2.1 重篤な低血圧又は心原性ショックのある患者[血管拡張作用により更に血圧を低下させ、症状を悪化させるおそれがある。][
9.1.1参照]
2.2 閉塞隅角緑内障の患者[眼圧を上昇させるおそれがある。]
2.3 頭部外傷又は脳出血のある患者[頭蓋内圧を上昇させるおそれがある。]
2.4 高度な貧血のある患者[血圧低下により貧血症状(めまい、立ちくらみ等)を悪化させるおそれがある。]
2.5 硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2.6 ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者[
10.1参照]
本剤は狭心症の発作寛解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤を使用すること。
通常、成人には一硝酸イソソルビドとして1回20mg1日2回を経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、効果不十分な場合には1回40mg1日2回まで増量できる。
ただし、労作狭心症又は労作兼安静狭心症で発作回数及び運動耐容能の面で重症と判断された場合には1回40mg1日2回を経口投与できる。
8.1 本剤の投与に際しては、症状及び経過を十分に観察し、狭心症発作が増悪するなど効果が認められない場合には他の療法に切りかえること。
8.2 硝酸・亜硝酸エステル系薬剤を使用中の患者で、急に投与を中止したとき症状が悪化した症例が報告されているので、休薬を要する場合には他剤との併用下で徐々に投与量を減じること。
また、患者に医師の指示なしに使用を中止しないよう注意すること。
8.3 過度の血圧低下が起こった場合には、本剤の投与を中止し、下肢の挙上あるいは昇圧剤の投与等、適切な処置を行うこと。
8.4 起立性低血圧を起こすことがあるので注意すること。
8.5 本剤の投与開始時には、他の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤と同様に血管拡張作用による頭痛等の副作用を起こすことがある。このような場合には鎮痛剤を投与するか、減量又は投与中止するなど適切な処置を行うこと。
また、これらの副作用のために注意力、集中力、反射運動能力等の低下が起こることがあるので、このような場合には、自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血圧の患者(重篤な低血圧のある患者を除く)
血管拡張作用により更に血圧を低下させるおそれがある。[
2.1参照]
9.1.2 原発性肺高血圧症の患者
9.1.3 肥大型閉塞性心筋症の患者
心室内圧較差の増強をもたらし、症状を悪化させるおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で大量投与により、胎児及び出生児の体重増加抑制、出生児生存率の低下、発育・分化の遅延が報告されている
1)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている
2)。
9.7 小児等
9.8 高齢者
頭痛等の副作用の発現がないことを確認しながら必要に応じて低用量(例えば1回10mg)より投与を開始し、増量するなど慎重に投与すること。本剤は他の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に比べて肝臓での初回通過効果を受けにくいが、一般に肝・腎機能が低下していることが多い。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
AST、ALT、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 2%以上 | 2%未満 | 頻度不明 |
循環器 | | めまい・ふらつき、動悸 | 血圧低下、浮腫、熱感 |
精神神経系 | 頭痛(13.4%) | 不眠、全身倦怠感 | 頭重感、しびれ |
過敏症 | | 発疹、そう痒感 | |
消化器 | | 胃もたれ、腹部膨満感、鼓腸、口内乾燥、嘔気 | 食欲不振、腹痛、下痢、嘔吐 |
肝臓 | | ALT上昇、AST上昇、LDH上昇 | |
その他 | | BUN上昇 | CK上昇、クレアチニン上昇、筋肉痛 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 本剤使用中に本剤又は他の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に対し、耐薬性を生じ、作用が減弱することがある。
なお、類似化合物(ニトログリセリン)の経皮吸収型製剤での労作狭心症に対するコントロールされた外国の臨床試験成績によると、休薬時間を置くことにより、耐薬性が軽減できたとの報告がある
3)。
15.1.2 類似化合物(硝酸イソソルビド)の投与によって、メトヘモグロビン血症があらわれたとの報告がある。
15.1.3 狭心症患者を対象とした比較試験において、本剤はカルシウム拮抗剤(ニフェジピン)に比べ、必ずしも優る薬剤ではなく、硝酸イソソルビド徐放錠と同等であると判断された。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男子(6例)に一硝酸イソソルビドとして10
注1)、20及び40mgを経口投与したとき、血漿中濃度は投与後2時間でほぼCmaxに達し、T
1/2は5〜6時間であった。なお、Cmax及びAUCは投与量に比例して増加した
4)。
| Cmax(ng/mL) | Tmax(hr) | T1/2(hr) | AUC0→∞(ng・hr/mL) |
10mg | 157.2±29.7 | 1.8±0.7 | 5.5±0.5 | 1701±263 |
20mg | 373.3±29.3 | 1.7±0.4 | 5.0±0.3 | 3306±391 |
40mg | 709.7±107.3 | 1.5±0.4 | 6.0±0.2 | 6525±951 |
16.1.2 反復投与
健康成人男子(6例)に一硝酸イソソルビド20mgを12時間間隔で7回反復経口投与したときの最低血漿中濃度は、130〜150ng/mLの一定範囲内にあり、漸増する傾向は認められなかった
4)。
16.1.3 生物学的同等性試験
<一硝酸イソソルビド錠20mg「NIG」>
一硝酸イソソルビド錠20mg「NIG」とアイトロール錠20mgを、クロスオーバー法によりそれぞれ1錠(一硝酸イソソルビドとして20mg)健康成人男子に絶食単回経口投与して血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)〜log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された
5)。
薬物動態パラメータ
| 投与量(mg) | AUC0-24(ng・hr/mL) | Cmax(ng/mL) | Tmax(hr) | T1/2(hr) |
一硝酸イソソルビド錠20mg「NIG」 | 20 | 3944.4±432.5 | 501.6±44.1 | 0.8±0.3 | 5.7±0.6 |
アイトロール錠20mg | 20 | 3998.2±705.3 | 517.6±64.9 | 0.8±0.6 | 6.0±1.0 |
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人男子(3例)に12時間絶食後及び摂食1.5時間後に一硝酸イソソルビド10mg
注1)を単回経口投与した結果、摂食により一硝酸イソソルビドのCmaxは低下し、Tmaxは延長する傾向を示したが、T
1/2及びAUCには差が認められなかったことから、摂食による一硝酸イソソルビドの薬物動態に及ぼす影響は少ないものと考えられた
4)。
16.3 分布
16.3.1 血漿蛋白結合率
虚血性心疾患患者
注2)(28例)に投与したときの血漿蛋白結合率は約2〜4%であった(投与3時間後、限外濾過法)
6)。
16.4 代謝
健康成人男子(3例)に一硝酸イソソルビド40mgを単回経口投与したとき、投与48時間までの尿中に投与量の29.0%が一硝酸イソソルビドのグルクロン酸抱合体として、42.0%がイソソルビドとして、2.0%が未変化体としてそれぞれ排泄された
7)。
注1)本剤の承認された用法及び用量は1回20mg1日2回経口投与である(効果不十分な場合は1回40mg1日2回まで増量)。
注2)本剤の承認された効能又は効果は狭心症である。
20.1 製剤上の特性により、錠剤表面に結晶が析出することがある。