医療用医薬品 : ジャイパーカ

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医薬品情報


総称名 ジャイパーカ
一般名 ピルトブルチニブ
欧文一般名 Pirtobrutinib
製剤名 ピルトブルチニブ錠
薬効分類名 抗悪性腫瘍剤
可逆的非共有結合型BTK注2)阻害剤 注2)BTK:Bruton's Tyrosine Kinase(ブルトン型チロシンキナーゼ)
薬効分類番号 4291
ATCコード L01EL05
KEGG DRUG
D12050 ピルトブルチニブ
KEGG DGROUP
DG02022 BTK阻害薬
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
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添付文書情報2024年8月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ジャイパーカ錠50mg Jaypirca Tablets 日本イーライリリー 4291084F1027 10201円/錠 劇薬, 処方箋医薬品注1)
ジャイパーカ錠100mg Jaypirca Tablets 日本イーライリリー 4291084F2023 19465.8円/錠 劇薬, 処方箋医薬品注1)

1. 警告

本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

他のBTK阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫

6. 用法及び用量

通常、成人にはピルトブルチニブとして200mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していない。
7.2 本剤投与によりグレード注)3以上の副作用が発現した場合には、ベースライン又はグレード1以下に回復するまで本剤を休薬すること。また、以下の目安を参考に用量調節すること。
注)グレードはNCI-CTCAE ver.5.0に準じる。
用量調節の目安
発現回数回復後の再開時投与量
1回目200mg
2回目100mg
3回目50mg
4回目投与中止

8. 重要な基本的注意

8.1 出血があらわれることがあり、外科的処置に伴って大量出血が生じる可能性があることから、本剤投与中に手術や侵襲的手技を実施する患者に対しては、術前術後の3〜5日程度は本剤の投与中断を考慮すること。[11.1.2参照]
8.2 骨髄抑制があらわれることがあるので、本剤投与に際しては定期的に血液検査を行うこと。[11.1.3参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること1)。[9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。生殖発生毒性試験(ラット)において、器官形成期の妊娠ラットに本剤を投与したところ臨床曝露量注)に相当する用量で胎児体重の減少、胚胎児の死亡及び催奇形性(腎臓欠損・形態異常・位置異常・小型化、尿管欠損、卵巣位置異常、子宮形態異常、胸骨分節形態異常)が認められている1)。[9.49.6参照]
注)臨床推奨用量を投与時の定常状態のAUC
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。本剤が乳汁に移行する可能性があり、乳児が乳汁を介して本剤を摂取した場合、乳児に重篤な副作用が発現するおそれがある。[9.5参照]
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

相互作用序文
本剤は、主にCYP3A4によって代謝され、CYP2C8、CYP2C19、CYP3A、P-gp及びBCRPの阻害作用を示す。
薬物代謝酵素用語
CYP3A4
薬物代謝酵素用語
CYP2C8
薬物代謝酵素用語
CYP2C19
薬物代謝酵素用語
CYP3A
薬物代謝酵素用語
P-gp
薬物代謝酵素用語
BCRP
10.2 併用注意
強い又は中程度のCYP3A誘導剤
リファンピシン
カルバマゼピン
エファビレンツ等
16.7.116.7.2参照]
本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、CYP3A誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。これらの薬剤がCYP3Aの代謝酵素を誘導することにより、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。
CYP2C8の基質となる薬剤
レパグリニド
ピオグリタゾン
モンテルカスト等
16.7.3参照]
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤がCYP2C8を阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
P-gpの基質となる薬剤
ジゴキシン
ダビガトランエテキシラート
エベロリムス等
16.7.4参照]
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤がP-gpを阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
BCRPの基質となる薬剤
ロスバスタチン
イマチニブ
サラゾスルファピリジン等
16.7.5参照]
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤がBCRPを阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
CYP2C19の基質となる薬剤
オメプラゾール
ジアゼパム
ランソプラゾール等
16.7.6参照]
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤がCYP2C19を阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
CYP3Aの基質となる薬剤(経口剤)
ミダゾラム
トリアゾラム
ロミタピド等
16.7.7参照]
これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤が主に消化管におけるCYP3Aを阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 感染症
肺炎(3.0%)等があらわれることがある。
11.1.2 出血
消化管出血(0.6%)、頭蓋内出血(頻度不明)等の出血があらわれることがある。[8.1参照]
11.1.3 骨髄抑制
好中球減少症(9.1%)、血小板減少症(7.9%)、貧血(6.1%)等があらわれることがある。[8.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 10%以上5〜10%未満5%未満
血液及びリンパ系障害  リンパ球増加症
胃腸障害下痢 悪心、腹痛
一般・全身障害及び投与部位の状態疲労 末梢性浮腫
感染及び寄生虫症  上気道感染、尿路感染
傷害、中毒及び処置合併症 挫傷 
筋骨格系及び結合組織障害  関節痛
神経系障害  頭痛
腎及び尿路障害  血尿
呼吸器、胸郭及び縦隔障害  鼻出血
皮膚及び皮下組織障害  発疹、点状出血
心臓障害  心房細動、心房粗動
血管障害  血腫

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
臨床試験において、皮膚癌等の二次性悪性腫瘍が認められたとの報告がある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
反復投与毒性試験(イヌ)において、臨床曝露量未満に相当する用量で角膜への影響(角膜混濁、上皮単細胞壊死、びらん、潰瘍等)が認められている1)

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
日本人の再発又は難治性のB細胞性悪性腫瘍患者3例に本剤200mgを1日1回反復経口投与したときの初回投与後(投与開始1日目)及び定常状態(投与開始8日目)での血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった2)
図1)本剤200mgを1日1回反復経口投与したときの初回投与及び定常状態での血漿中濃度推移(平均値±標準偏差)
表1)本剤200mgを1日1回反復経口投与したときの初回投与及び定常状態での薬物動態パラメータ(幾何平均値及び変動係数%)
 初回投与(投与開始1日目)定常状態(投与開始8日目)
例数33
Cmax(ng/mL)5060(30.6)8610(28.1)
tmax注1)(hr)4.02(2.00-4.15)7.55(2.05-7.75)
AUC注2)(ng・hr/mL)26500(29.0)142000(25.5)
健康成人及び血液悪性腫瘍患者の両方において、tmaxはおよそ2時間であり、AUCの増加は線形を示し、定常状態にはおよそ5日で達した3)。また、血液悪性腫瘍患者においてAUCに基づく累積係数[幾何平均値(変動係数%)]は1.63(26.7%)であった3)(外国人データ)。
16.2 吸収
16.2.1 絶対的バイオアベイラビリティ
健康成人5例に本剤200mgを単回経口投与したときのピルトブルチニブの絶対的バイオアベイラビリティは85.5%であった4)(外国人データ)。
16.2.2 食事の影響
健康成人20例に本剤200mgを高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、空腹時投与に対する食後投与におけるピルトブルチニブのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比はそれぞれ0.929及び0.775であった5)(外国人データ)。
16.3 分布
平均血液/血漿濃度比は0.79であった6)。ヒト血漿蛋白結合率は96%であり、0.5〜50μmol/Lの濃度範囲で濃度依存性は認められなかった7)in vitro)。
16.4 代謝
ピルトブルチニブは主にCYP3A4により不活性代謝物に代謝される8)in vitro)。健康成人4例に[14C]-ピルトブルチニブ約200mgを単回経口投与したとき、投与96時間後までの血漿中には主に未変化体が検出された(血漿中総放射能に対する割合は86.7%)4)(外国人データ)。
16.5 排泄
健康成人に[14C]-ピルトブルチニブ200mgを単回経口投与したとき、投与量の37%(未変化体として18%)が糞便中に排泄され、57%(未変化体として10%)が尿中に排泄された4)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
本剤200mgを単回経口投与したとき、腎機能正常被験者(8例)に対する重度の腎機能障害患者(8例)の非結合形ピルトブルチニブのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ1.34及び0.825であった9)(外国人データ)。なお、透析患者における薬物動態は検討していない。
16.6.2 肝機能障害患者
本剤200mgを単回経口投与したとき、肝機能正常被験者(14例)に対する軽度の肝機能障害患者(8例)の非結合形ピルトブルチニブのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ1.16及び1.39であった。肝機能正常被験者(14例)に対する中等度の肝機能障害患者(8例)の非結合形ピルトブルチニブのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ0.956及び1.11であった。
肝機能正常被験者(14例)に対する重度の肝機能障害患者(6例)の非結合形ピルトブルチニブのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ1.05及び1.00であった10)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 リファンピシン
健康成人12例にリファンピシン(強いCYP3A誘導剤)600mgを1日1回反復経口投与し、本剤200mgを単回経口投与したとき、本剤単独投与時に対するリファンピシン併用投与時のピルトブルチニブのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ0.293及び0.576であった11)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.2 エファビレンツ、ボセンタン、モダフィニル
生理学的薬物動態モデルに基づいたシミュレーションにおいて、本剤(200mgを1日1回反復経口投与)単独投与時に対する[1]エファビレンツ、[2]ボセンタン及び[3]モダフィニル(それぞれ600mgを1日1回反復経口投与、125mgを1日2回反復経口投与及び400mgを1日1回反復経口投与)(中程度のCYP3A誘導剤)併用投与時のピルトブルチニブのAUCtau及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ[1]0.51及び0.67、[2]0.73及び0.80並びに[3]0.80及び0.86と推定された12)。[10.2参照]
16.7.3 レパグリニド
健康成人16例に本剤200mgを1日1回反復経口投与し、レパグリニド(CYP2C8の基質)0.5mgを単回経口投与したとき、レパグリニド単独投与時に対する本剤併用投与時のレパグリニドのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ2.30及び1.98であった13)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.4 ジゴキシン
健康成人16例に本剤200mgとジゴキシン(P-gpの基質)0.25mgを併用して1日1回反復経口投与したとき、ジゴキシン単独投与時に対する本剤併用投与時のジゴキシンのAUCtau及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ1.35及び1.55であった14)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.5 ロスバスタチン
健康成人31例に本剤200mgを1日1回反復経口投与し、ロスバスタチン(BCRPの基質)20mgを単回経口投与したとき、ロスバスタチン単独投与時に対する本剤併用投与時のロスバスタチンのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ2.40及び2.46であった15)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.6 オメプラゾール、カフェイン、S-ワルファリン
健康成人16例に本剤200mgを1日1回反復経口投与し、オメプラゾール(CYP2C19の基質)40mg、カフェイン(CYP1A2の基質)200mg、及びS-ワルファリン(CYP2C9の基質)10mg(ワルファリンとして)をカクテル基質として単回経口投与したとき、カクテル基質単独投与時に対する本剤併用投与時の[1]オメプラゾール、[2]カフェイン及び[3]S-ワルファリンのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ[1]1.56及び1.49、[2]0.940及び0.986並びに[3]1.11及び1.02であった16)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.7 ミダゾラム
健康成人15例に本剤200mgを1日1回反復経口投与し、ミダゾラム(CYP3Aの基質)0.5mgを単回経口投与したとき、ミダゾラム単独投与時に対する本剤併用投与時のミダゾラムのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ1.70及び1.58であった。ミダゾラム0.25mgを単回静脈内投与したとき、ミダゾラム単独投与時に対する本剤併用投与時のミダゾラムのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ1.12及び0.993であった17)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.8 その他
(1)健康成人10例にオメプラゾール(プロトンポンプ阻害剤)40mgを1日1回反復経口投与し、本剤200mgを空腹時に単回経口投与したとき、本剤単独投与時に対するオメプラゾール併用投与時のピルトブルチニブのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ1.11及び1.01であった18)(外国人データ)。
(2)健康成人12例にイトラコナゾール(強いCYP3A阻害剤)200mgを1日1回反復経口投与し、本剤200mgを単回経口投与したとき、本剤単独投与時に対するイトラコナゾール併用投与時のピルトブルチニブのAUCinf及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ1.49及び1.04であった11)(外国人データ)。
(3)健康成人12例にリファンピシン(P-gp阻害剤)600mgを1日1回単回経口投与し、本剤200mgを単回経口投与したとき、本剤単独投与時に対するリファンピシン併用投与時のピルトブルチニブのAUC24h及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ0.968及び0.929であった11)(外国人データ)。
(4)生理学的薬物動態モデルに基づいたシミュレーションにおいて、本剤(200mgを1日1回反復経口投与)単独投与時に対するモダフィニル(200mg1日1回反復経口投与)(弱いCYP3A誘導剤)併用投与時のピルトブルチニブのAUCtau及びCmaxの幾何平均値の比は、それぞれ0.86及び0.90と推定された12)
(5)ピルトブルチニブはBCRPの基質である(in vitro)。
(6)ピルトブルチニブはCYP2B6及びCYP2D6を阻害し、CYP2B6を誘導する(in vitro)。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第I/II相試験(BRUIN-18001試験)
他の共有結合型のBTK阻害剤(イブルチニブ等)に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫患者に本剤200mg注1)を1日1回経口投与した。主要な有効性解析対象65例注2)における、主要評価項目である中央判定による奏効率は56.9%(95%信頼区間:44.0-69.2)であった。また、日本人患者8例注3)における奏効率は50.0%(95%信頼区間:15.7-84.3)であった。なお、他の共有結合型のBTK阻害剤を含む前治療歴を有する芽球様細胞性マントル細胞リンパ腫患者15例における奏効率は46.7%(95%信頼区間:21.3-73.4)であった19)
安全性評価対象となった164例注1)、注4)中104例(63.4%)に副作用が認められた。主な副作用は、疲労(22.0%)、下痢(12.2%)、挫傷(9.8%)、呼吸困難(9.1%)、筋肉痛(8.5%)、血小板数減少(6.7%)、貧血(6.1%)、咳嗽(6.1%)であった。
注1)本剤の開始用量が200mg以外の患者を含む。
注2)他の共有結合型のBTK阻害剤を含む前治療歴を有する非芽球様細胞性マントル細胞リンパ腫患者のうち、投与開始順に65例までが主要な有効性解析対象とされた。
注3)他の共有結合型のBTK阻害剤を含む前治療歴を有する非芽球様細胞性マントル細胞リンパ腫の日本人患者のうち、投与開始順に8例までが有効性解析対象とされた。
注4)本剤単独投与を1回以上受けたすべてのマントル細胞リンパ腫患者

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
ピルトブルチニブは、B細胞に発現するB細胞受容体の下流シグナル伝達分子であるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に対する阻害作用を有する低分子化合物である。ピルトブルチニブは、野生型BTK及び共有結合型のBTK阻害剤に対して耐性となるC481変異を有するBTKに非共有結合し、BTKのキナーゼ活性を可逆的に阻害することにより、B細胞性腫瘍の増殖を抑制すると考えられている20)
18.2 抗腫瘍作用
ピルトブルチニブは、ヒトマントル細胞リンパ腫由来REC-1細胞株を皮下移植したヌードマウス及びC481S変異を有するBTKを発現させたヒトびまん性大細胞型B細胞リンパ腫由来TMD8細胞株を皮下移植した重症複合免疫不全マウス等において、腫瘍増殖抑制作用を示した20)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ピルトブルチニブ

一般的名称 ピルトブルチニブ
一般的名称(欧名) Pirtobrutinib
化学名 5-Amino-3-{4-[(5-fluoro-2-methoxybenzamido)methyl]phenyl}-1-[(2S)-1,1,1-trifluoropropan-2-yl]-1H-pyrazole-4-carboxamide
分子式 C22H21F4N5O3
分子量 479.43
融点 191℃
物理化学的性状 白色〜黄色〜褐色の固体である。
KEGG DRUG D12050

21. 承認条件

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

22. 包装

<ジャイパーカ錠50mg>
30錠[10錠(PTP)×3]
<ジャイパーカ錠100mg>
30錠[10錠(PTP)×3]

23. 主要文献

  1. 社内資料:ピルトブルチニブの毒性試験(2024年6月24日承認、CTD2.6.6)
  2. 社内資料:日本人の血液悪性腫瘍患者でのピルトブルチニブの薬物動態(2024年6月24日承認、CTD2.7.2.3.2.3.1)
  3. 社内資料:健康被験者と血液悪性腫瘍患者でのピルトブルチニブの薬物動態(2024年6月24日承認、CTD2.7.2.1.2.1)
  4. 社内資料:ピルトブルチニブの絶対的バイオアベイラビリティ及びマスバランス試験(LOXO-BTK-20007試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.2)
  5. 社内資料:ピルトブルチニブの薬物動態に及ぼす食事の影響(LOXO-BTK-20009試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.4)
  6. 社内資料:ピルトブルチニブのヒト血液中/血漿中濃度比(LOXO-305-DMPK-009試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.2.2.1.1.2)
  7. 社内資料:ピルトブルチニブのヒト血漿蛋白結合率(LOXO-305-DMPK-060試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.2.2.1.1.3)
  8. 社内資料:ピルトブルチニブの代謝(LOXO-305-DMPK-040試験、LOXO-305-DMPK-065試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.2.2.1.2.2、2.7.2.2.1.2.3)
  9. 社内資料:様々な重症度の腎機能障害を有する被験者におけるピルトブルチニブの薬物動態(LOXO-BTK-20013試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.8)
  10. 社内資料:様々な重症度の肝機能障害を有する被験者におけるピルトブルチニブの薬物動態(LOXO-BTK-20012試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.7)
  11. 社内資料:ピルトブルチニブとイトラコナゾール及びリファンピシンの相互作用(LOXO-BTK-20006試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.9)
  12. 社内資料:ピルトブルチニブの生理学的薬物動態解析(LOXO-305-DMPK-064試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.2.2.2.4.3、審査報告書)
  13. 社内資料:ピルトブルチニブとレパグリニドの相互作用(LOXO-BTK-20016試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.12)
  14. 社内資料:ピルトブルチニブとジゴキシンの相互作用(LOXO-BTK-20021試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.13)
  15. 社内資料:ピルトブルチニブとロスバスタチンの相互作用(J2N-MC-JZNW試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.14)
  16. 社内資料:ピルトブルチニブとプローブ薬カクテルの相互作用(LOXO-BTK-20010試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.11)
  17. 社内資料:ピルトブルチニブとミダゾラムの相互作用(LOXO-BTK-20008試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.10)
  18. 社内資料:ピルトブルチニブ薬物動態に及ぼす食事の影響及びオメプラゾールとの相互作用(LOXO-BTK-20014試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.3)
  19. 社内資料:ピルトブルチニブの第I/II相試験(LOXO-BTK-18001試験)(2024年6月24日承認、CTD2.7.6.16、審査報告書)
  20. 社内資料:ピルトブルチニブの薬理試験(2024年6月24日承認、CTD2.6.2)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
日本新薬株式会社 製品情報担当
〒601-8550 京都市南区吉祥院西ノ庄門口町14
電話:フリーダイヤル 0120-321-372
075-321-9064
FAX:075-321-9061
製品情報問い合わせ先
日本新薬株式会社 製品情報担当
〒601-8550 京都市南区吉祥院西ノ庄門口町14
電話:フリーダイヤル 0120-321-372
075-321-9064
FAX:075-321-9061

25. 保険給付上の注意

本剤は新医薬品であるため、厚生労働省告示第107号(平成18年3月6日付)に基づき、2025年8月末日までは、投薬は1回14日分を限度とされている。

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
日本イーライリリー株式会社
神戸市中央区磯上通5丁目1番28号
26.2 販売元
日本新薬株式会社
京都市南区吉祥院西ノ庄門口町14

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版