2.1 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
2.2 他のβ-ラクタム系抗生物質に対し重篤な過敏症(アナフィラキシー等の重度の全身性アレルギー反応)の既往歴のある患者
<適応菌種>
セフィデロコルに感性の大腸菌、シトロバクター属、肺炎桿菌、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア・マルセスセンス、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、緑膿菌、バークホルデリア属、ステノトロホモナス・マルトフィリア、アシネトバクター属
ただし、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌株に限る。
<適応症>
通常、成人には、セフィデロコルとして1回2gを8時間ごとに3時間かけて点滴静注する。なお、腎機能に応じて適宜増減する。
7.1 腎機能障害のある患者では、以下の基準を目安として用法・用量を調節すること。[
9.2、
16.6.1参照]
腎機能障害(Ccr 60mL/min未満)のある又は血液透析を受けている患者※
| Ccr(mL/min)/血液透析患者 | 1回投与量 | 投与間隔 | 投与時間 |
| 30≦Ccr<60 | 1.5g | 8時間毎 | 3時間 |
| 15≦Ccr<30 | 1g | 8時間毎 | 3時間 |
| Ccr<15 | 0.75g | 12時間毎 | 3時間 |
| 血液透析患者 | 0.75g | 12時間毎 | 3時間 |
7.2 腎クリアランスが亢進した患者では、下表を目安として用法・用量を調節すること。
| Ccr(mL/min) | 1回投与量 | 投与間隔 | 投与時間 |
| 120≦Ccr | 2g | 6時間毎 | 3時間 |
7.3 本剤はグラム陽性菌、嫌気性菌に対して抗菌活性を示さないため、これらの菌種との重複感染が明らかである場合、これらの菌種に抗菌作用を有する抗菌薬と併用すること。
8.1 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現を防ぐため、次のことに注意すること。[1.参照]
・感染症の治療に十分な知識と経験を持つ医師又はその指導の下で行うこと。
・使用にあたっては、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。
8.2 本剤の使用にあたっては、抗微生物薬適正使用の観点から、「抗微生物薬適正使用の手引き」
1)を参照すること。
8.3 本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、次の措置をとること。
・事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。
・投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
・投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。
8.4 カルバペネム耐性グラム陰性菌による感染症患者を対象とした臨床試験において、原因不明であるものの、本剤が投与されたアシネトバクター属による感染症患者で標準治療群より死亡率が高い傾向が認められた。本剤の使用にあたっては他の治療法も考慮のうえ、本剤を使用する場合は、患者の状態を慎重に観察すること。[
17.1.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 痙攣発作の既往歴あるいは中枢神経障害を有する患者
痙攣、意識障害等の中枢神経症状が起こるおそれがある。
9.1.2 β-ラクタム系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者[
8.3参照]
9.1.3 本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質を有する患者[
8.3参照]
9.1.4 経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者
観察を十分に行うこと。他の抗生物質でビタミンK欠乏症状があらわれたことが報告されている。
9.2 腎機能障害患者
本剤は腎排泄型の薬剤であり、高い血漿中濃度が持続するおそれがある。
9.2.1 腎機能障害(Ccr 60mL/min未満)のある患者
9.2.2 血液透析患者
3〜4時間の血液透析によって約60%の血漿中セフィデロコルが除去された
2)(外国人データ)。[
7.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で胎盤への移行が報告されている。
9.6 授乳婦
授乳中の女性には、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
・高齢者では生理機能が低下していることが多く、副作用が発現しやすいため、腎機能等の患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。
・他の抗生物質を投与した高齢者において、ビタミンK欠乏による出血傾向があらわれたとの報告がある。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、呼吸困難、全身潮紅、蕁麻疹、血圧低下等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
8.3参照]
11.1.2 偽膜性大腸炎(1%未満)
偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎があらわれることがあるので、腹痛、頻回の下痢があらわれた場合には直ちに投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
11.1.3 肝機能障害(2.7%)
AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.4 痙攣、てんかん発作(いずれも頻度不明)
痙攣、てんかん発作等の中枢神経症状があらわれることがある。
11.1.5 好中球減少症(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 1%以上 | 1%未満 | 頻度不明 |
| 過敏症 | | 発疹、そう痒 | |
| 呼吸器 | | | 咳嗽 |
| 肝臓 | ALT上昇、γ-GTP上昇 | AST上昇、肝機能異常 | |
| 腎臓 | | | 着色尿 |
| 消化器 | 下痢 | 悪心、嘔吐 | |
| 菌交代症 | | カンジダ症 | |
| 投与部位 | | 疼痛・紅斑・静脈炎等の注射部位反応 | |
・試験紙法による尿蛋白、尿ケトン体、尿潜血検査では偽陽性を呈することがある。
・他の抗生物質ではテステープ反応を除くベネディクト試薬、フェーリング試薬による尿糖検査で偽陽性を呈することが報告されている。
・他の抗生物質では直接クームス試験陽性を呈することが報告されている。
本剤は血液透析により血漿中から除去されることが報告されている。
16.1 血中濃度
健康成人6例に100mg
注、250mg
注、500mg
注、1g
注、2gを1時間
注かけて単回点滴静注したときの血漿中濃度
3)を図16-1に、2gを単回又は8時間ごとに反復点滴静注したときの薬物動態パラメータ
3)4)を表16-1に示す。Cmax及びAUCは用量比例的に増大した。反復投与での体内動態は単回投与時とほとんど変わらず、蓄積性は認められなかった(外国人データを含む)。
図16-1 単回投与時の平均血漿中濃度推移(健康成人)
表16-1 薬物動態パラメータ
| 投与量(g) | 点滴時間(hr) | 例数 | Cmax(μg/mL) | AUC(μg・hr/mL) | T1/2(hr) |
| 単回投与 |
| 2 | 1注 | 6※1 | 156(7.9) | 389.7(9.0) | 2.74(10.2) |
| 2 | 3 | 43※2 | 89.7(20.5) | 386.1(17.2) | 2.41(14.0) |
| 反復投与(10日目) |
| 2 | 1注 | 8※3 | 153(12.9) | 366.5(14.0) | 2.72(21.6) |
16.3 分布
ヒト血漿蛋白結合率は、1〜1000μg/mLの濃度範囲において40.8〜60.4%であった
5)(
in vitro試験)。健康成人43例にセフィデロコル2gを3時間かけて単回点滴静注したときの終末相における分布容積の幾何平均(%幾何変動係数)は18.0L(18.1%)であった。
人工呼吸器を装着している肺炎患者7例に、セフィデロコル2g(又は腎機能に応じた用量)を8時間ごと、あるいは腎機能が亢進している患者では6時間ごとに3時間点滴静注したときの気道上皮被覆液中濃度は、点滴開始3時間後(点滴終了時)で3.10〜20.7μg/mL、点滴開始5時間後(点滴終了2時間後)で7.19〜15.9μg/mLであった。
16.4 代謝
健康成人男性6例に[
14C]-セフィデロコル1g
注を1時間かけて
注単回点滴静注したとき、血漿中では主にセフィデロコル未変化体が検出された(総放射能AUCの92.3%)
6)(外国人データ)。
16.5 排泄
健康成人男性6例に[
14C]-セフィデロコル1g
注を1時間かけて
注単回点滴静注したとき、投与された放射能の98.6%及び2.8%がそれぞれ尿中及び糞中に排泄され、未変化体尿中排泄率は90.6%であった
7)(外国人データ)。[
9.2参照]
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害者
腎機能正常患者、軽度、中等度及び高度腎機能障害患者並びに血液透析を必要とする末期腎不全患者にセフィデロコル1g
注を1時間かけて
注単回点滴静注したとき、表16-2に示すとおり本薬のAUCは腎機能の程度に応じて増大した。持続的腎代替療法施行時の膜透過クリアランスは、
in vitro透析実験においてろ過液又は透析液の流入速度に依存した
8)。持続的腎代替療法施行中の患者において本薬の曝露量が低下する恐れがある。
表16-2 腎機能の程度に応じたAUC
腎機能の程度 (推算糸球体ろ過量) (mL/min/1.73m2) | 例数 | AUC0-inf(μg・hr/mL) |
| 幾何平均値 | 腎機能正常被験者との比 [90%信頼区間] |
| 腎機能正常被験者 | 8 | 213.4 | / |
軽度腎機能障害被験者 (60以上90未満) | 8 | 218.7 | 1.025 [0.817,1.287] |
中等度腎機能障害被験者 (30以上60未満) | 7 | 312.3 | 1.464 [1.157,1.852] |
重度腎機能障害被験者 (15以上30未満) | 6 | 543.2 | 2.546 [1.992,3.254] |
末期腎不全被験者 (血液透析後投与) | 8 | 880.7 | 4.128 [3.289,5.181] |
16.6.2 腎クリアランス亢進患者
母集団薬物動態解析
9)10)の結果を基に、国際共同第III相院内肺炎患者対象試験における腎クリアランス亢進患者(Ccr≧120mL/min)及び腎機能正常患者(90≦Ccr<120mL/min)のセフィデロコルの全身クリアランス(CL)推定値を表16-3に示す。腎クリアランス亢進患者でCLの増大が認められた。
表16-3 腎クリアランス亢進患者及び腎機能正常患者におけるセフィデロコルの全身クリアランス
| Ccr(mL/min) | 例数 | CL(L/hr)※1 |
| 120≦Ccr | 19 | 6.46(38.0) |
| 90≦Ccr<120 | 27 | 4.48(66.0) |
16.7 薬物相互作用
16.7.1 トランスポーター阻害試験
セフィデロコルは、本剤の用法・用量で投与したときの濃度においてOAT1、OAT3、及びMATE2-Kを阻害した(in vitro試験)。
16.7.2 臨床試験
健康成人を対象に薬物相互作用を検討した。併用薬の薬物動態に及ぼすセフィデロコルの影響を表16-4に示す
11)12)(外国人データ)。
表16-4 併用薬の薬物動態に及ぼすセフィデロコルの影響
| 併用薬 | 用法・用量 | 例数 (併用投与/単独投与) | 併用薬の薬物動態パラメータの比[90%信頼区間] (併用投与/単独投与) |
| 併用薬 | 本剤 | Cmax | AUC0-inf |
フロセミド (OAT1及びOAT3基質) | 20mg 単回 | 2gを8時間ごとに3時間点滴静注 | 12/12 | 1.00 [0.71,1.42] | 0.92 [0.73,1.16]※1 |
メトホルミン (OCT1、OCT2、MATE1及びMATE2-K基質) | 1g 単回 | 12/13 | 1.09 [0.92,1.28] | 1.03 [0.93,1.15] |
ロスバスタチン (BCRP、OATP1B1及びOATP1B3基質) | 10mg 単回 | 12/12 | 1.28 [1.12,1.46] | 1.21 [1.08,1.35]※2 |
ミダゾラム (CYP3A基質) | 5mg 単回 | 12/14 | 1.09 [0.97,1.21] | 1.12 [0.99,1.28] |
注)承認された用法・用量は、「通常、成人には、セフィデロコルとして1回2gを8時間ごとに3時間かけて点滴静注する。なお、腎機能に応じて適宜増減する」である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第III相カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症患者対象試験
カルバペネム耐性グラム陰性菌による感染症患者
注150例(日本人2例を含む)を対象に、本剤(セフィデロコル2gを8時間ごとに3時間かけて点滴静注)を7〜14日間(ただし、患者の状態によって最大21日間)投与したときの有効性及び安全性を、標準治療〔各地域の既存薬を用いて、患者の症状に応じて最善の治療(1〜3剤)が決定された〕と比較する国際共同第III相非盲検並行群間試験を実施した。感染部位別の有効率及び原因菌別の有効率は表17-1及び表17-2のとおりであった。
注)院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎/医療ケア関連肺炎、敗血症を含む血流感染症、又は複雑性尿路感染症患者。中枢神経系感染症、3週間超の投薬が必要な感染症(骨・関節感染症、心内膜炎等)は対象から除外された。
表17-1 治癒判定時(投与終了時から約7日後)の感染部位別の有効率(主要評価項目)
| 感染部位 | 評価項目 | 本剤群 | 標準治療群 |
| 院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎/医療ケア関連肺炎 | 臨床効果 | 50.0(20/40) [33.8,66.2] | 52.6(10/19) [28.9,75.6] |
| 敗血症を含む血流感染症 | 43.5(10/23) [23.2,65.5] | 42.9(6/14) [17.7,71.1] |
| 複雑性尿路感染症 | 細菌学的効果 | 52.9(9/17) [27.8,77.0] | 20.0(1/5) [0.5,71.6] |
表17-2 治癒判定時(投与終了時から約7日後)の原因菌別の有効率
| 菌属/菌種 | 細菌学的効果 | 臨床効果 |
| 解析対象集団 | CR Micro-ITT集団 | Micro-ITT集団 | CR Micro-ITT集団 | Micro-ITT集団 |
| 大腸菌 | 0(0/2) | 33.3(2/6) | 50(1/2) | 50(3/6) |
| 肺炎桿菌 | 48.1(13/27) | 50(17/34) | 66.7(18/27) | 64.7(22/34) |
| クレブシエラ属 | − | 50(1/2) | − | 50(1/2) |
| エンテロバクター属 | 50(1/2) | 50(1/2) | 50(1/2) | 50(1/2) |
| セラチア・マルセスセンス | − | 0(0/1) | − | 100(1/1) |
| 緑膿菌 | 8.3(1/12) | 11.8(2/17) | 58.3(7/12) | 52.9(9/17) |
| ステノトロホモナス・マルトフィリア | 0(0/5) | 0(0/5) | 0(0/5) | 0(0/5) |
| アシネトバクター属 | 25.6(10/39) | 28.6(12/42) | 41(16/39) | 42.9(18/42) |
安全性解析対象集団における本剤群の副作用発現頻度は、14.9%(15/101例)であった。主な副作用はアラニンアミノトランスフェラーゼ増加及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加3.0%(各3/101例)であった。
試験終了時(投与終了時から約28日後)の全死因死亡率(安全性解析対象集団)は、本剤群で33.7%(34/101例)、標準治療群で18.4%(9/49例)であり、死亡に至った有害事象のうち本剤群の20.8%(21/101例)、標準治療群の6.1%(3/49例)は、MedDRA/Jの器官別大分類「感染症及び寄生虫症」に分類される事象(敗血症性ショック等)であった。組入れ時にアシネトバクター属に感染していた被験者において、治験薬投与開始後49日目までの全死因死亡率は本剤群で50.0%(21/42例)、標準治療群で23.5%(4/17例)であったが、治癒判定時の臨床効果による有効率(カルバペネム耐性 Microbiological Intent-to-treat集団)は本剤群で41.0%(16/39例)、標準治療群で52.9%(9/17例)、細菌学的効果による有効率は本剤群で25.6%(10/39例)、標準治療群で29.4%(5/17例)と同程度であった
13)14)。
21.1 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。
21.2 日本人での投与経験が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤の使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。