医療用医薬品 : カムザイオス

List   Top

医薬品情報


総称名 カムザイオス
一般名 マバカムテン
欧文一般名 Mavacamten
製剤名 マバカムテンカプセル
薬効分類名 肥大型心筋症治療剤
選択的心筋ミオシン阻害剤
薬効分類番号 2190
ATCコード C01EB24
KEGG DRUG
D12265 マバカムテン
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2025年3月 作成(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
カムザイオスカプセル1mg Camzyos capsules ブリストル・マイヤーズスクイブ 2190047M1023 7204円/カプセル 劇薬, 処方箋医薬品注)
カムザイオスカプセル2.5mg Camzyos capsules ブリストル・マイヤーズスクイブ 2190047M2020 7264.8円/カプセル 劇薬, 処方箋医薬品注)
カムザイオスカプセル5mg Camzyos capsules ブリストル・マイヤーズスクイブ 2190047M3026 7410.5円/カプセル 劇薬, 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]
2.3 イトラコナゾール、クラリスロマイシン含有製剤、ボリコナゾール、ポサコナゾール、リトナビル含有製剤、コビシスタット含有製剤、セリチニブ、エンシトレルビル フマル酸、ロナファルニブ、ジョサマイシン、ミフェプリストン・ミソプロストールを投与中の患者[10.1参照]
2.4 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者[9.3.1参照]

4. 効能または効果

閉塞性肥大型心筋症

5. 効能または効果に関連する注意

5.1 症候性の閉塞性肥大型心筋症患者に投与すること。
5.2 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、併用薬、左室駆出率等)を十分理解した上で、最新のガイドライン等を参照し、適応患者を選択すること。[17.1.1-17.1.3参照]
5.3 NYHA心機能分類IV度の患者における有効性及び安全性は確立していない。

6. 用法及び用量

通常、成人にはマバカムテンとして2.5mgを1日1回経口投与から開始し、患者の状態に応じて適宜増減する。ただし、最大投与量は1回15mgとする。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 投与開始前に心エコー検査により左室駆出率(LVEF)を評価し、LVEFが55%未満の患者には投与を開始しないこと。[8.2参照]
7.2 開始用量は1日1回2.5mgとし、投与量調節時は下表を参考に1段階ずつ増量又は減量を行うこと。ただし、最小投与量は1日1回1mg、最大投与量は1日1回15mgとすること。
段階12345
投与量1mg2.5mg5mg10mg15mg
7.3 投与開始4週間後、心エコー検査によりバルサルバ負荷後の左室流出路(バルサルバLVOT)圧較差及びLVEFを確認した上で、7.4項に示す用量調節基準に従い1段階減量又は用量維持を判断すること。[7.48.2参照]
7.4 投与開始12週間以降は、少なくとも12週間ごとに心エコー検査によりバルサルバLVOT圧較差及びLVEFを確認した上で、以下の用量調節基準に従い1段階増量又は用量維持を判断すること。増量は12週間以上の間隔で行うこととし、増量した場合は、4週間後に心エコー検査を実施し、LVEFが50%未満にならない限り増量後の用量を維持する。患者が維持用量に達したと判断された場合(12週間ごとの心エコー検査で2回連続してバルサルバLVOT圧較差が30mmHg未満かつLVEFが55%以上の場合)、心エコー検査の実施の間隔は最大で24週間とすることができる。[7.38.2参照]
用量調節基準
 心エコー検査投与量の調節
投与開始4週間後バルサルバLVOT圧較差が20mmHg未満かつLVEFが50%以上1段階減量
バルサルバLVOT圧較差が20mmHg以上かつLVEFが50%以上維持
投与開始12週間以降バルサルバLVOT圧較差が30mmHg以上かつLVEFが55%以上1段階増量
バルサルバLVOT圧較差にかかわらず、LVEFが50%以上、55%未満維持
バルサルバLVOT圧較差が30mmHg未満かつLVEFが55%以上
7.5 本剤投与開始後、LVEFが50%未満になった場合は、以下の基準に従い、本剤を休薬又は中止すること。
休薬及び中止基準
休薬基準LVEFが50%未満の場合、LVEFが50%以上に回復するまで少なくとも4週間休薬する。
LVEFが50%以上に回復した後、休薬時より1段階減量して投与を再開する。ただし、1mg投与中に休薬した場合は1mgで投与を再開する。
投与再開から4週間後及び12週間後にLVEFを確認する。
中止基準1mg投与中にLVEFが50%未満により休薬し、1mgでの投与再開から4週間後にLVEFが50%未満になった場合、投与を中止する。
7.6 本剤投与中に強い若しくは中程度のCYP2C19阻害剤、又は中程度若しくは弱いCYP3A4阻害剤の投与を開始又は増量する場合は用量を1段階減量(1mgを投与中の場合は休薬)し、4週間後にLVEFを確認すること。[10.2参照]
7.7 本剤投与中に強い若しくは中程度のCYP2C19誘導剤、又は強い、中程度若しくは弱いCYP3A4誘導剤の投与を中止又は減量する場合は用量を1段階減量(1mgを投与中の場合は休薬)し、4週間後にLVEFを確認すること。[10.2参照]
7.8 本剤を最大耐用量で6ヵ月間投与しても、治療反応が得られない場合には、本剤の投与継続の可否を検討すること。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤は、肥大型心筋症の診断及び治療に十分な知識及び経験を持つ医師のもとで使用すること。
8.2 本剤はLVEFを低下させ、収縮機能障害により心不全を引き起こすおそれがある。本剤投与中は、定期的に心エコー検査を行い、患者の状態(バルサルバLVOT圧較差及びLVEF)をモニタリングすること。[7.17.37.49.1.110.211.1.1参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 収縮機能障害による心不全のリスクが高まるおそれがある患者
(1)不整脈(心房細動又はその他のコントロール不良の頻脈性不整脈を含む)等の重篤な合併症のある患者[8.211.1.1参照]
(2)心臓手術(例:冠動脈バイパス術、弁膜症手術、心筋切除術、心臓移植)を受ける患者[8.211.1.1参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者
投与しないこと。本剤の血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれるおそれがある。重度の肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。[2.4参照]
9.3.2 肝機能障害のある患者(重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者を除く)
本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。[16.6.2参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後4ヵ月間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。[9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、投与しないこと。動物実験(ラット及びウサギ)において、臨床最大曝露量と同程度の曝露量で胚致死作用及び催奇形性が認められている1)。[2.29.4参照]
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。本剤は乳汁中に移行する可能性がある。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

相互作用序文
本剤は、主にCYP2C19及びCYP3A4によって代謝される。[16.4参照]
薬物代謝酵素用語
CYP2C19
薬物代謝酵素用語
CYP3A4
10.1 併用禁忌
イトラコナゾール
(イトリゾール)
クラリスロマイシン含有製剤
(クラリス、クラリシッド、ボノサップ、ラベキュア)
ボリコナゾール
(ブイフェンド)
ポサコナゾール
(ノクサフィル)
リトナビル含有製剤
(カレトラ、ノービア、パキロビッド)
コビシスタット含有製剤
(シムツーザ、ゲンボイヤ、プレジコビックス)
セリチニブ
(ジカディア)
エンシトレルビル フマル酸
(ゾコーバ)
ロナファルニブ
(ゾキンヴィ)
ジョサマイシン
(ジョサマイ)
ミフェプリストン・ミソプロストール
(メフィーゴ)
2.3参照]
本剤の副作用が増強され、収縮機能障害による心不全のリスクが高まるおそれがある。これらの薬剤がCYP3A4を強力に阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
10.2 併用注意
強い又は中程度のCYP2C19阻害剤
フルコナゾール
フルボキサミン
チクロピジン等
7.68.2参照]
本剤の副作用が増強され、収縮機能障害による心不全のリスクが高まるおそれがある。これらの薬剤がCYP2C19を阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
弱いCYP2C19阻害剤
オメプラゾール等
8.216.7.1参照]
本剤の副作用が増強され、収縮機能障害による心不全のリスクが高まるおそれがある。
本剤投与中にこれらの薬剤の投与を開始又は増量する場合は、本剤の減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。
これらの薬剤がCYP2C19を阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
中程度又は弱いCYP3A4阻害剤
ベラパミル
ジルチアゼム
エリスロマイシン
グレープフルーツジュース等
7.68.216.7.1参照]
本剤の副作用が増強され、収縮機能障害による心不全のリスクが高まるおそれがある。これらの薬剤がCYP3A4を阻害することにより、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
強い又は中程度のCYP2C19誘導剤
アパルタミド等
7.78.2参照]
本剤の有効性が減弱するおそれがある。
本剤と併用中にこれらの薬剤の投与を中止又は減量すると収縮機能障害による心不全のリスクが高まるおそれがある。
これらの薬剤がCYP2C19を誘導することにより、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。
強い、中程度又は弱いCYP3A4誘導剤
リファンピシン
カルバマゼピン
フェニトイン
ダブラフェニブ
エンザルタミド
ミトタン
セイヨウオトギリソウ(St.John's Wort:セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等
7.78.2参照]
本剤の有効性が減弱するおそれがある。
本剤と併用中にこれらの薬剤の投与を中止又は減量すると収縮機能障害による心不全のリスクが高まるおそれがある。
これらの薬剤がCYP3A4を誘導することにより、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。
β遮断薬
ビソプロロール
メトプロロール等
非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬
ベラパミル
ジルチアゼム
これらの薬剤と併用する場合、患者の状態を慎重に観察しながら投与すること。特に本剤とβ遮断薬及び非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬との併用の場合には注意すること。本剤投与中にこれらの薬剤の投与を開始又は増量する場合は、薬剤の投与量及び患者の状態が安定するまで心エコー検査によるLVEFのモニタリング等を定期的に実施し、患者の状態を慎重に観察しながら投与すること。相加的に陰性変力作用を増強させ、左室収縮力を過度に低下させる可能性がある。
クラスIA抗不整脈薬
ジソピラミド
シベンゾリン等
これらの薬剤と併用する場合、患者の状態を慎重に観察しながら投与すること。本剤投与中にこれらの薬剤の投与を開始又は増量する場合は、薬剤の投与量及び患者の状態が安定するまで心エコー検査によるLVEFのモニタリング等を定期的に実施し、患者の状態を慎重に観察しながら投与すること。相加的に陰性変力作用を増強させ、左室収縮力を過度に低下させる可能性がある。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 心不全(頻度不明)
収縮機能障害により心不全を起こすことがある。ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)の上昇が見られた場合、又は呼吸困難、胸痛、疲労、動悸、下肢浮腫等が発現又は増悪した場合は、速やかに心機能の評価を行い、休薬又は中止等適切な処置を行うこと。[8.29.1.1参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 1〜3%未満
神経系障害浮動性めまい、頭痛
一般・全身障害および投与部位の状態疲労、末梢性浮腫
心臓障害心房細動、動悸
呼吸器、胸郭および縦隔障害労作性呼吸困難、呼吸困難
筋骨格系および結合組織障害筋力低下
臨床検査駆出率減少

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 本剤は噛まずに水とともに服用させること。
14.1.2 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康被験者(20例)にマバカムテン5、15又は25mgを空腹時単回投与注)したときの、マバカムテンの薬物動態パラメータは下表のとおりであった2)
単回投与時のマバカムテンの薬物動態パラメータ
投与量(例数)Cmax(ng/mL)Tmax(h)AUC(INF)(ng・h/mL)T1/2(h)
5mg
(4例)
141.3(15.5)1.50(1.00,2.00)6277(28.7)216.3(28.6)
15mg
(8例)
289.0(19.8)1.00(0.50,4.00)15410(27.4)216.3(23.9)
25mg
(8例)
504.0(18.3)1.50(0.50,3.00)17370(34.0)141.4(43.1)
16.1.2 反復投与
健康被験者(40例)にマバカムテンを28日間反復投与注)したときの、マバカムテンの薬物動態パラメータは下表のとおりであった3)(外国人データ)。
反復投与時のマバカムテンの薬物動態パラメータ
投与量(例数)Cmax(ng/mL)Tmax(h)AUC(TAU)(ng・h/mL)T1/2(h)
1mg
1日2回
(10例)
129.00(58.01)1.00(0.50,3.00)81.10(30.96)9.69(41.26)
2876.02(31.66)0.50(0.50,1.50)577.43(40.45)18.93(78.77)
3mg
1日2回
(10例)
152.85(62.76)1.00(0.50,2.00)176.62(42.91)7.01(64.83)
28159.08(50.54)1.75(0.50,8.00)1387.28(57.77)42.62(230.26)
12.5mg
1日1回
(10例)
1208.05(27.06)1.54(1.50,3.00)1194.67(30.80)24.83(35.05)
28411.97(39.68)2.00(0.50,24.00)6184.49(44.66)45.36(48.32)
18.5mg
1日1回
(10例)
1362.16(31.19)1.50(0.50,3.00)2220.42(25.84)16.84(66.25)
28943.51(27.77)2.00(0.50,4.00)15818.53(41.83)78.88(63.05)
16.2 吸収
16.2.1 バイオアベイラビリティ
マバカムテンは経口投与後速やかに吸収され、経口バイオアベイラビリティは臨床用量範囲内で約85%と推定された4)(外国人データ)。
16.2.2 食事の影響
健康被験者(23例)にマバカムテン15mgを高脂肪食摂取後に単回経口投与したとき、Tmaxは空腹時投与で1時間であったのに対し食後投与では4時間であり、高脂肪食により吸収の遅延が生じた。空腹時投与と比較して食後投与ではAUC(INF)が12.3%、Cmaxが50%減少した5)(外国人データ)。
16.3 分布
臨床試験におけるマバカムテンの血漿蛋白結合率は97%から98%であった6)(外国人データ)。マバカムテンの血漿中濃度に対する血中濃度の比は0.79であった7)(in vitroデータ)。
マバカムテン18.5mg(4例)又は25mg(6例)を最長28日間投与注)した男性被験者10例の精液中のマバカムテン測定に基づくと、マバカムテンの精液/血漿比の平均値(SD)はそれぞれ0.039(0.0047)及び0.044(0.016)であった3)(外国人データ)。
16.4 代謝
マバカムテンは広範に代謝され、主にCYP2C19(74%)、CYP3A4(18%)及びCYP2C9(7.6%)を介して代謝される8)(in vitroデータ)。ヒト血漿中に3種類の代謝物が検出されたが、いずれもヒト血漿中総放射能の4%未満であった4)。[10.参照]
16.5 排泄
健康被験者に14C標識マバカムテン25mgを単回投与後注)、総放射能の7%が糞便中に、85%が尿中に回収された。糞便中及び尿中の未変化体は、投与量のそれぞれ約1%及び3%であった4)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
母集団薬物動態解析の結果、eGFRが45、75、95mL/min/1.73m2の被験者で曝露量に差は認められなかった9)(外国人データ)。
16.6.2 肝機能障害患者
軽度又は中等度(Child-Pugh分類A又はB)の肝機能障害被験者及び肝機能正常被験者に、マバカムテン25mgを単回経口投与注)したとき、正常な肝機能を有する被験者と比較して、軽度及び中等度の肝機能障害を有する被験者でマバカムテンのAUC(last)はそれぞれ3.24倍及び1.87倍に増加し、Cmaxはそれぞれ1.12倍及び1.10倍であった6)(外国人データ)。[9.3.2参照]
16.6.3 CYP2C19表現型
CYP2C19のNormal metabolizer(NM)又はPoor metabolizer(PM)の健康被験者(各8例)にマバカムテン15mgを単回経口投与したとき、CYP2C19 NMに対してPMではCmaxが1.47倍、AUC(INF)が3.41倍に増加した。半減期の幾何平均値はNMで8日、PMで23日であった10)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 マバカムテンに対する併用薬の影響
薬物相互作用試験の結果は下表のとおりであった11)12)(外国人データ)。[10.2参照]
併用薬の存在下におけるマバカムテンの薬物動態パラメータの変化
併用薬併用薬投与量マバカムテン投与量幾何平均比(90%信頼区間)
併用/非併用
CmaxAUC(INF)
オメプラゾール
(弱いCYP2C19阻害薬)
20mg
1日1回
15mg単回0.99(0.75,1.30)1.48(1.16,1.88)
ベラパミル
(中程度CYP3A4阻害薬)
240mg
1日1回
25mg単回注)1.518(1.160,1.985)1.155(0.844,1.582)
16.7.2 併用薬に対するマバカムテンの影響
薬物相互作用試験の結果は下表のとおりであった13)14)(外国人データ)。
マバカムテンの存在下における併用薬の薬物動態パラメータの変化
併用薬併用薬投与量マバカムテン投与量注)幾何平均比(90%信頼区間)
併用/非併用
CmaxAUC(INF)
ミダゾラム
(CYP3A4基質)
5mg単回25mg 1日1回2日間投与後、15mg 1日1回0.93(0.77,1.13)0.87(0.68,1.10)
エチニルエストラジオール
(CYP3A4基質)
35μg単回25mg 1日1回2日間投与後、15mg 1日1回1.05(0.945,1.16)1.20(1.08,1.33)
ノルエチンドロン
(CYP3A4基質)
1mg単回25mg 1日1回2日間投与後、15mg 1日1回1.14(0.979,1.33)1.12(1.01,1.24)
注)本剤の承認された用法及び用量は「通常、成人にはマバカムテンとして2.5mgを1日1回経口投与から開始し、患者の状態に応じて適宜増減する。ただし、最大投与量は1回15mgとする」である。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相試験(CV027004/HORIZON-HCM試験)
閉塞性肥大型心筋症患者注1)38例を対象とした非盲検非対照試験を実施した15)。本剤は1日1回経口投与することとされ、2.5mgより投与開始し、2〜6週間の間隔で実施した心エコー検査の結果(バルサルバLVOT圧較差、LVEF)に基づき、1mg〜15mgの範囲で用量調節した。本剤初回投与前35日間に前治療としてβ遮断薬又はCa拮抗薬のいずれかが投与されていた患者割合は、94.7%であった。また、試験期間中に併用薬としてβ遮断薬又はCa拮抗薬のいずれかが投与されていた患者割合は、94.7%(β遮断薬89.5%、Ca拮抗薬7.9%)であった。
主要評価項目であるベースラインから投与30週後までの運動負荷後LVOT圧較差のベースラインからの変化量は下表のとおりであった。
 全体(N=38)
ベースライン値(mmHg)
平均値[標準偏差](例数)
85.1[29.24](38)
投与30週後の測定値(mmHg)
平均値[標準偏差](例数)
28.4[26.46](35)
ベースラインからの変化量(mmHg)
平均値[標準偏差](95%信頼区間)
−60.7[31.56]
(−71.54,−49.86)
注1)主な選択基準は以下のとおり
・NYHA心機能分類II度又はIII度
・スクリーニング時のLVEFが60%以上
・スクリーニング時のバルサルバLVOT圧較差が30mmHg以上
・スクリーニング時の安静時、バルサルバ又は運動負荷後のLVOT圧較差が50mmHg以上
投与54週後までの副作用発現頻度は2.6%(1/38例)であり、認められた副作用は動悸であった。[5.2参照]
17.1.2 海外第III相試験(MYK-461-005/EXPLORER-HCM試験)
閉塞性肥大型心筋症患者注2)251例(プラセボ群128例、本剤群123例)を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験を実施した16)。本剤は1日1回経口投与することとされ、5mgより投与開始し、2〜6週間の間隔で実施した心エコー検査の結果(バルサルバLVOT圧較差、LVEF)及び血漿中薬物トラフ濃度に基づく基準に従い、2.5mg〜15mgの範囲で用量調節した。本剤初回投与前30日間に前治療としてβ遮断薬又はCa拮抗薬のいずれかが投与されていた患者割合は、本剤群で96.7%であった。また、試験期間中に併用薬としてβ遮断薬又はCa拮抗薬のいずれかが投与されていた患者割合は、本剤群で96.7%(β遮断薬76.4%、Ca拮抗薬20.3%)であった。
主要評価項目である投与30週後における臨床的奏効(「pVO2の1.5mL/kg/min以上の増加、かつNYHA心機能分類のI度以上の改善」又は「pVO2の3.0mL/kg/min以上の増加、かつNYHA心機能分類の悪化なし」のいずれかを満たす)割合は下表のとおりであり、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示された。
 本剤群
(N=123)
プラセボ群
(N=128)
プラセボとの差
(95%信頼区間)
主要評価項目
臨床的奏効aを達成した割合%(例数)36.6
(45)
17.2
(22)
19.4
(8.67,30.13)
p=0.0005b
pVO2の1.5mL/kg/min以上の増加かつNYHA心機能分類のI度以上の改善,%(例数)33.3
(41)
14.1
(18)
pVO2の3.0mL/kg/min以上の増加かつNYHA心機能分類の悪化なし,%(例数)23.6
(29)
10.9
(14)
副次評価項目
ベースラインから投与30週後までのpVO2変化量(mL/kg/min)
平均値[標準偏差]
1.40
[3.12]
−0.05
[3.02]
1.35
(0.58,2.12)c
ベースラインから投与30週後までの運動負荷後LVOT圧較差変化量(mmHg)
平均値[標準偏差]
−47.2
[40.31]
−10.4
[29.59]
−35.6
(−43.15,−28.06)c
注2)主な選択基準は以下のとおり
・NYHA心機能分類II度又はIII度
・スクリーニング時のLVEFが55%以上
・スクリーニング時のバルサルバLVOT圧較差が30mmHg以上
・スクリーニング時の安静時、バルサルバ又は運動負荷後のLVOT圧較差が50mmHg以上
投与38週後までに認められた副作用発現頻度は、本剤投与群で15.4%(19/123例)であった。主な副作用は、浮動性めまい4.1%(5/123例)、頭痛3.3%(4/123例)、心房細動、不眠症、呼吸困難各1.6%(2/123例)であった。[5.2参照]
17.1.3 海外第III相試験(MYK-461-017/VALOR-HCM試験)
中隔縮小治療(SRT)の適応がある閉塞性肥大型心筋症患者注3)112例(プラセボ群56例、本剤群56例)を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験を実施した17)。本剤は1日1回経口投与することとされ、5mgより投与開始し、4週又は12週間隔で実施した心エコー検査の結果(バルサルバLVOT圧較差、LVEF)に基づき、2.5mg〜15mgの範囲で用量調節した。本剤初回投与前30日間に前治療としてβ遮断薬又はCa拮抗薬が投与されていた患者割合は、本剤群でそれぞれ80.4%、28.6%であった。また、試験期間中に併用薬としてβ遮断薬、Ca拮抗薬又はNa遮断薬が投与されていた患者割合は、本剤群でそれぞれ80.4%、28.6%及び25.0%であった。本試験は、16週間の二重盲検での投与後、プラセボ群は本剤投与に切り替え、その後全ての患者に本剤を長期投与した。
主要評価項目である「投与16週後以前にSRTの実施が決定されること」又は「投与16週後時点においてAmerican College of Cardiology Foundation/American Heart Association(ACCF/AHA)ガイドライン(2011年)のSRTの適応となる基準に該当すること」のいずれかを満たした患者の割合は下表のとおりであり、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示された。
 本剤群
(N=56)
プラセボ群
(N=56)
プラセボとの差
(95%信頼区間)b
主要評価項目a,%(例数)17.9
(10)
76.8
(43)
58.9
(43.99,73.87)
p<0.0001c
投与16週後までにSRT実施が決定された患者の割合%(例数)3.6
(2)
3.6
(2)
投与16週後時点においてACCF/AHAガイドラインのSRTの適応となる基準に該当した患者の割合%(例数)14.3
(8)
69.6
(39)
注3)主な選択基準は以下のとおり
・ACCF/AHAガイドライン(2011年)の診断基準に基づく、侵襲的SRT治療に関する以下の基準を満たす閉塞性肥大型心筋症患者。
・臨床基準:最適な薬物療法を受けたにもかかわらず、重度の呼吸困難若しくは胸痛が認められる(通常NYHA心機能分類III度又はIV度)、又は労作性失神若しくは失神寸前の状態が認められる
・血行動態基準:安静時、バルサルバ又は運動負荷後のLVOT圧較差が50mmHg以上である
・解剖学的基準:治験担当医師が、SRTを安全かつ効果的に実施するのに十分であると判断した標的前壁側中隔厚がある
・LVEFが60%以上
本剤を投与された患者の長期投与時(本剤群の二重盲検期を含む)の副作用発現頻度は、15.7%(17/108例)であった(中間解析時)。主な副作用は、駆出率減少4.6%(5/108例)、疲労、労作性呼吸困難各3.7%(4/108例)、心房細動、悪心、末梢性浮腫、筋力低下、平衡障害、浮動性めまい、呼吸困難各1.9%(2/108例)であった。[5.2参照]

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
マバカムテンは、心筋ミオシンに対する選択的かつ可逆的なアロステリック阻害剤である。マバカムテンは、ミオシンヘッドからの無機リン酸(Pi)放出の抑制及びsuper relaxed(SRX)18)状態のミオシンヘッドの増加を介してアデノシン三リン酸(ATP)加水分解サイクルを阻害することにより、肥大型心筋症における左室での心筋の過収縮を抑制し、閉塞性肥大型心筋症患者における拡張機能障害やLVOT狭窄を改善する。
18.2 心筋サルコメアにおけるATP加水分解サイクルの進行に対する作用
マバカムテンは、in vitroにおいて、野生型のヒト心筋ミオシンのATP加水分解サイクルを阻害し、その50%阻害濃度(IC50値)は0.52〜0.73μMであった。また、マバカムテンは、ミオシン重鎖(MYH7)に肥大型心筋症の病因性変異(R403Q、R453C、R719W、R723G、G741R)を有するヒト心筋ミオシンの同サイクルを阻害し、IC50値は0.65〜1.31μMであった19)
18.3 心機能及び血行動態に対する作用
正常ラット及びイヌにおいて、マバカムテンは心筋の収縮力を低下させ、心室容積を増大させる一方で、全身の血行動態及び左室圧には顕著な影響を及ぼさなかった20)
18.4 LVOT圧較差に対する作用
βアドレナリン受容体作動薬投与によりLVOT狭窄を誘導した閉塞性肥大型心筋症モデルネコにおいて、マバカムテンは曝露量依存的にLVOT圧較差を減少させた21)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. マバカムテン

一般的名称 マバカムテン
一般的名称(欧名) Mavacamten
化学名 6-{[(1S)-1-Phenylethyl]amino}-3-(propan-2-yl)pyrimidine-2,4(1H,3H)-dione
分子式 C15H19N3O2
分子量 273.33
物理化学的性状 白色〜類白色の固体である。
KEGG DRUG D12265

21. 承認条件

21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
21.2 製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施すること。

22. 包装

<カムザイオスカプセル1mg>
30カプセル[10カプセル(PTP)×3]
<カムザイオスカプセル2.5mg>
30カプセル[10カプセル(PTP)×3]
<カムザイオスカプセル5mg>
30カプセル[10カプセル(PTP)×3]

23. 主要文献

  1. 社内資料:胚・胎児発生に関する試験(2025年3月27日承認、CTD 2.6.6.6.2)
  2. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-011)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.6.3.7)
  3. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-003)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.6.3.2)
  4. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-013)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.2.2.8)
  5. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-014)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.1.2.1)
  6. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-015)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.2.2.10)
  7. 社内資料:血球移行性(2025年3月27日承認、CTD 2.6.4.4.4)
  8. 社内資料:CYP分子種の同定(2025年3月27日承認、CTD 2.6.4.5.3)
  9. 社内資料:母集団薬物動態解析(2025年3月27日承認、CTD 2.7.2.3.5.1)
  10. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-012)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.2.2.7)
  11. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-018)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.2.2.12)
  12. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-009)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.2.2.4)
  13. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-016)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.2.2.11)
  14. 社内資料:海外第I相試験(MYK-461-010)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.2.2.5)
  15. 社内資料:国内第III相試験(CV027004/HORIZON-HCM)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.6.5.4)
  16. 社内資料:海外第III相試験(MYK-461-005/EXPLORER-HCM)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.6.5.1)
  17. 社内資料:海外第III相試験(MYK-461-017/VALOR-HCM)(2025年3月27日承認、CTD 2.7.6.5.2)
  18. Barrick SK,et al., J Biol Chem., 297, 101297, (2021) »PubMed
  19. 社内資料:In vitro薬効薬理試験(2025年3月27日承認、CTD 2.6.2.3.1)
  20. 社内資料:In vivo薬効薬理試験(2025年3月27日承認、CTD 2.6.2.3.2)
  21. 社内資料:In vivo薬効薬理試験(2025年3月27日承認、CTD 2.6.2.3.3)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社 メディカル情報グループ
東京都千代田区大手町1-2-1
電話:0120-093-507
製品情報問い合わせ先
ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社 メディカル情報グループ
東京都千代田区大手町1-2-1
電話:0120-093-507

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社
東京都千代田区大手町1-2-1

その他の説明

参考情報:「7.用法及び用量に関連する注意」の補足情報
図1 投与開始期の用量調節
投与開始時・投与開始4週間後
図2 治療継続期の用量調節
投与開始12週間以降
図3 いずれかの来院でLVEF<50%になった場合の休薬、再開、中止の処置
休薬基準
中止基準

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版