2.1 エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば、乳癌、子宮内膜癌)及びその疑いのある患者、卵巣、下垂体又は視床下部に腫瘍のある患者[腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すおそれがある。][
5.1参照]
2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[
9.5参照]
2.3 診断の確定していない不正出血のある患者[悪性腫瘍の疑いがある。]
2.4 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.5 多のう胞性卵巣症候群に起因しない卵巣のう胞又は卵巣腫大のある患者[卵胞刺激作用によりその症状を悪化させることがある。]
2.7 十分にコントロールされていない甲状腺又は副腎機能不全の患者[症状を悪化させることがある。][
5.1参照]
○生殖補助医療における調節卵巣刺激
○視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発
<効能共通>
5.1 本剤の投与の適否は、患者及びパートナーの検査を十分に行った上で判断すること。原発性卵巣不全が認められる場合や妊娠不能な性器奇形又は妊娠に不適切な子宮筋腫の合併等の妊娠に不適当な場合には本剤を投与しないこと。また、甲状腺機能低下、副腎機能低下、高プロラクチン血症及び下垂体又は視床下部腫瘍等が認められた場合、当該疾患の治療を優先すること。[
2.1、
2.7参照]
<視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発>
5.2 患者の選択
5.2.1 対象患者
本剤を用いた一般不妊治療の対象は、クロミフェンクエン酸塩療法が奏効しない、自発月経を有するか又はプロゲステロン製剤投与により消退出血の認められる第1度無月経、無排卵周期症、多嚢胞性卵巣症候群若しくは希発月経の患者である。
5.2.2 対象外患者
本剤は黄体形成ホルモンを含有しない製剤であり、黄体形成ホルモンの基礎分泌の認められない患者に対しては無効であるため、これらの患者は本治療の対象から除外すること。また、プロゲステロン製剤投与では反応せず、エストロゲン・プロゲステロン製剤投与により初めて消退出血の認められる第2度無月経の患者では、本剤を単独で用いた場合には低反応が予想されるため、本療法の対象から除外することを考慮すること。
<生殖補助医療における調節卵巣刺激>
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常1日150又は225国際単位を4日間皮下又は筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し(通常75〜375国際単位を6〜12日間)、卵胞が十分に発育するまで継続する。
<視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発>
フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として通常1日50国際単位を7日間皮下又は筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し(卵巣の反応性が低い場合は、原則として、7日間ごとに25国際単位を増量)、卵胞の十分な発育が確認された後、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤等により排卵を誘起する。
<生殖補助医療における調節卵巣刺激>
7.1 患者特性により卵巣の反応性は異なるので、本剤の開始用量は患者特性を考慮して決定(減量又は増量)すること。本剤の用量調節を行う場合には、超音波検査や血清エストラジオール濃度の測定により確認した患者の卵巣反応に応じて行うこと。
<視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発>
7.2 卵巣の反応性が低い場合の増量について、原則として、25国際単位の増量とすること。なお、50国際単位を超える増量での試験は実施されておらず、増量幅に注意し慎重に投与すること。[
17.1.3、
17.1.4参照]
8.1 本剤は不妊治療に十分な知識と経験のある医師のもとで使用すること。本剤投与により予想されるリスク及び注意すべき症状について、あらかじめ患者に説明を行うこと。
8.2本剤を用いた不妊治療により、卵巣過剰刺激症候群があらわれることがあるので、以下のモニタリングを実施すること。
・一般不妊治療においては、本剤投与中及び排卵誘発に使用する薬剤[ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)等]投与前の超音波検査による卵巣反応
・生殖補助医療においては、本剤投与中及び卵胞の最終成熟に使用する薬剤(hCG等)投与前の超音波検査及び血清エストラジオール濃度の測定による卵巣反応
・患者の自覚症状(下腹部痛、下腹部緊迫感、悪心、腰痛等)
・急激な体重増加
・超音波検査等による卵巣腫大
なお、卵巣過剰刺激症候群のリスク因子として、多嚢胞性卵巣症候群、若年、やせ、血清抗ミュラー管ホルモン高値、卵巣過剰刺激症候群の既往、血清エストラジオール高値、発育卵胞数の高値等が知られているので、卵巣過剰刺激症候群のリスク因子を有する患者への対応は慎重に行うこと。
卵巣過剰刺激症候群の徴候が認められた場合には、本剤の投与中断などを行うとともに、少なくとも4日間は性交を控えるように患者に指導すること。また、卵胞の最終成熟又は排卵誘発の延期や中止等の要否を含め実施中の不妊治療の継続の可否を慎重に判断すること。卵巣過剰刺激症候群は、本剤投与中だけではなく、本剤投与後に発現し、軽症又は中等症であっても急速に進行して重症化することがあるため、本剤の最終投与後も少なくとも2週間の経過観察を行い、卵巣過剰刺激症候群の重症度に応じた適切な処置を行うこと。なお、卵巣過剰刺激症候群は、妊娠によって重症化し、長期化することがあることにも留意すること。[1.、
8.3、
9.1.6、
10.2、
11.1.1参照]
8.3 患者に対しては、あらかじめ以下の点を説明すること。
・卵巣過剰刺激症候群があらわれることがあるので、自覚症状(下腹部痛、下腹部緊迫感、悪心、腰痛等)や急激な体重増加が認められた場合には直ちに医師等に相談すること。
8.4 体外受精・胚移植などの生殖補助医療を受ける不妊女性では、異所性妊娠の可能性が高くなる。
8.5 卵巣刺激を受けている女性では一般女性よりも流産率が高い。
8.6 在宅自己注射(皮下注射)を行う場合は、患者に投与法及び安全な廃棄方法の指導を行うこと。
8.6.1 自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。また、投与する際の操作方法を指導すること。適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な場合には、直ちに自己投与を中止させるなど適切な処置を行うこと。
8.6.2 使用済みの注射針あるいはカートリッジを再使用しないように患者に注意を促すこと。
8.6.3 全ての器具の安全な廃棄方法について指導を徹底すること。同時に、使用済みの針及びカートリッジを廃棄する容器を提供することが望ましい。
8.6.4 在宅自己注射を行う前に、本剤専用のペン型注入器の取扱説明書を必ず読むよう指導すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 子宮筋腫のある患者
9.1.2 子宮内膜症のある患者
9.1.3 未治療の子宮内膜増殖症のある患者
9.1.4 乳癌の既往歴のある患者
9.1.5 乳癌家族素因が強い患者、乳房結節のある患者、乳腺症の患者又は乳房レントゲン像に異常がみられた患者
9.1.6 本人及び家族の既往歴等の一般に血栓塞栓症発現リスクが高いと認められる患者
9.1.7 ストレプトマイシンやフラジオマイシンに感受性を持つ患者
本剤の投与を避けること。本剤の製造工程において使用しているストレプトマイシン及びフラジオマイシンが微量に残存している可能性があり、過敏症を引き起こす可能性がある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。他の遺伝子組換えヒト卵巣刺激ホルモン製剤において、動物実験(ラット)で、分娩障害、妊娠期間の延長、吸収胚数の増加及び出生率の低下が認められている。また、動物実験(ウサギ)で、流産、着床後死亡率の増加が認められている。しかし、両種の動物実験で、催奇形性は認められていない。[
2.2参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH)は乳汁中に移行することから、本剤も乳汁中に移行する可能性がある。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 卵巣過剰刺激症候群(4.7%)
本剤を用いた不妊治療により、卵巣腫大、下腹部痛、下腹部緊迫感、腹水、胸水、呼吸困難を伴う卵巣過剰刺激症候群があらわれることがあり、卵巣破裂、卵巣茎捻転、脳梗塞、肺塞栓を含む血栓塞栓症、肺水腫、腎不全等が認められることもある。本剤投与後に卵巣過剰刺激症候群が認められた場合には、重症度に応じて、本剤の投与中止、卵胞の最終成熟又は排卵誘発の延期や中止等の要否を含め、実施中の不妊治療の継続の可否を判断すること。また、卵巣過剰刺激症候群の重症度に応じた適切な処置を行うこと。重度の卵巣過剰刺激症候群が認められた場合には、直ちに本剤の投与を中止し、入院させて適切な処置を行うこと。[1.、
2.6、
8.2、
8.3、
9.1.6、
10.2、
11.1.2参照]
11.1.3 流産(0.3%)、子宮外妊娠(0.1%)、多胎妊娠(29.0%)
11.1.4 アナフィラキシー、アレルギー反応(いずれも頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.5〜1%未満 | 0.5%未満 | 頻度不明 |
精神神経系 | 頭痛 | | |
消化管 | | 下腹部痛、嘔気、腹痛 | 腹部不快感、便秘、下痢 |
女性生殖器 | 腹痛(産婦人科系) | 卵巣捻転、卵巣腫大 | 卵巣のう胞、骨盤痛、乳房圧痛、乳房痛、子宮肥大、不正子宮出血、腟出血 |
投与部位 | 注射部疼痛 | | 挫傷、発赤、腫脹、かゆみ |
その他 | | 腹部腫脹、腹部膨満 | |
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 本剤による治療後、及び他のゴナドトロピン製剤投与後に卵巣捻転が発現したとの報告がある。卵巣過剰刺激症候群、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣、妊娠、過去の腹部手術、また、卵巣捻転や卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣の既往は、卵巣捻転のリスクを高くする可能性がある。
15.1.2 多剤療法を受けた不妊症患者で、卵巣その他生殖器官の良性及び悪性腫瘍の発現が報告されている
1)2)。不妊症患者へのゴナドトロピン投与とこれら腫瘍の発現リスクとの因果関係は証明されていない
3)4)5)。
15.1.3 生殖補助医療後の先天異常の発生率は、自然受胎後に比べわずかに高いとの報告がある
6)7)8)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<生殖補助医療における調節卵巣刺激>
17.1.1 国内第III相試験
体外受精(卵細胞質内精子注入法を含む)を予定する女性153例を対象とした非盲検非対照試験では、本剤の投与を1日150又は225国際単位として4日間皮下投与し、その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し、平均径17mm以上の卵胞が3個以上確認された場合にhCG製剤を投与した。その結果、平均径17mm以上の卵胞が3個以上確認され採卵が実施された149例における採卵数は12.7±9.6個(平均値±標準偏差)であり、最大で3個までの胚が移植され、胚移植実施12〜18週間後における妊娠継続率は本剤投与例の22.9%(35/153例)であった。副作用発現割合は13.7%(21/153例)であり、主な副作用は卵巣過剰刺激症候群9例(5.9%)で、腹部膨満4例(2.6%)、腹水3例(1.3%)であった。
17.1.2 海外第III相試験
上記の国内第III相試験と同様の試験デザインで実施された海外臨床試験(筋肉内投与と皮下投与を比較する無作為化非盲検試験)において、本剤皮下投与例118例では、採卵実施例112例における採卵数は11.7±6.7個(平均値±標準偏差)であり、胚移植実施12〜18週間後における妊娠継続率は26.3%(31/118例)であった。本剤筋肉内投与例77例では、採卵実施例74例における採卵数は10.7±6.8個であり、妊娠継続率は27.3%(21/77例)であった。いずれの投与例においても、最大で3個までの胚が移植された。副作用は卵巣過剰刺激症候群のみであり、副作用発現割合は本剤皮下投与群4.2%(5/118例)、本剤筋肉内投与群2.6%(2/77例)であった。また、ヒト尿由来卵胞刺激ホルモン製剤との比較試験(無作為化評価者盲検試験)の結果、本剤群は有意に総投与量が少なく、投与期間が短かった
11)。
<視床下部−下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発>
17.1.3 国内第III相試験
第1度無月経、無排卵周期症、多嚢胞性卵巣症候群等の不妊女性を対象とした無作為化非盲検ヒト尿由来卵胞刺激ホルモン製剤対照試験では、本剤の投与1日50国際単位として7日間投与し、その後は卵巣の反応が低すぎる場合、7日ごとに50国際単位を増量し、平均径18mm以上の卵胞が1個以上確認された場合にhCG製剤を投与した。その結果、本剤群の排卵率は83.0%(44/53例)、hCG製剤投与(又はhCG製剤を投与しなかった場合は本剤最終投与)10〜12週後における妊娠継続率は9.4%(5/53例)であった。対照薬の投与は1日75国際単位として7日間投与し、その後は卵巣の反応が低すぎる場合、7日ごとに75国際単位増量した。排卵率は87.3%(48/55例)、hCG製剤投与(又はhCG製剤を投与しなかった場合は対照薬最終投与)10〜12週後における妊娠継続率は12.7%(7/55例)であった。本剤群の副作用発現割合は17.0%(9/53例)であり、主な副作用は卵巣過剰刺激症候群4例(7.5%)であった。また、対照群の副作用発現割合は18.2%(10/55例)であり、主な副作用は卵巣過剰刺激症候群、頭痛、卵巣疾患の各2例(3.6%)であった。[
7.2参照]
17.1.4 国内第III相試験
第1度無月経、無排卵周期症、多嚢胞性卵巣症候群等の不妊女性57例を対象とした無作為化非盲検試験では、本剤を1日50国際単位として7日間投与し、その後は卵巣の反応が低すぎる場合、7日ごとに50国際単位を増量する方法を25国際単位を増量する方法と比較した。その結果、本剤50国際単位増量群で排卵率は75.9%(22/29例)、hCG製剤投与(又はhCG製剤を投与しなかった場合は本剤最終投与)10〜12週後における妊娠継続率は10.3%(3/29例)、本剤25国際単位増量群で排卵率は85.7%(24/28例)、妊娠継続率は7.1%(2/28例)であった。本剤50国際単位増量群で副作用発現割合は20.7%(6/29例)であり、主な副作用は卵巣過剰刺激症候群、腹部腫脹の各2例(6.9%)であった。また、本剤25国際単位増量群の副作用発現割合は10.7%(3/28例)であり、副作用は卵巣過剰刺激症候群、卵巣疾患、注射部疼痛及び注射部反応の各1例(3.6%)であった。[
7.2参照]
18.1 作用機序
FSHは、顆粒膜細胞に発現するFSH受容体に結合してエストロゲンの合成を促進し、卵胞の発育及び卵母細胞の成熟に寄与する。
18.2 FSH受容体結合能及びアロマターゼ活性化作用
仔ウシ精巣膜のFSH受容体標本への下垂体由来ヒトFSH(
125I-h FSH)結合を濃度依存的に阻害し、FSH受容体に対する結合親和性を示した。幼若ラットのセルトリ細胞及び顆粒膜細胞のアロマターゼを濃度依存的に活性化し、性ステロイド代謝を亢進させた。なお、これらのFSH受容体結合能及びアロマターゼ活性化作用は、ヒト尿由来卵胞刺激ホルモンと同等であった
12)13)。
18.3 卵胞発育促進及び卵巣重量増加作用
下垂体切除幼若ラットで卵巣内エストラジオール含量の増加を伴う卵胞径の増大や卵胞数の増加などの卵胞発育促進作用とともに、卵巣重量の用量依存的な増加作用が認められた
14)。また、卵巣重量の増加作用は、ヒト尿由来卵胞刺激ホルモンと同等であった
12)。
20.1 凍結を避け、2〜8℃で遮光保存すること。ただし、有効期間内に3ヵ月は遮光で室温(25℃以下)保存可能であること。
20.2 使用開始後28日間を超えたものは使用しないこと。
20.3 本剤のカートリッジの内壁に付着物がみられたり、液中に塊や薄片がみられた場合、又は液が変色した場合は使用しないこと。
20.4 本剤のカートリッジにひびが入っている場合は使用しないこと。