,17.18,12.129,33.010,25.034,39]pentaconta-3,5,8,10,12(50),14,16,29,31,33(49),34,36,38,45,47-pentadecaene-40-carboxylic acid monohydrochloride
分子式 C66H75Cl2N9O24・HCl
分子量 1485.71
物理化学的性状 白色の粉末である。水に溶けやすく、ホルムアミドにやや溶けやすく、メタノールに溶けにくく、エタノール(95)に極めて溶けにくく、アセトニトリルにほとんど溶けない。吸湿性である。
KEGG DRUG D00926

21. 承認条件

21.1 使用施設を把握すると共に施設の抽出率、施設数を考慮して以下の対策を講ずること。
21.1.1 適切な市販後調査(感受性調査を含む)を継続し、情報を収集すること。
21.1.2 収集した情報を解析し、適正な使用を確保するために医療機関に対し、必要な情報提供を継続すること。
21.1.3 安全性定期報告に準じた報告書を年1回厚生労働省に提出すること。

22. 包装

10バイアル

23. 主要文献

  1. 厚生労働省健康局結核感染症課編:抗微生物薬適正使用の手引き
  2. 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性過敏症症候群
  3. 舟田 久ほか, 感染症学雑誌, 53, 182-204, (1979) »PubMed
  4. 島田 馨ほか, 最新医学, 37, 1558-1565, (1982)
  5. 小西敏郎ほか, Surg.Today., 27, 826-832, (1997) »PubMed
  6. 中島光好ほか, Chemotherapy., 40, 210-224, (1992) »DOI
  7. 第十八改正日本薬局方 医薬品情報 JPDI2021., 554-556, (2021), (じほう)
  8. Thompson,C.M.et al., Int.J.Pediatr.Nephrol., 4, 1-4, (1983) »PubMed
  9. Spitzer,P.G.et al., Ann.Intern.Med., 100, 533-534, (1984) »PubMed
  10. Matzke,G.R.et al., Am.J.Kidney Dis., 9, 422-425, (1987) »PubMed
  11. 厚生省薬務局, 医薬品研究, 24 (5), 566-567, (1993)
  12. 小西敏郎ほか, Chemotherapy., 42, 436-450, (1994) »DOI
  13. Barna,J.C.J.et al., Annu.Rev.Microbiol., 38, 339-357, (1984) »PubMed
  14. Watanakunakorn,C., Rev.Infect.Dis., 3, S210-215, (1981)
  15. 永田 弘ほか, Chemotherapy., 40, 581-591, (1992) »DOI
  16. 青木泰子ほか, 感染症学雑誌, 64, 549-556, (1990) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
日医工株式会社 お客様サポートセンター
〒930-8583 富山市総曲輪1丁目6番21
電話:0120-517-215
FAX:076-442-8948
製品情報問い合わせ先
日医工株式会社 お客様サポートセンター
〒930-8583 富山市総曲輪1丁目6番21
電話:0120-517-215
FAX:076-442-8948

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
日医工岐阜工場株式会社
富山市総曲輪1丁目6番21
26.2 発売元
日医工株式会社
富山市総曲輪1丁目6番21
26.3 販売
武田薬品工業株式会社
大阪市中央区道修町四丁目1番1号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版