2.1 尿閉を有する患者[抗コリン作用により排尿時の膀胱収縮が抑制され、症状が悪化するおそれがある。][
11.1.1参照]
2.2 眼圧が調節できない閉塞隅角緑内障の患者[眼圧の上昇を招き、症状が悪化するおそれがある。]
2.3 幽門、十二指腸又は腸管が閉塞している患者及び麻痺性イレウスのある患者[抗コリン作用により胃腸の平滑筋の収縮及び運動が抑制され、症状が悪化するおそれがある。]
2.4 胃アトニー又は腸アトニーのある患者[抗コリン作用により消化管運動が低下するため症状が悪化するおそれがある。]
2.5 重症筋無力症の患者[抗コリン作用により筋緊張の低下がみられ症状が悪化するおそれがある。]
2.6 重度の肝障害のある患者(Child-Pugh分類C)[
9.3.1参照]
2.7 重篤な心疾患の患者[抗コリン作用により、症状を悪化させるおそれがある。]
2.8 本剤の成分あるいは酒石酸トルテロジンに対して過敏症の既往歴のある患者
○過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
○神経因性膀胱における排尿管理
<過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁>
5.1 本剤を適用する際、十分な問診により臨床症状を確認するとともに、類似の症状を呈する疾患(尿路感染症、尿路結石、膀胱癌や前立腺癌などの下部尿路における新生物等)があることに留意し、尿検査等により除外診断を実施すること。なお、必要に応じて専門的な検査も考慮すること。
5.2 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者では、それに対する治療を優先させること。
5.3 認知症、認知機能障害患者で過活動膀胱の自覚症状の把握が困難な場合は、本剤の投与対象とならない。
<神経因性膀胱における排尿管理>
5.4 本剤の薬理作用(排尿筋の収縮の抑制)を踏まえて、本剤投与の適否を判断すること。
<過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁>
通常、成人にはフェソテロジンフマル酸塩として4mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて1日1回8mgまで増量できる。
<神経因性膀胱における排尿管理>
通常、体重25kg超の小児にはフェソテロジンフマル酸塩4mgを開始用量として1日1回経口投与する。投与開始から1週間後以降に、患者の状態に応じて1日1回8mgまで増量できる。
重度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者、中等度の肝障害のある患者(Child-Pugh分類B)、又は強力なチトクロムP450(CYP)3A4阻害薬を投与中の患者では、1日投与量はフェソテロジンフマル酸塩として4mgとし、8mgへの増量は行わないものとする。[
9.2.1、
9.3.2、
10.2参照]
8.1 眼調節障害(霧視等)、めまい、眠気等を起こすことがあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
8.2 本剤投与で効果が認められない場合、漫然と使用すべきではない。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者
本剤投与前に残尿量測定を実施し、必要に応じて、専門的な検査をすること。投与後は残尿量の増加に注意し、十分な経過観察を行うこと。抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがある。[
11.1.1参照]
9.1.2 消化管運動が低下する危険性のある患者
9.1.3 潰瘍性大腸炎の患者
9.1.4 眼圧が調整可能な閉塞隅角緑内障の患者
9.1.5 狭心症等の虚血性心疾患のある患者
抗コリン作用により頻脈が生じ、症状を増悪させるおそれがある。
9.1.6 甲状腺機能亢進症の患者
抗コリン作用により、頻脈等の交感神経興奮症状が悪化するおそれがある。
9.1.7 パーキンソン症状又は脳血管障害のある患者
症状の悪化あるいは精神神経症状があらわれるおそれがある。
9.1.8 認知症、認知機能障害のある患者
抗コリン作用により、症状を悪化させるおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者
本剤の活性代謝物トルテロジン5-ヒドロキシメチル体(5-HMT)の血漿中濃度が上昇する可能性がある。[7.、
16.6.1参照]
9.2.2 腎障害のある患者(重度の腎障害のある患者を除く)
活性代謝物5-HMTの血漿中濃度が上昇する可能性がある。[
16.6.1参照]
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝障害のある患者(Child-Pugh分類C)
9.3.2 中等度の肝障害のある患者(Child-Pugh分類B)
活性代謝物5-HMTの血漿中濃度が上昇する可能性がある。[7.、
16.6.2参照]
9.3.3 軽度の肝障害のある患者(Child-Pugh分類A)
活性代謝物5-HMTの血漿中濃度が上昇する可能性がある。[
16.6.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験において、臨床曝露量注)を超える高い血漿中濃度(AUCで6〜27倍(マウス)及び3〜11倍(ウサギ)、Cmaxで77倍(マウス)及び19倍(ウサギ))において軽度の胚・胎児毒性(吸収胚数の増大及びそれに関連した生存胎児数の減少並びに胎児の骨化遅延(ウサギのみ))が認められた。
注)臨床最大推奨用量でのCYP2D6の代謝酵素活性が欠損しているヒトにおける摂食下での曝露量(最も曝露量が高くなる条件)
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
フェソテロジンがヒトの乳汁中に移行するかは不明である。活性代謝物が同一である類薬トルテロジンでは、動物実験(マウス)で乳汁中への移行がわずかに認められている。
9.7 小児等
9.7.1 低出生体重児、新生児、乳児又は6歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.2 体重が低いほど、本剤の活性代謝物5-HMTの血漿中濃度が上昇する可能性がある
1)。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.2 血管性浮腫(頻度不明)
顔面浮腫、口唇腫脹、舌腫脹、喉頭浮腫、咽頭腫脹、咽頭浮腫等があらわれることがある。
11.1.3 QT延長(頻度不明)、心室性頻拍(頻度不明)、房室ブロック(頻度不明)、徐脈(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 10%以上 | 1〜10%未満 | 0.3〜1%未満 | 頻度不明 |
眼障害 | | 眼乾燥 | 霧視 | |
神経系障害 | | 頭痛、めまい | 傾眠、味覚異常 | 感覚鈍麻 |
精神障害 | | | | 錯乱状態 |
心臓障害 | | | 心電図QT延長、頻脈、動悸注) | |
血管障害 | | | 高血圧 | |
呼吸器、胸郭及び縦隔障害 | | 咽喉乾燥 | 鼻乾燥、咳嗽、口腔咽頭痛、鼻出血 | |
肝胆道系障害 | | | AST増加注)、ALT増加、γ-GTP増加 | |
胃腸障害 | 口内乾燥(36.5%) | 便秘、消化不良、腹痛、悪心、下痢 | 胃食道逆流性疾患、腹部不快感、腹部膨満、嘔吐、胃炎、鼓腸注) | |
腎及び尿路障害 | | 排尿困難、尿路感染 | 膀胱炎、排尿躊躇、尿流量減少、残尿、尿失禁 | |
皮膚及び皮下組織障害 | | | 皮膚乾燥、発疹、そう痒症 | 蕁麻疹、血管性浮腫 |
全身障害及び投与局所様態 | | | CK増加、疲労、浮腫 | |
13.1 症状
重度の中枢性抗コリン作用(例、幻覚、重度の興奮)、痙攣、著しい興奮、呼吸不全、頻脈、尿閉、散瞳
13.2 処置
胃洗浄及び活性炭の投与を行い、必要に応じて以下のような適切な処置を行うこと。
13.2.1 重度の中枢性抗コリン作用(例、幻覚、重度の興奮)に対してはネオスチグミンを投与する。
13.2.2 痙攣及び著しい興奮に対してはベンゾジアゼピン系薬剤を投与する。
13.2.3 呼吸不全に対しては人工呼吸を実施する。
13.2.4 頻脈に対してはβ遮断薬を投与する。
13.2.5 尿閉に対しては導尿を実施する。
13.2.6 散瞳に対してはピロカルピン点眼薬による治療を行うか、暗い部屋に移す。あるいは両方の処置を行う。
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.1.2 湿気、高温を避けて保存し、服用直前にPTPシートから取り出すよう指導すること。
14.1.3 本剤は徐放性製剤であるため、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用するよう指導すること。割ったり、砕いたり、すりつぶしたりして服用すると、本剤の徐放性が失われ、血中濃度が上昇するおそれがある。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性に、本剤を用いてフェソテロジンフマル酸塩4、8及び16mg
注)を単回経口投与した時の活性代謝物5-HMTの薬物動態パラメータを表に示す。本剤単回経口投与後、血漿中の5-HMT濃度は投与量にかかわらず約5時間で最高血漿中濃度(Cmax)に達し、見かけの消失半減期(t
1/2)の平均値は約7〜10時間であった。4、8及び16mg
注)単回経口投与時のCmaxの平均値は2.68、5.65及び11.1ng/mL、血漿中濃度曲線下面積(AUC
0-∞)の平均値は27.1、57.6及び116ng・h/mLであり、投与量に比例して増加した
2)。
日本人健康成人男性に本剤を用いてフェソテロジンフマル酸塩4、8及び16mg注)を単回経口投与した時の活性代謝物5-HMTの薬物動態パラメータ(n=8、平均値±標準偏差)
薬物動態パラメータ | 4mg | 8mg | 16mg注) |
Cmax(ng/mL) | 2.68±1.18 | 5.65±1.27 | 11.1±2.56 |
tmax(h) | 5.00(4.0-5.0) | 5.00(5.0-6.0) | 5.00(5.0-6.0) |
AUC0-∞(ng・h/mL) | 27.1±9.69 | 57.6±16.3 | 116±27.8 |
t1/2(h) | 9.84±2.14 | 9.55±1.81 | 7.62±1.06 |
注)本剤の承認最大用量は1日1回8mgである。
16.1.2 反復投与
健康成人男性に、フェソテロジンフマル酸塩4及び8mgを含有する本剤を24時間毎に反復経口投与した時の活性代謝物5-HMTの薬物動態パラメータを表に、平均血漿中濃度推移を図に示す。本剤4及び8mgを24時間毎に反復投与した時の5-HMTのCmaxの平均値は2.55及び3.77ng/mL、投与間隔での血漿中濃度曲線下面積(AUCτ)の平均値は25.7及び35.1ng・h/mLであり、投与量に伴って増加した。また、反復投与時のトラフ濃度は、投与開始48時間後には一定であり、血漿中5-HMT濃度は48時間以内に定常状態に達していると考えられた
3)。
日本人健康成人男性に本剤4及び8mgを1日1回5日間反復経口投与した時の活性代謝物5-HMTの薬物動態パラメータ(n=8、平均値±標準偏差)
薬物動態パラメータ | 4mg | 8mg |
Cmax(ng/mL) | 2.55±1.19 | 3.77±1.25 |
tmax(h) | 5.0(2.0-5.0) | 5.0(5.0-5.0) |
AUCτ(ng・h/mL) | 25.7±11.9 | 35.1±13.1 |
t1/2(h) | 5.13±2.54 | 4.86±1.69 |
日本人健康成人男性に本剤4及び8mgを1日1回5日間反復経口投与した時の活性代謝物5-HMTの平均血漿中濃度推移(n=8)
a)
b)
c)
a)初回投与後、b)第2日目〜5日目の投与前値、c)最終投与後
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人男性に、絶食時及び高脂肪食摂取後に本剤8mgを単回経口投与した時、活性代謝物5-HMTのtmaxの中央値は絶食時、食後ともに5時間であった。絶食時と比較して、食後にCmaxは16%上昇したが、AUC
36の上昇は10%であり、臨床上問題となる影響はないと考えられた
4)。
16.2.2 バイオアベイラビリティ
外国人健康成人男性に本剤を経口投与した時、血漿中にフェソテロジンは定量されなかった(定量下限:0.02ng/mL)。フェソテロジンは経口投与後、非特異的エステラーゼによって速やかにかつそのほとんどが加水分解を受け活性代謝物に変換されると考えられる。フェソテロジン静脈内投与時に対する、本剤経口投与時の活性代謝物5-HMTのバイオアベイラビリティは52%である
5)6)(外国人データ)。
16.3 分布
活性代謝物5-HMTの血漿蛋白非結合率は約50%であり、主としてヒト血清アルブミンとα
1-酸性糖蛋白に結合する。5-HMTを定速静脈内投与した時の定常状態の分布容積の平均値は169Lである
6)7)(外国人データ)。
16.4 代謝
本剤を経口投与後、フェソテロジンは速やかにかつそのほとんどが活性代謝物5-HMTに加水分解される。5-HMTはCYP2D6及びCYP3A4が関与する2つの主代謝経路を経てカルボキシ体、カルボキシ-N-脱イソプロピル体及びN-脱イソプロピル体に代謝される。CYP2D6の代謝酵素活性が欠損している人(PM)では代謝酵素活性が正常な人(EM)と比較して、5-HMTのCmax及びAUCはそれぞれ1.7倍及び2倍に増加した
5)8)9)10)11)(外国人データ)。[
10.参照]
16.5 排泄
活性代謝物5-HMTの排泄には主として肝代謝と腎排泄が関与している。本剤を経口投与後、投与量の約70%が尿中に回収され、その内訳は5-HMT(16%)、カルボキシ体(34%)、カルボキシ-N-脱イソプロピル体(18%)及びN-脱イソプロピル体(1%)であった。また、少量(7%)が糞中に回収された。5-HMT静脈内投与時の真の消失半減期は約4時間であり、本剤経口投与時のt
1/2は約7時間であることから、製剤からの溶出が律速過程になっていると考えられる
5)6)11)(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害者
軽度又は中等度の腎機能障害を有する人(クレアチニンクリアランス:30〜80mL/min)に、本剤4mgを単回経口投与した時、活性代謝物5-HMTのCmax及びAUCは健康成人と比べてそれぞれ1.5倍及び1.8倍まで増加した。重度の腎機能障害を有する人(クレアチニンクリアランス:30mL/min未満)では、Cmax及びAUCがそれぞれ2.0倍及び2.3倍に増加した
12)(外国人データ)。[
9.2.1、
9.2.2参照]
16.6.2 肝機能障害者
中等度(Child-Pugh分類B)の肝機能障害を有する人に本剤8mgを単回経口投与した時、活性代謝物5-HMTのCmax及びAUCは健康成人と比べてそれぞれ1.4倍及び2.1倍に増加した
13)(外国人データ)。[
9.3.1-
9.3.3参照]
16.6.3 年齢及び性差
健康非高齢男性(21〜36歳)、健康高齢男性(65歳以上)及び健康高齢女性(65歳以上)に本剤8mgを単回経口投与した時、体重で補正した活性代謝物5-HMTのCmax及びAUCは3群で同様であった
14)(外国人データ)。
16.6.4 小児
体重25kg超の小児神経因性排尿筋過活動患者を対象とした国際共同第III相試験で得られた血漿中濃度を用いて母集団薬物動態解析を実施したところ、本剤4mg群及び本剤8mg群での活性代謝物5-HMTの定常状態における薬物動態パラメータ(推定値)[幾何平均値(%CV)]は以下の表の通りであった
1)。
国際共同第III相試験の本剤4mg群及び8mg群での活性代謝物5-HMTの定常状態における薬物動態パラメータ(推定値)[幾何平均値(%CV)]
投与群 | 症例数 | Cmax,ss(ng/mL) | AUCτ,ss(ng・h/mL) |
本剤4mg群注1) | 32 | 4.88(48.2) | 59.1(51.7) |
本剤8mg群注2) | 39 | 8.47(41.6) | 103(46.2) |
16.7 薬物相互作用
16.7.1 ケトコナゾール(CYP3A4阻害薬)
ケトコナゾール200mg 1日2回投与と本剤8mgを併用投与した時、CYP2D6のEMでは活性代謝物5-HMTのCmax及びAUCはそれぞれ2.0倍及び2.3倍に増加した。CYP2D6のPMではCmax及びAUCはそれぞれ2.1倍及び2.5倍に増加した
15)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.2 リファンピシン(CYP3A4誘導薬)
リファンピシン600mg 1日1回投与と本剤8mgを併用投与した時、活性代謝物5-HMTのCmax及びAUCはそれぞれ約70%及び75%減少した。t
1/2に変化はみられなかった
16)(外国人データ)。[
10.2参照]
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁>
17.1.1 国際共同第II相試験
日本を含むアジアで実施された過活動膀胱患者を対象とした無作為化二重盲検並行群間比較試験では、本剤4mg、8mgあるいはプラセボを1日1回12週間投与し、有効性及び安全性を検討した。主要評価項目である24時間あたりの平均切迫性尿失禁回数の変化量、副次評価項目である24時間あたりの平均排尿回数の変化量及び24時間あたりの平均尿意切迫感回数の変化量に関して本剤4mg群、8mg群ともプラセボ群に比し統計的に有意な減少が認められた。また、プラセボ群に比べ本剤で多く発現した因果関係を否定できない主な有害事象は、口内乾燥、便秘、膀胱炎、排尿困難、残尿であり、その多くは軽度あるいは中等度であった
17)18)。
最終評価時(12週後)の24時間あたりの平均切迫性尿失禁回数の変化量
投与群 | 症例数 | 投与前 | 12週後(投与前からの変化量) |
平均値(標準偏差) | 最小二乗平均値 | 最小二乗平均のプラセボ群との差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
プラセボ | 309 | 2.24(1.872) | −1.01 | − | − | − |
フェソテロジン4mg/日 | 314 | 2.23(1.814) | −1.35 | −0.34 | −0.56 | −0.13 |
フェソテロジン8mg/日 | 306 | 2.26(1.788) | −1.40 | −0.39 | −0.60 | −0.17 |
最終評価時(12週後)の24時間あたりの平均排尿回数の変化量
投与群 | 症例数 | 投与前 | 12週後(投与前からの変化量) |
平均値(標準偏差) | 最小二乗平均値 | 最小二乗平均のプラセボ群との差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
プラセボ | 309 | 11.13(2.494) | −0.59 | − | − | − |
フェソテロジン4mg/日 | 314 | 11.32(2.576) | −1.15 | −0.56 | −0.91 | −0.22 |
フェソテロジン8mg/日 | 306 | 11.36(2.560) | −1.25 | −0.66 | −1.01 | −0.32 |
最終評価時(12週後)の24時間あたりの平均尿意切迫感回数の変化量
投与群 | 症例数 | 投与前 | 12週後(投与前からの変化量) |
平均値(標準偏差) | 最小二乗平均値 | 最小二乗平均のプラセボ群との差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
プラセボ | 309 | 5.05(3.406) | −1.00 | − | − | − |
フェソテロジン4mg/日 | 314 | 4.81(3.123) | −1.65 | −0.65 | −1.07 | −0.22 |
フェソテロジン8mg/日 | 306 | 5.01(3.538) | −1.66 | −0.66 | −1.09 | −0.23 |
因果関係を否定できない主な有害事象a)
| プラセボ群 | フェソテロジン4mg/日 | フェソテロジン8mg/日 |
評価例数 | 318 | 320 | 313 |
有害事象発現例数(%) |
因果関係を否定できない有害事象 | 81(25.5) | 150(46.9) | 192(61.3) |
口内乾燥 | 29(9.1) | 89(27.8) | 155(49.5) |
便秘 | 14(4.4) | 16(5.0) | 33(10.5) |
排尿困難 | 0 | 2(0.6) | 13(4.2) |
膀胱炎 | 3(0.9) | 11(3.4) | 3(1.0) |
残尿 | 5(1.6) | 7(2.2) | 2(0.6) |
17.1.2 海外第III相試験
外国で実施された過活動膀胱患者を対象とした無作為化二重盲検並行群間比較試験では、本剤4mg、8mgあるいはプラセボを1日1回12週間投与し、有効性及び安全性を検討した。主要評価項目である24時間あたりの平均切迫性尿失禁回数の変化量及び24時間あたりの平均排尿回数の変化量、副次評価項目である24時間あたりの平均尿意切迫感回数の変化量に関して本剤4mg群、8mg群ともプラセボ群に比し統計的に有意な減少が認められた。また、プラセボ群に比べ本剤で多く発現した因果関係を否定できない主な有害事象は、口内乾燥、便秘、眼乾燥であり、その多くは軽度あるいは中等度であった
19)。
最終評価時(12週後)の24時間あたりの平均切迫性尿失禁回数の変化量
投与群 | 症例数 | 投与前 | 12週後(投与前からの変化量) |
平均値(標準偏差) | 最小二乗平均値 | 最小二乗平均のプラセボ群との差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
プラセボ | 205 | 3.7(3.33) | −0.96 | − | − | − |
フェソテロジン4mg/日 | 228 | 3.9(3.51) | −1.65 | −0.69 | −1.14 | −0.24 |
フェソテロジン8mg/日 | 218 | 3.9(3.32) | −2.28 | −1.32 | −1.78 | −0.87 |
最終評価時(12週後)の24時間あたりの平均排尿回数の変化量
投与群 | 症例数 | 投与前 | 12週後(投与前からの変化量) |
平均値(標準偏差) | 最小二乗平均値 | 最小二乗平均のプラセボ群との差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
プラセボ | 266 | 12.2(3.66) | −1.08 | − | − | − |
フェソテロジン4mg/日 | 267 | 12.9(3.86) | −1.61 | −0.53 | −1.02 | −0.04 |
フェソテロジン8mg/日 | 267 | 12.0(3.31) | −2.09 | −1.01 | −1.50 | −0.52 |
最終評価時(12週後)の24時間あたりの平均尿意切迫感回数の変化量
投与群 | 症例数 | 投与前 | 12週後(投与前からの変化量) |
平均値(標準偏差) | 最小二乗平均値 | 最小二乗平均のプラセボ群との差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
プラセボ | 266 | 11.4(3.77) | −0.79 | − | − | − |
フェソテロジン4mg/日 | 267 | 12.5(4.05) | −1.91 | −1.13 | −1.67 | −0.59 |
フェソテロジン8mg/日 | 267 | 11.6(3.72) | −2.30 | −1.52 | −2.05 | −0.98 |
因果関係を否定できない主な有害事象b)
| プラセボ群 | フェソテロジン4mg/日 | フェソテロジン8mg/日 |
評価例数 | 271 | 282 | 279 |
有害事象発現例数(%) |
因果関係を否定できない有害事象 | 52(19.2) | 83(29.4) | 130(46.6) |
口内乾燥 | 19(7) | 45(16) | 97(35) |
便秘 | 7(3) | 14(5) | 18(7) |
眼乾燥 | 0 | 2(1) | 9(3) |
頭痛 | 7(3) | 7(3) | 6(2) |
17.1.3 国内長期投与試験
国内で実施された過活動膀胱患者を対象とした非盲検長期投与試験では、52週間投与による有効性及び安全性を検討した。本剤4mg(1日1回投与)から投与を開始し、投与4週時点で8mg/日へ増量可能とした。また、投与8週時点で8mg/日から4mg/日へ減量可能とした。24時間あたりの平均切迫性尿失禁回数の変化量、24時間あたりの平均排尿回数の変化量及び24時間あたりの平均尿意切迫感回数の変化量に関して改善の大部分は投与8週後までに認められ、その後、投与52週後まで効果は持続した
20)21)。
24時間あたりの平均切迫性尿失禁回数の変化量
投与時期 | 症例数 | 平均値 | 標準偏差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
実測値 | 投与前 | 101 | 1.6 | 1.48 | − | − |
投与前からの変化量 | 投与8週後 | 100 | −1.15 | 1.293 | −1.40 | −0.89 |
投与52週後(LOCF) | 101 | −1.35 | 1.521 | −1.65 | −1.05 |
24時間あたりの平均排尿回数の変化量
投与時期 | 症例数 | 平均値 | 標準偏差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
実測値 | 投与前 | 150 | 11.3 | 2.85 | − | − |
投与前からの変化量 | 投与8週後 | 148 | −2.11 | 1.946 | −2.42 | −1.79 |
投与52週後(LOCF) | 150 | −2.49 | 2.172 | −2.84 | −2.14 |
24時間あたりの平均尿意切迫感回数の変化量
投与時期 | 症例数 | 平均値 | 標準偏差 | 両側95%信頼区間 |
下限 | 上限 |
実測値 | 投与前 | 150 | 4.5 | 3.40 | − | − |
投与前からの変化量 | 投与8週後 | 148 | −2.44 | 2.194 | −2.80 | −2.08 |
投与52週後(LOCF) | 150 | −2.61 | 2.885 | −3.08 | −2.15 |
因果関係を否定できない主な有害事象c)
| 全体 |
評価例数 | 152 |
因果関係を否定できない有害事象 | 102(67.1) |
| 合計 | 軽度 | 中等度 | 重度 |
口内乾燥 | 77(50.7) | 68 | 9 | 0 |
便秘 | 16(10.5) | 15 | 1 | 0 |
排尿困難 | 6(3.9) | 5 | 1 | 0 |
胃炎 | 5(3.3) | 4 | 1 | 0 |
下痢 | 4(2.6) | 4 | 0 | 0 |
浮動性めまい | 4(2.6) | 3 | 1 | 0 |
尿流量減少 | 4(2.6) | 4 | 0 | 0 |
ALT増加 | 3(2.0) | 2 | 1 | 0 |
AST増加 | 3(2.0) | 3 | 0 | 0 |
<神経因性膀胱における排尿管理>
17.1.4 国際共同第III相臨床試験(A0221047試験)
日本人を含む小児神経因性排尿筋過活動患者(年齢6歳〜17歳)を対象とした無作為化、非盲検、並行群間比較試験で、体重25kgを超える被験者における本剤4mg及び8mgの有効性及び安全性を検討した。12週間の有効性評価期間と12週間の安全性評価延長期間の2つのパートで構成した。なお、本剤8mg群の開始用量は4mg/日とし、1週間後に8mg/日に増量した。
主要評価項目である投与12週目の最大膀胱容量(膀胱内圧検査における最大膀胱容量、又は排尿/尿失禁開始時若しくは40cmH
2O時の容量)のベースラインからの変化量(全体集団及び日本人集団)を以下に示す。
有効性評価期間及び安全性評価延長期間の両期間ともに本剤の投与を受けた症例(本剤4mg群30例、及び本剤8mg群37例)における主な副作用は、口内乾燥(10.0%、10.8%)、便秘(3.3%、8.1%)、下痢(3.3%、0%)及び腹痛(0%、2.7%)であった
22)。
投与12週目の最大膀胱容量のベースラインからの変化量(mL、全体集団)
投与群 | 症例数 | 投与前 | 12週後(投与前からの変化量) |
最大膀胱容量の平均値(標準偏差) | 最小二乗平均値注1,2)(標準誤差) | 95% CI | P値注3) |
本剤4mg群 | 41 | 195.1(100.75) | 58.12(14.78) | (28.84,87.39) | 0.0001 |
本剤8mg群 | 41 | 173.3(104.45) | 83.36(14.71) | (54.22,112.49) | <0.0001 |
投与12週目の最大膀胱容量のベースラインからの変化量(mL、日本人集団)
投与群 | 症例数 | 投与前 | 12週後(投与前からの変化量) |
最大膀胱容量の平均値(標準偏差) | 最小二乗平均値注1,2)(標準誤差) | 95% CI |
本剤4mg群 | 10 | 193.4(93.68) | 51.72(25.23) | (−0.74,104.18) |
本剤8mg群 | 10 | 197.1(85.88) | 85.98(25.32) | (33.32,138.64) |
17.3 その他
17.3.1 QT間隔に対する影響
本剤の定常状態における心電図に対する影響を検討することを目的として、二重盲検下で健康被験者に本剤4mg/日又は28mg/日
注)、モキシフロキサシン400mg/日又はプラセボを3日間投与した。モキシフロキサシン400mg/日投与後にはQTc間隔の延長(3日目の時間平均QTcFの延長:8.6msec)が認められたが、本剤4mg/日及び28mg/日
注)又はプラセボの投与後にはQTc間隔がわずかに短縮し、フェソテロジン群とプラセボ群間で有意差は認められなかった
23)(外国人データ)。
定常状態におけるQTcFd)のベースライン値との比較
投与群 | 例数 | 平均値(標準偏差) | 中央値 | 最小値,最大値 | 95% CIe) |
プラセボ | 64 | −4.7(5.89) | −3.8 | −20.2,11.6 | (−6.2,−3.2) |
フェソテロジン4mg/日 | 64 | −4.6(6.71) | −4.9 | −18.5,11.9 | (−6.3,−2.9) |
フェソテロジン28mg/日注) | 64 | −5.0(7.85) | −5.3 | −20.8,16.3 | (−6.9,−3.0) |
モキシフロキサシン400mg/日 | 64 | 8.6(5.94) | 7.7 | −2.7,21.2 | (7.1,10.1) |
注)本剤の承認最大用量は1日1回8mgである。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。