医療用医薬品 : アトバコン

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医薬品情報


総称名 アトバコン
一般名 アトバコン
欧文一般名 Atovaquone
製剤名 アトバコン内用懸濁液
薬効分類名 ニューモシスチス肺炎治療薬
薬効分類番号 6290
ATCコード P01AX06
KEGG DRUG
D00236 アトバコン
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
医薬品情報の概要は KEGG DRUG ページをご覧ください。

添付文書情報2026年8月 作成(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
アトバコン内用懸濁液15%「サワイ」 ATOVAQUONE Oral Suspension[SAWAI] 沢井製薬 62900A5S1034 処方箋医薬品

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

<適応菌種>
<適応症>

5. 効能または効果に関連する注意

<効能共通>
5.1 本剤は、副作用によりスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤(ST合剤)の使用が困難な場合に使用すること。
5.2 本剤を食後に投与できない患者では、代替治療を検討すること。
5.3 投与開始時及び投与中に下痢が認められている場合には、本剤の吸収が低下し、効果が減弱する可能性がある。下痢が認められている患者では、代替治療を検討すること。
<ニューモシスチス肺炎の治療>
5.4 重症のニューモシスチス肺炎患者(肺胞気・動脈血酸素分圧較差[(A-a)DO2]が45mmHgを超える患者)での本剤の使用に関する成績は、十分に検討されていない。また、他の治療法で効果が得られなかった重症のニューモシスチス肺炎患者における本剤の有効性を示すデータは限られている。
5.5 本剤は他の真菌又は細菌、マイコバクテリア又はウイルス疾患の治療に有効ではない。
<ニューモシスチス肺炎の発症抑制>
5.6 ニューモシスチス肺炎のリスク(CD4+細胞数が目安として200/mm3未満、ニューモシスチス肺炎の既往歴がある等)を有する患者を対象とすること。[8.2参照]

6. 用法及び用量

<ニューモシスチス肺炎の治療>
通常、成人には1回5mL(アトバコンとして750mg)を1日2回21日間、食後に経口投与する。
<ニューモシスチス肺炎の発症抑制>
通常、成人には1回10mL(アトバコンとして1500mg)を1日1回、食後に経口投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

本剤は絶食下では吸収量が低下するため、食後に投与すること。[16.2.1参照]

8. 重要な基本的注意

<効能共通>
8.1 重度の肝機能障害があらわれることがあるので、必要に応じ肝機能検査を行うこと。[11.1.2参照]
<ニューモシスチス肺炎の発症抑制>
8.2 ニューモシスチス肺炎のリスクのある患者はしばしば免疫不全状態にあり、生命を脅かすおそれのある様々な日和見感染症に罹患する可能性があるため、ニューモシスチス肺炎以外の原因も慎重に評価し、原因に応じて適宜他の追加の薬剤での治療を考慮すること。[5.6参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重度の腎障害のある患者
臨床試験では除外されている。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝障害のある患者
臨床試験では除外されている。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ラットではヒトでの推定血漿中濃度の約3倍の曝露量において生殖発生毒性はみられなかったが、ウサギでは、ヒトでの推定血漿中濃度の約3/4の曝露量において母動物毒性(体重及び摂餌量の低値)に関連すると考えられる流産及び胎児体長・体重の軽度な低値がみられた。また、ラット及びウサギでは単回経口投与により胎盤を通過して胎児に分布することが報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。

10. 相互作用

10.2 併用注意
リファンピシン
[16.7.2参照]
リファブチン
[16.7.3参照]
リファンピシンとの併用により本剤の血漿中濃度が約53%低下し、t1/2は約33時間短縮した。また、リファブチンとの併用により本剤の血漿中濃度が約34%低下し、t1/2は約14時間短縮した。機序は不明である。
テトラサイクリン塩酸塩
メトクロプラミド
[16.7.6参照]
本剤の血漿中濃度はテトラサイクリンの併用で約40%低下した。また、メトクロプラミドの併用で本剤の血漿中濃度は約58%低下した。機序は不明である。
ジドブジン
[16.7.5参照]
ジドブジンのみかけの経口クリアランスは併用により約25%低下し、AUCは約33%増加した。機序は不明である。
アセトアミノフェン
ベンゾジアゼピン系薬剤
アシクロビル
オピオイド系鎮痛薬
セファロスポリン系抗生物質
止しゃ薬
緩下剤
[16.7.7参照]
臨床試験において本剤の血漿中濃度のわずかな減少(平均3.8μg/mL以下)が報告されているが、因果関係は不明である。機序は不明である。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(いずれも頻度不明)
11.1.2 重度の肝機能障害(頻度不明)[8.1参照]
11.1.3 無顆粒球症、白血球減少(いずれも頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 頻度不明
血液貧血
過敏症血管性浮腫、気管支痙攣、咽喉絞扼感
精神神経系頭痛、不眠症
消化器悪心・嘔吐、下痢
その他肝酵素上昇、低ナトリウム血症、アミラーゼ上昇、発疹、発熱

13. 過量投与

13.1 症状
31500mgまでの過量投与症例が報告されている。そのうちジアフェニルスルホン(投与量不明)も同時に服用した過量投与患者1例では、メトヘモグロビン血症が発現した。過量投与後に発疹も報告されている。

15. その他の注意

15.2 非臨床試験に基づく情報
マウスのがん原性試験において、種特異的と考えられる肝薬物代謝酵素の誘導に関連した肝臓腫瘍の増加がみられた。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人にアトバコン内用懸濁液の750及び1500mg(各群10例)を食後にそれぞれ単回経口投与した時の薬物動態パラメータを表1に示す1)。
表1 健康成人男性にアトバコン内用懸濁液の750及び1500mgを食後にそれぞれ単回経口投与した時の薬物動態パラメータ
投与量Cmax(μg/mL)tmax(hr)AUC0-∞(μg・hr/mL)t1/2(hr)
750mg14.0±3.44.0(3,8)934.4±242.970.2±11.6
1500mg15.7±5.44.0(3,10)1109.6±646.759.7±14.1
16.1.2 反復投与
HIV患者(9〜19例)にアトバコン内用懸濁液500注1)、750及び1000mg注1)を1日1回食後に反復経口投与した時のCavg,ss(平均値±標準偏差)は、それぞれ11.7±4.8、12.5±5.8及び13.5±5.1μg/mLであり、血漿中濃度は500〜1000mgの範囲では投与量に比例した増加がみられなかった。また、HIV患者5例にアトバコン内用懸濁液750mgを1日2回食後に反復経口投与した時の血漿中アトバコンのCavg,ssは21.0±4.9μg/mL、Cmax,ssは24.0±5.7μg/mL、Cmin,ssは16.7±4.6μg/mLであった2)(外国人データ)。
16.1.3 生物学的同等性試験
アトバコン内用懸濁液15%「サワイ」とサムチレール内用懸濁液15%を健康成人男性にそれぞれ1包(アトバコンとして750mg)空腹時及び食後単回経口投与(クロスオーバー法)し、血漿中アトバコン濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)〜log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された3)。
表2 各製剤1包投与時の薬物動態パラメータ
  Cmax(μg/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)AUC0-168hr(μg・hr/mL)
空腹時
(n=87)
アトバコン内用懸濁液15%「サワイ」3.589±1.27912.10±19.5296.84±43.11※286.804±91.643
サムチレール内用懸濁液15%3.367±0.97911.86±19.6795.70±35.31279.263±89.007
食後
(n=46)
アトバコン内用懸濁液15%「サワイ」11.242±2.77311.87±5.9985.46±25.40930.906±233.454
サムチレール内用懸濁液15%11.049±2.55313.26±8.3485.82±24.22908.272±238.559
<空腹時経口投与後の血中濃度曲線>
<食後経口投与後の血中濃度曲線>
血漿中濃度ならびにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
(1)健康成人16例にアトバコン内用懸濁液750mgを単回経口投与した時のCmax及びAUC0-∞は食後投与で約2.5〜3.5倍に増加した4)(外国人データ)。[7.参照]
表3 絶食下及び食後の健康成人男性にアトバコン内用懸濁液の750mgを単回経口投与した時の薬物動態パラメータ
 Cmax(μg/mL)tmax(hr)AUC0-∞(μg・hr/mL)t1/2(hr)
絶食下3.34±0.859.6±16.0324.3±115.075.2±22.5
食後11.61±3.004.9±1.7800.6±319.869.1±19.8
(2)HIV患者(19〜21例)にアトバコン内用懸濁液500mg注1)を反復経口投与した時のAUCssは食後投与で280±114μg・hr/mL、絶食下で162±78μg・hr/mLであり、Cmax,ssは食後投与で15.1±6.1μg/mL、絶食下で8.4±3.8μg/mLであった5)(外国人データ)。[7.参照]
16.2.2 バイオアベイラビリティ
HIV患者9例にアトバコン内用懸濁液750mgを食後に単回経口投与した時の絶対的バイオアベイラビリティは47±15%であった6)(外国人データ)。
16.3 分布
16.3.1 分布容積
HIV患者9例に約37mgを単回静脈内投与注1)した時のVzは0.62±0.19L/kgであった7)(外国人データ)。
16.3.2 血漿蛋白結合率
In vitroでのヒト血漿蛋白結合率は99.9%超であり、約1〜90μg/mLの範囲で一定であった8)。
16.5 排泄
16.5.1 HIV患者9例に約37mgを単回静脈内投与注1)した時のCLは10.4±5.5mL/min、t1/2は62.5±35.3時間であった7)(外国人データ)。
16.5.2 健康成人4例に14C標識体750mgを単回経口投与した試験において、ほとんどの被験者で投与量の94%以上が糞中に21日間以内に排泄された9)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能低下者
アトバコンの薬物動態は検討していない。
16.6.2 肝機能低下者
アトバコンの薬物動態は検討していない。
16.6.3 小児
小児患者(年齢:3ヵ月〜12歳)注1)11例にアトバコン錠を投与した。成人とほぼ同用量である40mg/kgを投与した時のCavg,ssは14.28〜15.60μg/mL、t1/2は約57〜61時間であった10)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 フェニトイン
健康成人12例にアトバコン内用懸濁液1000mg注1)をフェニトイン600mgと単回併用投与した時のフェニトインの薬物動態にアトバコンは影響を及ぼさなかった11)(外国人データ)。
16.7.2 リファンピシン
HIV患者13例にアトバコン内用懸濁液750mgを12時間ごと、リファンピシン600mgを24時間ごとに併用経口投与した時の血漿中アトバコンのCavg,ssは併用で約53%低下し、t1/2は約33時間短縮した12)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.3 リファブチン
健康成人24例にアトバコン内用懸濁液750mgを1日2回及びリファブチン300mgを食後に1日1回14日間併用経口投与した時の血漿中アトバコンのAUCssは併用で約34%低下し、t1/2は約14時間短縮した13)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.4 スルファメトキサゾール・トリメトプリム
軽度〜中等度のニューモシスチス肺炎を発症したAIDS患者19例にアトバコン内用懸濁液1000mg注1)を1日1回、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(1600mg・320mg)を1日3回併用投与した時の血漿中アトバコンのCavg,ssは単独群では10.7±5.9μg/mL、併用群では10.6±7.7μg/mLであった14)(外国人データ)。
16.7.5 ジドブジン
HIV患者14例にアトバコン錠750mgを12時間ごと注2)、ジドブジン200mgを8時間ごとに併用投与した時のアトバコンのCmax,ss、Cmin,ss及びCavg,ssはいずれも併用による影響はみられなかった。一方、ジドブジンのみかけの経口クリアランスは併用により約25%低下し、AUCは約33%増加した15)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.6 テトラサイクリン及びメトクロプラミド
血漿中アトバコン濃度はテトラサイクリンの併用で約40%低下した16)。また、血漿中アトバコンのCssは、メトクロプラミドの併用で約58%低下した17)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.7 定常状態における血漿中アトバコン濃度と併用薬との関係
有効性を検討した臨床試験2試験において、ニューモシスチス肺炎患者にアトバコン錠750mgを1日3回注2)21日間経口投与した時の血漿中アトバコンのCssは、アセトアミノフェン、ベンゾジアゼピン系薬剤、アシクロビル、オピオイド系鎮痛薬、セファロスポリン系抗生物質、止しゃ薬及び緩下剤の併用でわずかに減少(7種の併用薬で平均3.8μg/mL以下)し、メトクロプラミド及びリファンピシンの併用で有意に減少(それぞれ平均8.1及び8.9μg/mL)した17)(外国人データ)。[10.2参照]
16.7.8 その他の薬剤(血漿蛋白結合率が高く治療域の狭い薬剤)
アトバコンは、高い血漿蛋白結合率(99%超)を示すことから、血漿蛋白結合率が高く治療域の狭い他の薬剤と併用する場合には慎重に行うこと。なお、アトバコンはキニーネ、フェニトイン、ワルファリン、スルファメトキサゾール、インドメタシン、ジアゼパムのin vitro血漿蛋白結合に影響を及ぼさないことから、蛋白結合の結合置換により著しい薬物相互作用が発現する可能性は低いと考えられる18)。
16.8 その他
16.8.1 血漿中濃度と臨床効果の関係
(1)軽度〜中等度のニューモシスチス肺炎を発症したAIDS患者133例にアトバコン錠750mgを1日3回注2)21日間経口投与した時の血漿中アトバコンのCssは13.9±6.9μg/mLであった。また、血漿中アトバコン濃度と臨床効果との間に相関が確認された19)(外国人データ)。
(2)軽度〜中等度のニューモシスチス肺炎を発症したAIDS患者82例にアトバコン内用懸濁液1000mg注1)を1日1回、750mgを1日2回、1500mgを1日1回及び1000mg注1)を1日2回経口投与した時のCavg,ss(中央値)は、それぞれ9.6、22.5、18.1及び26.5μg/mLであった。食後のHIV患者5例に750mgを1日2回反復経口投与した時の血漿中アトバコンのCavg,ssは21.0±4.9μg/mLであった2)20)(外国人データ)。
注1)本剤を治療に用いる場合の承認用量は、成人には1回5mL(アトバコンとして750mg)、1日2回21日間食後に経口投与である。本剤を発症抑制に用いる場合の承認用量は、成人には1回10mL(アトバコンとして1500mg)、1日1回食後に経口投与である。
注2)アトバコン錠は販売されていない。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
<ニューモシスチス肺炎の治療>
17.1.1 海外第III相試験
軽症から中等症(肺胞気・動脈血酸素分圧較差[(A-a)DO2]が45mmHg以下かつPaO2が60mmHg以上)のニューモシスチス肺炎を有するAIDS患者を対象としてアトバコン錠をST合剤と比較した多施設共同、無作為化、二重盲検試験において、アトバコン250mg錠1回3錠を1日3回注)、又はST合剤錠(スルファメトキサゾール・トリメトプリム(800mg・160mg))1回2錠を1日3回、21日間投与した。有効率を表1に示した。ニューモシスチス肺炎の確定診断例322例の21日間の治療期間中及び4週間の追跡期間中の死亡は、アトバコン錠群が11/160例(7%)、ST合剤群が1/162例(0.6%)で、両群の死亡率に有意な差(p=0.003)が認められた。投与終了4週から8週後の追跡期間中の死亡は、アトバコン錠群が2例、ST合剤群が3例であった。アトバコン錠群の死因は、ニューモシスチス肺炎が4例、細菌感染症が6例、クリプトコッカス髄膜炎、播種性のヒストプラスマ症、HIVの合併症が各1例であった。ST合剤群の死因は、ニューモシスチス肺炎、栄養失調、肺アスペルギルス症、播種性カポジ肉腫が各1例であった21)22)。
表1 ST合剤との比較試験における臨床成績
 アトバコン錠
(160例)
ST合剤
(162例)
p値
有効99例(62%)103例(64%)0.75
無効   
 効果不足28例(17%)10例(6%)<0.01
 有害事象11例(7%)33例(20%)<0.01
 評価不能22例(14%)16例(10%)0.28
アトバコン錠投与群で発現した主な有害事象は、発疹a)23%(47/203例)、悪心21%(43/203例)、下痢19%(39/203例)、頭痛16%(33/203例)、嘔吐14%(29/203例)及び発熱14%(28/203例)であった21)。
a)斑状丘疹状皮疹を含む。
17.1.2 海外第II相試験
トリメトプリム又はサルファ剤に不耐容の軽症から中等症のニューモシスチス肺炎を有するAIDS患者を対象としアトバコン錠とペンタミジンを比較した多施設共同、無作為化、非盲検試験において、アトバコン250mg錠1回3錠を1日3回注)、又はペンタミジンイセチオン酸塩(静注)3〜4mg/kgを1日1回、21日間投与した。初回治療集団での有効率を表2に示した22)23)。
表2 ペンタミジンとの比較試験における臨床成績
 アトバコン錠
(56例)
ペンタミジン
(53例)
p値
有効32例(57%)21例(40%)0.09
無効   
 効果不足16例(29%)9例(17%)0.18
 有害事象2例(4%)19例(36%)<0.01
 評価不能6例(11%)4例(8%)0.74
アトバコン錠投与群で発現した主な有害事象は、発熱40%(29/73例)、発疹22%(16/73例)、悪心22%(16/73例)、下痢21%(15/73例)、不眠症19%(14/73例)、頭痛18%(13/73例)、嘔吐14%(10/73例)及び咳嗽14%(10/73例)であった23)。
<ニューモシスチス肺炎の発症抑制>
17.1.3 海外第III相試験
ニューモシスチス肺炎のリスク(CD4+細胞数が200/mm3以下又はニューモシスチス肺炎の既往歴がある)がある患者を対象にジアフェニルスルホン(ダプソン)と比較した多施設共同、無作為化、非盲検試験において、アトバコン内用懸濁液1500mgを1日1回、又はダプソン100mgを1日1回投与した。試験終了/中止30日後までのニューモシスチス肺炎の発症率を表3に示した22)24)。
表3 ダプソンとの比較試験における臨床成績
 アトバコン内用懸濁液
1500mg/日
(527例)
ダプソン
100mg/日
(510例)
発症率(%)15%19%
相対リスク(95%信頼区間)0.77(0.57,1.04)/
17.1.4 海外第III相試験
ニューモシスチス肺炎のリスク(CD4+細胞数が200/mm3未満又はニューモシスチス肺炎の既往歴がある)がある患者を対象にペンタミジン吸入と比較した多施設共同、無作為化、非盲検試験において、アトバコン内用懸濁液1500mgを1日1回経口投与、又はペンタミジン300mgを1ヵ月ごとに1回吸入投与した。試験終了/中止30日後までのニューモシスチス肺炎の発症率を表4に示した22)25)。
表4 ペンタミジン吸入との比較試験における臨床成績
 アトバコン内用懸濁液
1500mg/日
(172例)
ペンタミジン吸入
300mg/月
(169例)
発症率(%)18%17%
相対リスク(95%信頼区間)1.14(0.68,1.91)/
アトバコン内用懸濁液投与群における有害事象発現頻度は、98%(171/175例)であった。主な有害事象は、下痢42%、発疹39%、頭痛28%、悪心26%、咳嗽、発熱各25%、鼻炎24%、無力症、感染各22%、腹痛20%、呼吸困難、嘔吐各15%であった22)25)。
注)アトバコン錠は販売されていない。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
アトバコンの作用部位はミトコンドリア呼吸鎖であることが示唆されており、P.cariniiミトコンドリアの電子伝達系複合体III(complex III)を0.015μMのIC50で抑制した。アトバコンは、ミトコンドリア内膜蛋白質ユビキノンのチトクロームb(complex IIIの構成成分)への結合を阻害し、その結果としてATPレベルを顕著に低下させることにより抗P.jirovecii活性を示すと考えられている26)27)。
18.2 In vitro及びin vivo活性
In vitroにおいて、ヒト胎児肺線維芽細胞に感染させたP.cariniiの増殖を抑制し、そのMICは約0.3μM、3H-p-aminobenzoate取込みを指標としたときIC50は1.4μMであった28)29)。デキサメタゾン誘発免疫不全ラットにおいて予防的反復経口投与により潜伏感染しているP.cariniiの再活発化を完全に抑制し、治療的反復経口投与により、ラット肺病巣のP.cariniiシスト数を用量依存的に軽減した30)。
18.3 薬剤耐性
アトバコン無効例の複数のニューモシスチス肺炎患者から分離したP.jiroveciiのチトクロームbDNA配列を解析したところ、ユビキノンが結合するQ0部位に耐性に関連すると思われる変異が数種類認められた31)32)。しかし、これらの変異はアトバコン無効例の一部でしか認められていないことから、臨床におけるアトバコン耐性に関してのチトクロームb遺伝子変異の意義は明らかではない。

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. アトバコン

一般的名称 アトバコン
一般的名称(欧名) Atovaquone
化学名 2-[trans-4-(4-Chlorophenyl)cyclohexyl]-3-hydroxy-1,4-naphthoquinone
分子式 C22H19ClO3
分子量 366.84
物理化学的性状 黄色の粉末である。N-メチルピロリドンに溶けやすく、アセトニトリル、メタノール又はエタノール(99.5)に極めて溶けにくく、水にほとんど溶けない。
KEGG DRUG D00236

20. 取扱い上の注意

凍結を避けて保存すること。

22. 包装

5mL×14包(2包×7)

23. 主要文献

  1. 井野比呂子他, 日化療会誌, 61, 335-342, (2013)
  2. 反復投与試験(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  3. 社内資料:生物学的同等性試験
  4. 単回投与試験(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  5. 食事の影響(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.1.2)
  6. バイオアベイラビリティ(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.1.2)
  7. 単回投与試験(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  8. 血漿蛋白結合率(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  9. 排泄(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  10. 小児(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.3)
  11. 薬物相互作用(フェニトイン)(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  12. 薬物相互作用(リファンピシン)(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  13. 薬物相互作用(リファブチン)(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  14. 薬物相互作用(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  15. 薬物相互作用(ジドブジン)(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
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  17. 臨床試験での定常状態における血漿中アトバコン濃度と併用薬との関係(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.2)
  18. 薬物相互作用(血漿蛋白結合率が高く治療域の狭い薬剤)(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.2.1,2.7.2.2,2.7.4.5)
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  21. 海外第III相試験(ニューモシスチス肺炎の治療)(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.5.4.2,2.7.6)
  22. 海外臨床試験の概要(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、審査報告書)
  23. 海外第II相試験(ニューモシスチス肺炎の治療)(サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.6)
  24. 海外第III相試験(ニューモシスチス肺炎の発症抑制)[1](サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.6)
  25. 海外第III相試験(ニューモシスチス肺炎の発症抑制)[2](サムチレール内用懸濁液:2012年1月18日承認、申請資料概要2.7.6)
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24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
沢井製薬株式会社 医薬品情報センター
〒532-0003 大阪市淀川区宮原5丁目2-30
電話:0120-381-999
FAX:06-7708-8966
製品情報問い合わせ先
沢井製薬株式会社 医薬品情報センター
〒532-0003 大阪市淀川区宮原5丁目2-30
電話:0120-381-999
FAX:06-7708-8966

25. 保険給付上の注意

本製剤をHIV感染患者におけるニューモシスチス肺炎の治療及び発症抑制のために使用した場合は、本製剤を使用した患者に係る診療報酬明細書等の取扱いにおいては、当該患者の秘密の保護に十分配慮すること。

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
沢井製薬株式会社
大阪市淀川区宮原5丁目2-30

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2026/09/16 版