一次胆汁酸のアミノ酸抱合不全をきたす以下の欠損症は本剤の効果は期待できない。
○bile acid-CoA:amino acid N-acyltransferase(BAAT)欠損症
○bile acid CoA ligase(SLC27A5,BACL)欠損症
通常、コール酸として1日量5〜15mg/kgを1回又は数回に分けて食事中に経口投与する。なお、患者の状態に応じて適宜増減すること。
7.1 通常、本剤は1日1回又は1日2回に分けて投与するが、乳幼児等で必要な場合には1日3回以上に分けて投与できる。なお、投与の時間帯は原則一定とすること。
7.2 定期的に肝機能(AST、ALT、γ-GTP等)や総胆汁酸濃度等を確認し、用量調整を行うこと。また、必要に応じて、血清又は尿中の胆汁酸分画(コール酸や胆汁酸異常代謝産物を含む)の濃度も確認すること。
7.3 投与量の決定に際しては、以下の点も考慮の上で、各患者に対して適切な用量を決定すること。
○通常は1日投与量として500mgまでの範囲で用量調整が可能である。1日投与量として500mgを超える用量を投与する場合には肝機能(AST、ALT、γ-GTP等)や総胆汁酸濃度等を確認すること。
○先天性胆汁酸代謝異常症患者に対して1日750mgを超える投与経験は報告されていない。
8.1 肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うこと。また、重度の肝機能障害が認められた場合は、本剤の投与を中止すること。
8.2 本剤投与により効果が認められない場合には、漫然と投与しないこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 家族性IV型高脂血症を有する患者
回腸末端部に発現する胆汁酸トランスポーター(IBAT)の発現が低下しているとの報告があり
1)、本剤を含む胆汁酸の取り込みが低下しているおそれがある。
9.5 妊婦
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠中にコール酸が投与された先天性胆汁酸代謝異常症患者において、正常な出産が認められたとの報告があるが、妊婦に本剤を含むコール酸製剤を投与した経験は限られている。また、妊娠ヒツジ又はヒツジ胎児にコール酸を投与した際に早産が、妊娠ハムスターにコール酸を投与した際に肝障害が認められたことが報告されている
2)3)4)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。健康な授乳婦28例における乳汁中コール酸濃度は、0.89μmol/L(平均値)であったことが報告されている
5)。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
16.1 血中濃度
日本人先天性胆汁酸代謝異常症患者(3β-ヒドロキシ-Δ
5-ステロイドデヒドロゲナーゼ(以下、「3β-HSD」)2例、Δ
4-3-オキソステロイド-5β-リダクターゼ(以下、「Δ
4-3-oxoR」)2例の計4名)に本剤5〜15mg/kg/日を26週間経口投与したとき、いずれの患者においても、本剤投与前と比較して、血清中コール酸(投与前:0.00〜0.57μmol/L、投与26週時:1.58〜4.68μmol/L)及びデオキシコール酸(投与前:0.00〜0.13μmol/L、投与26週時:0.05〜3.52μmol/L)濃度が増加した
6)。
16.2 吸収
コール酸は、胆汁酸トランスポーターであるIBAT及び受動輸送により、主に回腸末端部より吸収され
7)8)、NTCP等を介して肝臓に取り込まれる。肝臓においてアミノ酸抱合されたコール酸は主にBSEPにより胆汁中に排泄され、小腸内へと分泌された後、回腸末端部において再吸収される(腸肝循環)。
16.3 分布
コール酸及びタウロコール酸のヒト血清におけるタンパク結合率は90〜95%(血清中コール酸として0.31μmol/L未満)及び46〜49.5%(血清中タウロコール酸として0.12〜0.72μmol/L)であった
9)。
16.4 代謝
コール酸は、肝臓においてbile acid-CoA synthase、bile acid-CoA amino acid N-acetyltransferase等によりアミノ酸(タウリン又はグリシン)抱合される。小腸内へ分泌された後、回腸末端部から再吸収されなかったアミノ酸抱合型コール酸(タウロコール酸、グリココール酸)は、腸内細菌によるアミノ酸の脱抱合、脱水酸化によってデオキシコール酸へと変換される。
16.5 排泄
腸管から吸収されなかった胆汁酸(コール酸及びデオキシコール酸等)は糞中へと排泄される。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 フェノバルビタール
外国人健康成人4例を対象に、フェノバルビタール60mgを1日4回、最大18日間反復投与したとき、コール酸のプールサイズ及び合成速度はフェノバルビタール投与前と比較して増加した
10)。[
10.2参照]
表1 外国人健康成人4例のフェノバルビタール投与前後におけるコール酸のプールサイズ及び合成速度
| プールサイズ(mg) | 合成速度(mg/日) |
フェノバルビタール | 投与前 | 投与後 | 投与前 | 投与後 |
被験者1 | 358 | 652 | 114 | 195 |
被験者2 | 636 | 1147 | 186 | 338 |
被験者3 | 827 | 1207 | 220 | 240 |
被験者4 | 377 | 365 | 149 | 140 |
16.7.2 シクロスポリン
ラットにシクロスポリン(0.1〜10mg/kg)又はクレモフォール油を1日1回4日間反復投与したとき、シクロスポリンは、コール酸、タウロコール酸及びデオキシコール酸の血清中濃度を用量依存的に増加させた
11)。ラット肝スライスを用いた
in vitro試験の結果、シクロスポリンは、コール酸の肝臓内への取込みを阻害し、コール酸及びアミノ酸抱合型コール酸の肝臓からの排出を阻害すると考えられた
12)。[
10.2参照]
16.7.3 ウルソデオキシコール酸
回腸瘻を施した外国人被験者8例を対象に、ウルソデオキシコール酸500mgを単回経口投与したとき、投与後8時間までの回腸におけるコール酸量(平均値±標準誤差)は、ウルソデオキシコール酸投与前で327±91μmol、投与後で517±96μmolと増加した
13)。
21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
21.2 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、再審査期間中の全投与症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
本剤は新医薬品であるため、厚生労働省告示第107号(平成18年3月6日付)に基づき、2024年5月末日までは、投薬は1回14日分を限度とされている。
26.1 製造販売元
株式会社レクメド
〒194-0022
東京都町田市森野一丁目7番23号