本剤の適用は、既存治療を行っても血中フェニルアラニン濃度のコントロールが不十分な場合に限り考慮すること。
通常、成人にはペグバリアーゼ(遺伝子組換え)として1日1回20mgを維持用量とし、皮下投与する。ただし、週1回2.5mgを開始用量として、以下の漸増法に従い、段階的に増量する。1日1回20mgを一定期間投与しても効果が不十分な場合は、40mg又は60mgに段階的に増量できるが、最大用量は60mgである。なお、患者の状態に応じて適宜増減する。
1日1回20mgまでの漸増法
用量・投与頻度 | 投与期間 |
2.5mgを週1回投与 | 4週間以上 |
2.5mgを週2回投与 | 1週間以上 |
10mgを週1回投与 | 1週間以上 |
10mgを週2回投与 | 1週間以上 |
10mgを週4回投与 | 1週間以上 |
10mgを1日1回投与 | 1週間以上 |
20mgを1日1回投与 | − |
7.1 維持用量に達するまでの間は、食事からのフェニルアラニン摂取量を一定に保つよう管理し、月1回以上の頻度で血中フェニルアラニン濃度を測定し、過敏症反応の発現等の患者の状態に留意して慎重に漸増すること。その後も患者の状態を観察し、定期的に血中フェニルアラニン濃度を測定して血中フェニルアラニン濃度を適切に管理すること。[
8.1、
8.2参照]
7.2 40mgへの増量は、1日1回20mgを原則24週間以上投与しても効果が不十分な場合に考慮することができる。患者の状態に応じて1日1回20mgを12週間以上投与しても効果が不十分な場合にも40mgへの増量を考慮することは可能であるが、その必要性については個々の患者の状態を踏まえて慎重に判断すること。
60mgへの増量は、1日1回40mgを16週間以上投与しても効果が不十分な場合に考慮することができる。
一定期間投与しても十分な効果が得られない場合は、有益性と危険性を考慮して投与継続の必要性を判断すること。
7.3 本剤の投与によりアナフィラキシーを含む過敏症反応が発現することがある。症状を軽減させるため、抗ヒスタミン剤及び必要に応じて解熱鎮痛剤を本剤投与開始2〜3時間前を目安に前投与すること。前投与は、少なくとも維持用量に達するまでの間は行い、維持用量での投与においても患者の状態に応じて行うこと。[
1.1、
8.1参照]
7.4 投与開始に際しては緊急時に十分な対応をとれる医師の監督のもとで本剤を投与すること。投与後少なくとも1時間は患者を十分に観察すること。[
1.1、
8.1参照]
8.1 アナフィラキシーを含む過敏症反応が発現することがあるため、以下の点に注意すること。[
1.1、
1.2、2.、
7.1、
7.3、
7.4、
11.1.1、
15.1参照]
・緊急時に十分な対応をとれる体制を整えた上で、本剤の投与を開始すること。
・本剤投与開始前にアナフィラキシーの徴候・症状、それらの症状が発現した場合の対処方法等を患者に指導し、患者が理解したことを確認した上で本剤の投与を開始すること。
・本剤による治療中は自己注射可能なアドレナリン注射剤を常時携帯するよう、患者に指導すること。
・投与後少なくとも1時間はアナフィラキシー等の発現に特に注意すること。
・過敏症反応の発現は維持用量に達するまでの間で特に多い傾向がみられるが、その後もアナフィラキシーを含む過敏症反応が発現することがあるので、注意すること。
・過敏症反応が発現した場合は、本剤の減量又は中止を含め、重症度に応じた適切な処置を行うこと。アナフィラキシーが発現した場合は、適切な薬物治療や緊急処置を行うこと。
・重度の過敏症反応(重度のアナフィラキシー等)が発現した場合は、本剤を再投与しないこと。過敏症反応(重度の事象を除く)により本剤の投与を中止した場合の本剤の再投与については、有益性と危険性を考慮し決定すること。
・過敏症反応の回復後、本剤を再投与する場合は、緊急時に十分な対応をとれる医師の監督のもとで抗ヒスタミン剤及び必要に応じて解熱鎮痛剤の前投与を行った上で本剤を投与すること。また、投与後少なくとも1時間は患者を十分に観察すること。
8.2 本剤投与により低フェニルアラニン血症に至るおそれがあるので、血中フェニルアラニン濃度を定期的に測定し、管理目標の範囲を下回る血中フェニルアラニン濃度の場合は、食事からのタンパク摂取量の増加及び必要に応じて本剤を減量又は中止すること。[
7.1参照]
8.3 重度の関節痛、持続性の関節痛があらわれることがあるので、発現した場合は、解熱鎮痛剤(NSAIDs等)、副腎皮質ホルモン製剤等による治療及び必要に応じて本剤を減量又は中止すること。
8.4 本剤に関する十分な知識と、フェニルケトン尿症の治療に関する十分な知識・経験を持ち、本剤のリスク等について十分に管理・説明できる医師のもとで処方・使用すること。
8.5 本剤の自己注射にあたっては、以下の点に留意すること。
・投与法について十分な教育訓練を実施したのち、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。
・すべての器具の安全な廃棄方法について指導を徹底すること。
・本剤の注射方法に関する説明書を必ず読むよう指導すること。
・アナフィラキシーの徴候・症状、それらの症状が発現した場合の対処方法等を理解した家族等が、投与後少なくとも1時間は患者の傍らで観察するよう指導すること。少なくとも維持用量に達するまでの間は当該観察を行い、維持用量での投与においても当該観察を行うことが望ましい。再投与後の一定期間等の特に慎重な観察が必要と考えられる期間においては、当該観察を行うこと。
9.4 生殖能を有する者
妊娠可能な女性に対しては、原則として本剤投与中及び投与中止後1カ月間は適切な避妊を行うよう指導すること。妊娠を希望する女性に本剤を投与する場合は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみとすること。[
9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ただし、食事療法を含む他の治療法では血中フェニルアラニン濃度のコントロールが困難な患者であって、本剤投与により安定した血中フェニルアラニン濃度のコントロールが期待できる場合にのみ考慮し、妊娠期に応じた栄養素摂取量や食事の変動にも留意して血中フェニルアラニン濃度が管理目標の範囲内に厳密にコントロールされるよう、慎重に管理すること。
動物試験(ラット及びウサギ)において、本剤(臨床用量での血漿中トラフ濃度比較においてラットで約13.7〜20.7倍、ウサギで27.7〜41.0倍)を投与した際、胎児毒性(ラット:骨格変異、ウサギ:外表奇形、内臓奇形、骨格奇形、骨格変異)が認められた。これらの所見は母動物の低フェニルアラニン血症を伴うものであった。[
9.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
ラットで乳汁中への移行が報告されている。ヒトでの乳汁移行に関するデータ及びヒトの哺乳中の児への影響に関するデータはない。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 アナフィラキシー(5.4%)、血清病(2.4%)
アナフィラキシー、血清病等の全身性の過敏症反応があらわれることがある。発現した場合は重症度に応じた適切な処置を行い、アナフィラキシーが発現した場合は、本剤の投与を中止し、適切な薬物治療や緊急処置を行うこと。臨床試験において、アナフィラキシー発現後に抗ペグバリアーゼIgE抗体が認められた被験者はいなかった。[
1.1、
1.2、
8.1、
10.2、
15.1参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<維持用量に達するまでの期間注1)>
| 15%以上 | 1%以上〜15%未満 | 1%未満 |
血液およびリンパ系障害 | | リンパ節症 | |
一般・全身障害および投与部位の状態 | 注射部位反応注2)(90%)、疲労 | | |
免疫系障害 | 過敏症反応注3)(65%) | 血管浮腫 | |
神経系障害 | 頭痛(42%)、浮動性めまい | | |
呼吸器、胸郭および縦隔障害 | 咳嗽 | 呼吸困難 | |
胃腸障害 | 腹痛、悪心、嘔吐 | 下痢 | |
皮膚および皮下組織障害 | 発疹(35%)、蕁麻疹、そう痒症 | 脱毛、紅斑、斑状丘疹性皮疹 | 皮膚剥脱 |
筋骨格系および結合組織障害 | 関節痛(79%) | 筋肉痛、関節腫脹、筋骨格硬直、関節硬直 | |
臨床検査 | 補体因子C3低下(75%)、補体因子C4低下(66%)、CRP上昇注4) | 低フェニルアラニン血症注5) | |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<維持用量に達した後の期間注1)>
| 15%以上 | 1%以上〜15%未満 | 1%未満 |
血液およびリンパ系障害 | リンパ節症 | | |
一般・全身障害および投与部位の状態 | 注射部位反応注2)(65%)、疲労 | | |
免疫系障害 | 過敏症反応注3)(61%) | 血管浮腫 | |
神経系障害 | 頭痛(47%)、浮動性めまい | | |
呼吸器、胸郭および縦隔障害 | 咳嗽 | 呼吸困難 | |
胃腸障害 | 腹痛、悪心、嘔吐、下痢 | | |
皮膚および皮下組織障害 | 脱毛、蕁麻疹、発疹、そう痒症 | 紅斑、斑状丘疹性皮疹、皮膚剥脱 | |
筋骨格系および結合組織障害 | 関節痛(67%) | 筋肉痛、関節腫脹、筋骨格硬直、関節硬直 | |
臨床検査 | 低フェニルアラニン血症注5)(63%)、補体因子C3低下(81%)、補体因子C4低下(41%) | CRP上昇注4) | |
14.1 薬剤投与前の注意
注入器の破損又は異常がないこと、薬液の変色や浮遊物がないことを確認すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 皮下注射は、大腿部、腹部、上腕部又は臀部に行うこと。注射箇所は毎回変更し、挫傷、発赤又は硬結している部位等への注射は避けること。
14.2.2 1回の投与量が20mgを超える場合、1日の中で分割投与はせず、同じ時間に注射箇所を変えて複数回注射すること。各注射箇所は5cm以上離すこと。
14.2.3 本剤は単回使用の製剤である。
15.1 臨床使用に基づく情報
国内外の臨床試験(297例)で抗薬物抗体の結果が得られた被験者のうち、総抗ペグバリアーゼ抗体は99.6%(275/276例)に認められ、ほとんどが投与後1カ月までに発現し、その後も継続して認められた。抗フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)IgM抗体及び抗PAL IgG抗体はそれぞれ99.3%(294/296例)及び97.6%(289/296例)に認められた。抗PAL IgM抗体はほとんどが投与後2カ月までに発現し、その後は徐々に低下したものの継続して認められ、抗PAL IgG抗体はほとんどが投与後4カ月までに発現し、その後も継続して認められた。抗ポリエチレングリコール(PEG)IgM抗体及び抗PEG IgG抗体はそれぞれ97.6%(289/296例)及び98.0%(290/296例)に認められ、投与後1〜3カ月の間で最も発現し、徐々に低下した。中和抗体は89.5%(265/296例)に認められ、ほとんどが投与後6カ月までに発現し、その後も継続して認められた。各抗薬物抗体の抗体価は、長期投与に伴い抗体価が増加する傾向は認められず、一定で推移した。なお、補体成分C3及びC4の低下とともに循環免疫複合体は投与後3〜9カ月の間に最大となり、その後は徐々にベースライン付近まで回復した。[
8.1、
10.2、
11.1.1参照]
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 ラットの反復投与毒性試験において、本剤(臨床用量(40mg)でのCmax比較において9.3倍、AUC比較において1.4倍)を投与した際に、腎尿細管細胞の空胞化、並びに肝臓、脾臓、精巣、副腎皮質、腸間膜リンパ節及び下顎リンパ節における組織球の空胞化が認められた。これらの空胞化形成は、PEGの蓄積に関連した変化と考えられ、腎尿細管細胞の空胞化以外は回復性が認められた。なお、腎尿細管細胞の空胞化による腎機能障害の徴候は認められなかった。
15.2.2 サルの反復投与毒性試験において、本剤(臨床用量(40mg)でのCmax比較において2.9倍、AUC比較において3.2倍)を投与した際に、複数の器官で小動脈及び細動脈の炎症が認められた。いずれの所見も本薬の投与による免疫介在性の炎症反応に起因した可能性が考えられ、回復性が認められた。
16.1 血中濃度
外国人フェニルケトン尿症患者(15例)に本剤0.01、0.03又は0.1mg/kgを単回皮下投与したときの血漿中濃度推移及び本薬の薬物動態パラメータは以下のとおりであった。
表1 本剤を単回皮下投与したときの本薬の薬物動態パラメータ
用量(mg/kg) | Cmax(μg/mL) | AUC0-t(μg・h/mL) | tmax(h) | t1/2(h) |
0.01(5例) | 0.073±0.044 | 6.04±4.45 | 84[60,144] | 59.5±23.6a) |
0.03(5例) | 0.298±0.101 | 35.50±12.53 | 96[60,168] | 45.8±23.6a) |
0.1(5例) | 1.828±0.152 | 229.95±62.78a) | 96[60,144] | 113,126b) |
外国人フェニルケトン尿症患者(32例)に本剤20mg又は40mgを1日1回反復皮下投与したときの定常状態における本薬の薬物動態パラメータは以下のとおりであった。
表2 本剤を反復皮下投与したときの本薬の薬物動態パラメータ
用量(mg/kg) | Cmax(μg/mL) | AUC0-t(μg・h/mL) | tmax(h) | CL/F(L/h) | V/F(L) |
20(17例) | 14.04±16.25 | 262.18±280.38 | 8.0[0,24] | 0.39±0.87 | 26.4±64.8b) |
40(15例) | 16.69±19.46 | 246.78±338.59a) | 8.2[0,12] | 1.25±2.46a) | 22.2±19.7c) |
16.4 代謝
本剤は、免疫介在性の機序による薬物除去を受けると考えられ、タンパク質部分はペプチド及びアミノ酸に分解されると推定される。
18.1 作用機序
本剤は、遺伝子組換えフェニルアラニンアンモニアリアーゼ類縁体であり、テトラヒドロビオプテリン非依存的にフェニルアラニンをアンモニア及びケイ皮酸に代謝する。
18.2 効力を裏付ける試験
本剤をフェニルケトン尿症モデルマウスに皮下投与したところ、血漿中フェニルアラニン濃度が低下した。
凍結を避けること。冷蔵庫(2〜8℃)で保管できない場合、室温で保管することもできるが、1カ月以内に使用すること。また、室温で保管した後は冷蔵庫に戻さないこと。
21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
21.2 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、再審査期間中の全投与症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
<パリンジック皮下注2.5mg>
プレフィルドシリンジ1本 プレフィルドシリンジ2.5mg
<パリンジック皮下注10mg>
プレフィルドシリンジ1本 プレフィルドシリンジ10mg
<パリンジック皮下注20mg>
プレフィルドシリンジ1本 プレフィルドシリンジ20mg
26.1 製造販売元
BioMarin Pharmaceutical Japan株式会社
東京都新宿区新宿四丁目1番6号