5.1 神経発達症の診断は、米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5注))に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。
5.2 入床を一定の時間帯にするなどの睡眠衛生指導や、可能な場合には行動療法的治療を実施し、入眠潜時の延長のある患者に投与すること。
5.3 6歳未満又は16歳以上の患者における有効性及び安全性は確立していない(当該年齢の患者を対象とした臨床試験は実施していない)。[
9.7参照]
注)Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Edition
通常、小児にはメラトニンとして1日1回1mgを就寝前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回4mgを超えないこと。
7.1 本剤は、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中において一時的に起床して作業等をする可能性があるときには服用させないこと。
7.2 増量にあたっては患者ごとに睡眠状況を観察しながら行い、1週間以上の間隔を空けること。
7.3 最高血中濃度が低下するおそれがあるため、本剤は食事と同時又は食直後の服用は避けること。[
16.2.1参照]
8.1 本剤の連用中における投与中止により、神経発達症に伴う諸症状又は睡眠障害の悪化があらわれることがあるので、投与を中止する際には患者の状態を慎重に観察すること。
8.2 投与開始3ヵ月後を目途に入眠困難に対する有効性及び安全性を評価し、有効性を認めない場合には投与中止を考慮し、漫然と投与しないこと。また、その後も定期的に本剤の有効性及び安全性を評価した上で、投与継続の必要性について検討すること。[
17.1.1、
17.1.2参照]
8.3 眠気、めまい等があらわれることがあるので、患者又は保護者等に対し、機械操作などを行う際には十分に注意を与えること。ただし、危険を伴う機械操作に従事する高年齢の小児に対しては、本剤投与中には当該操作を行わないように十分に注意を与えること。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与(健康成人)
メラトニン0.2mg
注1)を男性6例、1mgを男性6例、5mg
注1)を男性及び女性各6例に空腹時に単回経口投与したとき、血清中メラトニン濃度の薬物動態パラメータ及び濃度推移は表1及び図1のとおりである
9)。
表1 健康成人にメラトニンを空腹時に単回投与したときの薬物動態パラメータ
投与量注1) | Cmax(pg/mL) | tmax(hr) | AUC0-10h(pg・h/mL) | t1/2(hr) |
0.2mg | 266(142) | 0.21(0.05) | 317(232) | 2.46(1.73) |
1mg | 1920(1167) | 0.32(0.22) | 2225(1260) | 1.41(0.42) |
5mg | 10315(5286) | 0.28(0.11) | 9810(4057) | 1.13(0.34) |
図1 健康成人にメラトニンを空腹時に単回投与したときの血清中濃度推移(平均±標準偏差)
16.1.2 単回投与(幼児及び小児)
メラトニン0.04mg/kg
注1)を2〜5歳の6例(投与量0.5〜0.9mg/body
注1))及び6〜15歳の6例(投与量0.8〜3.3mg/body
注1))に単回経口投与したとき、血清中メラトニン濃度の薬物動態パラメータ及び濃度推移は表2及び図2のとおりである
10)。
表2 幼児及び小児にメラトニンを単回投与したときの薬物動態パラメータ
年齢 | Cmax(pg/mL) | tmax(hr) | AUC0-3h(pg・h/mL) | t1/2(hr) |
全年齢 | 2574(982) | 0.33(0.12) | 3819(1064) | 2.70(5.11) |
2〜5歳 | 2902(1027) | 0.33(0.13) | 4027(993) | 1.39(1.46) |
6〜15歳 | 2246(900) | 0.33(0.13) | 3612(1183) | 4.01(7.16) |
図2 幼児及び小児にメラトニンを単回投与したときの血清中濃度推移(平均±標準偏差)
16.1.3 生物学的同等性試験
健康成人男性48例にメラトニン錠2mg 1錠及びメラトニン顆粒0.2% 1g(いずれもメラトニンとして2mg)をクロスオーバー法により絶食時に単回経口投与したときの血清中メラトニン濃度の薬物動態パラメータ(Cmax及びAUCt)及び濃度推移は表3及び図3のとおりである。Cmax及びAUCtの対数の平均値の差について90%信頼区間はlog(0.80)〜log(1.25)の範囲内であったことから、両製剤は生物学的に同等であることが確認された
11)。
メラトニン錠1mgは「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン」に基づき、メラトニン錠2mgを標準製剤としたとき、溶出挙動は同等と判定され、生物学的に同等とみなされた。
表3 製剤群別の血清中メラトニン薬物動態パラメータ
製剤 | Cmax(pg/mL) | AUCt(pg・hr/mL) |
メラトニン錠2mg | 5099.32(3565.65) | 4172.39(2890.04) |
メラトニン顆粒0.2% | 5267.35(3927.82) | 4452.34(2806.60) |
図3 製剤群別の血清中メラトニン濃度推移(平均±標準偏差)
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人6例を対象とした国内臨床試験(単回投与試験)において、メラトニン1mgを空腹時又は食後に単回経口投与したとき、空腹時に比べ食後投与時のCmaxは15.4%低下し、AUC
0-10hは18.7%増加し、t
1/2は11.9%増加した
9)。[
7.3参照]
16.2.2 バイオアベイラビリティ
海外で行われた臨床研究の結果より、メラトニン経口投与時のバイオアベイラビリティは2.5〜33%であった
12)13)14)15)。
16.3 分布
メラトニンのin vitroにおけるヒト血清蛋白結合率は、メラトニン0.0928〜197ng/mLの濃度範囲で約53%であった
16)。
メラトニンの静脈内投与から求めた分布容積は0.98〜1.2L/kgであり
12)13)、血漿容積と比べて大きかった。
16.4 代謝
本剤は主としてCYP1A2により代謝される。その他、CYP1A1、CYP1B1及びCYP2C19が代謝に関与している
17)。[
10.参照]
16.5 排泄
主要代謝物である6-SMTは、腎臓から尿中排泄される。メラトニン0.2〜5mg
注1)を健康成人に投与したとき、投与後24時間までの尿中排泄量の約90%が投与後10時間までに排泄された
9)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
腎機能別に分けた4群(eGFR
注2):>80mL/分、60-80mL/分、30-60mL/分、<30mL/分)で内因性メラトニン濃度を比較した結果、eGFRの悪化に伴い、内因性メラトニン濃度の日内変動幅が小さくなるとの報告がある
18)。[
9.2参照]
16.6.2 肝機能障害患者
肝硬変患者の内因性メラトニン濃度は肝硬変の進行に伴い上昇し、健康成人で10.6±1.7pg/mL、肝硬変患者(Child-Pugh分類Grade A:31.2±9.8pg/mL、Grade B:49.8±12.2pg/mL、Grade C:94.8±22.6pg/mL)と最大で約10倍の差があったとの報告がある
19)。
また、肝硬変患者にメラトニンを静脈内注射したとき、健康成人と比較して血清中メラトニンのt
1/2は2.1〜2.2倍に延長したとの報告がある
20)。[
9.3参照]
16.7 薬物相互作用
16.7.1 フルボキサミンマレイン酸塩
健康成人にメラトニン5mg
注1)の経口投与の3時間前にフルボキサミン50mgを投与したとき、メラトニンのCmaxが1074±507%、AUCが1635±1023%に増加したとの報告がある。t
1/2は単独投与時で9.4±2.5時間、併用投与時で13.4±10.7時間であった
4)。[
2.2、
10.1参照]
16.7.2 カフェイン
健康成人にメラトニン6mg
注1)の経口投与の1時間前、1時間後及び3時間後にカフェイン200mgを経口投与したとき、メラトニンのCmaxが137%、AUCが120%増加したとの報告がある
5)。[
10.2参照]
16.7.3 喫煙
喫煙者を7日間禁煙させメラトニン25mg
注1)を経口投与したところ、禁煙前と比較し血清中濃度が約2.9倍と有意に上昇し、AUCも増加したとの報告がある
6)。[
10.2参照]
注1)本剤の承認された用法及び用量は、1日通常1mg、最大4mgの単回経口投与である。
注2)Cockcroft-Gault式による
18.1 作用機序
メラトニンは視交叉上核のMT1及びMT2受容体を活性化することで視交叉上核の神経活動を調節し、睡眠の誘導作用を示すと考えられる。
18.2 睡眠に対する作用
無麻酔無拘束のサルに対して単回投与及び反復投与したとき、メラトニンは入眠までの時間を短縮させた
23)24)。
<顆粒>
20.1 ボトル包装品を分包した場合は、遮光して保存すること。
<錠>
20.2 PTPシートから取り出した後は、遮光して保存すること。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。