2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 先天性QT延長症候群又はTorsade de pointesの既往のある患者[QT間隔の過度な延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)を起こすおそれがある。]
遅発性ジスキネジアと診断された患者※に使用すること。
※米国精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM;Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」及び米国精神医学会の「統合失調症治療ガイドライン」の最新版を参考にすること。
通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回80mgを超えないこととする。
7.1 本剤の初回投与量は1日1回40mgを上限に1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ増量を検討すること。本剤の投与量は必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら調節すること。[
7.2、
7.3参照]
7.2 以下の患者では、活性代謝物の血漿中濃度が上昇し、QT延長等の副作用を発現するおそれがあるため、本剤の初回投与量は1日1回20mgとし、増量する場合には、1日1回40mgを超えないこと。[7.1、8.3、9.1.1、9.3.1、10.2、16.6.1、16.6.3、16.7.1、17.3.1参照]
・遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)(中程度以上のCYP3A阻害剤を使用する場合は除く)[
7.3参照]
・中等度以上の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラス:B又はC)
・強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン等)を使用中の患者(中程度以上のCYP3A阻害剤も併用する場合は除く)[
7.3参照]
・強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を使用中の患者(中程度以上のCYP2D6阻害剤も併用する場合は除く)[
7.3参照]
7.3 以下の患者では、活性代謝物の血漿中濃度が上昇し、過度なQT延長等の副作用を発現するおそれがあるため、本剤との併用は可能な限り避けること。やむを得ず併用する場合には、1日1回20mgを投与し、増量を行わないこと。[7.1、8.3、9.1.1、10.2、16.7.1、17.3.1参照]
・中程度以上のCYP2D6阻害剤と中程度以上のCYP3A阻害剤の両方を使用中の患者
・遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明しており中程度以上のCYP3A阻害剤を使用中の患者
7.4 空腹時に本剤を投与した場合、食後投与と比較してバルベナジンの血漿中濃度が上昇するおそれがあるため、食後に本剤を投与している患者に本剤を増量する際には、用量調整の前後で食事条件の変更は行わないこと。[
16.2.1参照]
8.1 遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬の長期使用に関連して発現するとされているため、原因薬剤の減量又は中止を検討すること。ただし、原因薬剤を減量又は中止した場合に、精神症状の増悪や再発に繋がるおそれがあるため、慎重に判断すること。
8.2 傾眠、鎮静等が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。[
11.1.1参照]
8.3 活性代謝物の血漿中濃度が上昇した際に、QT延長があらわれるおそれがあるので、以下の患者では、本剤の投与前及び投与中は定期的に心電図検査を行う等、患者の状態を慎重に観察すること。[7.2、7.3、9.1.1、9.1.2、9.3.1、10.2、16.6.1、16.6.3、16.7.1、17.3.1参照]
・遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者
・QT延長を起こしやすい患者(著明な徐脈等の不整脈又はその既往のある患者、うっ血性心不全の患者、低カリウム血症又は低マグネシウム血症のある患者)
・中等度以上の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラス:B又はC)
・強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン等)を使用中の患者
・強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を使用中の患者
・CYP2D6阻害剤と中程度以上のCYP3A阻害剤の両方を使用中の患者
・QT延長を起こすことが知られている薬剤を使用中の患者
8.4 患者及びその家族等にうつ病や不安等の精神症状の可能性について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うように指導すること。
8.5 うつ病や不安等の精神症状があらわれることがあるので、本剤投与中及び投与終了後一定期間は患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。関連する症状があらわれた場合には、本剤の減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
8.6 うつ症状を呈する患者は、希死念慮、自殺企図のおそれがあるので、投与開始早期及び投与量を変更する際には、患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。[
9.1.3参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者
9.1.2 QT延長を起こしやすい患者(著明な徐脈等の不整脈又はその既往のある患者、うっ血性心不全の患者、低カリウム血症又は低マグネシウム血症のある患者)
9.1.3 自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者
自殺念慮、自殺企図があらわれるおそれがある。[
8.6参照]
9.1.4 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 中等度以上の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラス:B又はC)
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ラットにおいてバルベナジン及びその代謝物の胎盤通過性が認められている。また、ラットにおいて、臨床曝露量を下回る用量で母動物の体重増加抑制及び摂餌量の減少、並びに生存出生児数の減少が認められている。加えて、ウサギにおいて、臨床曝露量を下回る用量で母動物の体重増加抑制及び摂餌量の減少に伴う、胎児の骨化遅延及び胎児体重の減少が認められている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ラットにおいて、バルベナジン及びその代謝物の乳汁中への移行が認められている。
9.7 小児等
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 傾眠、鎮静
傾眠(16.9%)、鎮静(1.2%)があらわれることがある。[
8.2参照]
11.1.2 重篤な過敏症
重篤な発疹(0.4%)、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫(いずれも頻度不明)等があらわれることがある。
11.1.3 錐体外路障害
流涎過多(11.2%)、振戦(7.2%)、アカシジア(6.8%)、パーキンソニズム(2.4%)、錐体外路障害(2.0%)、運動緩慢(1.2%)、落ち着きのなさ、姿勢異常(いずれも0.8%)、ジストニア、表情減少、筋固縮、筋骨格硬直、歩行障害、突進性歩行、運動障害(いずれも0.4%)等があらわれることがある。
11.1.4 悪性症候群(頻度不明)
無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合は、投与を中止し、体冷却、水分補給等の全身管理とともに適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CKの上昇がみられることが多く、また、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。[
9.1.4参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 5%以上 | 1%以上5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
| 精神・神経系 | | 遅発性ジスキネジアの悪化、不眠症、浮動性めまい、統合失調症の悪化、うつ病の悪化、抑うつ状態、不安 | 頭痛、感覚鈍麻、感情の平板化、自殺念慮、自殺企図、双極性障害の悪化、脱抑制、激越、軽躁、無為、大うつ病の悪化、異常行動、注意力障害、構語障害、痙攣発作、協調運動異常、意識消失、昏迷、認知障害 | |
| 耳 | | | 回転性めまい、感音性難聴、耳鳴 | |
| 循環器 | | | 動悸、徐脈、心室性期外収縮、低血圧 | |
| 呼吸器 | | | 呼吸困難、口腔咽頭痛、咳払い | |
| 消化器 | | 便秘、嚥下障害、食欲減退、悪心、口渇 | 下痢、腹部不快感、口内乾燥、胃炎、食欲亢進、腹部膨満、口の感覚鈍麻 | |
| 肝臓 | | 肝機能検査値上昇 | 肝機能異常 | |
| 皮膚 | | 発疹 | 湿疹、蕁麻疹、水疱、紅斑性皮疹、中毒性皮疹 | |
| 筋骨格系 | | | 筋力低下、背部痛、四肢痛 | |
| 全身症状 | 倦怠感(7.2%) | 体重増加、疲労、体重減少 | 無力症、薬物離脱症候群、活動性低下、異常感、不快感、末梢性浮腫 | |
| 臨床検査 | | | 血中クレアチンホスホキナーゼ増加、尿中ブドウ糖陽性 | 血中プロラクチン増加 |
| その他 | | | 扁桃炎、乳腺炎、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、歯ぎしり、眼瞼下垂、排尿困難、乳汁漏出症、不規則月経、挫傷、転倒、皮膚擦過傷 | |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
国内臨床試験において、本剤を投与された249例中8例(本剤40mg群3例、本剤80mg群5例)に死亡が報告された。このうち7例は本剤との関連性が否定されているが、本剤40mg群1例の死亡は、原因不明であり、本剤との関連性が否定されていない。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人に、バルベナジン40mg、80mg及び160mgを絶食下で単回経口投与したときのバルベナジン及び活性代謝物の平均血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりである
1)。
注)本剤の承認最大用量は80mgである。
図 健康成人にバルベナジンを絶食下で単回経口投与したときの血漿中バルベナジン濃度推移(投与量40mg及び80mg、n=8、平均値±標準偏差)
図 健康成人にバルベナジンを絶食下で単回経口投与したときの血漿中バルベナジン濃度推移(投与量160mg、n=8、平均値±標準偏差)
図 健康成人にバルベナジンを絶食下で単回経口投与したときの血漿中活性代謝物濃度推移(投与量40mg及び80mg、n=8、平均値±標準偏差)
図 健康成人にバルベナジンを絶食下で単回経口投与したときの血漿中活性代謝物濃度推移(投与量160mg、n=8、平均値±標準偏差)
表 健康成人にバルベナジンを単回経口投与したときの薬物動態パラメータ
| | 投与量 | Cmax(ng/mL) | AUC0-∞(ng・h/mL) | tmax(h) |
| バルベナジン | 40mg | 542±164 | 3625±846.4 | 0.75(0.50-2.00) |
| 80mg | 1260±344 | 8535±1797 | 0.50(0.50-1.00) |
| 160mg | 3010±837 | 18051±4225 | 0.75(0.50-1.00) |
| 活性代謝物 | 40mg | 9.89±2.94 | 349.3±99.6 | 6.00(4.00-12.00) |
| 80mg | 24.6±5.88 | 773.1±217.0 | 4.00(4.00-8.00) |
| 160mg | 55.4±15.8 | 1675±372 | 4.00(4.00-8.00) |
16.1.2 反復投与
健康成人に、バルベナジン40mgを1日1回8日間絶食下で反復経口投与したときの投与8日目の薬物動態パラメータは下表のとおりであった。バルベナジン及び活性代謝物の血漿中濃度は反復投与8日以内に定常状態に到達すると推定された
1)。
表 健康成人にバルベナジンを1日1回8日間絶食下で反復経口投与したときの薬物動態パラメータ
| | 投与量 | Cmax(ng/mL) | AUC0-24(ng・h/mL) | tmax(h) |
| バルベナジン | 40mg | 465±120 | 3832±807.3 | 0.75(0.50-3.00) |
| 活性代謝物 | 40mg | 29.0±10.9 | 520.6±216.2 | 4.00(3.00-4.00) |
母集団薬物動態解析(日本人及び外国人データ)に基づくシミュレーションから、バルベナジン80mgを1日1回反復経口投与したとき日本人における薬物動態パラメータは下表のとおりであった
2)。
表 日本人にバルベナジン80mgを1日1回反復経口投与したときの薬物動態パラメータ
| | Cmax(ng/mL) | AUC0-24h(ng・h/mL) |
| バルベナジン | 695 | 6475 |
| 活性代謝物 | 53.1 | 1076 |
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人に、バルベナジン80mgを空腹時又は高脂肪高カロリー食摂取後に単回投与したときのバルベナジンのCmax及びAUC
0-∞の幾何平均値の比(食後/空腹時、%)とその90%信頼区間は、それぞれ、54%[50%,58%]及び87%[85%,90%]であった。活性代謝物のCmaxは空腹時と比較して、食後投与で僅かに低下し、活性代謝物のAUC
0-∞は空腹時と食後投与時で同程度であった。空腹時と比較して、バルベナジン及び活性代謝物のtmaxの中央値は食後投与で延長した(外国人データ)
3)。[
7.4参照]
表 健康成人における空腹時又は食後投与時の薬物動態パラメータ
| | 投与条件 | Cmax(ng/mL) | AUC0-∞(ng・h/mL) | tmax(h) |
| バルベナジン | 空腹時 | 769±230 | 6010±1530 | 0.63(0.50-2.0) |
| 食後 | 409±112 | 5200±1270 | 3.0(1.3-4.0) |
| 活性代謝物 | 空腹時 | 25.1±6.55 | 711±181 | 4.0(3.0-8.0) |
| 食後 | 20.5±5.35 | 666±165 | 8.0(4.0-10) |
16.2.2 絶対的バイオアベイラビリティ
健康成人男性(6名)にバルベナジン50mgを空腹時に経口投与し、さらに[
14C]標識バルベナジンを単回静脈内投与したときの血漿中非標識バルベナジン及び[
14C]標識バルベナジン濃度から算出したバルベナジンの経口投与時の絶対的バイオアベイラビリティは48.6%であった
4)。
16.3 分布
バルベナジン(1000ng/mL)及び活性代謝物(10ng/mL)のヒト血漿中タンパク結合率は、それぞれ99.9%及び62.9%であった(in vitro)
5)。
16.4 代謝
16.4.1 健康成人男性(6名)に[
14C]標識バルベナジン50mgを単回経口投与したとき、血漿中における総放射能曝露量の42%をバルベナジンが占めており、活性代謝物(バリンエステルの加水分解体)は10%、バルベナジンの水酸化体代謝物は13%、活性代謝物の水酸化代謝物は8%であった(外国人データ)
4)。
16.4.2 バルベナジンはバリンエステルの加水分解により活性代謝物へ代謝され、また、CYP3A4/5により酸化的代謝を受ける。活性代謝物は、CYP2D6及びCYP3A4/5により酸化代謝され、また、グルクロン酸抱合を受ける(in vitro)
4)6)。[
10.参照]
16.5 排泄
健康成人男性(6名)に[
14C]標識バルベナジン50mgを単回投与したとき、投与9日後までに、投与された総放射能の約60%が尿中に、約30%が糞中に排泄された。バルベナジン及び活性代謝物の尿中排泄率は総放射能の1.8%及び1.6%であった(外国人データ)
4)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者
軽度、中等度及び高度肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスはA、B及びC)にバルベナジン50mgを単回経口投与したとき、バルベナジン及び活性代謝物のCmax及びAUC
0-∞は肝機能障害の程度に伴い上昇した(外国人データ)
7)。[
7.2、
8.3、
9.3.1参照]
表 肝機能障害患者の薬物動態パラメータ
| | 肝機能障害の程度 | Cmax(ng/mL) | AUC0-∞(ng・h/mL) |
| バルベナジン | 正常肝機能者 | 233±52.0 | 2680±246 |
| 軽度肝機能障害患者 | 384±285 | 3510±1530 |
| | 正常肝機能者との比 [90%信頼区間] | 1.4 [0.86,2.4] | 1.2 [0.88,1.7] |
| 中等度肝機能障害患者 | 556±448 | 5550±2840 |
| | 正常肝機能者との比 [90%信頼区間] | 2.0 [1.2,3.3] | 1.9 [1.3,2.6] |
| 高度肝機能障害患者 | 631±302 | 6430±1390 |
| | 正常肝機能者との比 [90%信頼区間] | 2.5 [1.5,4.2] | 2.4 [1.7,3.3] |
| 活性代謝物 | 正常肝機能者 | 8.61±0.95 | 335±26.8 |
| 軽度肝機能障害患者 | 10.6±2.76 | 430±145 |
| | 正常肝機能者との比 [90%信頼区間] | 1.2 [0.89,1.7] | 1.2 [0.83,1.8] |
| 中等度肝機能障害患者 | 20.0±10.7 | 1110±697 |
| | 正常肝機能者との比 [90%信頼区間] | 2.1 [1.5,2.9] | 2.8 [1.9,4.1] |
| 高度肝機能障害患者 | 19.2±5.58 | 1180±358 |
| | 正常肝機能者との比 [90%信頼区間] | 2.2 [1.6,3.0] | 3.4 [2.3,5.1] |
16.6.2 腎機能障害患者
高度腎機能障害患者(eGFRが15〜29mL/min/1.73m
2)にバルベナジン40mgを単回経口投与したとき、腎機能正常者と比較してバルベナジンのCmax及びAUC
0-∞は大きな違いはなく、活性代謝物のCmax及びAUC
0-∞は僅かに上昇した(外国人データ)
8)。
表 腎機能障害患者の薬物動態パラメータ
| | 腎機能障害の程度 | Cmax(ng/mL) | AUC0-∞(ng・h/mL) |
| バルベナジン | 正常腎機能者 | 300±79.2 | 2350±472 |
| 高度腎機能障害患者 | 271±101 | 2300±482 |
| | 正常腎機能者との比 [90%信頼区間] | 0.87 [0.64,1.2] | 0.98 [0.81,1.2] |
| 活性代謝物 | 正常腎機能者 | 8.17±2.84 | 355±126 |
| 高度腎機能障害患者 | 9.90±2.17 | 435±144 |
| | 正常腎機能者との比 [90%信頼区間] | 1.3 [0.97,1.6] | 1.2 [0.91,1.7] |
16.6.3 CYP2D6遺伝子多型の薬物動態に及ぼす影響
母集団薬物動態解析(外国人データ)に基づくシミュレーションから遺伝的にCYP2D6の活性が欠損しているPMは、PM以外の多型(non-PM)の患者と比較し、活性代謝物のCmax及びAUC
0-24hが約2倍高くなると推定された
9)。[
7.2、
8.3、
9.1.1参照]
表 シミュレーションにより得られたCYP2D6のPM及びnon-PMにおけるバルベナジン及び活性代謝物の定常状態におけるCmax及びAUC0-24hの幾何平均値の比(PM/non-PM)
| | Cmax [90%信頼区間] | AUC0-24h [90%信頼区間] |
| バルベナジン | 0.98 [0.84,1.26] | 0.99 [0.80,1.26] |
| 活性代謝物 | 1.83 [1.45,2.41] | 2.03 [1.58,2.79] |
16.7 薬物相互作用
16.7.1 バルベナジンの薬物動態に及ぼす影響
表 バルベナジンの薬物動態に及ぼすケトコナゾールの影響(外国人データ)
| 併用薬用量 | バルベナジン用量 | n | | 薬物動態パラメータ 幾何平均値の比[90%信頼区間] 併用/単独 |
| Cmax | AUC0-∞ |
| 200mg | 50mg | 24 | バルベナジン | 1.5 [1.4,1.6] | 2.1 [2.0,2.2] |
| 活性代謝物 | 1.6 [1.5,1.7] | 2.1 [2.0,2.2] |
表 バルベナジンの薬物動態に及ぼすパロキセチンの影響(外国人データ)
| 併用薬用量 | バルベナジン用量 | n | | 薬物動態パラメータ 幾何平均値の比[90%信頼区間] 併用/単独 |
| Cmax | AUC0-∞ |
| 20mg | 40mg | 24 | バルベナジン | 0.76 [0.62,0.93] | 0.91 [0.77,1.1] |
| 活性代謝物 | 1.4 [1.2,1.7] | 1.9 [1.6,2.3] |
表 バルベナジンの薬物動態に及ぼすリファンピシンの影響(外国人データ)
| 併用薬用量 | バルベナジン用量 | n | | 薬物動態パラメータ 幾何平均値の比[90%信頼区間] 併用/単独 |
| Cmax | AUC0-∞ |
| 600mg | 80mg | 12 | バルベナジン | 0.68 [0.58,0.80] | 0.28 [0.26,0.30] |
| 活性代謝物 | 0.49 [0.41,0.57] | 0.23 [0.21,0.25] |
(4)
CYP2D6 PM,CYP2D6阻害剤併用又はCYP3A阻害剤併用の複数の曝露量上昇要因を持つ患者11)
生理学的薬物速度論モデルに基づいたシミュレーションから、バルベナジン40mgを中程度のCYP2D6阻害剤(ミラべグロン、100mg)又は強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、20mg)と中程度のCYP3A阻害剤(フルコナゾール、200mg)又は強いCYP3A阻害剤(ケトコナゾール、200mg)の両方と併用投与したときのバルベナジン及び活性代謝物のCmax及びAUC
0-∞は、バルベナジンを単独投与したときと比較して高くなると推定された。また、CYP2D6 PMがバルベナジン40mgを中程度のCYP3A阻害剤(フルコナゾール、200mg)又は強いCYP3A阻害剤(ケトコナゾール、200mg)と併用投与したときのバルベナジン及び活性代謝物のCmax及びAUC
0-∞は、健康成人がバルベナジンを単独投与したときと比較して高くなると推定された。[
7.3参照]
表 シミュレーションにより得られたCYP2D6 PM、CYP2D6阻害剤併用、及びCYP3A阻害剤併用の組み合わせによるバルベナジン及び活性代謝物のCmax及びAUC0-∞の上昇比
| 組み合わせ | | Cmax上昇比 | AUC0-∞上昇比 |
| 強いCYP2D6阻害剤及び強いCYP3A阻害剤併用 | バルベナジン | 1.25 | 2.12 |
| 活性代謝物 | 2.56 | 5.28 |
| 強いCYP2D6阻害剤及び中程度のCYP3A阻害剤併用 | バルベナジン | 1.19 | 1.65 |
| 活性代謝物 | 2.12 | 3.71 |
| 中程度のCYP2D6阻害剤及び強いCYP3A阻害剤併用 | バルベナジン | 1.25 | 2.12 |
| 活性代謝物 | 2.44 | 4.76 |
| 中程度のCYP2D6阻害剤及び中程度のCYP3A阻害剤併用 | バルベナジン | 1.17 | 1.63 |
| 活性代謝物 | 1.97 | 3.27 |
| CYP2D6 PMかつ強いCYP3A阻害剤併用 | バルベナジン | 1.25 | 2.09 |
| 活性代謝物 | 2.69 | 5.80 |
| CYP2D6 PMかつ中程度のCYP3A阻害剤併用 | バルベナジン | 1.17 | 1.61 |
| 活性代謝物 | 2.16 | 3.98 |
16.7.2 併用薬の薬物動態に及ぼす影響
表 ジゴキシンの薬物動態に及ぼすバルベナジンの影響(外国人データ)
| 併用薬用量 | バルベナジン用量 | n | ジゴキシンの薬物動態パラメータ 幾何平均値の比[90%信頼区間] 併用/単独 |
| Cmax | AUC0-∞ |
| 0.5mg | 80mg | 24 | 1.9[1.7,2.2] | 1.4[1.3,1.5] |
健康成人に本剤80mgとミダゾラム2mgを経口併用投与したとき、バルベナジンはCYP3Aの基質であるミダゾラムの曝露量に影響を及ぼさなかった(外国人データ)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II/III相試験(プラセボ対照二重盲検試験)
遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害又は抑うつ障害の患者を対象に、二重盲検期では、プラセボ又はバルベナジンを1日1回6週間経口投与した。バルベナジンの投与量は、40mg/日又は80mg/日とし、80mg/日を投与する場合は最初の1週間に40mg/日を投与した後80mg/日に増量した。継続投与期では、バルベナジンを1日1回42週間経口投与した。バルベナジンの投与量は、40mg/日又は80mg/日とし、二重盲検期にバルベナジン群であった被験者は継続投与期においても同一用量を投与し、二重盲検期にプラセボであった被験者は継続投与期において40mg/日又は80mg/日のいずれかを投与した。また、バルベナジン80mg/日については、40mg/日に減量することを可能としたが、再増量は不可とした。投与6週後の異常不随意運動評価尺度(AIMS)合計スコア(項目1〜7)のベースラインからの変化量は下表のとおりであり、プラセボ群と比較してバルベナジン40mg群及びバルベナジン80mg群ともに統計学的な有意差が認められた。
表 投与6週後のAIMS合計スコア(項目1〜7)のベースラインからの変化量
| \ | 投与前 | 投与6週後の変化量 | プラセボとの変化量の差 | p値 |
| プラセボ群(n=84) | 8.0±4.2 | −0.1 [−0.8,0.5] (n=80) | − | − |
| バルベナジン40mg群(n=83) | 7.7±3.8 | −2.3 [−3.0,−1.7] (n=68) | −2.2 [−3.0,−1.3] | <0.001 |
| バルベナジン80mg群(n=82) | 7.4±4.3 | −3.7 [−4.4,−3.0] (n=57) | −3.6 [−4.5,−2.6] | <0.001 |
また投与48週後のAIMS合計スコア(項目1〜7)のベースラインからの平均変化量は下表のとおりであり、効果の持続性が示された。
表 投与48週後のAIMS合計スコア(項目1〜7)のベースラインからの平均変化量
| \ | 投与前 | 投与48週後の変化量 |
バルベナジン40mg群 (n=125) | 7.9±4.1 | −3.7±4.2 (n=64) |
バルベナジン80mg群 (n=124) | 7.6±4.2 | −5.7±4.6 (n=49) |
投与開始から48週後までの副作用発現頻度は、62.7%{バルベナジン40mg群で50.8%(64/126例)、バルベナジン80mg群で74.8%(92/123例)}であった。主な副作用は、傾眠16.9%{バルベナジン40mg群で12.7%(16/126例)、バルベナジン80mg群で21.1%(26/123例)}、流涎過多9.6%{バルベナジン40mg群で4.8%(6/126例)、バルベナジン80mg群で14.6%(18/123例)}、振戦7.2%{バルベナジン40mg群で3.2%(4/126例)、バルベナジン80mg群で11.4%(14/123例)}であった
12)。
17.3 その他
17.3.1 QT間隔に対する影響
健康成人(n=48)を対象にバルベナジン160mgを絶食下で単回経口投与したときのQT間隔を測定した。投与後8時間において、QTcF間隔(Fridericia法による心拍数補正QT間隔)のベースラインからの変化量のプラセボとの差が最大となり、平均値(及び90%信頼区間上限値)は8.96msec(11.1)であった(外国人データ)
13)。[
7.2、
7.3、
8.3、
9.1.2、
10.2参照]
注)本剤の承認最大用量は80mgである。
18.1 作用機序
遅発性ジスキネジアの病態生理に関する詳細は不明であるが、脳内線条体におけるシナプス後のドパミン(DA)過感受性等が考えられている。バルベナジン及びその活性代謝物である[+]-α-ジヒドロテトラベナジン([+]-α-DHTBZ)は、中枢神経系の前シナプスにおいて、モノアミン(DA等)の貯蔵及び遊離のために、細胞質からシナプス小胞へのモノアミンの取込みを制御している小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)を選択的に阻害する。その結果、遅発性ジスキネジアに対する治療効果を発揮すると考えられる。
18.2 VMAT2阻害作用
バルベナジン及びその活性代謝物である[+]-α-DHTBZは、ヒトVMAT2を阻害し、その作用は[+]-α-DHTBZの方が約45倍強かった(in vitro)
14)。また、ラットにおいて、バルベナジン及び[+]-α-DHTBZは、神経終末におけるDA及び/又はノルエピネフリンの遊離量減少によって生じる眼瞼下垂、自発運動量減少及び血中プロラクチン値上昇を引き起こした
15)。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
本製剤の効能・効果に関連する注意において「遅発性ジスキネジアと診断された患者に使用すること。」とされていることから、遅発性ジスキネジアの診断及び治療に精通した医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例に使用すること(保医発0524第3号:令和4年5月24日付)。
26.1 製造販売元
田辺三菱製薬株式会社
大阪市中央区道修町3-2-10
26.2 販売元
ヤンセンファーマ株式会社
〒101-0065
東京都千代田区西神田3-5-2