1.1 本剤は,緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで,本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、本剤による治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。
2.1 本剤の成分、他のインターフェロン製剤又はワクチン等生物学的製剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2.3 自己免疫性肝炎の患者[肝炎が悪化することがある。]
2.4 非代償性肝疾患の患者[症状が悪化することがある。]
臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「17.臨床成績」項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[
17.1.1参照]
通常、成人には、ロペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)(インターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)として)1回100μg(他の細胞減少療法薬を投与中の場合は50μg)を開始用量とし、2週に1回皮下投与する。
患者の状態により適宜増減するが、増量は50μgずつ行い、1回500μgを超えないこと。
7.1 本剤投与中は、定期的に血液学的検査を実施し、好中球数、血小板数、ヘモグロビン量を確認し、用量を調整すること。
7.2 本剤の投与中に副作用があらわれた場合は、以下の基準を参考に、本剤を休薬又は減量すること。
本剤の用量調節基準
副作用 | 程度注) | 用量調節及び処置 |
好中球減少 | 好中球数750/mm3未満 | 用量を50μg減量することを考慮する。 |
好中球数500/mm3未満 | グレード1以下に回復するまで休薬する。回復後に投与を再開する場合、休薬前の用量から50μg減量する。 |
上記以外の副作用 | グレード2 | 用量を50μg減量することを考慮する。 |
グレード3以上 | グレード1以下に回復するまで休薬する。回復後に投与を再開する場合、休薬前の用量から50μg減量する。 |
8.1 過量投与を防ぐため、あらかじめプレフィルドシリンジ内の過量の薬液を廃棄して、シリンジ内に残った必要投与量を投与すること。
8.2 抑うつ、自殺企図をはじめ、躁状態、攻撃的行動、不眠、不安、焦燥、興奮、攻撃性、易刺激性等の精神神経症状発現の可能性について患者及びその家族に十分理解させ、これらの症状があらわれた場合には直ちに連絡するように注意を与えること。[
1.2、
9.1.1、
11.1.1参照]
8.3 意識障害、失神、昏睡、錯乱等を発現することがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転、機械の操作になるべく従事させないよう注意すること。[
11.1.2参照]
8.5 糖尿病が増悪又は発症することがあるので、投与開始前及び投与中は定期的に検査(血糖値、尿糖等)を行うこと。[
9.1.5、
11.1.4参照]
8.6 心臓障害があらわれることがあるので、定期的に心電図検査を行うなど観察を十分に行うこと。[
9.1.6、
11.1.5参照]
8.7 間質性肺炎があらわれることがあるので、発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意すること。間質性肺炎の既往歴のある患者に使用するにあたっては、特に定期的に聴診、胸部X線等の検査を行うなど、十分に注意すること。また、咳嗽、呼吸困難等があらわれた場合には直ちに連絡するよう患者に対し注意を与えること。[
1.2、
9.1.7、
11.1.6参照]
8.8 網膜症等の眼障害があらわれることがあるので、定期的に眼底検査を行うなど観察を十分に行うこと。また、視力低下、視野中の暗点が出現した場合は速やかに医師の診察を受けるよう患者を指導すること。[
11.1.7参照]
8.9 溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑病があらわれることがあるので、定期的に血液検査(血小板数、赤血球数、末梢血液像等)及び腎機能検査を行うなど観察を十分に行うこと。[
11.1.17参照]
8.10 過敏症等の反応を予測するため十分な問診を行うとともに、あらかじめ本剤によるプリック試験又は皮内反応試験を行うことが望ましい。[
11.1.18参照]
8.11 本剤の投与初期において、一般に発熱がみられる。その程度は個人差が著しいが、高熱を呈する場合もあるので、電解質を含む水分補給等、発熱に対してあらかじめ十分に配慮すること。
8.12 本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導の下で実施すること。
自己投与の適用後、感染症等の本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理下で慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。
使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、安全な廃棄方法について指導を徹底すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 中枢・精神神経障害のある患者又はその既往歴のある患者
9.1.2 痙攣発作のある患者
9.1.3 甲状腺機能障害又はその既往歴のある患者
9.1.4 骨髄機能抑制のある患者
9.1.5 糖尿病の患者又はその既往歴、家族歴のある患者、耐糖能障害のある患者
9.1.6 心疾患のある患者又はその既往歴のある患者
9.1.7 間質性肺炎のある患者又はその既往歴のある患者
9.1.8 自己免疫疾患(ただし自己免疫性肝炎を除く)又はその素因のある患者
定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、慎重に投与すること。疾患が増悪又は顕性化することがある。[
11.1.16参照]
9.1.9 高血圧症の患者
9.1.10 アレルギー素因のある患者
9.2 腎機能障害患者
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝機能障害のある患者(ただし非代償性肝疾患の患者又は自己免疫性肝炎の患者を除く)
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後一定期間は適切な避妊法を用いるように指導すること。[
9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。本剤のカニクイザルを用いた胚・胎児発生に関する実験において、AUC比較で臨床曝露量未満に相当する用量から流産及び胚死亡が認められている
1)。[
9.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。他のインターフェロン製剤においてラットで乳汁中への移行が認められている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を十分に観察しながら、慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
相互作用序文
ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)はCYP1A2及び2D6の阻害作用を有する。
薬物代謝酵素用語
CYP1A2
薬物代謝酵素用語
CYP2D6
10.1 併用禁忌
小柴胡湯(ツムラ小柴胡湯、クラシエ小柴胡湯、テイコク小柴胡湯エキス等)[2.2参照] | 他のインターフェロン製剤で、間質性肺炎があらわれることが報告されている。 | 作用機序は不明であるが、間質性肺炎の発現例には小柴胡湯との併用例が多い。 |
10.2 併用注意
CYP1A2の基質 テオフィリン チザニジン イミプラミン等 | これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがある。 | ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)はCYP1A2の阻害作用を有することから、本剤の併用によりこれらの薬剤の代謝が抑制され、これら薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
CYP2D6の基質 メトプロロール アミトリプチリン メトクロプラミド等 | これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがある。 | ペグインターフェロン アルファ-2b(遺伝子組換え)はCYP2D6の阻害作用を有することから、本剤の併用によりこれらの薬剤の代謝が抑制され、これら薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 |
アンチピリン ワルファリン | 他のインターフェロン製剤との併用で左記薬剤の血中濃度が高まることが報告されている。 | 肝臓での各種医薬品の代謝を抑制することがある。 |
ジドブジン | 他のインターフェロン製剤との併用で骨髄機能抑制作用が増強され、白血球減少等の血球減少が増悪することがある。 | 作用機序は不明であるが、ともに骨髄機能抑制作用を有するためと考えられている。 |
免疫抑制療法 | 他のインターフェロン製剤との併用で移植患者(腎・骨髄移植等)における免疫抑制療法の効果が弱まることがある。 | 移植片に対する拒絶反応が誘発されると考えられている。 |
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 抑うつ・うつ病、自殺企図、躁状態、攻撃的行動(いずれも頻度不明)
抑うつ、自殺企図があらわれることがある。また、躁状態、攻撃的行動があらわれ、他害行為に至ることがある。不眠、不安、焦燥、興奮、攻撃性、易刺激性等があらわれた場合には投与を中止するなど、投与継続の可否について慎重に検討すること。また、これらの症状が認められた場合には、投与終了後も観察を継続することが望ましい。[
1.2、
8.2、
9.1.1参照]
11.1.2 意識障害、失神、見当識障害、痙攣、昏睡、せん妄、錯乱、幻覚、認知症様症状(特に高齢者)(いずれも頻度不明)
11.1.3 甲状腺機能障害
甲状腺機能亢進(0.1%未満)又は低下(2.6%)が増悪又は発症することがある。甲状腺機能の管理が難しい場合には、投与の中止を考慮すること。[
8.4、
9.1.3参照]
11.1.4 糖尿病(頻度不明)
糖尿病が増悪又は発症することがあり、糖尿病性ケトアシドーシス、昏睡に至ることがある。[
8.5、
9.1.5参照]
11.1.5 心臓障害(頻度不明)
心筋症、心不全、心筋梗塞、狭心症、不整脈(心房細動、心室性頻脈等)等があらわれることがある。[
8.6、
9.1.6参照]
11.1.6 間質性肺炎(頻度不明)
発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状、また、胸部X線異常があらわれた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。[
1.2、
8.7、
9.1.7参照]
11.1.7 眼障害
網膜症(頻度不明)等があらわれることがあるので、網膜出血、軟性白斑及び糖尿病網膜症の増悪に注意すること。[
8.8参照]
11.1.8 肝機能障害(23.7%)
黄疸や著しいトランスアミナーゼの上昇を伴う肝機能障害があらわれた場合には速やかに投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
8.4、
9.3.1参照]
11.1.9 急性腎障害(頻度不明)
急性腎障害、ネフローゼ症候群等があらわれることがある。[
8.4、
9.2.1参照]
11.1.10 皮膚障害(頻度不明)
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)等の重篤な皮膚障害があらわれることがある。
11.1.11 感染症(頻度不明)
易感染性となり、敗血症、肺炎等があらわれることがある。
11.1.12 消化管障害(頻度不明)
消化管出血(下血、血便等)、消化性潰瘍、虚血性大腸炎等があらわれることがある。
11.1.13 骨髄抑制
白血球数減少(3.2%)、血小板数減少(1.9%)、汎血球減少症(頻度不明)、無顆粒球症(頻度不明)、白血球減少症(7.0%)、血小板減少症(12.1%)、貧血(6.4%)等があらわれることがある。[
8.4、
9.1.4参照]
11.1.14 出血
11.1.15 血栓塞栓症(頻度不明)
11.1.16 自己免疫疾患(頻度不明)
自己免疫現象によると思われる症状・徴候[肝炎、溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、血管炎、フォークト・小柳・原田病等]があらわれることがある。[
9.1.8参照]
11.1.17 溶血性尿毒症症候群(HUS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)(頻度不明)
血小板減少、貧血、腎不全を主徴とするHUS、TTPがあらわれることがある。[
8.9参照]
11.1.18 過敏症
ショック(頻度不明)等があらわれることがあるので、不快感、口内異常、ぜん鳴、眩暈、便意、発汗、血圧低下等があらわれた場合には投与を直ちに中止すること。[
8.10参照]
注)国内第II相試験(A19-201試験)
2)及び海外第III相試験(PROUD-PV試験)
4)の結果に基づき頻度を算出した。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 1〜5%未満 | 1%未満 |
全身症状 | インフルエンザ様疾患(9.6%)、疲労(11.5%)、発熱(6.4%) | 倦怠感 | 悪寒、疼痛 |
精神・神経系 | | 気分動揺、頭痛、浮動性めまい、傾眠 | 感情的苦悩、気分変化、神経根障害 |
肝臓 | γ-GTP上昇(9.6%) | | 血中アルカリフォスファターゼ上昇 |
循環器 | | | 動悸、心室壁運動低下 |
消化器 | 下痢(5.8%) | 腹痛、悪心、便秘 | 上腹部痛、口内乾燥 |
皮膚 | 脱毛症(14.1%)、そう痒症(6.4%) | 発疹、湿疹、紅斑、乾皮症 | 多汗症、光線過敏性反応、全身性そう痒症 |
神経・筋 | 筋肉痛(8.3%)、関節痛(6.4%) | 四肢痛、筋骨格痛 | 骨痛、筋骨格系胸痛 |
呼吸器 | | | 咳嗽、咽喉刺激感、労作性呼吸困難 |
眼 | | | ドライアイ、霧視 |
投与部位 | | | 注射部位疼痛、注射部位そう痒感 |
その他 | 尿中β2ミクログロブリン増加(20.7%) | 血中甲状腺刺激ホルモン増加、抗甲状腺抗体陽性 | 血中乳酸脱水素酵素増加、血中尿酸増加、無痛性甲状腺炎 |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤は他の製剤との混注を行わないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 注射部位を腹部、大腿等広範に求め、同一部位に短期間に繰り返し投与しないこと。
15.1 臨床使用に基づく情報
臨床試験において、本剤に対する抗体の産生が報告されている。
18.1 作用機序
ロペグインターフェロン アルファ-2bは、I型インターフェロン(IFN)受容体に結合し、ヤヌスキナーゼ(JAK)1及びチロシンキナーゼ(TYK)2の活性化を介して、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を増加し、IFN誘導遺伝子の発現を増加させ、細胞周期の停止及びアポトーシス誘導を引き起こすこと等により、腫瘍増殖抑制作用を示すと推測されている。しかし、真性多血症(PV)患者での効果の発現機序については不明である。
18.2 腫瘍細胞増殖抑制作用
ロペグインターフェロン アルファ-2bは、in vitroにおいて、変異型JAK2(V617F)を有するヒトPV患者由来造血前駆細胞により産生される赤血球数を減少させた。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
26.1 製造販売元
ファーマエッセンシアジャパン株式会社
〒107-0051
東京都港区元赤坂1-3-13 赤坂センタービル12階