1.1 本剤の投与により低血圧、高血圧、徐脈、心室細動等があらわれ、心停止にいたるおそれがある。したがって、本剤は、患者の呼吸状態、循環動態等の全身状態を注意深く継続的に監視できる設備を有し、緊急時に十分な措置が可能な施設で、本剤の薬理作用を正しく理解し、集中治療又は非挿管下での鎮静における患者管理に熟練した医師のみが使用すること。また、小児への投与に際しては、小児の集中治療又は非挿管下での鎮静に習熟した医師が使用すること。[9.7.2、9.7.4、11.1.1-11.1.5参照]
1.2 迷走神経の緊張が亢進しているか、急速静注、単回急速投与等、通常の用法・用量以外の方法で本剤を投与した場合に重篤な徐脈、洞停止等があらわれたとの報告があるので、本剤は定められた用法・用量に従い、緩徐に持続注入することを厳守し、患者の状況を慎重に観察するとともに、このような症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。[
11.1.3、
11.1.5参照]
○集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静
○成人の局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静
○小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静
<成人の局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静>
全身麻酔に移行する意識下気管支ファイバー挿管に対する本剤の有効性及び安全性は確立されていない。
<小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静>
鎮痛又は局所麻酔を必要とする処置及び検査に対する有効性及び安全性は確立されていない。
<集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静>
通常、成人には、デクスメデトミジンを6μg/kg/時の投与速度で10分間静脈内へ持続注入し(初期負荷投与)、続いて患者の状態に合わせて、至適鎮静レベルが得られる様、維持量として0.2〜0.7μg/kg/時の範囲で持続注入する(維持投与)。また、維持投与から開始することもできる。
通常、6歳以上の小児には、デクスメデトミジンを0.2μg/kg/時の投与速度で静脈内へ持続注入し、患者の状態に合わせて、至適鎮静レベルが得られる様、0.2〜1.0μg/kg/時の範囲で持続注入する。
通常、修正在胎(在胎週数+出生後週数)45週以上6歳未満の小児には、デクスメデトミジンを0.2μg/kg/時の投与速度で静脈内へ持続注入し、患者の状態に合わせて、至適鎮静レベルが得られる様、0.2〜1.4μg/kg/時の範囲で持続注入する。
なお、患者の状態に合わせて、投与速度を適宜減速すること。
<成人の局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静>
通常、成人には、デクスメデトミジンを6μg/kg/時の投与速度で10分間静脈内へ持続注入し(初期負荷投与)、続いて患者の状態に合わせて、至適鎮静レベルが得られる様、維持量として0.2〜0.7μg/kg/時の範囲で持続注入する(維持投与)。なお、患者の状態に合わせて、投与速度を適宜減速すること。
<小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静>
通常、2歳以上の小児には、デクスメデトミジンを12μg/kg/時の投与速度で10分間静脈内へ持続注入し(初期負荷投与)、続いて維持量として1.5μg/kg/時で持続注入する(維持投与)。
通常、1ヵ月以上2歳未満の小児には、デクスメデトミジンを9μg/kg/時の投与速度で10分間静脈内へ持続注入し(初期負荷投与)、続いて維持量として1.5μg/kg/時で持続注入する(維持投与)。
なお、患者の状態に合わせて、投与速度を適宜減速すること。
<効能共通>
7.1 本剤は患者の循環動態が安定し、循環動態、呼吸等について継続的な監視体制が整った状況で投与を開始すること。
<集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静・成人の局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静>
7.2 成人においては本剤の初期負荷投与中に一過性の血圧上昇があらわれた場合には、初期負荷投与速度の減速等を考慮すること。本剤の末梢血管収縮作用により一過性の血圧上昇があらわれることがある。[
8.4参照]
7.3 成人においては鎮静の維持開始速度は0.4μg/kg/時の速度を目安とし、初期負荷から維持への移行を慎重に行うこと。また、維持速度は0.7μg/kg/時を超えないこと。海外臨床試験において、0.7μg/kg/時を超えて投与した場合に呼吸器系、精神神経系及び心血管系の有害事象の発現率が増加することが報告されている。
<集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静>
7.4 小児において投与速度を上げる場合、上昇幅0.1μg/kg/時あたり3〜4分あるいはそれ以上の時間で緩徐に調節すること。
7.5 小児においては初期負荷投与を行わないこと。海外臨床試験において、初期負荷投与を行った場合に、高血圧の発現率が増加することが報告されている。
7.6 本剤は人工呼吸中、離脱過程及び離脱後を通じて投与可能であるが、本剤の持続投与期間が成人においては120時間(5日間)、小児においては24時間(1日間)を超える使用経験は少ないので、それを超えて鎮静が必要な場合には、患者の全身状態を引き続き慎重に観察すること。
<小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静>
7.7 本剤の初期負荷投与中に一過性の血圧上昇があらわれた場合には、初期負荷投与速度の減速等を考慮すること。本剤の末梢血管収縮作用により一過性の血圧上昇があらわれることがある。[
8.4参照]
<効能共通>
8.1 移送を伴う場合には、患者管理に熟練した医師の付き添いのもと、循環動態、呼吸等について継続的な監視体制が整った状況で投与し、循環動態の変動及び呼吸等に特に注意すること。
8.2 本剤はα2受容体刺激作用に基づく鎮痛作用を有するため、他の鎮痛剤と併用する際には鎮痛剤の過量投与に注意すること。
8.3 本剤投与中は至適鎮静レベルが得られるよう患者の全身状態を観察しながら投与速度を調節すること。本剤を投与されている患者は刺激を与えると容易に覚醒し、速やかに反応するが、これは本剤の特徴であるため、他の臨床徴候及び症状がない場合、効果不十分であると考えないよう注意すること。
8.4 本剤の初期負荷投与中にあらわれる一過性の血圧上昇に対しては、投与速度の減速を考慮する必要があるが、重大な血圧上昇があらわれた場合には、さらに適切な処置を行うこと。[
7.2、
7.7参照]
8.5 本剤投与中はバイタルサインの変動に注意して循環器系に対する観察及び対応を怠らないこと。
8.6 本剤を長期投与した後、使用を突然中止した場合、クロニジンと同様のリバウンド現象があらわれるおそれがある。これらの症状として神経過敏、激越及び頭痛があらわれ、同時に又はこれに続いて血圧の急激な上昇及び血漿中カテコラミン濃度の上昇があらわれるおそれがある。
8.7 長期投与後の急激な投与中止により、離脱症状があらわれることがあるため、投与を中止する場合には徐々に減量するなど慎重に行うこと。
<集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静>
8.8 本剤の投与に際しては集中治療に習熟した医師が本剤の薬理作用を正しく理解した上で患者の全身状態を注意深く継続して監視すること。また、気道確保、酸素吸入、人工呼吸、循環管理を行えるよう準備をしておくこと。
8.9 人工呼吸器からの離脱の過程及び離脱後では、患者の呼吸状態を十分に観察すること。
<成人の局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静>
8.10 本剤の投与に際しては非挿管下での鎮静における患者管理に熟練した医師が、本剤の薬理作用を正しく理解し、患者の鎮静レベル及び全身状態を注意深く継続して管理すること。また、気道確保、酸素吸入、人工呼吸、循環管理を行えるよう準備をしておくこと。
8.11 局所麻酔下における手術・処置を行う医師とは別に、意識状態、呼吸状態、循環動態等の全身状態を観察できる医療従事者をおいて、手術・処置中の患者を観察すること。
8.12 本剤は適切に鎮痛を行った上で使用すること。
8.13 硬膜外・脊髄くも膜下麻酔時には、輸液の投与等により、循環動態の変動が安定した後に本剤の投与を開始する等、併用に注意すること。
8.14 全身状態に注意し、手術・処置後は患者が回復するまで管理下に置くこと。なお、鎮静の影響が完全に消失するまでは自動車の運転、危険を伴う機械の操作等に従事しないよう、患者に注意すること。
<小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静>
8.15 本剤の投与に際しては小児の非挿管下での鎮静における患者管理に熟練した医師が、本剤の薬理作用を正しく理解し、患者の鎮静レベル及び全身状態を注意深く継続して管理すること。また、気道確保、酸素吸入、人工呼吸、循環管理を行えるよう準備をしておくこと。[
8.17参照]
8.16 処置・検査を行う医療従事者とは別に、意識状態、呼吸状態、循環動態等の全身状態を観察できる医療従事者をおいて、経皮的動脈血酸素飽和度、呼吸数、心拍数(脈拍数)、血圧、心電図をモニタリングすることに加え、可能であれば呼気終末二酸化炭素濃度もモニタリングするなど、十分に注意して、処置・検査中の患者を観察すること。[
8.17参照]
8.17 本剤投与開始後に目標とする鎮静レベルに達しない又は鎮静レベルに達した後の効果減弱により、他の鎮静剤を追加投与する場合は、鎮静作用、循環動態及び呼吸状態への作用が増強し、副作用があらわれやすくなるおそれがあるため、患者の全身状態を注意深く観察し、慎重に投与すること。[
8.15、
8.16、
10.2参照]
8.18 小児では本剤投与後に激越及び覚醒時せん妄が認められており、また、覚醒が遅延する可能性があるため、全身状態に注意し、処置・検査後は患者が回復するまで管理下に置くこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心血管系障害のある患者
患者の全身状態を十分に観察しながら投与速度を調節すること。徐脈に対してはあらかじめアトロピンの投与、ペースメーカーの使用を考慮すること。低血圧、徐脈があらわれやすくなる。特に高度な心ブロックを伴う患者等は重度の徐脈があらわれるおそれがある。
9.1.2 心機能が低下している患者
投与速度の急激な変更は避け、常に循環動態及び出血量を監視しながら慎重に投与速度を調節すること。また、必要に応じて強心薬及び血管作動薬を併用しながら、慎重に投与し、適切な循環動態の維持を行うこと。本剤の初期負荷投与時に一過性の血圧上昇があらわれることがあり、予期せぬ重篤な循環動態の変動を誘発するおそれがある。
9.1.3 循環血流量が低下している患者
本剤投与開始前及び投与中に輸液負荷等を行い、患者の全身状態を慎重に観察しながら投与速度を調節すること。低血圧があらわれやすくなる。循環血流量が低下した状態で低血圧が持続した場合には、特に注意を払って投与速度の減速を考慮すること。肝血流量の低下から本剤の消失が遅延するおそれがある。[
16.5参照]
9.1.4 血液浄化を受けている患者
頻回に鎮静深度を観察しながら必要に応じて本剤の投与速度を調節すること。持続血液浄化法の導入時、終了時、あるいはカラム交換時や血液量、水分除去率の変更時には特に注意を払い、患者の鎮静深度及び循環動態を観察すること。
9.1.5 薬物依存又は薬物過敏症の既往歴のある患者
9.2 腎機能障害患者
投与速度の減速を考慮し、患者の全身状態を観察しながら慎重に投与すること。鎮静作用の増強や副作用があらわれやすくなるおそれがある。[
16.6.2参照]
9.3 肝機能障害患者
投与速度の減速を考慮し、特に重度の肝機能障害患者に対しては、患者の全身状態を慎重に観察しながら投与速度を調節すること。肝機能障害の程度が重度になるにしたがって本剤の消失が遅延し、鎮静作用の増強や副作用があらわれやすくなるおそれがある。[
16.6.1参照]
9.5 妊婦
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物試験(ラット)において、生存胎児数の減少、胎盤移行性、子宮血流量低下によると考えられる胎児体重の低下及び骨化遅延が認められている。ヒトにおいて胎盤移行性が認められている。
9.6 授乳婦
本剤投与後24時間は授乳を避けさせること。動物試験(ラット)及びヒトにおいて、乳汁移行性が認められている。
9.7 小児等
<集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静>
9.7.1 低出生体重児及び新生児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.7.2 小児への投与に際しては、小児の集中治療に習熟した医師が使用すること。小児では成人よりも低血圧、徐脈、呼吸抑制、嘔吐、悪心、激越及び発熱の有害事象が高頻度に認められた。特に心拍出量が心拍数に依存している低年齢の小児では徐脈の影響が大きいため、より注意深く観察し、慎重に投与すること。[
1.1参照]
<小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静>
9.7.3 低出生体重児及び新生児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.7.4 小児への投与に際しては、小児の非挿管下での鎮静に習熟した医師が使用すること。小児では成人よりも高血圧、徐脈、徐呼吸及び低酸素症の有害事象が高頻度に認められた。特に心拍出量が心拍数に依存している低年齢の小児では徐脈の影響が大きいため、より注意深く観察し、慎重に投与すること。[
1.1参照]
9.8 高齢者
投与速度の減速を考慮し、患者の全身状態を観察しながら慎重に投与すること。生理機能の低下により、鎮静作用の増強や低血圧や徐脈等の副作用があらわれやすくなるおそれがある。[
16.6.3参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 低血圧(22.9%)
低血圧が認められた場合には、本剤の減速又は中止、輸液の増量、下肢の挙上、昇圧剤の使用等適切な処置を行うこと。特に迷走神経の緊張が亢進している患者であらわれやすい。[
1.1参照]
11.1.2 高血圧(10.2%)
高血圧が認められた場合には、本剤の減速又は中止、降圧剤の使用等適切な処置を行うこと。[
1.1参照]
11.1.3 徐脈(13.5%)
徐脈が認められた場合には、本剤の減速又は中止、迷走神経の緊張を軽減する目的で抗コリン剤(アトロピン等)の静脈内投与、ペースメーカーの使用等、適切な処置を行うこと。特に迷走神経の緊張が亢進している患者であらわれやすい。[
1.1、
1.2参照]
11.1.4 心室細動(0.1%)
心室細動が認められた場合には、抗不整脈薬の投与、除細動、心肺蘇生等適切な処置を行うこと。[
1.1参照]
11.1.5 心停止(0.3%)、洞停止(頻度不明)
心停止、洞停止が認められた場合には、本剤の中止、ペースメーカーの使用、除細動、心肺蘇生、強心剤の投与等適切な処置を行うこと。[
1.1、
1.2参照]
11.1.6 低酸素症(2.6%)、無呼吸(0.5%)、呼吸困難(0.2%)、呼吸抑制(5.9%)、舌根沈下(0.4%)
低酸素症、一過性の無呼吸、呼吸困難、呼吸抑制、舌根沈下が認められた場合には、本剤の減速又は中止、気道確保、酸素投与、患者の刺激等適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 1%以上 | 0.1〜1%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
精神神経系 | 激越 | 不安、錯乱、幻覚、めまい、頭痛、不全麻痺、せん妄、傾眠、落ち着きのなさ | うつ病、錯覚、神経過敏、意識低下、神経痛、神経炎、ニューロパシー、知覚脱失、ジストニア、言語障害、昏迷、痙攣 | |
消化器 | 嘔吐、嘔気(4.4%)、口内乾燥 | 腹痛、下痢 | おくび | |
循環器 | 心房細動、頻脈 | 末梢性虚血、血管障害、血圧変動、心不全、心電図異常、特異的心電図異常、高血圧悪化、心筋梗塞、不整脈、心室性不整脈、期外収縮、上室性頻脈、心室性頻脈 | 脳出血、血管拡張、脳血管障害、血管痙攣、循環不全、チアノーゼ、心疾患、狭心症、心筋虚血、心房性不整脈、AVブロック、脚ブロック、心ブロック、T波逆転、上室性不整脈、心電図QT延長、洞性不整脈 | |
呼吸器 | 徐呼吸(3.6%) | 無気肺、気管支痙攣、高炭酸ガス血症、低換気症、胸水、気胸、肺水腫、呼吸不全 | 咳、喀血、肺炎、肺うっ血、呼吸障害 | |
感覚器 | | 視覚異常 | 複視、光視症、耳不快感 | |
血液 | | 出血、血小板減少症、貧血、白血球増加症 | 凝固障害、播種性血管内凝固症候群、好酸球増多症 | |
肝臓 | | AG比異常、血清AST上昇、血清ALT上昇 | γ-GTP上昇、黄疸、肝機能異常 | |
皮膚 | | 多汗 | 紅斑性皮疹 | |
泌尿器 | | 乏尿 | 腎機能異常、尿閉、急性腎障害 | 多尿 |
代謝栄養 | 口渇 | アシドーシス、呼吸性アシドーシス、高血糖、高カリウム血症、血液量過多、血液量減少、低蛋白血症、NPN上昇 | アルカリフォスファターゼ上昇、低カリウム血症 | 高ナトリウム血症 |
その他 | | 背部痛、異常高熱、浮腫、悪寒、失神、発熱、疼痛 | 胸痛、筋肉痛、感染、敗血症、異常感 | 薬剤離脱症候群 |
13.1 症状
急速静注あるいは単回急速投与により高血圧があらわれるおそれがある。海外における臨床試験において過量投与(血漿中濃度が臨床推奨治療用量上限の13倍)された健康被験者に、第I度AVブロック及び第II度心ブロックがあらわれた。また、海外での集中治療における鎮静・鎮痛を評価した臨床試験において過量投与された欧米人患者に、低血圧を伴う徐脈、心停止(臨床推奨治療用量上限の20倍量を急速投与)等があらわれた。
13.2 処置
低血圧に対しては、輸液速度の上昇、下肢の挙上、昇圧剤の投与を行い、徐脈に対しては、抗コリン剤(アトロピン等)の静脈内投与、又はドパミン、アドレナリン等の静脈内投与、心肺蘇生等適切な処置を行う。AVブロック、心ブロック、心停止に対しては心肺蘇生、除細動、強心剤の投与等適切な処置を行うこと。
16.1 血中濃度
16.1.1 成人
日本人の健康成人男女(54例:6例9群、平均体重:約66kg)に、目標血漿中濃度が0.1〜1.25ng/mLとなるように、本剤を1〜6μg/kg/時で10〜35分間投与後、維持用量として0.056〜0.7μg/kg/時で50分〜24時間持続投与した場合の血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった
3)。
薬物動態パラメータ | 平均値±S.D. |
t1/2(hr) | 2.39±0.71 |
CL(L/hr) | 35.47±11.95 |
Vss(L/kg) | 1.54±0.983 |
16.1.2 小児
(1)集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静を必要とする小児患者
集中治療下で鎮静を必要とする修正在胎45週以上17歳未満の日本人小児患者(46例)に、本剤を0.2μg/kg/時で投与開始後、至適鎮静レベルが得られるように、修正在胎45週以上6歳未満の小児は0.2〜1.4μg/kg/時、6歳以上17歳未満の小児は0.2〜1.0μg/kg/時の範囲で持続注入したときの投与終了1〜2時間前もしくは漸減開始直前の平均血漿中デクスメデトミジン濃度は0.70〜1.01ng/mLで、成人の目標血漿中濃度(0.3〜1.25ng/mL)の範囲内であった。血漿中デクスメデトミジン濃度を用い、母集団薬物動態解析により薬物動態パラメータを推定した。体重で補正したCL及びVssは成人と比較して高く、特に6歳未満の小児でより高くなる傾向が認められた。消失半減期は成人よりも短かった
4)。
日本人小児患者の薬物動態パラメータ
| 修正在胎45週-12ヵ月(N=11) | 12-24ヵ月(N=16) | 2-6歳(N=11) | 6-17歳(N=8) |
維持投与量(μg/kg/hr) | 0.2-1.4 | 0.2-1.4 | 0.2-1.4 | 0.2-1.0 |
体重(kg) | 6.4±1.2 | 9.5±1.7 | 15.3±3.1 | 34.0±15.1 |
CL(L/hr) | 7.52±2.68 | 9.47±3.08 | 16.32±4.01 | 27.27±8.97 |
CL(L/hr/kg) | 1.15±0.29 | 0.99±0.26 | 1.07±0.19 | 0.83±0.12 |
Vss(L/kg) | 2.52±0.40 | 2.26±0.34 | 2.21±0.25 | 1.79±0.24 |
t1/2(hr) | 1.59±0.44 | 1.64±0.35 | 1.48±0.28 | 1.52±0.30 |
(2)非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静を必要とする小児患者
日本人小児患者に本剤を投与(2歳以上17歳未満では12μg/kg/時で10分間初期負荷後、維持量として1.5μg/kg/時で1時間投与、1ヵ月以上2歳未満では9μg/kg/時で10分間初期負荷後、維持量として1.5μg/kg/時で1時間投与)したときの血漿中デクスメデトミジン濃度のCmaxの幾何平均値(幾何変動係数)は、2歳以上17歳未満及び1ヵ月以上2歳未満の小児で、それぞれ1.71ng/mL(23.8%)及び1.02ng/mL(15.6%)、Tmaxの中央値(範囲)はどちらの年齢群でも0.167時間(0.167,1.17)と推定された
注)。
注)非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静を必要とする小児患者の用法・用量における血中濃度は得られていないため、集中治療下の小児患者を対象とした臨床試験の薬物動態から構築された母集団薬物動態モデルを用いて薬物動態パラメータが推定された。
16.3 分布
ヒトにおける蛋白結合率を検討したところ、本剤の蛋白結合率(平均値±S.D.)は93.72±0.40%(N=4)であった。本剤の結合性は、0.85〜85ng/mLの濃度範囲で一定であり、性差は認められず、他剤の存在下でも一定であった。肝機能障害患者では、蛋白結合率の低下がみられた。
16.4 代謝
健康成人男子に[3H]デクスメデトミジン塩酸塩2.0μg/kgを単回静脈内投与すると、2種のN-グルクロン酸抱合体として主に代謝され、血漿中総放射能の約41%を占めた。
16.5 排泄
健康成人男子に[
3H]デクスメデトミジン塩酸塩2.0μg/kgを単回静脈内投与したときに認められたN-グルクロン酸抱合体は主に尿中に排泄され、投与開始24時間後までに投与放射能の約85%が尿中に排泄された。72時間後までに、投与放射能の93.8%が尿中に、2.2%が糞中に排泄され、排泄は速やかであった
5)。尿中に未変化体のデクスメデトミジンは検出されなかった。なお、デクスメデトミジンは、主に肝血流量依存性の薬剤である。[
9.1.3参照]
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者における薬物動態
健康被験者及び軽度、中等度及び重度肝機能障害患者(それぞれChild-Pugh分類
6)によるGrade A、B、Cに対応)に0.6μg/kgを10分間で単回静脈内投与したときの薬物動態は以下のとおりであった。本剤の消失半減期は、肝機能障害の重症度に相関して有意に延長し、遊離体クリアランス(CLf)は重症度に相関して低下し、それぞれ健康被験者の約59%、51%、32%であった。また、肝機能障害の程度が重度になるに従い、鎮静深度が深くなり、鎮静状態の持続が認められた。有害事象の発現例数は、健康被験者(8/20)に比べ肝機能障害患者(16/20)で多かった(外国人データ)。[
9.3参照]
肝機能障害患者における薬物動態パラメータ
薬物動態パラメータ | 健康被験者(N=18) | 肝機能障害患者 |
軽度(N=6) | 中等度(N=7) | 重度(N=6) |
総投与量(μg) | 39.9±6.7 | 36.9±9.0 | 38.8±11.7 | 45.2±5.1 |
蛋白結合率(%)a) | 89.7±1.6 | 87.9±0.9 | 86.5±2.0 | 82.1±3.8 |
Cmax(ng/mL) | 0.901±0.487 | 0.930±0.319 | 0.877±0.498 | 0.760±0.244 |
Cmax,f(ng/mL)a) | 0.103±0.016 | 0.120±0.025 | 0.123±0.090 | 0.136±0.027 |
AUC0-∞(ng・hr/mL) | 1.02±0.28 | 1.30±0.42 | 1.74±0.59 | 2.03±0.26 |
t1/2(hr) | 2.45±0.47 | 3.87±1.70 | 5.39±2.19 | 7.45±1.44 |
CL(L/hr) | 41.9±12.7 | 31.0±11.4 | 27.0±12.8 | 22.4±2.4 |
CLf(L/hr)a) | 417.7±160.5 | 247.9±85.5 | 211.7±140.6 | 132.9±34.6 |
Vss(L) | 119.6±41.1 | 102.0±17.5 | 103.4±35.3 | 209.2±40.0 |
Vss,f(L)a) | 1238.7±488.6 | 776.0±172.1 | 741.0±338.3 | 1166.9±217.1 |
16.6.2 腎機能障害患者における薬物動態
重度腎機能障害患者(CrCL:<30mL/min)におけるデクスメデトミジンの薬物動態(Cmax、Tmax、AUC、t
1/2、CL、Vss)に、健康被験者との顕著な差は認められなかったが、重度腎機能障害患者では鎮静作用が強くなる傾向がみられた。腎機能障害患者におけるデクスメデトミジン代謝物の薬物動態は検討されていない。代謝物は主に尿中排泄されることから、腎機能障害患者への長時間投与により代謝物が蓄積される可能性がある(外国人データ)。[
9.2参照]
16.6.3 高齢者における薬物動態
高齢者(>65歳)及び非高齢者(18〜65歳)の間で、薬物動態パラメータの差は認められず、薬力学的作用(鎮静作用等)にも臨床的に意義のある反応性の相違は認められなかった(外国人データ)。[
9.8参照]
16.7 薬物相互作用
健康成人を対象に、鎮静剤(ミダゾラム、プロポフォール)、鎮痛剤(アルフェンタニル)、吸入麻酔剤(イソフルラン)との相互作用を検討したところ、薬物動態学的な相互作用は認められなかったが、鎮静、鎮痛、麻酔作用がそれぞれ増強された。神経筋弛緩剤(ロクロニウム)との明らかな相互作用は認められなかった(外国人データ)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静>
17.1.1 成人における国内第II/III相試験
第I相試験において、本剤の鎮静作用(Ramsay鎮静スコア及びVAS鎮静スコア)及び薬物動態は、日本人と欧米人で同様であることが確認された。
術後集中治療室に収容された患者(日本人111例)を対象にしたプラセボ対照二重盲検ブリッジング試験
7)において、本剤を6μg/kg/時の投与速度で10分間静脈内へ持続注入し、続いて0.2〜0.7μg/kg/時の範囲で静脈内投与したとき(投与時間は最長24時間)、鎮静作用の指標となる挿管中に治療量のプロポフォールの追加投与を必要としなかった症例の割合は、本剤投与群では90.9%(50/55)、プラセボ群では44.6%(25/56)となり、本剤投与群で有意に高かった(p<0.0005)。本試験成績は、欧米人における成績
8)と類似していた。また、挿管中のモルヒネの追加投与を必要としなかった症例の割合については、本剤投与群では87.3%(48/55)、プラセボ群では75.0%(42/56)となり、本剤投与群で有意に高かった(p=0.032)。
副作用発現率は36.0%(31/86)で、主な副作用は低血圧11例(12.8%)、高血圧9例(10.5%)、嘔気4例(4.7%)であった。
有効率(%):治療用量のプロポフォール追加投与が不要例の割合
挿管中の追加投与 | 国内ブリッジング試験(J-DEX-99-001)7) |
プロポフォール | デクスメデトミジン群(N=55) | プラセボ群(N=56) | 検定 |
0mg | 47(85.5%) | 21(37.5%) | <0.0005a) |
>0mg〜50mg | 3(5.5%) | 4(7.1%) |
>50mg | 5(9.1%) | 31(55.4%) |
モルヒネ | \ | \ | \ |
なし | 48(87.3%) | 42(75.0%) | 0.032b) |
あり | 7(12.7%) | 14(25.0%) |
挿管中の追加投与 | 海外PhaseIII試験(W97-246)8) |
プロポフォール | デクスメデトミジン群(N=203) | プラセボ群(N=198) | 検定 |
0mg | 122(60.1%) | 47(23.7%) | <0.0005a) |
>0mg〜50mg | 43(21.2%) | 30(15.2%) |
>50mg | 38(18.7%) | 121(61.1%) |
モルヒネ | \ | \ | \ |
なし | 93(45.8%) | 48(24.2%) | <0.001b) |
あり | 110(54.2%) | 150(75.8%) |
17.1.2 成人における国内第III相試験
集中治療室にて24時間を超える鎮静を要する患者(日本人75例)を対象にした非盲検非対照試験
9)において、本剤を0.2〜0.7μg/kg/時の範囲で24時間を超えて最長28日間静脈内投与したとき、主要評価項目である低血圧、高血圧及び徐脈の副作用発現率は下表のとおりであり、いずれの事象も投与開始後24時間以内と24時間超で統計学的な有意差は認められなかった(スコア検定)。本剤投与中に鎮静レベルRichmond Agitation-Sedation Score(RASS)≦0を維持した時間の割合は、投与開始後24時間までは95.5%、24時間以降は70%以上で推移した。
副作用発現率は40.0%(30/75)で、主な副作用は低血圧15例(20.0%)、高血圧12例(16.0%)、徐脈3例(4.0%)であった。
副作用 | 24時間以内 | 24時間超 | 発現時期別の比較b)(p値) |
発現例数 | 発現件数 | 発現率a) | 発現例数 | 発現件数 | 発現率a) |
低血圧 | 3 | 3 | 0.0400 | 6 | 6 | 0.0217 | 0.546 |
高血圧 | 3 | 3 | 0.0400 | 5 | 6 | 0.0217 | 0.513 |
徐脈 | 1 | 1 | 0.0133 | 0 | 0 | 0 | 0.486 |
17.1.3 小児における国内第III相試験
集中治療下で鎮静を必要とする修正在胎45週以上17歳未満の小児患者(日本人63例:心臓血管外科手術の待機手術症例61例、及び内科ICU症例2例)を対象にした単一群非盲検試験
10)において、本剤を0.2μg/kg/時で投与開始し、続いて6歳以上には0.2〜1.0μg/kg/時、6歳未満には0.2〜1.4μg/kg/時の範囲で6時間以上最長28日間静脈内投与した。目標鎮静レベルは、人工呼吸管理中はSBS
注)スコア−2〜0、人工呼吸終了後はSBSスコア−1〜0とした。レスキュー鎮静薬(ミダゾラム)はSBSスコアの成績及び治験責任医師又は治験分担医師の判断に基づいて投与され、本剤の鎮静・鎮痛評価に影響を及ぼすと考えられる薬剤は併用禁止とした。その結果、鎮静作用の指標となる挿管中にレスキュー鎮静薬(ミダゾラム)の投与を必要としなかった症例の割合は77.8%(49/63)、95%信頼区間は66.0〜86.4%であった。95%信頼区間下限は、本試験の有効性判定基準である40%を上回った。また、各年齢群も同様の結果であった
10)。
副作用発現率は25.4%(16/63)で、主な副作用は徐脈8例(12.7%)、低血圧5例(7.9%)、嘔吐4例(6.3%)、呼吸抑制2例(3.2%)であった。
注)State Behavioral Scale
例数(%) | 全体(N=63) | 修正在胎45週以上12ヵ月未満(N=14) | 12ヵ月以上24ヵ月未満(N=18) | 2歳以上6歳未満(N=19) | 6歳以上17歳未満(N=12) |
ミダゾラムの投与を必要としなかった被験者 | 49(77.8%) | 11(78.6%) | 12(66.7%) | 15(78.9%) | 11(91.7%) |
95%信頼区間 | 66.0-86.4 | 51.7-93.2 | 43.6-83.9 | 56.1-92.0 | 62.5-100.0 |
<成人の局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静>
17.1.4 成人における国内第III相試験(局所浸潤・伝達麻酔等の局所麻酔下)
局所浸潤・伝達麻酔等の局所麻酔下で手術・処置の予定時間が30分を超えると予想される患者を対象に、プラセボ対照二重盲検比較試験(DEX-301試験:162例)
11)を実施した。本剤を3又は6μg/kg/時で10分間の初期負荷投与後、0.2〜0.7μg/kg/時の範囲で維持投与した。目標鎮静レベルはObserver's Assessment of Alertness/Sedation(OAA/S)スコア=3〜4とした。必要に応じて追加鎮静薬としてプロポフォール、追加鎮痛薬としてフェンタニルを投与できることとし、カテーテルアブレーション症例では、電気的除細動及び焼灼前のフェンタニル投与を必須とした。その結果、治験薬投与中にプロポフォールの追加投与を必要としなかった症例の割合は、プラセボ群で1.9%(1/53)、初期負荷3μg/kg/時群で52.8%(28/53)、初期負荷6μg/kg/時群で57.1%(32/56)であり、プラセボ群に対し、初期負荷3μg/kg/時群及び6μg/kg/時群で有意に高かった(いずれもp<0.001)。
副作用発現率は77.1%(84/109)で、主な副作用は低血圧52例(47.7%)、呼吸抑制46例(42.2%)、徐脈25例(22.9%)、高血圧13例(11.9%)、低酸素症12例(11.0%)であった。
局所浸潤・伝達麻酔等の局所麻酔下での試験(DEX-301) |
治験薬投与中のプロポフォール追加投与 | プラセボ群(N=53) | 初期負荷3μg/kg/時群(N=53) | 初期負荷6μg/kg/時群(N=56) |
なし | 1(1.9%) | 28(52.8%) | 32(57.1%) |
あり | 52(98.1%) | 25(47.2%) | 24(42.9%) |
検定a) | \ | <0.001 | <0.001 |
17.1.5 成人における国内第III相試験(硬膜外・脊髄くも膜下麻酔下)
硬膜外・脊髄くも膜下麻酔下で手術・処置の予定時間が30分を超えると予想される患者を対象に、プラセボ対照二重盲検比較試験(DEX-303試験:119例)
12)を実施した。本剤を1.5、3又は6μg/kg/時で10分間の初期負荷投与後、0.2〜0.7μg/kg/時の範囲で維持投与した。また、0.4μg/kg/時の維持投与速度で10分間の初期投与後、0.2〜0.7μg/kg/時の範囲で維持投与を行う群も設定した。目標鎮静レベルはOAA/Sスコア=3〜4とした。必要に応じて追加鎮静薬としてプロポフォール、追加鎮痛薬としてフェンタニルを投与できることとした。その結果、治験薬投与中にプロポフォールの追加投与を必要としなかった症例の割合は、プラセボ群で22.7%(5/22)、初期投与0.4μg/kg/時群で13.0%(3/23)、初期負荷1.5μg/kg/時群で45.8%(11/24)、初期負荷3μg/kg/時群で68.0%(17/25)、初期負荷6μg/kg/時群で80.0%(20/25)であり、プラセボ群に対し、初期負荷3μg/kg/時群及び6μg/kg/時群で有意に高かった(それぞれp=0.003、p<0.001)。
副作用発現率は84.5%(82/97)で、主な副作用は呼吸抑制39例(40.2%)、徐脈35例(36.1%)、低血圧32例(33.0%)、高血圧11例(11.3%)、低酸素症9例(9.3%)であった。
硬膜外・脊髄くも膜下麻酔下での試験(DEX-303) |
治験薬投与中のプロポフォール追加投与 | プラセボ群(N=22) | 初期投与0.4μg/kg/時群(N=23) | 初期負荷1.5μg/kg/時群(N=24) | 初期負荷3μg/kg/時群(N=25) | 初期負荷6μg/kg/時群(N=25) |
なし | 5(22.7%) | 3(13.0%) | 11(45.8%) | 17(68.0%) | 20(80.0%) |
あり | 17(77.3%) | 20(87.0%) | 13(54.2%) | 8(32.0%) | 5(20.0%) |
検定a) | \ | − | 0.086 | 0.003 | <0.001 |
<小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静>
17.1.6 小児における国際共同第III/IV相試験(MRI検査)
MRI検査のために非挿管、自発呼吸下で、中等度から深度の鎮静を必要とする生後1ヵ月以上17歳未満の小児患者122例(日本人34例を含む)を対象に、無作為化二重盲検用量範囲設定試験(C0801039試験)
13)を実施した。高用量群、中用量群又は低用量群の患者に、本剤を10分間かけて初期負荷投与後、維持投与を開始した(下表参照)。目標鎮静レベルはPediatric Sedation State Scale(PSSS)スコア=2とした。維持投与開始後5分以内に適切な鎮静レベルに到達していない場合は、治験責任医師又は治験分担医師の臨床的評価によりプロポフォール
注)を併用可能とした。
年齢グループ | 高用量群 | 中用量群 | 低用量群 |
初期負荷投与(10分間) | 維持投与 | 初期負荷投与(10分間) | 維持投与 | 初期負荷投与(10分間) | 維持投与 |
生後1ヵ月以上2歳未満 | 9μg/kg/時 | 1.5μg/kg/時 | 6μg/kg/時 | 1μg/kg/時 | 3μg/kg/時 | 0.5μg/kg/時 |
2歳以上17歳未満 | 12μg/kg/時 | 1.5μg/kg/時 | 7.2μg/kg/時 | 1μg/kg/時 | 3μg/kg/時 | 0.5μg/kg/時 |
MRI検査を完了するためにプロポフォール注)の併用を必要としなかった被験者の割合は、年齢グループ併合解析において低用量群で14.3%(6/42例)、高用量群で63.2%(24/38例)であり、高用量群で低用量群と比べて有意に高かった(p<0.001)。
副作用発現頻度は80.3%(98/122例)で、主な副作用は徐脈70例(57.4%)、徐呼吸53例(43.4%)、低血圧24例(19.7%)、高血圧16例(13.1%)、低酸素症5例(4.1%)及び収縮期高血圧5例(4.1%)であった。
注)プロポフォールは小児の非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静の適応は有していない。
年齢グループ | 高用量群 | 中用量群 | 低用量群 | 高用量群vs低用量群 |
n(%)95%信頼区間a) | n(%)95%信頼区間a) | n(%)95%信頼区間a) | オッズ比95%信頼区間b) | p値c) |
生後1ヵ月以上2歳未満 | 9/18(50.0%) (0.26,0.74) | 2/21(9.5%) (0.01,0.30) | 3/20(15.0%) (0.03,0.38) | 0.18 (0.04,0.82) | − |
2歳以上17歳未満 | 15/20(75.0%) (0.51,0.91) | 13/21(61.9%) (0.38,0.82) | 3/22(13.6%) (0.03,0.35) | 0.05 (0.01,0.26) | − |
年齢グループ併合 | 24/38(63.2%) (0.46,0.78) | 15/42(35.7%) (0.22,0.52) | 6/42(14.3%) (0.05,0.29) | 0.10 (0.03,0.29) | <0.001 |
<シリンジ>
20.1 ブリスター包装は使用時まで開封しないこと。
20.2 以下の場合には使用しないこと。
・ブリスター包装が破損している場合
・シリンジから薬液が漏れている場合
・性状その他薬液に異状が認められる場合
・シリンジに破損等の異状が認められる場合
・キャップが外れている場合
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
<プレセデックス静注液200μg「ファイザー」>
<プレセデックス静注液200μg/50mLシリンジ「ファイザー」>
シリンジ操作方法
<各部の名称>
<使用方法>
[1]押子をまっすぐ挿入し、押子接続用部品に軽く突き当てた後、押子を時計回りに回し、しっかりと接続すること(カチッという音がしたら、それ以上押子を回転させないこと)。[押子の接続が適切でない場合、“サイフォニング(自然落下による急速注入)”や“逆流”が起こるおそれがある。また、ガスケットが歪んだり、ガスケットと押子接続用部品の間に隙間があると、エアー混入、液漏れやシリンジポンプの残量警報が発報しないおそれがある。]
[2]キャップを矢印の方向に回して外す。
[3]シリンジポンプにセットする前に、十分注意して外筒内のエアーを抜き取る。
シリンジ先端部に直接手が触れないよう注意し、注入ラインの接合部をしっかりと装着・ロックさせる。
[4]シリンジポンプの取扱説明書に従い、スライダーのフックに確実にセットし、投与する。[正しくセットされていない場合、“サイフォニング”や“逆流”が起こるおそれがある。]
注意:適合するシリンジポンプを使用し、本シリンジが使用可能な設定であることを必ず確認すること。