5.1 十分な診察を実施し、前兆のある又は前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、又は慢性片頭痛であることを確認した上で本剤の適用を考慮すること。
5.2 最新のガイドライン等を参考に、非薬物療法、片頭痛発作の急性期治療等を適切に行っても日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること。
通常、成人にはエレヌマブ(遺伝子組換え)として70mgを4週間に1回皮下投与する。
7.1 本剤投与中は症状の経過を十分に観察し、本剤投与開始後3カ月を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮すること。またその後も定期的に投与継続の要否について検討し、頭痛発作発現の消失・軽減等により日常生活に支障をきたさなくなった場合には、本剤の投与中止を考慮すること。
8.1 本剤は片頭痛の治療に関する十分な知識及び経験を有する医師のもとで使用すること。
8.2 本剤は発現した頭痛発作を緩解する薬剤ではないので、本剤投与中に頭痛発作が発現した場合には必要に応じて頭痛発作治療薬を頓用させること。投与前にこのことを患者に十分に説明しておくこと。
8.3 本剤投与後に、重篤な合併症を伴う便秘が発現する場合があることを患者に説明し、便秘が回復しない又は悪化する場合には医療機関を受診するよう患者に指導すること。特に、便秘の既往歴を有する患者及び消化管運動低下を伴う薬剤を併用している患者では発現リスクが高くなるおそれがあるため注意すること。[
11.1.2参照]
8.4 本剤の自己投与にあたっては、以下の点に留意すること。
・本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。
・自己投与の適用については、その妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。
・自己投与適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理下で慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。
・自己投与を適用する場合は、使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、安全な廃棄方法について指導すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ヒトIgGは胎盤関門を通過することが知られている。生殖発生毒性試験(カニクイザル)において胎盤移行が認められた
1)。なお、臨床用量の40倍の曝露量で実施した生殖発生毒性試験(カニクイザル)において、妊娠、胚胎児又は出生後の発達(生後6カ月まで)に影響は認められなかった
1)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤のヒトの乳汁中への移行及び授乳された乳児への影響は不明である。ヒトIgGは乳汁中へ移行することから、本剤も移行する可能性がある。
9.7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 重篤な過敏症反応(頻度不明)
発疹、血管浮腫及びアナフィラキシーを含む重篤な過敏症反応があらわれることがある。
11.1.2 重篤な便秘(頻度不明)
重篤な合併症(腸閉塞、糞塊、腹部膨満及びイレウス等)を伴う便秘があらわれることがある。多くの症例では、本剤の初回投与後に発現している。[
8.3参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 1%以上 | 1%未満 | 頻度不明 |
| 胃腸障害 | 便秘 | 下腹部痛、上腹部痛、慢性胃炎、出血性腸憩室、排便困難、胃炎、悪心、口内炎 | 口腔内潰瘍形成、口腔粘膜水疱形成 |
| 一般、全身障害および投与部位の状態 | 注射部位反応(紅斑、そう痒感、疼痛、腫脹など) | 異常感、インフルエンザ様疾患、発熱 | |
| 感染症および寄生虫症 | | 帯状疱疹、上咽頭炎 | |
| 臨床検査 | | 白血球数減少、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、好中球数減少 | |
| 筋骨格系および結合組織障害 | | 四肢痛、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス | 筋痙縮 |
| 良性、悪性および詳細不明の新生物(嚢胞およびポリープを含む) | | 乳癌 | |
| 神経系障害 | 傾眠 | 後頭神経痛、振戦 | |
| 精神障害 | | 不安 | |
| 腎および尿路障害 | | 頻尿 | |
| 生殖系および乳房障害 | | 子宮頚部上皮異形成 | |
| 呼吸器、胸郭および縦隔障害 | | 喉頭肉芽腫、逆流性喉頭炎 | |
| 皮膚および皮下組織障害 | | 円形脱毛症、発疹、そう痒性皮疹、蕁麻疹 | そう痒症、脱毛症、丘疹性皮疹、剥脱性発疹、紅斑性皮疹、水疱 |
| 血管障害 | | 高血圧 | |
14.1 薬剤投与前の注意
14.1.1 投与約30分前に冷蔵庫から取り出し、直射日光を避け、室温に戻してから投与すること。
14.1.2 激しく振とうしないこと。
14.1.3 使用前に異物や変色がないことを目視により確認すること。濁りや異物が認められる場合は使用しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 本剤は皮下にのみ投与すること。
14.2.2 注射部位は上腕部、腹部又は大腿部とし、同一部位への反復投与は行わないこと。皮膚が敏感なところ、挫傷、発赤又は硬結している部位への注射は避けること。
14.2.3 本剤は1回使用の製剤であり、再使用しないこと。
14.2.4 投与予定日に投与できなかった場合は、可能な限り速やかに投与を行い、以降はその投与日を起点として4週間に1回の間隔で投与すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 本剤を4週間に1回投与された反復性片頭痛及び慢性片頭痛患者600例において、抗エレヌマブ抗体の産生が22例(3.7%)に認められた。中和抗体は認められなかった。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人にエレヌマブ21mg、70mg又は140mgを単回皮下投与
注)したときの血清中エレヌマブの濃度推移を図1に、薬物動態パラメータを表1にそれぞれ示す
2)。
図1 健康成人における血清中エレヌマブ濃度−時間推移(平均値+標準偏差)
表1 健康成人にエレヌマブを皮下投与したときのエレヌマブの薬物動態パラメータ
| 用量 | N | tmax(day) | Cmax(μg/mL) | AUClast(day・μg/mL) |
| 21mg | 6 | 7.0(3.0-12) | 1.43(0.38) | 33.6(10.8) |
| 70mg | 6 | 5.6(4.0-7.0) | 6.13(0.56) | 178(33) |
| 140mg | 6 | 4.0(3.0-11) | 12.6(3.9) | 461(104)a |
16.1.2 反復投与
反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者にエレヌマブを4週間に1回、70mgを反復皮下投与したときのエレヌマブの血清中トラフ濃度は表2のとおりであった
3)。
表2 反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者にエレヌマブを4週間に1回、70mgを反復皮下投与したときのエレヌマブの血清中トラフ濃度(μg/mL)
| 用量 | | 4週間後 | 8週間後 | 12週間後 | 24週間後 |
| 70mg | 平均値 | 4.14 | 6.11 | 6.94 | 8.44 |
| 標準偏差 | 1.36 | 2.08 | 2.49 | 3.07 |
| 例数 | 129 | 128 | 128 | 127 |
16.2 吸収
母集団薬物動態解析
4)において、健康成人にエレヌマブ70mg又は140mgを単回皮下投与
注)したときの絶対バイオアベイラビリティは82%と推定された(外国人データ)。
16.3 分布
エレヌマブ140mgを単回静脈内投与
注)したところ、終末相の分布容積の平均値(標準偏差)は3.86(0.77)Lと推定された
5)(外国人データ)。
16.5 排泄
エレヌマブには二種の消失経路がある。低濃度では主に標的(CGRP-R)との飽和性の結合による経路を介し、高濃度では主にタンパク質の異化作用により消失する
6)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
母集団薬物動態解析
4)において、軽度(eGFR:50〜80mL/min/1.73m
2以上)又は中等度(30〜50mL/min/1.73m
2)の腎機能障害患者と健康成人(eGFR:80mL/min/1.73m
2以上)との間で、エレヌマブの薬物動態に差は認められなかった(外国人データ)。
16.6.2 肝機能障害患者
肝機能障害患者におけるエレヌマブの薬物動態に関する検討は行っていない。モノクローナル抗体であるエレヌマブは主にタンパク質の異化作用により消失することから、肝機能障害はエレヌマブのクリアランスに影響しないと考えられる。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 経口避妊薬
健康成人女性を対象とした非盲検薬物相互作用試験において、エレヌマブ(140mg皮下、単回投与)
注)は、併用した経口避妊薬(エチニルエストラジオール及びノルゲスチメートを含む)の薬物動態に影響を及ぼさなかった
7)(外国人データ)。
16.7.2 スマトリプタン
健康成人を対象としたランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験で、エレヌマブ(140mg静脈内、単回投与)
注)とスマトリプタン(1時間間隔で6mgを2回皮下投与)を併用したところ、スマトリプタン単独と比較して、安静時の血圧に対する影響は認められなかった
8)(外国人データ)。また、エレヌマブはスマトリプタンの薬物動態に影響を及ぼさなかった。
注)本剤の承認用法・用量は70mgを4週間に1回皮下投与である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
ベースラインの月間片頭痛日数(MMD)が4日以上、月間頭痛日数(MHD)が15日未満の成人の反復性片頭痛患者(473例)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験
9)において、エレヌマブ28mg、70mg、140mg又はプラセボを4週間に1回6カ月間(24週間)投与した。二重盲検投与期に続き、非盲検投与期としてエレヌマブ70mg又は140mgを4週に1回、最長76週間投与した。
主要評価項目である投与開始から4、5、6カ月目における平均のMMDのベースラインからの変化量は表1の通りであり、エレヌマブ28mg群、70mg群及び140mg群でプラセボ群との差は統計学的に有意な片頭痛日数の改善が認められた
注)。
非盲検投与期に70mgのみ投与された患者におけるMMDのベースラインからの変化量を図1に示す。
表1 国内第II相試験の二重盲検投与期におけるMMD(日)のベースラインからの変化量
| | プラセボ (N=136) | エレヌマブ |
28mg (N=66) | 70mg (N=135) | 140mg (N=136) |
| ベースラインのMMD(日)a | 7.67 (2.34) | 7.75 (2.08) | 7.84 (2.31) | 8.18 (2.40) |
| 4、5、6カ月目における平均MMDのベースラインからの変化量(日)b,c | 0.06 (−0.46,0.58) | −1.19 (−1.91,−0.47) | −2.25 (−2.78,−1.73) | −1.83 (−2.35,−1.31) |
| 4、5、6カ月目における平均MMDのプラセボ群との差(日)b,c | − | −1.25 (−2.10,−0.41) | −2.31 (−3.00,−1.62) | −1.89 (−2.58,−1.20) |
| p値c | − | 0.004 | <0.001 | <0.001 |
図1 国内第II相試験の非盲検投与期におけるMMD(日)のベースラインからの変化(平均値±95%信頼区間)
6カ月間の二重盲検投与期における副作用の発現割合注)は、474例中、エレヌマブ28mg群で7.6%(5/66例)、エレヌマブ70mg群で12.6%(17/135例)、エレヌマブ140mg群で9.5%(13/137例)、プラセボ群で4.4%(6/136例)であった。エレヌマブ各投与群で発現割合が1%以上の副作用は、エレヌマブ28mg群で口内炎1.5%(1/66例)、注射部位そう痒感1.5%(1/66例)、上咽頭炎1.5%(1/66例)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加1.5%(1/66例)、筋肉疲労1.5%(1/66例)、感覚鈍麻1.5%(1/66例)、エレヌマブ70mg群で便秘1.5%(2/135例)、注射部位反応1.5%(2/135例)、白血球数減少1.5%(2/135例)、傾眠2.2%(3/135例)、エレヌマブ140mg群で便秘3.6%(5/137例)、注射部位紅斑1.5%(2/137例)であった。
非盲検投与期におけるエレヌマブ投与による副作用の発現割合は、8.9%(41/459例)であり、発現割合が1%以上の副作用は、注射部位紅斑2.0%(9/459例)、注射部位反応1.1%(5/459例)であった。
17.1.2 国内第III相試験
ベースラインのMMDが4日以上、MHDが15日未満の成人の反復性片頭痛患者及びベースラインのMMDが8日以上、MHDが15日以上の成人の慢性片頭痛患者(それぞれ159例及び102例、合計261例)を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験
3)において、エレヌマブ70mg又はプラセボを4週間に1回6カ月間(24週間)投与した。
主要評価項目である投与開始から4、5、6カ月目における平均のMMDのベースラインからの変化量は表2の通りであり、エレヌマブ70mg群のプラセボ群との差は統計学的に有意であった
注)。反復性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者での各サブグループの4、5、6カ月目における平均MMDのエレヌマブ70mg群とプラセボ群との差(点推定値)は、−1.0日を下回り(反復性片頭痛患者:−1.67日 95%信頼区間[−2.56,−0.78]、慢性片頭痛患者:−1.57日 95%信頼区間[−3.39,0.24])、臨床的に意義のある差が認められた。
表2 国内第III相試験の二重盲検投与期におけるMMD(日)のベースラインからの変化量
| | プラセボ (N=131) | エレヌマブ70mg (N=130) |
| ベースラインのMMD(日)a | 11.84 (5.70) | 12.40 (5.99) |
| 4、5、6カ月目における平均MMDのベースラインからの変化量(日)b,c | −1.98 (−2.72,−1.24) | −3.60 (−4.36,−2.85) |
| 4、5、6カ月目における平均MMDのプラセボ群との差(日)b,c | − | −1.62 (−2.52,−0.73) |
| p値c | − | <0.001 |
6カ月間の二重盲検投与期における副作用の発現割合注)は、261例中、70mg群で7.7%(10/130例)、プラセボ群で3.8%(5/131例)であった。エレヌマブ70mg群で発現割合が1%以上の副作用は、注射部位紅斑1.5%(2/130例)であった。
注)本剤の承認用法・用量は、70mgを4週間に1回皮下投与である。
20.1 凍結を避けて2〜8℃で保存すること。
20.2 遮光を保つため、本剤は外箱に入れた状態で保存すること。外箱開封後は遮光して保存すること。
20.3 冷蔵庫から取り出した後は、30℃を超えない場所で外箱から出さずに保存し、7日以内に使用すること。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。