17.1.1 国際共同第II/III相試験(I型脊髄性筋萎縮症、FIREFISH試験)
本試験は、用量設定を目的としたパート1と検証を目的としたパート2で構成される多施設共同非盲検試験である。パート2では、正期産で生まれ、生後3カ月以前に臨床症状を認めた生後2カ月以上7カ月以下のI型脊髄性筋萎縮症患者41例(うち日本人1例、
SMN2遺伝子のコピー数は全例2コピー、登録時体重は4.1〜10.6kg)を対象に、本剤(リスジプラムとして生後2カ月以上3カ月未満は0.04mg/kg、生後3カ月以上5カ月未満は0.08mg/kg、生後5カ月以上は0.2mg/kg)
注1)を1日1回経口投与
注2)により開始し、患者集団全体で目標曝露量
注3)を達成するよう、各患者の薬物動態データを確認した上で0.2mg/kg(2歳未満)又は0.25mg/kg(2歳以上)まで漸増されたときの有効性及び安全性を検討した。パート2において、主要評価項目である12カ月後のBayley Scales of Infant and Toddler Development-Third Edition(BSID-III)の粗大運動スケールに基づく支えなしで坐位を5秒以上保持できる患者の割合(達成例数/評価例数、90%信頼区間)は29.3%(12/41例、17.8〜43.1%)であり、事前に規定した5%の達成基準
注4)を統計学的に有意に上回った(P<0.0001、有意水準片側0.05、exact binomial test)。副次的評価項目である長期人工呼吸管理を受けずに生存していた患者の割合(達成例数/評価例数、90%信頼区間)は85.4%(35/41例、73.4〜92.2%)であり、事前に規定した達成基準(42%)
注4)を上回った
20)。
パート2の副作用発現頻度(最終登録患者が12カ月間の投与を完了した時点)は、41例中7例(17.1%)であった。主な副作用は、便秘2例(4.9%)、斑状丘疹状皮疹2例(4.9%)、皮膚変色2例(4.9%)であった。[
5.5、
9.7.1参照]
17.1.2 国際共同第II/III相試験(II型及びIII型脊髄性筋萎縮症、SUNFISH試験)
本試験は、用量設定を目的としたパート1と検証を目的としたパート2で構成されるプラセボ対照多施設共同二重盲検比較試験である。パート1において、患者集団全体で目標曝露量
注3)を達成するよう各患者の薬物動態データを確認した上でパート2の用量が決定された。パート2では、臨床症状を認める2歳以上25歳以下のII型及びIII型脊髄性筋萎縮症患者180例(うち日本人15例、
SMN2遺伝子のコピー数は2コピーが4例、3コピーが157例、4コピーが18例、不明が1例)を対象に、本剤又はプラセボ(リスジプラムとして体重20kg未満は0.25mg/kg、20kg以上は5mg又はプラセボ)を1日1回食事とともに
注5)経口投与したときの有効性及び安全性を比較した。パート2において、主要評価項目である12カ月後のMotor Function Measure(MFM)32項目の合計スコアに基づくベースラインからの平均変化量(95%信頼区間)は、本剤群(120例)では1.36(0.61〜2.11)、プラセボ群(60例)で−0.19(−1.22〜0.84)であり、本剤群ではプラセボ群と比較し、統計学的に有意な運動機能の改善がみられた(P=0.0156、有意水準両側0.05、Mixed Model Repeated Measures(MMRM)解析)
21)。
パート2の12カ月後の副作用発現頻度は、本剤群120例中16例(13.3%)、プラセボ群60例中6例(10.0%)であった。本剤群の主な副作用は、上気道感染2例(1.7%)、頭痛2例(1.7%)、悪心2例(1.7%)、口腔内潰瘍形成2例(1.7%)であった。
17.1.3 海外第II相試験(遺伝子検査により発症が予測される脊髄性筋萎縮症、RAINBOWFISH試験)
本試験は、多施設共同単群非盲検試験である。正期産で産まれ遺伝学的に脊髄性筋萎縮症と診断されたが症状を呈していない生後6週まで(初回投与時生後16〜41日)の外国人患者26例(
SMN2遺伝子のコピー数は2コピーが8例、3コピーが13例、4コピー以上が5例)を対象に、本剤(リスジプラムとして4例は0.04mg/kg、2例は0.08mg/kgで投与を開始し、0.2mg/kgに増量、20例は初回から0.2mg/kgを投与)
注6)を1日1回経口投与
注2)したときの有効性及び安全性を検討した。主要評価項目である主要有効性解析対象集団(5例、
SMN2遺伝子のコピー数が2[既知の
SMN2遺伝子修飾変異であるc.859G>Cを除く]であり、ベースラインの複合筋活動電位振幅が1.5mV以上の患者集団)における12カ月後のBSID-IIIの粗大運動スケールに基づく支えなしで坐位を5秒以上保持できる患者の割合(達成例数/評価例数、90%信頼区間)は80.0%(4/5例、34.3〜99.0%)であり、事前に規定した5%の達成基準
注4)を統計学的に有意に上回った(P<0.0001、有意水準片側0.05、exact binomial test)。全26例における12カ月後の同スケールに基づく支えなしで坐位を30秒以上保持できる患者の割合(達成例数/評価例数、90%信頼区間)は80.8%(21/26例、63.7〜92.1%、
SMN2遺伝子のコピー数2:7/8例、3コピー:9/13例、4コピー以上:5/5例)であり、全例が12カ月時点で長期人工呼吸管理を受けずに生存していた(副次的評価項目)
22)。
副作用発現頻度(最終登録患者が12カ月間の投与を完了した時点)は、26例中7例(26.9%)であった。副作用はアトピー性皮膚炎1例(3.8%)、湿疹1例(3.8%)、皮膚変色1例(3.8%)、網膜色素沈着1例(3.8%)、網膜血管障害1例(3.8%)、下痢1例(3.8%)、誤用量投与1例(3.8%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加1例(3.8%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加1例(3.8%)であった。[
5.5、
9.7.1参照]
注1)本剤の承認された用法・用量(生後2カ月以上2歳未満の患者)は、「リスジプラムとして0.2mg/kgを1日1回食後に経口投与」である。
注2)母乳育児中の患者の場合は授乳後に投与することとされ、それ以外の患者の場合は食事とともに投与することとされた。
注3)非臨床毒性試験の無毒性量に基づき平均AUC0-24h,ssとして2000ng・h/mLとされた。
注4)各達成基準は未治療のI型脊髄性筋萎縮症患者の自然経過の複数の研究に基づき設定した。
注5)本剤の承認された用法・用量(2歳以上の患者)は、「リスジプラムとして体重20kg未満では0.25mg/kgを、体重20kg以上では5mgを1日1回食後に経口投与」である。
注6)本剤の承認された用法・用量(生後2カ月未満の患者)は、「リスジプラムとして0.15mg/kgを1日1回食後に経口投与」である。