医療用医薬品 : エルレフィオ

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医薬品情報


総称名 エルレフィオ
一般名 エルラナタマブ(遺伝子組換え)
欧文一般名 Elranatamab(Genetical Recombination)
製剤名 エルラナタマブ(遺伝子組換え)製剤
薬効分類名 抗悪性腫瘍剤
抗BCMA/CD3二重特異性抗体
薬効分類番号 4291
ATCコード L01FX32
KEGG DRUG
D12058 エルラナタマブ
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2025年6月 改訂(用法変更)(第3版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
エルレフィオ皮下注44mg ELREXFIO S.C.Injection ファイザー 4291470A1020 558501円/瓶 生物由来製品, 劇薬, 処方箋医薬品注)
エルレフィオ皮下注76mg ELREXFIO S.C.Injection ファイザー 4291470A2027 957222円/瓶 生物由来製品, 劇薬, 処方箋医薬品注)

1. 警告

1.1 本剤の投与は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例のみに行うこと。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与を開始すること。
1.2 重度のサイトカイン放出症候群(CRS)及び免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)があらわれることがあるので、特に治療初期は入院管理等の適切な体制下で本剤の投与を行うこと。[8.111.1.111.1.2参照]
1.3 重度のCRSがあらわれることがあるので、CRSに対する前投与薬の投与等の予防的措置を行うとともに、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、製造販売業者が提供するCRS管理ガイダンス等に従い、適切な処置を行うこと。[7.28.211.1.1参照]
1.4 重度又は生命を脅かす神経学的事象(ICANS含む)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、製造販売業者が提供するICANS管理ガイダンス等に従い、適切な処置を行うこと。[8.38.411.1.2参照]

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)

5. 効能または効果に関連する注意

5.1 本剤による治療は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも3つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とすること。[17.1.1参照]
5.2 臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.1参照]

6. 用法及び用量

通常、成人にはエルラナタマブ(遺伝子組換え)として、1日目に12mg、4日目に32mgを1回皮下投与する。8日目以降は1回76mgを1週間間隔で皮下投与する。なお、24週間以上投与し、奏効が認められている場合は、投与間隔を2週間間隔とすること。2週間間隔で24週間以上投与した場合は、投与間隔を4週間間隔とすることができる。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 他の抗悪性腫瘍剤との併用における有効性及び安全性は確立していない。
7.2 本剤投与によるサイトカイン放出症候群(CRS)を軽減させるため、1日目、4日目及び8日目の投与については、本剤投与開始の約1時間前に、解熱鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤及び抗ヒスタミン剤を投与すること。[1.37.48.211.1.1参照]
7.3 本剤投与により副作用が発現した場合には、次の基準を参考に本剤を休薬又は中止すること。
副作用発現時の本剤の休薬又は中止基準
副作用重症度注)処置
サイトカイン放出症候群(CRS)Grade1、2又は3(初発)回復するまで本剤を休薬する。
Grade3(再発)又はGrade4本剤の投与を中止する。
免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)Grade1、2又は3(初発)回復するまで本剤を休薬する。
Grade3(再発)又はGrade4本剤の投与を中止する。
血液学的毒性好中球数が500/μL未満500/μL以上に回復するまで本剤を休薬する。
発熱性好中球減少症好中球数が1,000/μL以上に回復し発熱が治まるまで本剤を休薬する。
ヘモグロビンが8g/dL未満8g/dL以上に回復するまで本剤を休薬する。
血小板数が25,000/μL未満
血小板数が25,000/μL〜50,000/μLの間で出血がある
25,000/μL以上に回復し出血が治まるまで本剤を休薬する。
その他の非血液学的毒性Grade3又は4・Grade1以下又はベースラインに回復するまで本剤を休薬する。
・回復しない場合は本剤の投与を中止する。
7.4 副作用等の理由による休薬後に本剤を再開する場合は、下表を参考に投与すること。以降は、用法・用量の投与スケジュールに準じること。[7.2参照]
休薬後に再開する場合の用量
休薬直前の用量休薬期間再開時の用量
12mg2週間(14日)以内の休薬4日目の投与量(32mg)で投与する注)
2週間(14日)を超える休薬1日目の投与量(12mg)で投与する注)
32mg2週間(14日)以内の休薬8日目の投与量(76mg)で投与する注)
2週間を超え、4週間以内(15日から28日まで)の休薬32mgで投与する注)。忍容性が認められた場合には1週間後に76mgを投与する注)
4週間(28日)を超える休薬1日目の投与量(12mg)で投与する注)
76mg12週間(84日)以内の休薬76mgで投与する。
12週間(84日)を超える休薬1日目の投与量(12mg)で投与する注)

8. 重要な基本的注意

8.1 サイトカイン放出症候群(CRS)及び免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は投与初期に多く認められることから、少なくとも初回投与(12mg投与)後48時間及び2回目の投与(32mg投与)後24時間は必ず入院管理とし、以降の投与についても患者の状態に応じて入院管理を検討すること。[1.211.1.111.1.2参照]
8.2 CRSがあらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、以下の事項に注意すること。[1.37.211.1.1参照]
8.2.1 CRSに対する前投与薬の投与等の予防的措置を行うこと。
8.2.2 本剤の投与中は発熱、低酸素症、悪寒、低血圧、頻脈、頭痛、肝酵素増加等について、観察を十分に行うこと。また、CRSが疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。
8.2.3 緊急時に備えてトシリズマブ(遺伝子組換え)を速やかに使用できるように準備しておくこと。
8.3 神経学的事象(ICANS含む)があらわれることがあるので、本剤の投与中は、失語症、意識レベルの変化、認知能力の障害、筋力低下、痙攣発作、脳浮腫等について、観察を十分に行うこと。また、ICANSが疑われる症状があらわれた場合には、速やかに医療機関を受診するよう患者を指導すること。[1.411.1.2参照]
8.4 神経学的事象(ICANS含む)として意識レベルの変化、痙攣発作等があらわれることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。[1.411.1.2参照]
8.5 感染症(日和見感染症を含む)の発現若しくは悪化、又はサイトメガロウイルス感染等の再活性化があらわれることがあるので、本剤投与に先立ってニューモシスチス・イロベチイ等の感染の有無を確認すること。本剤投与前に適切な処置を行い、本剤の投与中は感染症の発現又は悪化に十分注意すること。[9.1.111.1.3参照]
8.6 血球減少があらわれることがあるので、本剤の投与開始前及び投与中は定期的に血液検査(血球数算定、白血球分画等)を実施すること。[11.1.5参照]
8.7 低γグロブリン血症があらわれることがあるので、本剤の投与開始前及び投与中は定期的に免疫グロブリンの値を測定すること。[11.1.6参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 感染症を合併している患者
血球減少により感染症が悪化するおそれがある。[8.511.1.3参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後4ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。[9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。本剤を用いた生殖発生毒性試験は実施されていない。ヒトIgGは胎盤通過性があることが知られており、本剤の作用機序から、本剤の妊娠中の曝露により、B細胞リンパ球減少症及び発育遅延等、胎児に有害な影響を及ぼす可能性がある。[9.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤のヒト母乳中への移行に関するデータはないが、ヒトIgGは母乳中に移行することが知られている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

10.2 併用注意
治療域の狭いCYP基質
シクロスポリン、フェニトイン、シロリムス等
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、本剤の投与開始から32mg投与の14日後まで、並びにサイトカイン放出症候群発現時及び発現後一定期間は、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤の投与によりサイトカインが放出され、CYPが抑制されることにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
生ワクチン又は弱毒生ワクチン接種した生ワクチンの原病に基づく症状が発現した場合には適切な処置を行う。本剤のBリンパ球傷害作用により発病するおそれがある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 サイトカイン放出症候群(CRS)(57.9%)
異常が認められた場合には、製造販売業者が提供するCRS管理ガイダンス等に従い、本剤の投与中止、副腎皮質ホルモン剤、トシリズマブ(遺伝子組換え)の投与等の適切な処置を行うこと。[1.21.37.28.18.2参照]
11.1.2 神経学的事象(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)含む)
末梢性ニューロパチー(10.4%)、頭痛(9.3%)、ICANS(3.3%)、錯乱状態(2.7%)、ギラン・バレー症候群(0.5%)、浮動性めまい(0.5%)、意識レベルの低下(頻度不明)、失神(頻度不明)等の神経学的事象があらわれることがある。異常が認められた場合には、製造販売業者が提供するICANS管理ガイダンス等に従い、本剤の投与中止、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。[1.21.48.18.38.4参照]
11.1.3 感染症
上気道感染(18.6%)、サイトメガロウイルス感染(7.1%)、肺炎(7.1%)、尿路感染(4.4%)、敗血症(3.8%)、敗血症性ショック(0.5%)、ニューモシスチス・イロベチイ肺炎(1.6%)等の感染症があらわれることがある。[8.59.1.1参照]
11.1.4 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)
死亡に至った症例も報告されているので、本剤の投与中及び投与終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知機能障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、構音障害、失語等の症状があらわれた場合には、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.5 血球減少
好中球減少症(36.6%)、貧血(26.8%)、リンパ球減少症(24.0%)、血小板減少症(19.7%)、白血球減少症(13.1%)、発熱性好中球減少症(2.2%)等があらわれることがある。[8.6参照]
11.1.6 低γグロブリン血症(12.0%)
異常が認められた場合には適切な処置(免疫グロブリン補充療法を定期的に行う等)を行うとともに、感染症の兆候等に対する観察を十分に行うこと。[8.7参照]
11.1.7 間質性肺疾患(1.6%)
異常が認められた場合には、本剤の投与を中止し、必要に応じて、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施するとともに、適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 10%以上2%以上10%未満2%未満
皮膚発疹、皮膚乾燥皮膚剥脱、紅斑、そう痒症、多汗症手足症候群、皮膚病変
消化器下痢、悪心嘔吐、便秘胃食道逆流性疾患、口内乾燥、腹痛、口内炎
代謝・栄養障害食欲減退低カリウム血症、低マグネシウム血症低アルブミン血症、低ナトリウム血症、低リン血症、高カルシウム血症、腫瘍崩壊症候群、鉄欠乏
精神・神経系 味覚異常、平衡障害錯感覚、失神寸前の状態、不眠症
呼吸器 呼吸困難、咳嗽、湿性咳嗽、口腔咽頭痛、鼻閉低酸素症、気管支拡張症、急性呼吸不全、上気道咳症候群、鼻漏、慢性気管支炎
筋骨格系 関節痛、骨痛、筋肉痛、筋痙縮四肢痛、背部痛、関節炎
肝臓ALT増加AST増加、ALP増加、GGT増加、LDH増加血中ビリルビン増加
循環器 洞性頻脈低血圧、頻脈
 視覚障害ドライアイ、眼充血
腎臓  急性腎障害、血中クレアチニン増加
その他注射部位反応(37.7%)、疲労、無力症発熱、悪寒、体重減少、浮腫、C-反応性蛋白増加、倦怠感全身健康状態悪化、インフルエンザ様疾患、SARS-CoV-2検査陽性、サイトメガロウイルス検査陽性、眼球浮腫、顔面浮腫

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 使用前にバイアルに粒子や変色がないかを目視で確認すること。粒子又は変色が認められた場合には使用しないこと。
14.1.2 投与量に合わせて、バイアルから必要量を抜き取り、希釈せずに使用すること。
14.1.3 調製後は速やかに使用すること。直ちに使用しない場合はシリンジを2〜30℃で保管し、4時間以内に使用すること。
14.1.4 本剤のバイアルは使い切りであり、保存剤を含まない。バイアルから必要量を1回抜き取った後は、バイアルごと残液を適切に廃棄すること。
14.1.5 本剤は、無菌的に調製を行うこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 本剤は皮下注射で投与すること。注射部位は腹部が推奨されるが、腹部に注射ができない場合は、大腿部を選択することもできる。
14.2.2 他の薬剤と混合しないこと。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
臨床試験において、本剤に対する抗体の産生が報告されている2)

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 反復投与
日本人再発又は難治性の多発性骨髄腫患者4例に、1日目に本剤600μg/kg注)、8日目に本剤1,000μg/kg注)を皮下投与したときの可溶性B細胞成熟抗原(sBCMA)非結合型エルラナタマブ並びに総エルラナタマブ[sBCMA非結合型及びsBCMA結合型]の薬物動態パラメータを下表に示す3)
注)本剤の承認された用法及び用量は、下記のとおりである。
通常、成人にはエルラナタマブ(遺伝子組換え)として、1日目に12mg、4日目に32mgを1回皮下投与する。8日目以降は1回76mgを1週間間隔で皮下投与する。なお、24週間以上投与し、奏効が認められている場合は、投与間隔を2週間間隔とすること。2週間間隔で24週間以上投与した場合は、投与間隔を4週間間隔とすることができる。
測定対象投与量(μg/kg)薬物動態パラメータ
AUCtau(μg・day/mL)Cmax(μg/mL)Tmaxa)(day)
非結合型エルラナタマブ6004.04(33)0.853(39)7.00(2.96-8.00)
10005.83,15.1b)2.10(91)5.99(2.99-8.97)
総エルラナタマブ60021.2(42)4.38(33)7.00(2.96-8.00)
100043.1,47.3b)8.85(39)2.98(2.08-5.98)
再発又は難治性の多発性骨髄腫患者(日本人を含む)に、1サイクルを28日とし、第1サイクルの第1日目及び第4日目にそれぞれ本剤12及び32mgを皮下投与、第1サイクルの第8日目以降は76mgを1週間に1回皮下投与したときの第7サイクル(定常状態)における非結合型エルラナタマブ及び総エルラナタマブのトラフ濃度を下表に示す4)
測定対象例数トラフ濃度(μg/mL)
非結合型エルラナタマブ3833.8(60)
総エルラナタマブ3835.6(55)
再発又は難治性の多発性骨髄腫患者321例(日本人を含む)のデータを用いて、母集団薬物動態解析を実施した。第1日目及び第4日目にそれぞれ本剤12及び32mgを皮下投与、第8日目以降は76mgを1週間に1回24週目まで皮下投与し、その後2週間に1回24週間皮下投与し、さらに4週間に1回皮下投与したときの、定常状態における非結合型エルラナタマブの薬物動態パラメータの推定値を下表に示す5)。また、母集団薬物動態解析に基づき、非結合型エルラナタマブの半減期の幾何平均値は22日と推定された6)
薬物動態パラメータa)
Cavgb)(μg/mL)Cmax(μg/mL)Ctrough(μg/mL)
24週目32.0(46)33.0(46)30.5(48)
48週目17.7(53)19.5(51)15.1(60)
72週目8.8(58)11.5(54)5.9(78)
16.2 吸収
母集団薬物動態解析に基づき、皮下投与時のエルラナタマブの絶対的バイオアベイラビリティの平均値は56.2%と推定された7)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第II相試験(C1071003試験)
免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤のそれぞれ少なくとも1剤による前治療歴を有する(ただし、前治療のレジメン数を問わない)再発又は難治性の多発性骨髄腫患者注1)187例(日本人患者12例を含む)を対象として、本剤の有効性及び安全性を検討する非盲検非対照第II相試験を実施した。本試験では、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とした治療による治療歴のない患者をコホートA(日本人患者12例を含む123例)、BCMAを標的とした抗体薬物複合体又はキメラ抗原受容体T細胞療法による治療歴のある患者をコホートB(64例)にそれぞれ組み入れた。
用法・用量は、1サイクルを28日間とし、第1サイクルの第1日目及び第4日目にそれぞれ本剤12及び32mgを皮下投与注2)、第1サイクルの第8日目以降は76mgを1週間に1回皮下投与し、疾患進行又は投与中止基準に該当するまで投与を継続した。また、76mgの週1回投与を少なくとも6サイクル実施し、部分奏効以上の奏効が2ヵ月以上持続している場合、投与間隔を2週間に1回に変更した。また、2週間間隔投与を少なくとも6サイクル実施した場合、投与間隔を4週間に1回に変更することとした注3、4)
主要評価項目とされた中央判定注5)による奏効率(%)(部分奏効以上の最良総合効果を示した患者の割合)は、コホートAで61.0(95%信頼区間:51.8,69.6)(75/123例)、コホートBで29.7(95%信頼区間:18.9,42.4)(19/64例)であった(データカットオフ日:2022年6月17日)8)
本剤が投与された183例注6)(日本人患者12例を含む)中167例(91.3%)に副作用が認められた。主な副作用は、サイトカイン放出症候群106例(57.9%)、注射部位反応69例(37.7%)、好中球減少症67例(36.6%)、貧血49例(26.8%)、リンパ球減少症44例(24.0%)、血小板減少症36例(19.7%)、上気道感染34例(18.6%)、疲労32例(17.5%)、下痢29例(15.8%)、食欲減退28例(15.3%)等であった(データカットオフ日:2024年3月26日)。[5.15.2参照]
注1)免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤のそれぞれ少なくとも1剤に対して難治性を示し、かつ直近の治療に対して再発又は難治性の患者が対象とされた。
注2)最初に組み入れられたコホートAの4例は、第1日目に本剤44mgが投与され、第1サイクルの第8日目以降から76mgが週に1回投与された。
注3)主要評価項目の最終解析後に治験実施計画書を改訂(2023年3月22日)
注4)投与間隔の変更は、2週間間隔投与を6サイクル実施した後のいずれの時点でも可能とした。
注5)国際骨髄腫ワーキンググループの効果判定規準に従った判定
注6)本剤44mgの投与後に76mgの週1回投与を受けたコホートAの4例を除く。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
エルラナタマブは、B細胞成熟抗原(BCMA)及びCD3に対するヒト化免疫グロブリン(Ig)G2二重特異性モノクローナル抗体である。エルラナタマブは、T細胞の細胞膜上に発現するCD3と骨髄腫細胞の細胞膜上に発現するBCMAの両者に結合することによりT細胞を活性化し、BCMA陽性の腫瘍細胞を傷害すると考えられる。
18.2 抗腫瘍作用
エルラナタマブは、ヒトCD3陽性T細胞の存在下において、BCMAを発現するヒト多発性骨髄腫由来細胞株(MM.1S、OPM2、MOLP8等)に対して増殖抑制作用を示した(in vitro9)
エルラナタマブは、ヒト多発性骨髄腫由来細胞株(MM.1S、OPM2及びMOLP8)を尾静脈内に移植し、ヒトT細胞を腹腔内移植したインターロイキン2受容体γ鎖の完全欠損を有する非肥満型糖尿病/重症複合型免疫不全マウスにおいて、腫瘍増殖抑制作用を示した(in vivo10)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. エルラナタマブ(遺伝子組換え)

一般的名称 エルラナタマブ(遺伝子組換え)
一般的名称(欧名) Elranatamab(Genetical Recombination)
分子式 抗BCMA-H鎖 C2144H3310N570O662S19
抗CD3ε-H鎖 C2194H3390N602O669S18
抗BCMA-L鎖 C1041H1614N280O336S6
抗CD3ε-L鎖 C1061H1654N286O343S6
分子量 約149,000
理化学知見その他 エルラナタマブは、B細胞成熟抗原(BCMA)及びCD3ε鎖に対する遺伝子組換え二重特異性モノクローナル抗体であり、抗BCMA抗体はヒトIgG2に由来し、抗CD3ε抗体の相補性決定部はマウス抗体に、その他はヒトIgG2に由来する。抗BCMA-H鎖の6つのアミノ酸残基が置換(C218E,P223E,D259A,A324S,P325S,L362E)されている。また、抗CD3ε-H鎖の7つのアミノ酸残基が置換(C224R,E226R,P229R,D265A,A330S,P331S,K409R)されている。エルラナタマブは、CHO細胞により産生される。エルラナタマブは、441個のアミノ酸残基からなる抗BCMA-H鎖(γ2鎖)1本、447個のアミノ酸残基からなる抗CD3ε-H鎖(γ2鎖)1本、215個のアミノ酸残基からなる抗BCMA-L鎖(κ鎖)1本及び219個のアミノ酸残基からなる抗CD3ε-L鎖(κ鎖)1本で構成される糖タンパク質(分子量:約149,000)である。
KEGG DRUG D12058

20. 取扱い上の注意

20.1 包装開封後も光曝露を避けるため、バイアルを箱に入れて保存すること。
20.2 バイアルを凍結したり、振盪しないこと。

21. 承認条件

21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
21.2 国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。
21.3 緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、サイトカイン放出症候群の管理等の適切な対応がなされる体制下で本剤が投与されるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。

22. 包装

<エルレフィオ皮下注44mg>
1.1mL[1バイアル]
<エルレフィオ皮下注76mg>
1.9mL[1バイアル]

23. 主要文献

  1. Lee D.W,et al., Biol Blood Marrow Transplant., 25, 625-638, (2019) »PubMed
  2. 免疫原性(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.4.1)
  3. 国内第I相試験(C1071002試験)(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.2.2.3.1)
  4. 社内資料:国際共同第II相試験(C1071003試験)
  5. 社内資料:母集団薬物動態解析
  6. 消失(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.3.2.4)
  7. 吸収(2024年3月26日承認、CTD2.7.2.3.2.1)
  8. 国際共同第II相試験(C1071003試験)(2024年3月26日承認、CTD2.7.3.2.1)
  9. 効力を裏付ける試験(in vitro)(2024年3月26日承認、CTD2.6.2.2.1)
  10. 効力を裏付ける試験(in vivo)(2024年3月26日承認、CTD2.6.2.2.2)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
ファイザー株式会社 Pfizer Connect/メディカル・インフォメーション
〒151-8589 東京都渋谷区代々木3-22-7
電話:0120-664-467
製品情報問い合わせ先
ファイザー株式会社 Pfizer Connect/メディカル・インフォメーション
〒151-8589 東京都渋谷区代々木3-22-7
電話:0120-664-467

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
ファイザー株式会社
東京都渋谷区代々木3-22-7

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版