「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、メサラジン3,600mgを対照とした国内臨床試験で非劣性が検証されていないことを十分に理解した上で、本剤投与の適否を判断すること。[
17.1.1、
17.1.2参照]
通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与する。
本剤投与中は患者の病態を十分観察し、投与開始8週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないこと。[
8.1.1参照]
8.1 本剤は副腎皮質ステロイドであり、誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、クッシング症候群、骨密度の減少、消化性潰瘍、糖尿病、白内障、緑内障、精神障害等の重篤な副作用があらわれる可能性がある。本剤の投与にあたっては、次の注意が必要である。
8.1.1 本剤を長期間投与した場合に、全身性の副作用があらわれる可能性があるため、漫然と投与しないこと。[7.参照]
8.1.2 投与中は、副作用の発現に対し、常に十分な配慮と観察を行い、また、患者をストレスから避けるようにし、事故、手術等の場合には当該患者の副腎皮質機能の低下に留意し、全身性ステロイド剤の投与など適切な処置を行うこと。
8.1.3 特に、免疫抑制状態の患者が、水痘又は麻疹に感染すると、致命的な経過をたどることがあるので、次の注意が必要である。
a)本剤投与前に水痘又は麻疹の既往や予防接種の有無を確認すること。
b)水痘又は麻疹の既往のない患者においては、水痘又は麻疹への感染を極力防ぐよう常に十分な配慮と観察を行うこと。感染が疑われる場合や感染した場合には、直ちに受診するよう指導し、適切な処置を講ずること。
c)水痘又は麻疹の既往や予防接種を受けたことがある患者であっても、本剤投与中は、水痘又は麻疹を発症する可能性があるので留意すること。
8.1.4 免疫抑制状態の患者では、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、本剤投与中の患者に生ワクチンを接種する場合、免疫機能を検査の上、十分な注意を払うこと。
8.2 本剤中止時又は全身作用の強いステロイド剤から本剤に変更する場合、血中のステロイド濃度の変化に伴い筋肉痛、関節痛等の症状があらわれることがある。まれに、疲労、頭痛、悪心、嘔吐等の症状があらわれることがあり、このような症状があらわれた場合には、副腎皮質機能抑制を疑い、必要に応じて一時的に全身作用の強いステロイド剤の投与を行うこと。
8.3 全身作用の強いステロイド剤から本剤に変更する場合に、鼻炎、湿疹等のアレルギー症状が顕在化することがあるので、このような症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 感染症の患者
9.1.2 B型肝炎ウイルスキャリアの患者
本剤の投与期間中及び投与終了後は継続して肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス増殖の徴候や症状の発現に注意すること。異常が認められた場合には、本剤の減量を考慮し、抗ウイルス剤を投与するなど適切な処置を行うこと。B型肝炎ウイルスの増殖による肝炎があらわれることがある。なお、投与開始前にHBs抗原陰性の患者において、他の副腎皮質ステロイド剤投与後にB型肝炎ウイルスによる肝炎を発症した症例が報告されている。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 中等度以上の肝機能障害のある患者
本剤は主に肝臓で代謝されるため、血中濃度が上昇する可能性がある。肝機能障害患者を対象とした本剤の臨床試験は実施していない。[
16.6.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験で催奇形性及び胚・胎児への影響が認められている
1)2)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤は乳汁中へ移行するとの報告がある
3)。
9.7 小児等
9.8 高齢者
状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
14.1 薬剤調製時の注意
14.2 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.3 薬剤投与時の注意
本剤は放出制御製剤であることより、かまずに服用すること。
14.4 薬剤投与後の注意
16.1 血中濃度
16.1.1 単回経口投与時の血漿中濃度
日本人健康成人男性に本剤9mgを単回経口投与したとき、血漿中ブデソニド濃度は投与後14.8時間で最高濃度1110.5±628.7pg/mLに達し、5.5±1.3時間の消失半減期で消失した
4)。
単回経口投与時の薬物動態パラメータ
Cmax(pg/mL) | Tmax(h) | AUC∞(h・pg/mL) | t1/2(h) |
1110.5±628.7 | 14.8±5.9(14.0) | 12203.8±7777.1 | 5.5±1.3 |
16.1.2 反復経口投与時の血漿中濃度
健康成人男性に本剤9mgを1日1回、7日間反復経口投与した際の定常時の血漿中ブデソニド濃度は投与後11時間で最高濃度891.3±394.1pg/mLに達し、反復投与に伴う蓄積性は認められなかった
5)(外国人データ)。
反復経口投与時の薬物動態パラメータ
Cmax(pg/mL) | Tmax(h) | AUC∞(h・pg/mL) |
891.3±394.1 | 11±4.9(12) | 9295.2±3694.2 |
16.2 吸収
単回経口投与後のバイオアベイラビリティは約10〜20%であった
6)7)(外国人データ)。
16.3 分布
ブデソニドの分布容積は大きく(約3〜4L/kg)、ヒト血漿における蛋白結合率は85〜90%であった
7)。
16.4 代謝
ブデソニドは肝初回通過効果を大きく受け(〜90%)、糖質コルチコイド活性の低い代謝物となる。主な代謝物である6β-ヒドロキシブデソニド及び16α-ヒドロキシプレドニゾロンの糖質コルチコイド活性は未変化体の1%未満である
8)。
ブデソニドは主にチトクロームP450のCYP3A4により代謝される
9)。[
10.参照]
16.5 排泄
健康成人男性に
3H標識ブデソニドを静脈内投与
注1)したとき、投与量の60%が尿中に排泄され、尿中に未変化体ブデソニドは認められなかった
10)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者における薬物動態
軽度から中等度の肝硬変患者男女8名に微細化ブデソニド4mg
注1)を単回経口投与した際の全身バイオアベイラビリティは、健康成人と比較して、軽度肝硬変患者では同程度、中等度肝硬変患者では3.5倍高かった
7)(外国人データ)。[
9.3.1参照]
16.7 薬物相互作用
健康成人にブデソニド3mg(カプセル製剤)
注1)とケトコナゾール200mgを併用経口投与したとき、ブデソニドの平均AUCはブデソニド単剤投与時と比較して6.5倍に上昇した
7)11)(外国人データ)。[
10.2参照]
グレープフルーツジュース摂取時に、健康成人にブデソニド3mg(カプセル製剤)
注1)を投与したときの全身曝露量は、単独投与したときに比べ約2倍に上昇した
7)(外国人データ)。[
10.2参照]
注1)本剤の承認された用法及び用量は「通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与する。」である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相試験
軽症から中等症の活動期潰瘍性大腸炎患者
注2)を対象に無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施した。本剤9mg又はメサラジン3,600mgを8週間経口投与した。主要評価項目であるUCDAIスコアの変化量について、本剤群と対照群とされたメサラジン群との差の95%信頼区間上限値が1.3を下回ることが非劣性を示すための基準とされた。メサラジン群におけるUCDAIスコアの変化量が想定よりも小さかったため、非劣性に関する検証を行うことができなかった
12)。
投与群 | UCDAIスコアa)の変化量 |
平均値[95%信頼区間] | メサラジン群との差[95%信頼区間] |
本剤9mg/日 91例 | −0.87[−1.42;−0.31] | 0.53[−0.26;1.31] |
メサラジン3,600mg/日 90例 | −1.39[−1.95;−0.84] | − |
本剤9mg群の安全性評価対象例92例中12例(13.0%)に副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められた。主なものは、潰瘍性大腸炎(原疾患の悪化)2例(2.2%)であった
12)。[5.参照]
17.1.2 海外第III相試験
軽症から中等症の活動期潰瘍性大腸炎患者
注2)を対象に無作為化二重盲検並行群間比較試験を2試験実施した。本剤9mg又はプラセボを8週間経口投与した。両試験ともに主要評価項目である臨床的・内視鏡的寛解率において、本剤9mg群はプラセボ群に対し統計学的な有意差を認めた
13)14)。
試験I
投与群 | 臨床的・内視鏡的寛解a)に至った患者数 | 臨床的・内視鏡的寛解率b)[95%信頼区間] | p値c) |
本剤9mg/日 123例 | 22例 | 17.9%[11.1;24.7] | 0.0143 |
プラセボ 121例 | 9例 | 7.4%[2.8;12.1] | − |
試験II
投与群 | 臨床的・内視鏡的寛解a)に至った患者数 | 臨床的・内視鏡的寛解率b)[95%信頼区間] | p値c) |
本剤9mg/日 109例 | 19例 | 17.4%[10.3;24.6] | 0.0047 |
プラセボ 89例 | 4例 | 4.5%[0.2;8.8] | − |
a)UCDAIスコアが1以下、血便、排便回数、粘膜所見サブスコアが0かつ内視鏡評価スコアが1以上改善を「臨床的・内視鏡的寛解」と定義した。
b)臨床的・内視鏡的寛解率(%)=(臨床的・内視鏡的寛解に至った被験者数÷総被験者数)×100
c)両側有意水準2.5%
試験Iにおいて、本剤9mg群の安全性評価対象例127例中36例(28.3%)に副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められた。主なものは、潰瘍性大腸炎(原疾患の悪化)7例(5.5%)、頭痛4例(3.1%)、血中コルチゾール減少4例(3.1%)であった
13)。
試験IIにおいて、本剤9mg群の安全性評価対象例128例中33例(25.8%)に副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められた。主なものは、潰瘍性大腸炎(原疾患の悪化)7例(5.5%)、頭痛7例(5.5%)、血中コルチゾール減少6例(4.7%)であった
14)。[5.参照]
注2)病変が直腸のみに限局している患者は除外された。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。