医療用医薬品 : トラネキサム酸

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医薬品情報


総称名 トラネキサム酸
一般名 トラネキサム酸
欧文一般名 Tranexamic Acid
薬効分類名 抗プラスミン剤
薬効分類番号 3327 4490
ATCコード B02AA02
KEGG DRUG
D01136 トラネキサム酸
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2023年12月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
トラネキサム酸注射液1000mg「NIG」 (後発品) 日医工岐阜工場 3327401A4290 104円/管 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 トロンビンを投与中の患者[10.1参照]
2.2 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

○全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向
(白血病、再生不良性貧血、紫斑病等、および手術中・術後の異常出血)
○局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
(肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血)
○下記疾患における紅斑・腫脹・そう痒などの症状
湿疹およびその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹
○下記疾患における咽頭痛・発赤・充血・腫脹などの症状
扁桃炎、咽喉頭炎
○口内炎における口内痛および口内粘膜アフター

6. 用法及び用量

トラネキサム酸として、通常成人1日250〜500mgを1〜2回に分けて静脈内又は筋肉内注射する。
術中・術後などには必要に応じ1回500〜1,000mgを静脈内注射するか又は500〜2,500mgを点滴静注する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 血栓のある患者(脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎等)及び血栓症があらわれるおそれのある患者
血栓を安定化するおそれがある。
9.1.2 消費性凝固障害のある患者
ヘパリン等と併用すること。血栓を安定化するおそれがある。
9.1.3 術後の臥床状態にある患者及び圧迫止血の処置を受けている患者
静脈血栓を生じやすい状態であり、本剤投与により血栓を安定化するおそれがある。離床、圧迫解除に伴い肺塞栓症を発症した例が報告されている。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 腎不全のある患者
血中濃度が上昇することがある。
9.2.2 人工透析患者11.1.2参照]
9.5 妊婦
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下していることが多い。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
トロンビン
2.1参照]
血栓形成傾向があらわれるおそれがある。血栓形成を促進する作用があり、併用により血栓形成傾向が増大する。
10.2 併用注意
ヘモコアグラーゼ大量併用により血栓形成傾向があらわれるおそれがある。ヘモコアグラーゼによって形成されたフィブリン塊は、本剤の抗プラスミン作用によって比較的長く残存し閉塞状態を持続させるおそれがあると考えられている。
バトロキソビン血栓・塞栓症を起こすおそれがある。バトロキソビンによって生成するdesAフィブリンポリマーの分解を阻害する。
凝固因子製剤
エプタコグアルファ等
口腔等、線溶系活性が強い部位では凝固系がより亢進するおそれがある。凝固因子製剤は凝固系を活性化させることにより止血作用を発現する。一方、本剤は線溶系を阻害することにより止血作用を発現する。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(頻度不明)
11.1.2 痙攣(頻度不明)
人工心肺を用いた心臓大血管手術の周術期に本剤を投与した患者において、術後に痙攣があらわれることがある。また、人工透析患者において痙攣があらわれたとの報告がある。[9.2.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜1%未満0.1%未満頻度不明
過敏症 そう痒感、発疹等 
消化器悪心、嘔吐食欲不振、下痢 
  一過性の色覚異常(静脈内注射時)
その他 眠気、頭痛 

14. 適用上の注意

14.1 薬剤投与時の注意
14.1.1 静脈内注射時
ゆっくり静脈内に投与すること。急速に投与すると、まれに悪心、胸内不快感、心悸亢進、血圧低下等があらわれることがある。
14.1.2 筋肉内注射時
組織・神経等への影響を避けるため、次の点に注意すること。
・注射部位については、神経走行部位を避けて慎重に投与すること。
・繰り返し注射する場合には、左右交互に注射するなど、同一部位を避けること。なお、小児等には特に注意すること。
・注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位をかえて注射すること。

15. その他の注意

15.2 非臨床試験に基づく情報
イヌに長期・大量投与したところ網膜変性があらわれたとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性5例にトラネキサム酸500mgを単回筋肉内投与又は1,000mgを単回静脈内投与したとき、薬物動態パラメータは次のとおりであった1)
単回静脈内投与及び単回筋肉内投与時のトラネキサム酸の薬物動態パラメータ
投与量投与法例数Cmax(μg/mL)Tmax(hr)t1/2(hr)Vd(L)
500mg筋注321.20.52.0
1,000mg静注21.942.4
16.1.2 生物学的同等性試験
・筋肉内投与
トラネキサム酸注射液1000mg「NIG」とトランサミン注10%を、クロスオーバー法によりそれぞれ5mL(トラネキサム酸として500mg)健康成人男子に単回筋肉内投与して血清中トラネキサム酸濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された2)
薬物動態パラメータ
 投与量(mg)AUC0-5(μg・hr/mL)Cmax(μg/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
トラネキサム酸注射液1000mg「NIG」50096.2±19.337.7±6.90.5±0.11.7±0.8
トランサミン注10%(10mL)50096.0±15.337.1±5.80.5±0.11.6±0.7
血清中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.1.3 その他の投与経路
・静脈内投与
トラネキサム酸注射液1000mg「NIG」とトランサミン注10%を、クロスオーバー法によりそれぞれ5mL(トラネキサム酸として500mg)健康成人男子に単回静脈内投与して血清中トラネキサム酸濃度を測定した2)
薬物動態パラメータ
 投与量(mg)Cmax(μg/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
トラネキサム酸注射液1000mg「NIG」50082.0±14.01.2±0.5
トランサミン注10%(10mL)50081.0±12.30.9±0.3
血清中濃度並びにCmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
・点滴静脈内投与
トラネキサム酸注射液1000mg「NIG」とトランサミン注10%を、クロスオーバー法によりそれぞれ25mL(トラネキサム酸として2500mg)健康成人男子に30分間にわたり点滴静脈内投与して血清中トラネキサム酸濃度を測定した2)
薬物動態パラメータ
 投与量(mg)Cmax(μg/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
トラネキサム酸注射液1000mg「NIG」250078.7±15.41.2±0.5
トランサミン注10%(10mL)250073.2±8.61.0±0.3
血清中濃度並びにCmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.3 分布
マウスに14C-トラネキサム酸を20mg/kgの投与量で単回静脈内投与及び単回筋肉内投与したときの組織内分布は、肝、腎、肺で高く、膵、副腎、脾、子宮、心、筋肉がこれに次ぎ、脳では低かった3)
16.5 排泄
健康成人男性5例にトラネキサム酸500mgを単回筋肉内投与又は1,000mgを単回静脈内投与したとき、投与後24時間以内に投与量のそれぞれ76%及び80%が未変化体として尿中に排泄された1)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
線維素溶解現象(線溶現象)は生体の生理的ならびに病的状態において、フィブリン分解をはじめ、血管の透過性亢進等に関与し、プラスミンによって惹起される生体反応を含め、種々の出血症状やアレルギー等の発生進展や治癒と関連している。
トラネキサム酸は、このプラスミンの働きを阻止し、抗出血・抗アレルギー・抗炎症効果を示す。
18.2 抗プラスミン作用
トラネキサム酸は、プラスミンやプラスミノゲンのフィブリンアフィニティー部位であるリジン結合部位(LBS)と強く結合し、プラスミンやプラスミノゲンがフィブリンに結合するのを阻止する。このため、プラスミンによるフィブリン分解は強く抑制される。更に、α2-マクログロブリン等血漿中アンチプラスミンの存在下では、トラネキサム酸の抗線溶作用は一段と強化される4)5)6)7)8)
18.3 止血作用
異常に亢進したプラスミンは、血小板の凝集阻止、凝固因子の分解等を起こすが、軽度の亢進でも、フィブリン分解がまず特異的に起こる。したがって一般の出血の場合、トラネキサム酸は、このフィブリン分解を阻害することによって止血すると考えられる4)9)
18.4 抗アレルギー・抗炎症作用
トラネキサム酸は、血管透過性の亢進、アレルギーや炎症性病変の原因になっているキニンやその他の活性ペプチド等のプラスミンによる産生を抑制する(モルモット、ラット)9)10)11)12)13)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. トラネキサム酸

一般的名称 トラネキサム酸
一般的名称(欧名) Tranexamic Acid
化学名 trans-4-(Aminomethyl)cyclohexanecarboxylic acid
分子式 C8H15NO2
分子量 157.21
物理化学的性状 白色の結晶又は結晶性の粉末である。水に溶けやすく、エタノール(99.5)にほとんど溶けない。
KEGG DRUG D01136

22. 包装

10mL×50アンプル

23. 主要文献

  1. 佐野光司ほか, 臨床薬理, 7 (4), 375-382, (1976) »DOI
  2. 社内資料:生物学的同等性試験
  3. 豊島 滋ほか, 基礎と臨床, 5 (4), 740-748, (1971)
  4. 安孫子雍史, Med Pharm., 10 (1), 7-11, (1976)
  5. Iwamoto M, Thrombos Diathes Haemorrh., 33 (3), 573-585, (1975)
  6. Markus G,et al., J Biol Chem., 254 (4), 1211-1216, (1979) »PubMed
  7. Abiko Y,et al., Biochim Biophys Acta., 185 (2), 424-431, (1969) »PubMed
  8. Abiko Y,et al., Biochim Biophys Acta., 214 (3), 411-418, (1970) »PubMed
  9. 第十五改正日本薬局方解説書, C-2743-C-2749, (2006), (廣川書店)
  10. 山田外春ほか, プラスミン研究会報告集, 14, 364-366, (1974)
  11. 木村義民ほか, アレルギー, 15 (9), 755-763, (1966) »DOI
  12. 近藤元治, プラスミン研究会報告集, 6, 36-37, (1966)
  13. 山崎英正ほか, 日本薬理学雑誌, 63 (6), 560-571, (1967) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
日医工株式会社 お客様サポートセンター
〒930-8583 富山市総曲輪1丁目6番21
電話:0120-517-215
FAX:076-442-8948
製品情報問い合わせ先
日医工株式会社 お客様サポートセンター
〒930-8583 富山市総曲輪1丁目6番21
電話:0120-517-215
FAX:076-442-8948

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
日医工岐阜工場株式会社
富山市総曲輪1丁目6番21
26.2 発売元
日医工株式会社
富山市総曲輪1丁目6番21
26.3 販売
武田薬品工業株式会社
大阪市中央区道修町四丁目1番1号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版