医療用医薬品 : タムスロシン塩酸塩

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医薬品情報


総称名 タムスロシン塩酸塩
一般名 タムスロシン塩酸塩
欧文一般名 Tamsulosin Hydrochloride
製剤名 タムスロシン塩酸塩カプセル
薬効分類名 前立腺肥大症の排尿障害改善剤
薬効分類番号 2590
ATCコード G04CA02
KEGG DRUG
D01024 タムスロシン塩酸塩
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2024年4月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
タムスロシン塩酸塩カプセル0.1mg「NIG」 (後発品) Tamsulosin Hydrochloride Capsules 日医工岐阜工場 2590008N1233 12.4円/カプセル 処方箋医薬品注)
タムスロシン塩酸塩カプセル0.2mg「NIG」 (後発品) Tamsulosin Hydrochloride Capsules 日医工岐阜工場 2590008N2230 20.5円/カプセル 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

前立腺肥大症に伴う排尿障害

5. 効能または効果に関連する注意

5.1 本剤による治療は原因療法ではなく、対症療法であることに留意し、本剤投与により期待する効果が得られない場合は、手術療法等、他の適切な処置を考慮すること。
5.2 前立腺肥大症の診断・診療については、国内外のガイドライン等の最新の情報を参考にすること。

6. 用法及び用量

通常、成人にはタムスロシン塩酸塩として0.2mgを1日1回食後に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

7. 用法及び用量に関連する注意

高齢者で腎機能が低下している場合は0.1mgから投与を開始し、経過を十分に観察した後に0.2mgに増量すること。0.2mgで期待する効果が得られない場合にはそれ以上の増量は行わず、他の適切な処置を行うこと。[9.8参照]

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤の過剰投与により血圧低下が予想されるので、投与量には注意すること。
8.2 立位血圧が低下することがあるので、体位変換による血圧変化に注意すること。[9.1.1参照]
8.3 めまい等があらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う作業に従事する場合には注意させること。
8.4 本剤投与開始時に降圧剤投与の有無について問診を行い、降圧剤が投与されている場合には血圧変化に注意し、血圧低下がみられたときには、減量又は中止するなど適切な処置を行うこと。[10.2参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 起立性低血圧のある患者
症状が悪化するおそれがある。[8.2参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能障害のある患者
血漿中濃度が上昇するおそれがある。[16.6.1参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝機能障害のある患者
血漿中濃度が上昇するおそれがある。
9.8 高齢者
腎機能が低下していることがある。[7.、16.6.1参照]

10. 相互作用

10.2 併用注意
降圧剤
8.4参照]
起立性低血圧が起こるおそれがあるので、減量するなど注意すること。降圧剤服用中の患者は起立時の血圧調節力が低下している場合がある。
ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤
シルデナフィルクエン酸塩
バルデナフィル塩酸塩水和物
併用により症候性低血圧があらわれるとの報告がある。本剤はα遮断作用を有するため、併用によりこれらの血管拡張作用による降圧作用を増強するおそれがある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 失神・意識喪失(頻度不明)
血圧低下に伴う一過性の意識喪失等があらわれることがある。
11.1.2 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
AST上昇、ALT上昇、黄疸等があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜5%未満頻度不明
精神神経系めまい、ふらふら感立ちくらみ、頭痛、眠気、いらいら感、しびれ感
循環器頻脈血圧低下、起立性低血圧、動悸、不整脈
過敏症発疹そう痒感、蕁麻疹、多形紅斑、血管浮腫
消化器胃不快感、嘔気、嘔吐、胃重感、胃痛、食欲不振、嚥下障害口渇、便秘、下痢
その他咽頭灼焼感、全身倦怠感鼻閉、浮腫、尿失禁、味覚異常、女性化乳房、持続勃起症、射精障害、術中虹彩緊張低下症候群、霧視、視力障害、ほてり、熱感、灼熱感、胸部不快感

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.1.2 カプセル中の粒をかみ砕いたり、カプセルを開けて服用しないよう患者に指導すること。本剤は、タムスロシン塩酸塩の徐放性粒を充填した硬カプセルであるため、薬物動態が変わる可能性がある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
α1遮断薬を服用中又は過去に服用経験のある患者において、α1遮断作用によると考えられる術中虹彩緊張低下症候群(Intraoperative Floppy Iris Syndrome)があらわれるとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人にタムスロシン塩酸塩カプセルを0.1〜0.6mg注)経口投与したとき、血漿中未変化体濃度は投与後7〜8時間にピークを示し、半減期は9.0〜11.6時間であった1)。Cmax及びAUCは投与量にほぼ比例して上昇した。タムスロシン塩酸塩カプセルを7日間連続経口投与したとき、半減期はやや延長したが、血漿中未変化体濃度推移は4日目で定常状態に達した2)
タムスロシン塩酸塩カプセルの臨床用量での値
用量注)(mg)Tmax(h)Cmax(ng/mL)t1/2(h)
0.17.03.211.6
0.28.05.79.0
0.47.015.610.8
0.67.515.69.8
16.1.2 生物学的同等性試験
<ハルナールD錠、ハルナールカプセル>
(1)健康成人29名にハルナールD錠0.2mgあるいはハルナール0.2mgカプセルをそれぞれクロスオーバー法で単回経口投与した場合、タムスロシン塩酸塩の血漿中未変化体の薬物動態パラメータは以下のとおりである3)。ハルナールD錠とハルナールカプセルは生物学的に同等であった3)4)5)
製剤投与量Cmax(ng/mL)AUCt(ng・h/mL)Tmax(h)
ハルナールD錠0.2mg0.2mg4.34±1.3263.5±22.97.00±2.04
ハルナール0.2mgカプセル0.2mg4.71±1.8162.0±20.87.83±2.42
<タムスロシン塩酸塩カプセル0.1mg「NIG」>
(2)タムスロシン塩酸塩カプセル0.1mg「NIG」を健康成人男子に2カプセル(タムスロシン塩酸塩として0.2mg)単回経口投与(クロスオーバー法)したときの薬物動態は以下のとおりであった6)
(ハルナール0.1mgカプセルとの同等性が確認された旧処方製剤と、現処方製剤について実施した生物学的同等性試験におけるデータ)
・絶食投与
薬物動態パラメータ
 投与量(mg)AUC0-48(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
タムスロシン塩酸塩カプセル0.1mg「NIG」0.281.94±17.748.49±1.354.9±0.77.2±2.0
・食後投与
薬物動態パラメータ
 投与量(mg)AUC0-48(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
タムスロシン塩酸塩カプセル0.1mg「NIG」0.261.87±19.284.77±1.367.4±0.78.1±2.0
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
<タムスロシン塩酸塩カプセル0.2mg「NIG」>
(3)タムスロシン塩酸塩カプセル0.2mg「NIG」を健康成人男子に1カプセル(タムスロシン塩酸塩として0.2mg)単回経口投与(クロスオーバー法)したときの薬物動態は以下のとおりであった6)
(ハルナール0.2mgカプセルとの同等性が確認された旧処方製剤と、現処方製剤について実施した生物学的同等性試験におけるデータ)
・絶食投与
薬物動態パラメータ
 投与量(mg)AUC0-48(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
タムスロシン塩酸塩カプセル0.2mg「NIG」0.271.04±26.616.92±2.295.1±0.87.8±2.4
・食後投与
薬物動態パラメータ
 投与量(mg)AUC0-48(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
タムスロシン塩酸塩カプセル0.2mg「NIG」0.268.76±16.415.24±1.317.7±1.18.5±1.6
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.5 排泄
健康成人にタムスロシン塩酸塩カプセルを0.1〜0.6mg注)経口投与したとき、投与後30時間までの未変化体の尿中排泄率は12〜14%とほぼ一定であった1)。また、連続経口投与したときも尿中排泄率に大きな変動は認められなかった2)
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
腎機能障害患者11名にタムスロシン塩酸塩0.2mgカプセルを経口投与したとき、タムスロシン塩酸塩の血漿中薬物濃度の上昇がみられた。この血漿中薬物濃度の上昇は、血漿中α1-AGP(α1酸性糖蛋白)との蛋白結合による可能性があり、血漿中薬物濃度とα1-AGP濃度の間には高い相関が認められた。[9.2.19.8参照]
なお、タムスロシン塩酸塩の薬効あるいは副作用発現に直接関与すると考えられる非結合型薬物濃度は、血漿中α1-AGP濃度にかかわらず腎機能正常者のそれとほぼ同様であった7)
注)本剤の承認された1日用量は、0.2mgである。なお、年齢、症状により適宜増減する。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II及びIII相試験
前立腺部の尿道内圧を有意に減少させ8)、用量依存的な尿流率及び残尿量の改善が認められた9)10)。全般改善度の解析対象236例の成績を次に示した。また、二重盲検比較試験の結果、タムスロシン塩酸塩0.2mgカプセル1日1回投与において有用性が認められた11)
投与方法中等度改善以上
0.1mg1日1回投与28.3%(15/53)
0.2mg1日1回投与34.1%(43/126)
0.4mg1日1回投与38.6%(22/57)
注)本剤の承認された1日用量は、0.2mgである。なお、年齢、症状により適宜増減する。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
尿道及び前立腺部のα1受容体を遮断することにより、尿道内圧曲線の前立腺部圧を低下させ、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する。
18.2 ヒトでの作用
ヒト前立腺標本での受容体結合実験において、プラゾシン塩酸塩より2.2倍、フェントラミンメシル酸塩より40倍強いα1受容体遮断作用を示した12)in vitro試験)。
18.3 動物での作用
18.3.1 交感神経α受容体遮断作用
ラット脳膜標本での受容体結合実験及びウサギ大動脈標本での摘出実験において、α1受容体を選択的かつ競合的に遮断し、その作用はプラゾシン塩酸塩及びフェントラミンメシル酸塩より強力であった13)14)。なお、ウサギ大動脈、ラット輸精管及びモルモット腸管標本での摘出実験において、タムスロシン塩酸塩はα2受容体よりもα1受容体に対して高い選択性を示した13)14)in vitro試験)。
18.3.2 下部尿路(尿道・膀胱)及び前立腺に対する作用
ウサギ尿道、前立腺及び膀胱基部平滑筋標本での摘出実験において、プラゾシン塩酸塩及びフェントラミンメシル酸塩より強いα1受容体遮断作用を示した15)16)in vitro試験)。
また、麻酔イヌにおいて、α1受容体刺激薬による尿道内圧上昇を拡張期血圧上昇よりも13倍強く抑制した17)
18.3.3 排尿障害改善作用
麻酔雄性イヌにおいて、尿道内圧曲線の前立腺部圧を低下させた18)。一方、麻酔ラットにおいて、律動的膀胱収縮及び膀胱内圧曲線に影響を及ぼさなかった19)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. タムスロシン塩酸塩

一般的名称 タムスロシン塩酸塩
一般的名称(欧名) Tamsulosin Hydrochloride
化学名 5-{(2R)-2-[2-(2-Ethoxyphenoxy)ethylamino]propyl}-2-methoxybenzenesulfonamide monohydrochloride
分子式 C20H28N2O5S・HCl
分子量 444.97
融点 約230℃(分解)
物理化学的性状 白色の結晶である。ギ酸に溶けやすく、水にやや溶けにくく、酢酸(100)に溶けにくく、エタノール(99.5)に極めて溶けにくい。
KEGG DRUG D01024

22. 包装

<タムスロシン塩酸塩カプセル0.1mg「NIG」>
140カプセル[14カプセル(PTP)×10]
<タムスロシン塩酸塩カプセル0.2mg「NIG」>
140カプセル[14カプセル(PTP)×10]

23. 主要文献

  1. 角尾道夫 他, 臨床医薬, 6 (12), 2529-2551, (1990)
  2. 角尾道夫 他, 臨床医薬, 7 (1), 63-83, (1991)
  3. 横山修 他, 薬理と治療, 33 (6), 521-526, (2005)
  4. 横山修 他, 薬理と治療, 33 (6), 535-540, (2005)
  5. 横山修 他, 薬理と治療, 33 (6), 527-533, (2005)
  6. 社内資料:生物学的同等性試験
  7. Koiso,K.et al., J.Clin.Pharmacol., 36 (11), 1029-1038, (1996) »PubMed
  8. Kawachi,Y., Curr.Ther.Res., 59 (3), 149-161, (1998)
  9. 河邉香月 他, 泌尿器外科, 3 (10), 1247-1259, (1990)
  10. Kawabe,K.et al., J.Urol., 144 (4), 908-912, (1990) »PubMed
  11. 河邉香月 他, 泌尿器外科, 4 (2), 231-242, (1991)
  12. Yamada,S.et al., J.Pharmacol.Exp.Ther., 242 (1), 326-330, (1987) »PubMed
  13. Honda,K.et al., Naunyn-Schmiedeberg's Arch.Pharmacol., 328 (3), 264-272, (1985) »PubMed
  14. Honda,K.et al., Naunyn-Schmiedeberg's Arch.Pharmacol., 336 (3), 295-302, (1987) »PubMed
  15. Honda,K.et al., J.Pharmacol.Exp.Ther., 239 (2), 512-516, (1986) »PubMed
  16. Honda,K.et al., Naunyn-Schmiedeberg's Arch.Pharmacol., 330 (1), 16-21, (1985) »PubMed
  17. Shibasaki,M.et al., J.Auton.Pharmacol., 12 (4), 263-268, (1992) »PubMed
  18. Sudoh,K.et al., J.Auton.Pharmacol., 16 (3), 147-154, (1996) »PubMed
  19. Sudoh,K.et al., Gen.Pharmacol., 28 (4), 521-524, (1997) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
日医工株式会社 お客様サポートセンター
〒930-8583 富山市総曲輪1丁目6番21
電話:0120-517-215
FAX:076-442-8948
製品情報問い合わせ先
日医工株式会社 お客様サポートセンター
〒930-8583 富山市総曲輪1丁目6番21
電話:0120-517-215
FAX:076-442-8948

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
日医工岐阜工場株式会社
富山市総曲輪1丁目6番21
26.2 発売元
日医工株式会社
富山市総曲輪1丁目6番21
26.3 販売
武田薬品工業株式会社
大阪市中央区道修町四丁目1番1号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2024/05/22 版