5.1 適用の前に十分な診察及び検査を実施し、高コレステロール血症又は家族性高コレステロール血症であることを確認した上で本剤の適用を考慮すること。
5.2 HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又は以下に示すHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない患者に使用すること。
・副作用の既往等によりHMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が困難な患者
・HMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が禁忌とされる患者
5.3 家族性高コレステロール血症のうちホモ接合体については使用経験がないので、治療上やむを得ないと判断される場合のみ、LDLアフェレーシス等の非薬物療法の補助として本剤の適用を考慮すること。
通常、成人にはベムペド酸として180mgを1日1回経口投与する。
HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない場合を除き、HMG-CoA還元酵素阻害剤と併用すること。[
8.3参照]
8.1 本剤投与にあたっては、あらかじめ高コレステロール血症治療の基本である食事療法を行い、更に運動療法、禁煙、他の虚血性心疾患のリスクファクター(糖尿病、高血圧症等)の軽減等も十分考慮すること。
8.2 本剤投与中は血中脂質値を定期的に検査し、本剤に対する反応が認められない場合には投与を中止すること。
8.3 HMG-CoA還元酵素阻害剤及び他の脂質異常症治療薬と併用する場合は、併用する薬剤の電子添文の2.禁忌、8.重要な基本的注意、9.特定の背景を有する患者に関する注意及び11.1重大な副作用の記載を必ず確認すること。[7.参照]
8.4 本剤はHMG-CoA還元酵素阻害剤の血中濃度を上昇させることから、横紋筋融解症等の副作用があらわれるおそれがある。本剤とHMG-CoA還元酵素阻害剤を併用する場合は、定期的にCKを測定するなど患者の状態を十分に観察すること。また、これらの副作用の症状又は徴候があらわれた場合には速やかに医師に相談するよう患者に指導すること。[
16.7.2参照]
8.5 本剤投与により尿酸値が上昇し、高尿酸血症又は高尿酸血症の悪化があらわれるおそれがあるため、血清尿酸値の測定等の観察を十分行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 痛風の既往歴のある患者又は高尿酸血症の患者
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)
本剤の非結合形の血中濃度が上昇するおそれがある。重度の肝機能障害患者を対象とした臨床試験は実施していない。[
16.6.2参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1週間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。[
9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ラット)で臨床用量に相当又は下回る曝露で、胎児の骨格所見(肩甲骨と肋骨の弯曲)の発現頻度の増加が報告されている。また、動物実験(妊娠期及び授乳期ラット)で臨床用量の曝露量以下で、出生児の学習能力の遅延、死産児数の増加・生存率低下、及び体重の低値が報告されている。[
2.2、
9.4、
9.6参照]
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。ヒトで乳汁中への移行が報告されている。[
9.5、
16.3.2参照]
9.7 小児等
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人に本剤180mgを空腹時に単回経口投与した時の、血漿中ベムペド酸濃度推移及び薬物動態パラメータを図16-1及び表16-1に示す
2)。
図16-1 健康成人における本剤単回経口投与時の血漿中ベムペド酸濃度推移
表16-1 本剤単回経口投与後の血漿中ベムペド酸の薬物動態パラメータ
| 用量 | 例数 | tmax(h) | Cmax(μg/mL) | AUCinf(μg・h/mL) | t1/2(h) |
| 180mg | 6 | 2.00 (1.00-2.00) | 17.8 (2.99) | 280 (59.3) | 20.1 (4.18) |
16.1.2 反復投与
健康成人に本剤180mgを空腹時に1日1回14日間反復経口投与した時の、血漿中ベムペド酸の薬物動態パラメータを表16-2に示す。14日間反復経口投与後のAUCtauと単回経口投与後のAUC
24の比により算出したベムペド酸の累積係数の平均値は2.35であった
2)。
表16-2 本剤1日1回14日間反復経口投与後の血漿中ベムペド酸の薬物動態パラメータ
| 用量 | 例数 | tmax(h) | Cmax(μg/mL) | AUCtau(μg・h/mL) | t1/2(h) |
| 180mg | 6 | 2.00 (2.00-3.00) | 30.7 (6.57) | 391 (118) | 25.2 (4.83) |
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人17例に本剤180mgを単回経口投与した時、空腹投与時に対する食後投与時のベムペド酸のCmax及びAUCinfの幾何平均比はそれぞれ0.88及び0.98であった
3)(外国人データ)。
16.3 分布
16.3.1 蛋白結合率
ベムペド酸のヒト血漿蛋白結合率は99.3%であった
4)(
in vitro、平衡透析法)。
16.3.2 乳汁移行
授乳中の健康成人女性8例に本剤180mgを1日1回6日間反復経口投与した時、乳汁中への移行が認められた。乳児の平均1日摂取量は0.0331mg/日、相対的乳児投与量は0.479%と推定された
5)(外国人データ)。[
9.6参照]
16.4 代謝
ベムペド酸の代謝へのCYPの寄与は小さく、主にNADPH依存性の酸化及びUGT2B7によるグルクロン酸抱合により代謝される
6)(
in vitro)。
16.5 排泄
健康成人6例に
14C-ベムペド酸240mg
注)を単回経口投与した時、投与放射能量の62.1%が尿中から、25.4%が糞便中から回収された。糞便中及び尿中にそれぞれ投与量の5%未満が未変化体として排泄された
7)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
本剤180mgを単回経口投与した時、正常な腎機能を有する被験者(Ccr:90mL/min以上、6例)と比較し、軽度(eGFR:60〜89mL/min/1.73m
2、6例)、中等度(eGFR:30超〜59mL/min/1.73m
2、6例)及び重度(eGFR:30mL/min/1.73m
2以下、6例)の腎機能障害のある被験者では、ベムペド酸のCmaxはそれぞれ1.23倍、1.15倍及び0.97倍、AUCはそれぞれ1.18倍、1.76倍及び1.90倍であった
8)(外国人データ)。透析中の末期腎不全の被験者(eGFR:15mL/min未満、11例)に本剤180mgを透析1時間前及び透析23時間後に単回経口投与した時、正常な腎機能を有する被験者(10例)と比較し、ベムペド酸のCmaxはそれぞれ0.84倍及び0.83倍、AUCはそれぞれ1.47倍及び1.75倍であった
9)(外国人データ)。
本剤を投与された2,403例(日本人159例を含む)を対象とした母集団薬物動態解析の結果より、正常な腎機能を有する患者と比較し、軽度及び中等度の腎機能障害のある患者では、ベムペド酸の定常状態におけるAUCはそれぞれ1.39倍及び1.88倍であった
10)。
16.6.2 肝機能障害患者
本剤180mgを単回経口投与した時のベムペド酸のCmax及びAUCは、正常な肝機能を有する被験者(8例)と比較し、軽度の肝機能障害のある被験者(Child-Pugh分類A、8例)ではそれぞれ0.89倍及び0.78倍、中等度の肝機能障害のある被験者(Child-Pugh分類B、8例)ではそれぞれ0.86倍及び0.84倍であった。軽度及び中等度の肝機能障害被験者における非結合形のベムペド酸のCmaxは0.81倍及び1.38倍、AUCは0.73倍及び1.31倍であった
11)(外国人データ)。[
9.3.1参照]
16.7 薬物相互作用
16.7.1 プロベネシド
健康成人20例において、プロベネシド(UGT阻害剤)500mg1日2回投与と併用して本剤180mgを単回経口投与した時、ベムペド酸単独投与時と比較して、ベムペド酸のCmax及びAUCはそれぞれ1.23倍及び1.74倍であった
12)(外国人データ)。
16.7.2 HMG-CoA還元酵素阻害剤
以下の[1]〜[4]の4試験において、本剤とHMG-CoA還元酵素阻害剤の薬物相互作用が検討された。
[1]健康成人11〜12例にベムペド酸240mg注)とシンバスタチン20mg、プラバスタチン40mg又はロスバスタチン10mgを併用投与した。[2]健康成人12例に本剤180mgとアトルバスタチン80mg、シンバスタチン40mg、プラバスタチン80mg又はロスバスタチン40mgを併用投与した。[3]高コレステロール血症患者40例にベムペド酸120mg注)又は240mg注)とアトルバスタチン10mgを併用投与した。[4]高コレステロール血症患者41例に本剤180mgとアトルバスタチン80mgを併用投与した。
上記の試験の結果、HMG-CoA還元酵素阻害剤単独投与時と比較して、アトルバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ0.99〜1.69倍及び1.29〜1.77倍、ロスバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ1.68〜2.08倍及び1.45〜1.69倍、シンバスタチン酸(活性代謝物)のCmax及びAUCはそれぞれ1.43〜1.52倍及び1.91〜1.96倍、プラバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ1.36〜2.04倍及び1.46〜1.99倍であった
13)14)15)16)(外国人データ)。[
8.4参照]
16.7.3 エゼチミブ
健康成人40例において、本剤180mg1日1回投与と併用してエゼチミブ10mgを単回経口投与した時、エゼチミブ単独投与時と比較して、エゼチミブのCmax及びAUCはそれぞれ1.16倍及び1.11倍、エゼチミブのグルクロン酸抱合体のCmax及びAUCはそれぞれ1.80倍及び1.67倍であった。エゼチミブ10mg1日1回投与と併用して本剤180mgを単回経口投与した時、ベムペド酸単独投与時と比較して、ベムペド酸のCmax及びAUCはそれぞれ1.08倍及び1.05倍であった
17)(外国人データ)。
16.7.4 メトホルミン
2型糖尿病被験者19例に本剤180mg及びメトホルミン500mgを併用投与した時、メトホルミン単独投与時と比較して、メトホルミンのCmax及びAUCはそれぞれ1.04倍及び0.97倍であった
18)(外国人データ)。
16.7.5 経口避妊薬
健康成人16例に本剤180mg及び経口避妊薬(ノルエチンドロン1mg及びエチニルエストラジオール0.035mg)を併用投与した時、経口避妊薬単独投与時と比較して、ノルエチンドロンのCmax及びAUCはそれぞれ1.22倍及び1.03倍、エチニルエストラジオールのCmax及びAUCはそれぞれ1.09倍及び0.96倍であった
19)(外国人データ)。
注)本剤の承認された用量は、1日1回180mgである。
18.1 作用機序
ベムペド酸は肝臓においてETC-1002コエンザイムA(ETC-1002-CoA)へと活性化されてから、アデノシン三リン酸クエン酸リアーゼ(ACL)を阻害する。ACLはコレステロール生合成経路の3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素の上流酵素である。ETC-1002-CoAによってACLが阻害されると、肝臓のコレステロール合成が低下し、低比重リポ蛋白質受容体(LDLR)の発現誘導によって血中の低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)が低下する。
18.2 ACL阻害作用
ベムペド酸のCoA活性体であるETC-1002-CoAは、ヒトACL活性阻害作用を発揮した
22)(
in vitro)。
18.3 脂質合成阻害作用とLDLR誘導作用
ヒト初代肝細胞において、ベムペド酸は脂質合成を阻害し、LDLR蛋白の発現量を増加させた
22)(
in vitro)。また、ベムペド酸はマウス肝臓においてLDLR蛋白の発現を促進させた
23)。
18.4 血中脂質低下作用
食事誘発性の高コレステロール血症モデル動物において、ベムペド酸は血中のLDL-Cを低下させた
24)25)(ハムスター、マウス)。
18.5 動脈硬化進展抑制作用
食事誘発性の高コレステロール血症モデル動物において、ベムペド酸は動脈硬化病変面積を低下させた
23)26)(マウス、ミニブタ)。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。