医療用医薬品 : デノスマブBS

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医薬品情報


総称名 デノスマブBS
一般名 デノスマブ(遺伝子組換え)[デノスマブ後続1]
欧文一般名 Denosumab(Genetical Recombination)[Denosumab Biosimilar 1]
製剤名 デノスマブ(遺伝子組換え)[デノスマブ後続1]注
薬効分類名 ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤
薬効分類番号 3999
ATCコード M05BX04
KEGG DRUG
D03684 デノスマブ
KEGG DGROUP
DG01985 疾患修飾性抗リウマチ薬 (DMARD)
DG03232 骨粗鬆症治療薬
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2025年9月 作成(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
デノスマブBS皮下注120mgRM「F」 DENOSUMAB BS 120mg RM for S.C.injection「F」 富士製薬工業 39994F8A1025 生物由来製品, 劇薬, 処方箋医薬品注)

1. 警告

1.1 本剤の治療開始後数日から、重篤な低カルシウム血症があらわれることがあり、死亡に至った例が報告されている。本剤の投与に際しては、頻回に血液検査を行い、観察を十分に行うこと。本剤による重篤な低カルシウム血症の発現を軽減するため、血清補正カルシウム値が高値でない限り、カルシウム及びビタミンDの経口補充のもとに本剤を投与すること。[7.2参照]
1.2 重度の腎機能障害患者では低カルシウム血症を起こすおそれが高いため、慎重に投与すること。[9.2.1参照]
1.3 本剤投与後に低カルシウム血症が認められた場合には、カルシウム及びビタミンDの経口投与に加えて、緊急を要する場合には、カルシウムの点滴投与を併用するなど、適切な処置を速やかに行うこと。[11.1.1参照]

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]

4. 効能または効果

多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変

6. 用法及び用量

通常、成人にはデノスマブ(遺伝子組換え)[デノスマブ後続1]として120mgを4週間に1回、皮下投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 本剤によるグレード3又は4の副作用が発現した場合、グレード1以下に回復するまで休薬を考慮すること(グレードはCTCAEに準じる)。
7.2 本剤による重篤な低カルシウム血症の発現を軽減するため、血清補正カルシウム値が高値でない限り、毎日少なくともカルシウムとして500mg及び天然型ビタミンDとして400IUの投与を行うこと。ただし、腎機能障害患者では、ビタミンDの活性化が障害されているため、腎機能障害の程度に応じ、ビタミンDについては活性型ビタミンDを使用するとともに、カルシウムについては投与の必要性を判断し、投与量を適宜調整すること。[1.117.1.1-17.1.3参照]

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤はプラリアと同一成分(デノスマブ)を含むため、本剤投与中の患者にはプラリアの投与を避けること。
8.2 低カルシウム血症があらわれることがあるので、本剤投与開始前に、血清カルシウム、リン等の血清電解質濃度を測定すること。血清補正カルシウム値を確認し、低カルシウム血症が認められた場合には、低カルシウム血症を是正した後に、本剤の投与を開始すること。[9.1.111.1.1参照]
8.3 治療開始後数日から、低カルシウム血症があらわれることがある。本剤投与後は、患者の状態に注意し、頻回に血清カルシウム、リン等の血清電解質濃度を測定すること。[11.1.1参照]
8.4 顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがあり、本剤の長期投与により顎骨壊死の発現率の増加が認められている。報告された症例の多くが抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現している。リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、血管新生阻害薬、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。本剤の投与開始前は口腔内の管理状態を確認し、必要に応じて、患者に対し適切な歯科検査を受け、侵襲的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導すること。本剤投与中に歯科処置が必要になった場合には、できる限り非侵襲的な歯科処置を受けるよう指導すること。また、口腔内を清潔に保つこと、定期的な歯科検査を受けること、歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知して侵襲的な歯科処置はできる限り避けることなどを患者に十分説明し、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科を受診するように指導すること。[11.1.2参照]
8.5 本剤又はビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性又は軽微な外力による大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折が発現したとの報告がある。これらの報告では、完全骨折が起こる数週間から数ヵ月前に大腿部、鼠径部、前腕部等において前駆痛が認められている報告もあることから、本剤の投与開始後にこのような症状が認められた場合には、X線検査等を行い、適切な処置を行うこと。また、両側性の骨折が生じる可能性があることから、片側で非定型骨折が起きた場合には、反対側の部位の症状等を確認し、X線検査を行うなど、慎重に観察すること。X線検査時には骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられており、そのような場合には適切な処置を行うこと。[11.1.4参照]
8.6 本剤の投与は、がん治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低カルシウム血症の患者又は低カルシウム血症を起こすおそれのある患者
低カルシウム血症が発現又は増悪するおそれがある。[8.2参照]
9.1.2 肺転移を有する骨巨細胞腫患者
気胸が発現するおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重度の腎機能障害のある患者
低カルシウム血症を起こすおそれがある。本剤の第III相臨床試験では、クレアチニンクリアランス値が30mL/min未満の重度腎疾患患者及び透析の必要な末期腎不全患者は対象から除外されている。[1.217.3.1参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中及び最終投与後一定期間は適切な避妊法を用いるよう指導すること。[9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。
動物実験では、サルに妊娠20日から分娩時まで本剤(50mg/kg/4週)を皮下投与した結果、死産の増加、出生児の分娩後死亡の増加、骨・歯の異常、末梢リンパ節の欠損が認められた。[2.29.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有用性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
本剤のヒト乳汁中への移行は不明であるが、ヒトIgGは乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.7.1 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
本剤を投与した若齢サルにおいて、骨端成長板の異常が認められた。RANKL注)を阻害すると、ラット新生児の骨成長及び歯の萌出が抑制されることが示されている。
注)RANKL:receptor activator for nuclear factor-κB ligand
9.7.2 骨端線閉鎖を伴わない骨格が未成熟な患者において、本剤治療中止後(数週間から数ヵ月後)に、急性腎障害、悪心・嘔吐等の臨床症状を伴う重篤な高カルシウム血症が発現した例が報告されている。
9.8 高齢者
一般に、生理機能が低下していることが多い。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 低カルシウム血症(5.6%)
QT延長、痙攣、テタニー、しびれ、失見当識等の症状を伴う低カルシウム血症があらわれることがあり、死亡に至った例が報告されている。低カルシウム血症が認められた場合には、カルシウム及びビタミンDの経口投与に加えて、緊急を要する場合には、カルシウムの点滴投与を併用するなど、適切な処置を速やかに行うこと。[1.38.28.3参照]
11.1.2 顎骨壊死・顎骨骨髄炎(1.8%)[8.4参照]
11.1.3 アナフィラキシー(頻度不明)
11.1.4 大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折(頻度不明)[8.5参照]
11.1.5 治療中止後の多発性椎体骨折(頻度不明)
11.1.6 重篤な皮膚感染症(0.1%)
重篤な蜂巣炎等の皮膚感染症があらわれることがあるので、発赤、腫脹、疼痛、発熱等の症状が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 1%以上1%未満頻度不明
血液貧血白血球減少、血小板減少 
皮膚 発疹、そう痒症、皮膚乾燥、脱毛症、多汗症、湿疹扁平苔癬
代謝低リン酸血症高カルシウム血症、低マグネシウム血症 
精神神経系頭痛めまい、不眠症、錯感覚、味覚異常、感覚鈍麻、嗜眠、末梢性感覚ニューロパチー、錯乱 
循環器 高血圧、動悸、心不全、不整脈 
呼吸器 呼吸困難、咳嗽、口腔咽頭痛、気胸 
消化器悪心、下痢、食欲減退、嘔吐、便秘、歯の障害(歯痛、歯膿瘍等)腹痛、歯肉障害(歯肉痛、歯肉炎等)、消化不良、口内乾燥、鼓腸、口内炎 
筋骨格系関節痛、筋肉痛、骨痛、背部痛、顎痛、四肢痛筋骨格痛、筋痙縮、頸部痛、脊椎痛 
肝臓 ALT上昇、AST上昇、ALP上昇 
腎臓血中クレアチニン増加腎機能障害 
その他疲労、無力症、発熱、注射部位反応(疼痛、そう痒感、血腫等)インフルエンザ様疾患、疼痛、末梢性浮腫、体重減少、胸痛、ほてり、悪寒、上気道感染、倦怠感、尿路感染、視力障害、粘膜の炎症、体重増加、骨髄炎、流涙増加、白内障、薬物過敏症 

14. 適用上の注意

14.1 薬剤投与前の注意
冷蔵保存(2〜8℃)下から室温に戻した後、使用すること。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 皮下注射は、上腕、大腿又は腹部に行うこと。
14.2.2 投与の際には、27ゲージの注射針の使用が推奨される。
14.2.3 注射針が血管内に刺入していないことを確認すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
臨床試験において、3,508例中15例(0.4%)で本剤に対する結合抗体が認められたが、中和抗体の産生は認められなかった。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
<本剤>
16.1.1 単回投与
海外において、日本人を含む健康成人に本剤及び先行バイオ医薬品注)をデノスマブ(遺伝子組換え)として120mgを単回皮下投与し、薬物動態を検討した。薬物動態解析対象204例における薬物動態(PK)パラメータ(AUC0-t及びCmax)の幾何最小二乗平均値の比の90%信頼区間は生物学的同等性の基準範囲(80〜125%)内であり、本剤と先行バイオ医薬品の同等性が確認された1)
血清中デノスマブの薬物動態パラメータ
 nAUC0-t(hr・μg/mL)Cmax(μg/mL)tmaxa)(hr)t1/2(hr)
本剤10316,052±4,21613.5±4.6216(24〜1,009)363.71±169.44
先行バイオ医薬品注)10114,943±4,16412.9±4.3192(48〜504)358.08±193.64
本剤及び先行バイオ医薬品注)の血清中濃度
注)先行バイオ医薬品:米国で承認されたデノスマブ(遺伝子組換え)製剤(Xgeva)
<ランマーク皮下注120mg>
16.1.2 単回投与
(1)日本人乳癌骨転移患者に本剤60mg及び180mg注)を単回皮下投与したときの薬物動態パラメータを表に示す。血清中デノスマブのCmax及びAUCは、60〜180mgの用量範囲でほぼ用量に比例して増加した2)
血清中デノスマブの薬物動態パラメータ
投与量(mg)nCmax(ng/mL)Tmaxa)(日)AUC0-t(μg・日/mL)t1/2β(日)
6067,730±3,1308(7〜28)351±14424.7±2.44
180631,100±14,90010(4〜28)1,320±64029.1±7.15
(2)健康な日本人閉経後女性に本剤0.03、0.1、0.3、1.0及び3.0mg/kg注)を単回皮下投与したとき、デノスマブは0.03〜3.0mg/kgの用量範囲で非線形の薬物動態を示したが、1.0及び3.0mg/kgではCmax及びAUCはほぼ用量に比例して増加した3)4)
血清中デノスマブの薬物動態パラメータ
投与量(mg/kg)nCmax(ng/mL)Tmaxa)(日)AUC0-t(μg・日/mL)
0.03699.6±25.87.00(7〜10)2.06±0.53
0.16492±16612.0(7〜21)15.2±6.7
0.361,910±65814.0(7〜21)84.3±20.1
1.068,690±2,17014.0(10〜21)481±131
3.0627,400±7,88014.0(14〜42)1,790±650
注)本剤の承認された用量は、120mgである。
16.2 吸収
<ランマーク皮下注120mg>
健康な成人、低骨密度又は骨粗鬆症の閉経後女性及びがん患者に本剤を皮下投与したときの絶対バイオアベイラビリティは約62%であった5)(日本人及び外国人データ)注)
注)母集団薬物動態解析による推定値
16.3 分布
<ランマーク皮下注120mg>
サルに125I標識した本剤1mg/kgを単回皮下投与したとき、組織中の放射活性は、投与部位と腋窩リンパ節を除き、血清中より低かった。血清に次いで鼠径リンパ節、脾臓、卵巣及び肺に高い放射活性が認められた6)7)。分布に関する明らかな性差は認められなかった6)
16.4 代謝
<ランマーク皮下注120mg>
本剤はヒトIgG2サブクラスに属するモノクローナル抗体であることから、他の免疫グロブリンと同様に生体内での異化により消失すると推察される6)8)
16.5 排泄
<ランマーク皮下注120mg>
サルに125I標識した本剤1mg/kgを単回皮下投与したとき、投与された放射能は投与後56日までに77.9%が尿中に排泄された6)
16.6 特定の背景を有する患者
<ランマーク皮下注120mg>
16.6.1 腎機能障害患者
腎機能正常者12例及び腎機能障害患者43例(軽度腎疾患13例、中等度腎疾患13例、重度腎疾患9例、透析の必要な末期腎不全患者8例)に本剤60mg注)を単回皮下投与したとき、血清中デノスマブのCmax及びAUCに、腎機能障害の程度による明らかな差異は認められなかった9)(外国人データ)。[17.3.1参照]
注)本剤の承認された用量は、120mgである。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
<ランマーク皮下注120mg>
17.1.1 国際共同第III相試験
骨転移を有する進行乳癌患者対象試験(日本が参加した国際共同試験)10)11)において、主要評価項目であるSRE(骨関連事象:病的骨折、骨への放射線治療、骨に対する外科的処置又は脊髄圧迫)の初回発現までの期間についてゾレドロン酸に対する本剤の非劣性の検証を主目的として検討した結果は次表のとおりであり、非劣性が検証された。このうち、国内症例は136例(デノスマブ群69例、ゾレドロン酸群67例)であった。なお、全ての患者に対して、治験期間中に高カルシウム血症が認められない限り、毎日少なくとも500mgのカルシウム及び400IUの天然型ビタミンDの補充が強く推奨された。[7.2参照]
骨転移を有する進行乳癌患者における本剤の有効性
 初回SREの発現初回SRE発現までの期間
n/N(%)中央値(日)ハザード比(95%信頼区間)p値
非劣性検定優越性検定c)
デノスマブ群a)315/1,026(30.7)NE0.82(0.71,0.95)<0.00010.0101
ゾレドロン酸群b)372/1,020(36.5)806
副作用発現頻度は、デノスマブ群で32.3%(329/1,020例)であった。主な副作用は、関節痛4.3%、疲労3.7%、低カルシウム血症2.9%、悪心2.7%、下痢2.2%であった11)
低カルシウム血症の有害事象の発現頻度は、デノスマブ群で5.6%(57/1,020例)、ゾレドロン酸群で3.5%(35/1,013例)であり、うち重篤な低カルシウム血症の発現頻度は、デノスマブ群で0.5%(5/1,020例)、ゾレドロン酸群で0.2%(2/1,013例)であった11)
<ランマーク皮下注120mg>
17.1.2 海外第III相試験
骨転移を有するホルモン不応性(去勢抵抗性)前立腺癌患者対象試験12)において、主要評価項目であるSREの初回発現までの期間についてゾレドロン酸に対する本剤の非劣性の検証を主目的として検討した結果は次表のとおりであり、非劣性が検証された。なお、全ての患者に対して、治験期間中に高カルシウム血症が認められない限り、毎日少なくとも500mgのカルシウム及び400IUの天然型ビタミンDの補充が強く推奨された13)14)。[7.2参照]
骨転移を有するホルモン不応性(去勢抵抗性)前立腺癌患者における本剤の有効性
 初回SREの発現初回SRE発現までの期間
n/N(%)中央値(日)ハザード比(95%信頼区間)p値
非劣性検定優越性検定c)
デノスマブ群a)341/950(35.9)6290.82(0.71,0.95)0.00020.0085
ゾレドロン酸群b)386/951(40.6)521
副作用発現頻度は、デノスマブ群32.0%(302/943例)であった。主な副作用は、低カルシウム血症7.3%、悪心3.2%、疲労3.1%、食欲減退2.9%、無力症2.2%であった13)
低カルシウム血症の有害事象の発現頻度は、デノスマブ群で12.8%(121/943例)、ゾレドロン酸群で5.8%(55/945例)であり、うち重篤な低カルシウム血症の発現頻度は、デノスマブ群で2.5%(24/943例)、ゾレドロン酸群で0.7%(7/945例)であった13)
<ランマーク皮下注120mg>
17.1.3 海外第III相試験
多発性骨髄腫又は骨転移を有する進行固形癌(乳癌及び前立腺癌を除く)患者対象試験15)16)において、主要評価項目であるSREの初回発現までの期間についてゾレドロン酸に対する本剤の非劣性の検証を主目的として検討した結果は次表のとおりであり、非劣性が検証された。なお、全ての患者に対して、治験期間中に高カルシウム血症が認められない限り、毎日少なくとも500mgのカルシウム及び400IUの天然型ビタミンDの補充が強く推奨された。[7.2参照]
多発性骨髄腫又は骨転移を有する進行固形癌(乳癌及び前立腺癌を除く)患者における本剤の有効性
 初回SREの発現初回SRE発現までの期間
n/N(%)中央値(日)ハザード比(95%信頼区間)p値
非劣性検定優越性検定c)
デノスマブ群a)278/886(31.4)6250.84(0.71,0.98)0.00070.0619
ゾレドロン酸群b)323/890(36.3)496
副作用発現頻度は、デノスマブ群22.3%(196/878例)であった。主な副作用は、低カルシウム血症7.2%、悪心1.9%、発熱0.9%であった16)
低カルシウム血症の有害事象の発現頻度は、デノスマブ群で10.8%(95/878例)、ゾレドロン酸群で5.8%(51/878例)であり、うち重篤な低カルシウム血症の発現頻度は、デノスマブ群で1.4%(12/878例)、ゾレドロン酸群で0.9%(8/878例)であった16)
17.3 その他
<ランマーク皮下注120mg>
17.3.1 腎機能の程度が異なる被験者を対象とした試験
(1)腎機能正常者12例及び腎機能障害患者43例(軽度腎疾患13例、中等度腎疾患13例、重度腎疾患9例、透析の必要な末期腎不全患者8例)に本剤60mg注)を単回皮下投与した試験において、クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の重度腎疾患患者及び透析の必要な末期腎不全患者の低カルシウム血症の有害事象としての発現頻度は29.4%(5/17例)であり、軽度及び中等度腎疾患患者並びに腎機能正常者13.2%(5/38例)と比較して、発現頻度が高かった17)(外国人データ)。[9.2.116.6.1参照]
注)本剤の承認された用量は、120mgである。
(2)クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の重度腎疾患患者及び透析の必要な末期腎不全患者それぞれ16例に本剤120mgを第1日、第29日に皮下投与した試験において、血清補正カルシウム値7.0mg/dL未満(1.75mmol/L未満)又は症候性の低カルシウム血症の発現頻度は、重度腎疾患患者で6.3%(1/16例)、透析の必要な末期腎不全患者で12.5%(2/16例)であった18)。[9.2.116.6.1参照]

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
<ランマーク皮下注120mg>
デノスマブは特異的かつ高い親和性でヒトRANKLに結合するヒト型IgG2モノクローナル抗体である19)20)
RANKLは膜結合型あるいは可溶型として存在し、骨吸収を司る破骨細胞及びその前駆細胞の表面に発現する受容体であるRANK注)を介して破骨細胞の形成、機能及び生存を調節する必須の蛋白質である21)
多発性骨髄腫及び骨転移を有する固形癌の骨病変においては、RANKLによって活性化された破骨細胞が骨破壊の主要な因子である22)。デノスマブはRANK/RANKL経路を阻害し、破骨細胞の活性化を抑制することで骨吸収を抑制し23)24)25)、がんによる骨病変の進展を抑制すると考えられる。
注)RANK:receptor activator for nuclear factor-κB
18.2 RANKLに対する結合活性
<本剤>
本剤はin vitro試験において、RANKLに対して結合し、本剤の結合活性は、欧州で承認されたデノスマブ製剤及び米国で承認されたデノスマブ製剤と同程度であった26)
18.3 骨吸収抑制
<ランマーク皮下注120mg>
カニクイザルにデノスマブを月1回反復皮下投与すると、投与期間中、尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチドの低下が持続した27)
18.4 骨病変の進展抑制
<ランマーク皮下注120mg>
デノスマブはマウスのRANKLに結合しないため、マウス骨転移モデルではマウスのRANKLに結合して阻害するOPG-Fc注)をデノスマブの代替23)24)として使用した。乳癌28)29)30)(溶骨性又は溶骨性と造骨性の混合型)、前立腺癌31)及び非小細胞肺癌32)(いずれも溶骨性)のマウス骨転移モデルにOPG-Fcを投与したところ、がんによる骨病変の進展が抑制された。
注)OPG-Fc:免疫グロブリン結晶化フラグメントに結合させたオステオプロテゲリン

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. デノスマブ(遺伝子組換え)[デノスマブ後続1]

一般的名称 デノスマブ(遺伝子組換え)[デノスマブ後続1]
一般的名称(欧名) Denosumab(Genetical Recombination)[Denosumab Biosimilar 1]
分子式 C6404H9908N1724O2004S50(タンパク質部分、4本鎖)
分子量 約147,000
理化学知見その他 デノスマブ[デノスマブ後続1](以下、デノスマブ後続1)は、遺伝子組換え抗NF-κB活性化受容体リガンド(RANKL)モノクローナル抗体であり、ヒトIgG2に由来する。
デノスマブ後続1は、CHO細胞により産生される。
デノスマブ後続1は、448個のアミノ酸残基からなるH鎖(γ2鎖)2本及び215個のアミノ酸残基からなるL鎖(κ鎖)2本で構成される糖タンパク質(分子量:約147,000)である。
KEGG DRUG D03684

20. 取扱い上の注意

外箱開封後は遮光して保存すること。

21. 承認条件

医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。

22. 包装

1.7mL[1バイアル]

23. 主要文献

  1. 社内資料:第I相臨床試験成績(CSR AVT03-GL-P03)
  2. Yonemori K,et al., Cancer Sci., 99 (6), 1237-1242, (2008) »PubMed
  3. Kumagai Y,et al., Bone., 49 (5), 1101-1107, (2011) »PubMed
  4. 試験20030164(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2.1.3)
  5. 薬物動態解析(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.3.7.1)
  6. 薬物動態試験の概要文(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.6.4)
  7. 分布(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、審査報告書)
  8. 代謝(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、審査報告書)
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  11. 試験20050136(申請する適応症に関する比較対照試験[国際共同第III相試験、日本を含む])(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.6.14)
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  13. 試験20050103(申請する適応症に関する比較対照試験[国際共同第III相試験、日本を含まない])(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.6.13)
  14. 海外第III相試験(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、審査報告書)
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  16. 試験20050244(申請する適応症に関する比較対照試験[国際共同第III相試験、日本を含まない])(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.6.15)
  17. 試験20050245(内因性要因を検討したPK試験)(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.6.10)
  18. 腎機能障害患者での安全性解析(ランマーク皮下注120mg:2014年5月23日承認、申請資料概要2.7.4.5.1.4)
  19. 薬理試験(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要3.2.1)
  20. 起原又は発見の経緯(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要1.5.2)
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  23. 効力を裏付ける試験(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.6.2.2)
  24. Kostenuik PJ,et al., J Bone Miner Res., 24 (2), 182-195, (2009) »PubMed
  25. 老齢huRANKLノックインマウスにおけるデノスマブの薬理試験(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.6.2.2.2.3)
  26. 社内資料:薬理作用に関連する試験−RANKLに対する結合活性−
  27. 若齢無去勢カニクイザルを用いた12カ月投与による薬理学的パラメータ(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.6.2.2.2.4)
  28. 乳癌骨転移マウスモデルにおけるRANKL阻害(OPG-Fcによる)の薬理(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.6.2.2.3.2)
  29. Morony S,et al., Cancer Res., 61 (11), 4432-4436, (2001) »PubMed
  30. Canon JR,et al., Clin Exp Metastasis., 25 (2), 119-129, (2008) »PubMed
  31. PC-3異種移植マウスモデルにおける前立腺癌骨転移の進行に対するOPG-Fc単独及びドセタキセルとの併用によるRANKL阻害の薬理(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.6.2.2.3.3)
  32. 肺癌骨転移マウスモデルにおけるRANKL阻害(OPG-Fcによる)の薬理(ランマーク皮下注120mg:2012年1月18日承認、申請資料概要2.6.2.2.3.4)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
富士製薬工業株式会社 くすり相談室
〒939-3515 富山県富山市水橋辻ヶ堂1515番地
電話:0120-956-792
FAX:076-478-0336
製品情報問い合わせ先
富士製薬工業株式会社 くすり相談室
〒939-3515 富山県富山市水橋辻ヶ堂1515番地
電話:0120-956-792
FAX:076-478-0336

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
富士製薬工業株式会社
富山県富山市水橋辻ヶ堂1515番地

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/10/22 版