○下記疾患における高カルシウム血症
・副甲状腺癌
・副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症
<維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症>
通常、成人には、エボカルセトとして1回1mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。患者の状態に応じて開始用量として1日1回2mgを経口投与することができる。以後は、患者の副甲状腺ホルモン(PTH)及び血清カルシウム濃度の十分な観察のもと、1日1回1〜8mgの間で適宜用量を調整し、経口投与するが、効果不十分な場合には適宜用量を調整し、1日1回12mgまで経口投与することができる。
<副甲状腺癌における高カルシウム血症、副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症における高カルシウム血症>
通常、成人には、エボカルセトとして1回2mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。患者の血清カルシウム濃度に応じて開始用量として1回2mgを1日2回経口投与することができる。以後は、患者の血清カルシウム濃度により投与量及び投与回数を適宜増減するが、投与量は1回6mgまで、投与回数は1日4回までとする。
<維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症>
7.1 本剤は血中カルシウムの低下作用を有するので、血清カルシウム濃度が低値でないこと(目安として8.4mg/dL以上)を確認して投与を開始すること。
7.2 増量を行う場合は増量幅を1mgとし、2週間以上の間隔をあけて行うこと。
7.3 PTHが高値(目安としてintact PTHが500pg/mL以上)かつ血清カルシウム濃度が9.0mg/dL以上の場合は、開始用量として1日1回2mgを考慮すること。[
17.1.2、
17.1.3参照]
7.4血清カルシウム濃度は、本剤の開始時及び用量調整時は週1回以上測定し、維持期には2週に1回以上測定すること。血清カルシウム濃度が8.4mg/dL未満に低下した場合は、下表のように対応すること。[
8.1、
9.1.1、
11.1.1参照]
血清カルシウム濃度 | 対応 |
処置 | 検査 | 増量・再開 |
本剤の投与 | |
8.4mg/dL未満 | 原則として本剤の増量は行わない。(必要に応じて本剤の減量を行う。) | カルシウム剤やビタミンD製剤の投与を考慮する。 | 血清カルシウム濃度を週1回以上測定する。 心電図検査を実施することが望ましい。 | 増量する場合には、8.4mg/dL以上に回復したことを確認後、増量すること。 |
7.5mg/dL以下 | 直ちに休薬する。 | 再開する場合には、8.4mg/dL以上に回復したことを確認後、休薬前の用量か、それ以下の用量から再開すること。 |
血清カルシウム濃度の検査は、本剤の薬効及び安全性を適正に判断するために、服薬前に実施することが望ましい。また、低アルブミン血症(血清アルブミン濃度が4.0g/dL未満)の場合には、補正値注)を指標に用いることが望ましい。
7.5 PTHが管理目標値に維持されるように、定期的にPTHを測定すること。PTHの測定は本剤の開始時及び用量調整時(目安として投与開始から3ヵ月程度)は月2回とし、PTHがほぼ安定したことを確認した後は月1回とすることが望ましい。なお、PTHの測定は本剤の薬効及び安全性を適正に判断するために服薬前に実施することが望ましい。
<副甲状腺癌における高カルシウム血症、副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症における高カルシウム血症>
7.6 血清カルシウム濃度は、本剤の開始時及び用量調整時は2週に1回を目安に測定し、維持期には定期的に測定することが望ましい。
7.7 血清カルシウム濃度が12.5mg/dLを超える場合には、開始用量として1回2mg1日2回を考慮すること。
7.8 投与量の調整が必要な場合には、下表を参考に投与量を増減すること。なお、増量する場合には原則として2週間以上の間隔をあけて1段階ずつ行うこと。血清カルシウム濃度のコントロールが困難な場合には1回投与量の増減幅を1mgとしてもよい。
段階 | 用法・用量 | 1日投与量 |
1 | 2mg 1日1回 | 2mg |
2 | 2mg 1日2回 | 4mg |
3 | 4mg 1日2回 | 8mg |
4 | 6mg 1日2回 | 12mg |
5 | 6mg 1日3回 | 18mg |
6 | 6mg 1日4回 | 24mg |
7.9 血清カルシウム濃度が7.5mg/dL以下に低下した場合は、直ちに休薬すること。また、必要に応じてカルシウム剤やビタミンD製剤の投与を考慮すること。[
8.1、
9.1.1、
11.1.1参照]
7.10 低アルブミン血症(血清アルブミン濃度が4.0g/dL未満)の場合には、補正値注)を指標に用いることが望ましい。
注)補正カルシウム濃度算出方法
補正カルシウム濃度(mg/dL)=血清カルシウム濃度(mg/dL)−血清アルブミン濃度(g/dL)+4.0
8.1 本剤投与中は定期的に血清カルシウム濃度を測定し、低カルシウム血症が発現しないよう十分注意すること。低カルシウム血症の発現あるいは発現のおそれがある場合には、本剤の減量等も考慮するとともにカルシウム剤やビタミンD製剤の投与を考慮すること。また、本剤投与中にカルシウム剤やビタミンD製剤の投与を中止した際には、低カルシウム血症の発現に注意すること。[
7.4、
7.9、
9.1.1、
11.1.1参照]
8.2 本剤の開始時及び用量調整時は頻回に患者の症状を観察し、副作用の発現などに注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。
動物実験(ラット)で胎盤通過性、死産児率の高値、出生率の低値、出生児の体重低値等が認められている。[
2.2参照]
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。
動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが認められている。動物実験(ラット)で出生児に発育遅延等が認められている。
9.7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
副作用が発現した場合には減量するなど注意すること。一般に高齢者では生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 低カルシウム血症(16.2%)
低カルシウム血症に基づくと考えられる症状(QT延長、しびれ、筋痙攣、気分不良、不整脈、血圧低下及び痙攣等)があらわれた場合には、血清カルシウム濃度を確認し、カルシウム剤やビタミンD製剤の投与を考慮すること。[
7.4、
7.9、
8.1、
9.1.1、
11.1.2、
13.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 1%以上 | 0.5〜1%未満 | 0.5%未満 |
腹部・消化器 | 悪心、嘔吐、腹部不快感、下痢、食欲減退 | 胃腸炎、腹痛、便秘、逆流性食道炎、口内炎、歯肉炎、腹部膨満 | 消化管潰瘍、消化不良、腸炎、便潜血 |
循環器 | | 不整脈 | 期外収縮、狭心症・心筋虚血、高血圧、動悸 |
精神・神経 | | 眩暈、感覚鈍麻 | 頭部不快感、振戦 |
筋骨格 | | 筋骨格痛、筋痙縮 | |
肝臓 | | 肝機能異常[AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇] | |
眼 | | | 眼乾燥、視力障害 |
皮膚 | そう痒症 | 発疹 | |
内分泌 | | | PTH減少 |
血液 | | 貧血 | |
代謝 | | | CK上昇、痛風 |
呼吸器・胸郭及び縦隔障害 | | 胸痛、胸部不快感 | 呼吸困難 |
その他 | | シャント閉塞 | Al-P上昇、浮腫 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 海外において、カルシウム受容体作動薬による過度のPTHの低下により、無形成骨症が生じたとの報告がある。
15.1.2 海外において、カルシウム受容体作動薬投与後の急激なPTHの低下により、低カルシウム血症及び低リン酸血症を伴う飢餓骨症候群(hungry bone syndrome)を発現したとの報告がある。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症>
17.1.1 国内第III相比較試験(血液透析)
血液透析施行中の二次性副甲状腺機能亢進症患者を対象に、本剤は1〜8mg(開始用量:1mg;ただしintact PTH濃度500pg/mL以上の場合は2mg)、実対照薬(シナカルセト塩酸塩)は12.5〜100mg(開始用量:25mg)の間で用量を調整し、1日1回30週間経口投与した。その結果、投与開始28〜30週のintact PTH濃度平均値が60pg/mL以上240pg/mL以下の目標を達成した被験者割合は、本剤では72.7%(184/253例)、シナカルセト塩酸塩では76.7%(204/266例)であった。達成した被験者割合の差(本剤−シナカルセト塩酸塩)(差の両側95%信頼区間)は、−4.0%(−11.4〜3.5%)(非劣性マージン:−15%)であり、本剤のシナカルセト塩酸塩に対する非劣性が示された
14)。
副作用発現頻度は、本剤投与群で44.8%(142/317例)であった。主な副作用は、補正カルシウム減少11.7%(37/317例)、悪心5.0%(16/317例)、嘔吐4.4%(14/317例)、血中カルシウム減少及び低カルシウム血症 各3.5%(11/317例)、下痢及び腹部不快感 各3.2%(10/317例)、食欲減退2.5%(8/317例)であった。
17.1.2 国内第III相長期投与試験(血液透析)
血液透析施行中の二次性副甲状腺機能亢進症患者137例を対象に、本剤を1mgより開始後(ただし、intact PTH濃度500pg/mL以上かつ血清補正カルシウム濃度9.0mg/dL以上の場合は2mgより開始)、1〜12mgの間で用量を調整し、1日1回52週間経口投与した。投与開始後52週では、intact PTH濃度が60pg/mL以上240pg/mL以下の目標を達成した被験者割合は72.3%であった
15)。[
7.3参照]
副作用発現頻度は35.0%(48/137例)であった。主な副作用は、補正カルシウム減少7.3%(10/137例)、悪心及び腹部不快感 各5.1%(7/137例)、嘔吐及び血中カルシウム減少 各3.6%(5/137例)、下痢、便秘、腹痛及び胸部不快感 各1.5%(2/137例)であった。
17.1.3 国内第III相一般試験(腹膜透析)
腹膜透析施行中の二次性副甲状腺機能亢進症患者39例を対象に、本剤を1mgより開始後(ただし、intact PTH濃度500pg/mL以上かつ血清補正カルシウム濃度9.0mg/dL以上の場合は2mgより開始)、1〜12mgの間で用量を調整し、1日1回52週間経口投与した。投与開始後30〜32週のintact PTH濃度平均値が60pg/mL以上240pg/mL以下の目標を達成した被験者割合は71.8%であった
16)。[
7.3参照]
副作用発現頻度は46.2%(18/39例)であった。主な副作用は、補正カルシウム減少17.9%(7/39例)及び血中カルシウム減少5.1%(2/39例)であった。
<副甲状腺癌における高カルシウム血症、副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症における高カルシウム血症>
17.1.4 国内第III相試験
副甲状腺癌における高カルシウム血症、副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症における高カルシウム血症患者18例を対象に、本剤2mgを1日1回より開始後(ただし血清補正カルシウム濃度が12.5mg/dLを超えている場合は1回2mg1日2回より開始することを可とした)、1回2〜6mgを1日1〜4回の間で用法・用量を調整し、52週間経口投与した。その結果、投与開始24週までに血清補正カルシウム濃度が10.3mg/dL以下に2週間維持された被験者数及び被験者割合(95%信頼区間)は、14例及び77.8%(52.4,93.6%)であり、95%信頼区間の下限が、設定した閾値である11%を上回った
4)。
副作用発現頻度は44.4%(8/18例)であった。認められた副作用は、悪心11.1%(2/18例)、腹部不快感、消化不良、嘔吐、ウィルス感染、味覚異常、咳嗽、湿疹及び高血圧 各5.6%(1/18例)であった。
<効能共通>
21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
<副甲状腺癌における高カルシウム血症、副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症における高カルシウム血症>
21.2 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。